第27回(H31年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前56~60】

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問題56 ラムゼイハント症候群の治療薬はどれか。

1.免疫抑制薬
2.抗菌薬
3.抗ウイルス薬
4.非ステロイド性抗炎症薬

解答

解説

ラムゼイハント症候群とは?

Ramsay Hunt症候群(ラムゼイ・ハント症候群:耳性帯状疱疹)は、水痘・帯状ヘルペスの顔面神経への感染が原因で発症する。主な症状として、末梢性顔面神経麻痺(障害側の眼輪筋と前頭筋の障害)、耳や口の中の水疱形成、耳鳴り、難聴、めまいなどを伴う。

1.× 免疫抑制薬
免疫抑制薬とは、体内で起こっている過剰な免疫反応や炎症反応を抑える薬である。

2.× 抗菌薬
抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。

3.〇 正しい。抗ウイルス薬は、ラムゼイハント症候群の治療薬である。
なぜなら、ラムゼイハント症候群は、水ぼうそうのウイルスが原因で起こるため。

4.× 非ステロイド性抗炎症薬
非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>は、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。したがって、非ステロイド性抗炎症薬が効果的であるのは、侵害受容性疼痛である。

帯状疱疹とは?

帯状疱疹とは、身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと、これに続いて赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状にあらわれる病気である。多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こる。

 

 

 

 

 

問題57 骨粗鬆症における骨折危険因子でないのはどれか。

1.運動
2.喫煙
3.糖尿病
4.副腎皮質ステロイド薬

解答

解説

骨粗鬆症について

①原発性骨粗鬆症とは、閉経後や高齢者にみられる骨粗鬆症のことである。

②続発性骨粗鬆症とは、結果として二次的な骨量喪失が起こる骨粗鬆症のことをいう。例えば、骨代謝に影響を及ぼすホルモンやサイトカイン異常、不動など骨への力学的負荷の減少、骨構成細胞や物質の異常、全身的および血管障害などの局所的栄養障害などによって起こる。これら骨粗鬆症は原疾患に基づいて発症する続発性骨粗鬆症であるため、原疾患の適切な治療により正常化することが期待しうるが、骨代謝の正常化を期待するには不十分であることが多く、また先天性異常では改善は望めず、多くの症例で骨量喪失に対する治療を要することが多い。

1.× 運動は、骨粗鬆症における骨折危険因子でない。
むしろ、骨密度の増加(骨折の予防)に寄与する。なぜなら、骨は力学的な荷重(運動)に応じて、骨吸収と骨形成を繰り返し、自らを再構築(リモデリング)するため。

2.〇 正しい。喫煙
喫煙は、骨粗鬆症(骨折)のリスクを高める。なぜなら、タバコに含まれるニコチンが骨への血液供給を減らし、骨を形成する細胞(骨芽細胞)が生産されにくくなるため。

3.〇 正しい。糖尿病
糖尿病は、骨粗鬆症(骨折)のリスクを高める。なぜなら、糖尿病では、インスリンがうまく働かないため。骨芽細胞が不足し、骨を作る働きが低下する。

4.〇 正しい。副腎皮質ステロイド薬
副腎皮質ステロイド薬の主な副作用として、①易感染性、②骨粗鬆症、③糖尿病、④消化性潰瘍、⑤血栓症、⑥精神症状(うつ病)、⑦満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満などである。

副腎皮質ステロイド薬とは?

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

 

 

 

 

問題58 脊髄損傷の機能障害評価法で正しいのはどれか。

1.ブルンストロームステージ
2.バーセルインデックス
3.フランケル分類
4.ハミルトン評価尺度

解答

解説
1.× ブルンストロームステージ(BRS:Brunnstrom Stage)
ブルンストロームステージとは、麻痺の程度を評価するためのスケールである。麻痺の回復過程をステージ化したもので、中枢神経麻痺に特有の運動パターンをテストする(※下図参照)

2.× バーセルインデックス
バーセル・インデックスの評価項目は、10項目(①食事、②椅子とベッド間の移乗、③整容、④トイレ動作、⑤入浴、⑥移動、⑦階段昇降、⑧更衣、⑨排便コントロール、⑩排尿コントロール)あり、100点満点で評価される。

3.〇 正しい。フランケル分類は、脊髄損傷の機能障害評価法である。
Frankel分類とは、脊髄損傷の評価尺度の1つである。運動と知覚機能の回復の程度をA~Eの5段階で評価するものである。Aが最も重症(損傷高位以下の完全運動・知覚麻痺)で、Eが正常(反射の異常はあってもよい)である。
A:運動・知覚喪失:損傷部以下の運動・知覚機能が失われているもの。
B:運動喪失・知覚残存:損傷部以下の運動機能は完全に失われているが、仙髄域などに知覚が残存するもの。
C:運動残存(非実用的):損傷部以下にわずかな随意運動機能が残存しているが、実用的運動は不能なもの。
D:運動残存(実用的):損傷部以下にかなりの随意運動機能が残されており、下肢を動かしたり、あるいは歩行などもできるもの
E:回復:神経学的症状、すなわち運動・知覚麻痺や膀胱・直腸障害を認めないもの。

4.× ハミルトン評価尺度
HRS-D(Hamilton rating scale for depression:ハミルトンうつ病評価尺度)は、うつ病にみられる17の項目についてその重症度を医療者が評価するものである。

 

 

 

 

 

問題59 脊椎疾患と所見の組合せで正しいのはどれか。

1.頸椎椎間板ヘルニア:間欠跛行
2.頸椎後縦靱帯骨化症:膝蓋腱反射の減弱
3.腰椎椎間板ヘルニア:アキレス腱反射の亢進
4.腰部脊柱管狭窄症:会陰部のしびれ

解答

解説

腰椎椎間板ヘルニアとは?

椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

1.× 間欠跛行は、「頸椎椎間板ヘルニア」ではなく脊柱管狭窄症である。
腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間歇性跛行が特徴である。間欠性跛行とは、歩行を続けると下肢の痛みと疲労感が強くなり、足を引きずるようになるが、休むと再び歩けるというものである。体幹前傾ではなく、休むと改善する。

2.× 膝蓋腱反射の減弱は、「頸椎後縦靱帯骨化症」ではなく腰椎椎間板ヘルニアである。
腰椎椎間板ヘルニアのL3‒L4間(支配神経根L4)の症状である。膝蓋腱反射低下のほかにも、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下を呈す。ちなみに、後縦靱帯骨化症とは、椎体骨の後縁を上下に連結し、背骨の中を縦に走る後縦靭帯が骨になった結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が押されて、感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす病気である。症状が進行すると、頚髄損傷のように、四肢の麻痺や、上下肢の腱反射異常、病的反射、膀胱直腸障害が出現するようになる。中年以降、特に50歳前後で発症することが多く、男女比では2:1とされている。

3.× 腰椎椎間板ヘルニアは、アキレス腱反射の「亢進」ではなく低下である。
腰椎椎間板ヘルニアのL5‒S1間(支配神経根S1)の症状である。アキレス腱反射低下のほかにも、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下を呈す。

4.〇 正しい。腰部脊柱管狭窄症:会陰部のしびれ
腰部脊柱管狭窄症の症状には、お尻や会陰部に起こる異常感覚(冷感、灼熱感、しびれ感、下半身の脱力感、倦怠感など)がある。

 

 

 

 

 

問題60 腎前性急性腎不全の病因はどれか。

1.広範囲熱傷
2.前立腺癌
3.急性糸球体腎炎
4.ミオグロビン尿症

解答

解説

腎前性腎障害とは?

腎前性急性腎不全の原因は心不全である。腎前性とは、尿が腎臓を出る前にある場合をいう。主な原因は、腎臓に流れる血液量が減少することである。したがって、心不全のほかにも、外傷による大量出血、消化管出血、脱水、頻発する嘔吐・下痢などによる体液量の減少などである。

1.〇 正しい。広範囲熱傷は、腎前性急性腎不全の病因である。
腎前性腎障害とは、尿が腎臓を出る前に障害がある場合をいう。主な原因は、腎臓に流れる血液量が減少することである。したがって、心不全のほかにも、外傷による大量出血、消化管出血、脱水、頻発する嘔吐・下痢などによる体液量の減少などである。

2.× 前立腺癌は、腎後性である。
腎後性腎不全とは、尿の排出経路が閉塞することで発症するものをいう。例えば、著しい前立腺肥大、前立腺がん、左右両側の尿路結石、子宮頸がんなどによる尿管の圧迫などが原因としてあげられる。

3.× 急性糸球体腎炎は、腎性腎障害に分類される。
急速進行性糸球体腎炎とは、糸球体腎炎のうちで数週から数カ月の短い期間に急速に腎機能が低下する病気である。腎生検の所見は、多くの糸球体に半月体という細胞の増殖する構造物が観察される。

4.× ミオグロビン尿症は、腎性腎障害に分類される。
ミオグロビン尿とは、何らかの原因で、筋組織にあるミオグロビンが血中に大量流出し、腎臓で処理しきれなかったミオグロビンが尿とともに排出され、尿が赤褐色を呈し、血尿のような色になる。この特徴的な症状を「ミオグロビン尿症」と呼ぶ。 多くは原因疾患の筋症状であるが、進行し腎不全になると、浮腫や尿量が減るなどの症状が現れ、さらに進むとめまいや吐き気、かゆみなどの症状が起こる。

 

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