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次の文で示す症例について、問題135、問題136の問いに答えよ。
「18歳の男性。昨日雨に濡れ、その夜から悪寒、発熱、後頭部痛が出現した。脈は浮緊、舌は淡紅で薄白苔。咳、痰、鼻水はない。」
問題136 本症例に対する治療方針として適切なのはどれか。
1.宣散作用を調節する。
2.経脈を疏通する。
3.温めて補う。
4.表を開き発散させる。
解答4
解説
・18歳の男性。
・昨日:雨に濡れ、悪寒、発熱、後頭部痛が出現。
・脈は浮緊、舌は淡紅で薄白苔。
・咳、痰、鼻水はない。
→本症例は、風寒表実証が疑われる。風寒表実証とは、風邪の風熱型で、発汗がないタイプ指す。実証とは、体力や抵抗力が充実している状態である。
1.× 宣散作用(※読み:せんぱつ)を調節する。
宣散とは、上部や表面に散布、発散するイメージをさす。
2.× 経脈を疏通する。
疏通とは、支障なく通ること、途中で妨げられないこと、筋道がよく通じることを意味である。
3.× 温めて補う。
これを温補という。温補とは、冷えた体を「温め」、不足なものを「補う」ことである。
4.〇 正しい。表を開き発散させる。
本症例は、風寒表実証が疑われる。風寒表実証とは、風邪の風熱型で、発汗がないタイプ指す。実証とは、体力や抵抗力が充実している状態である。したがって、表を開き発散させる。
風邪の初期は、①風寒型、②風熱型の大きく2つの「証」に分けられる。①風寒型は、「青い風邪」ともいわれ、悪寒、発熱、頭痛、鼻水、関節の痛みなどの症状が見られる。その中でも、発汗の有無によって、「風寒表実証」と「風寒表虚証」に分かれる。
次の文で示す症例について、問題137、問題138の問いに答えよ。
「63歳の女性。主訴は尿もれ。咳をしたり、重い荷物を持ったりすると尿がもれる。腰背部がだるく、足が冷える。舌は淡で歯痕、脈は沈細。」
問題137 本症例の尿もれと最も関係するのはどれか。
1.骨盤底筋群
2.大殿筋
3.膀胱排尿筋
4.腹直筋
解答1
解説
・63歳の女性(主訴:尿もれ)
・咳をしたり、重い荷物を持ったりすると尿がもれる。
・腰背部がだるく、足が冷える。
・舌は淡で歯痕、脈は沈細。
→本症例は、腹圧性尿失禁が疑われる。腹圧性尿失禁とは、腹圧をかけるような運動時(重い荷物を持ち上げたときなど)に尿が漏れる状態で、男性よりも女性に多くみられる。尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が弱くなることが原因で、加齢、出産、喫煙、肥満などと関連している。
1.〇 正しい。骨盤底筋群は、本症例の尿もれと最も関係する。
本症例は、腹圧性尿失禁が疑われる。腹圧性尿失禁とは、腹圧をかけるような運動時(重い荷物を持ち上げたときなど)に尿が漏れる状態で、男性よりも女性に多くみられる。尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が弱くなることが原因で、加齢、出産、喫煙、肥満などと関連している。骨盤底筋は子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、伏臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。座位や膝立て背臥位などで、上体の力を抜いてお尻の穴を引き上げて「きゅっ」とすぼめ、5秒キープする動作を10~20回ほど繰り返す方法と、すぼめたりを繰り返す方法の2種類ある。
2.× 大殿筋
大殿筋の【起始】腸骨翼の外面で後殿筋線の後方、仙骨・尾骨の外側縁、仙結節靭帯、腰背筋膜、【停止】腸脛靭帯、大腿骨の殿筋粗面、【作用】股関節伸展、外旋、外転、上部:内転、下部:骨盤の下制、【支配神経】下殿神経である。
3.× 膀胱排尿筋
膀胱排尿筋は、蓄尿障害に関与する。蓄尿障害とは、尿を貯めることができなくなる障害のことである。蓄尿障害(尿失禁や頻尿)の原因として、膀胱排尿筋の過活動や、膀胱出口の抵抗が弱くなる、尿道閉鎖圧が低下するなどである。ちなみに、膀胱排尿筋とは、蓄尿と排尿の二つの機能を持つ平滑筋である。排尿筋ともいう。
4.× 腹直筋
腹直筋の【起始】恥骨結合と恥骨結節との間、【停止】第5~第7肋軟骨、剣状突起の前面、【作用】胸郭の前部を引き下げまたは骨盤の前部を引き上げ、また脊柱を前方に曲げる。
次の文で示す症例について、問題137、問題138の問いに答えよ。
「63歳の女性。主訴は尿もれ。咳をしたり、重い荷物を持ったりすると尿がもれる。腰背部がだるく、足が冷える。舌は淡で歯痕、脈は沈細。」
問題138 本症例の病証に対し、難経六十九難による鍼治療で使用するのはどれか。
1.大都
2.太白
3.経渠
4.曲泉
解答3
解説
・63歳の女性(主訴:尿もれ)
・咳をしたり、重い荷物を持ったりすると尿がもれる。
・腰背部がだるく、足が冷える。
・舌は淡で歯痕、脈は沈細。
→本症例は、腎陽虚が疑われる。腎陽虚は、腰膝酸軟、冷え、畏寒、陽萎、不妊、泄瀉、夜間尿、舌苔白などである。
【難経六十九難の治療法則】「虚すればその母を補い、実すればその子を瀉せ」に基づく。
1.× 大都
脾の虚証(補法)は、大都・少府・労宮である。
栄穴である大都(※読み:だいと):足の第1指、第1中足指節関節の遠位陥凹部、赤白肉際に位置する。
栄穴である少府(※読み:しょうふ):手掌、第5中手指節関節の近位端と同じ高さ、第4・5中手骨の間に位置する。
栄穴である労宮(※読み:ろうきゅう):手掌、第2~3中手骨間、中手指節関節の近位陥凹部に位置する。
2.× 太白
肺の虚証(補法)は、太淵・太白である。
原穴である太淵(※読み:たいえん):手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部に位置する。
原穴である太白(※読み:たいはく):足内側、第1中足指節関節の近位陥凹部、赤白肉際に位置する。
3.〇 正しい。経渠は、難経六十九難による鍼治療で使用する。
腎の虚証(補法)は、復溜・経渠である。
経穴である復溜(※読み:ふくりゅう):下腿後内側、アキレス腱の前縁、内果尖の上方2寸に位置する。
経穴である経渠(※読み:けいきょ):前腕前外側、橈骨下端の橈側で外側に最も突出した部位と橈骨動脈の間、手関節掌側横紋の上方1寸に位置する。
4.× 曲泉
肝の虚証(補法)は、曲泉・陰谷である。
合穴である曲泉(※読み:きょくせん)は、膝内側、半腱・半膜様筋腱内側の陥凹部、膝窩横紋の内側端に位置する。
合穴である陰谷(※読み:いんこく)は、膝後内側、半腱様筋腱の外縁、膝窩横紋上に位置する。
【部位】虚証(補法):実証(瀉法)
【肝】曲泉・陰谷:行間・少府・労宮
【肺】太淵・太白:尺沢・陰谷
【心】少衝・大敦:神門・太白
【腎】復溜・経渠:湧泉・大敦
【脾】大都・少府・労宮:商丘・経渠
【心包】中衝・大敦:大陵・太白
【胆】侠渓・足通谷:陽輔・陽谷・支溝
【大腸】曲池・足三里:二間・足通谷
【小腸】後渓・足臨泣:小海・足三里
【膀胱】至陰・商陽:束骨・足臨泣
【胃】解渓・陽谷・支溝:厲兌・商陽
【三焦】中渚・足臨泣:天井・足三里
次の文で示す症例について、問題139、問題140の問いに答えよ。
「78歳の女性。主訴は疲労感。最近、疲れやすく、動くのが面倒になった。意欲が低下し、食欲も減退している。病院ではサルコペニアと言われた。」
問題139 本症例の診断に用いないのはどれか。
1.握力
2.歩行速度
3.骨格筋量
4.酸素飽和度
解答4
解説
【フレイルとは?】
フレイルとは、健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間の状態のことをいう。多くは、「健康状態」→「フレイル」→「要介護状態」と経過する。
定義:加齢とともに心身の活動(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態である。
診断基準に含まれるのは【①体重減少、②主観的疲労度、③日常生活活動量の低下、④歩行速度の低下、⑤握力の減弱】である。
【サルコペニアとは?】
サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量と骨格筋力の低下によって身体的な障害やQOLの低下を招いている状態のことをいう。サルコペニアの診断には、四肢骨格筋量の低下があることに加えて身体機能(歩行速度)の低下または、筋力(握力)の低下、下腿周径、5回椅子立ち上がりテストがある。
1.〇 握力/歩行速度/骨格筋量は、サルコペニアの診断に用いられる。
サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量と骨格筋力の低下によって身体的な障害やQOLの低下を招いている状態のことをいう。サルコペニアの診断には、四肢骨格筋量の低下があることに加えて身体機能(歩行速度)の低下または、筋力(握力)の低下、下腿周径、5回椅子立ち上がりテストがある。
4.× 酸素飽和度は、本症例の診断に用いない。
酸素飽和度とは、酸素はヘモグロビンと結合している比率のことで、正常ではヘモグロビンの約96~99%に酸素が結合している。
パルスオキシメーターとは、皮膚を通して動脈血酸素飽和度と脈拍数を測定するための装置である。赤い光の出る装置で指をはさむことで測定する。検知器を指先に装着し、非侵襲的な方法で、脈拍数と経皮的動脈血の酸素飽和度 をリアルタイムでモニターするための医療機器である。
次の文で示す症例について、問題139、問題140の問いに答えよ。
「78歳の女性。主訴は疲労感。最近、疲れやすく、動くのが面倒になった。意欲が低下し、食欲も減退している。病院ではサルコペニアと言われた。」
問題140 本症例の病証で最もみられる脈状はどれか。
1.滑脈
2.結脈
3.緩脈
4.弦脈
解答3
解説
・78歳の女性(主訴:疲労感)
・最近:疲れやすく、動くのが面倒。
・意欲が低下、食欲も減退。
・病院:サルコペニアと。
→本症例は、脾虚湿盛が疑われる。脾虚湿盛は、食欲不振、腹脹、大便溏薄、浮腫、口乾、舌苔厚膩、脈緩・脈滑などである。ちなみに、脾の主な症状として、食欲不振、腹臓、下痢、浮種、身体の重だるさ、やせ、腹鳴などがあげられる。
1.× 滑脈
滑脈は、痰湿や食滞で起こり、脈の流れが滑らかで、円滑に指に触れるものを指す。
2.× 結脈
結脈は、主に陰寒や積滞内阻で起こり、ゆるやかな脈で、時々止まるものを指す。
3.〇 正しい。緩脈は、最もみられる脈状である。
緩脈は、湿邪で起こり、一呼吸の脈拍が4ぐらいで、ゆったりと落ち着いていて、浮でも沈でもないものは無病の脈を指す。ちなみに、湿邪は、陰性の邪気で重濁性、粘滞性、下注性がある。脾を損傷しやすい。気機を滞らせやすい。
4.× 弦脈
弦脈は、肝胆病、痛証、痰飲で起こり、琴の弦に触れたような、長く真っすぐで緊張したものを指す。