第29回(R3年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前81~85】

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問題81 関節リウマチに特徴的なのはどれか。

1.環軸関節亜脱臼
2.下垂手
3.反張膝
4.内反尖足

解答

解説

関節リウマチの関節破壊と変形

①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形(PIPやMP関節)、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などがある。

1.〇 正しい。環軸関節亜脱臼は、関節リウマチの特徴である。
関節リウマチの死因としても知られ、頚椎可動域運動を行わないほうが良い。特に、頸部の屈曲は禁忌である。

2.× 手関節は、「下垂手」ではなく尺側偏位が起こる。
尺側偏位は、手関節が尺骨側(手の小指側)に偏位する変形をいう。ちなみに、下垂手は橈骨神経麻痺で生じる。

3.× 膝は、「反張膝」ではなく屈曲拘縮が起こる。
他にも、膝関節において内・外反変形が起こりやすい。ちなみに、反張膝は、大腿四頭筋の筋力低下・片麻痺などで起こる。

4.× 足部は、「内反足」ではなく外反扁平足が起こる。
なぜなら、足趾関節炎が長期にわたると、外反母趾や内反小趾や鷲爪変形や足趾の重なるため。それに伴って胼胝・鶏眼形成が生じ、痛みや感染の原因になる。ちなみに、内反足は、脳血管障害による痙性で生じる。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題82 パーキンソン病患者の理学療法でメトロノームを用いて改善が期待されるのはどれか。

1.小刻み歩行
2.構音障害
3.書字障害
4.振戦 

解答

解説

パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

1.〇 正しい。小刻み歩行は、パーキンソン病患者の理学療法でメトロノームを用いて改善が期待される。
矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。階段昇降は、歩行の改善、下肢筋力強化の効果も期待される。

2.× 構音障害
構音障害は、反回神経麻痺やブローカ失語にて生じる。構音障害とは、発語・発声に関与する神経・筋系の障害であり、言語の理解は正常であるが正しく発語できない状態である。主に、筆談を提案する。

3.× 書字障害
書字障害は、特定の活動(この場合は書くこと)に対する能力の低下を示している。学習障害の一種である。

4.× 振戦 
パーキンソン病では、安静時振戦がみられる。これは、主に服薬で対応することが多い。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題83、問題84の問いに答えよ。
 「70歳の男性。約20年前に2型糖尿病と診断され薬物治療を受けている。最近急に複視が出現した。正中視で右眼は外転位をとっている。対光反射は異常なく眼瞼下垂もない。」

問題83 障害されている脳神経はどれか。

1.視神経
2.動眼神経
3.滑車神経
4.外転神経

解答

解説

本症例のポイント

・70歳の男性。
・約20年前:2型糖尿病(薬物治療)
・最近:急に複視が出現。
・正中視で右眼:外転位
・対光反射:異常なく、眼瞼下垂:ない。
→本症例の右眼が外転位であることから、「内側直筋」の障害が疑われる。内側直筋の支配神経は動眼神経である。

1.× 視神経
視神経とは、視覚を司る感覚神経である。ちなみに、視覚伝導路は、「視神経―視交叉―視索―外側膝状体―視放線―視覚野」である。

2.〇 正しい。動眼神経は、この症例の障害されている脳神経である。
本症例の右眼が外転位であることから、「内側直筋」の障害が疑われる。内側直筋の支配神経は動眼神経である。動眼神経とは、外側直筋と上斜筋以外の眼筋を支配する運動神経と、眼球内の瞳孔括約筋や毛様体筋を支配する副交感神経を含んでいる。つまり、内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋を支配する。

3.× 滑車神経
滑車神経とは、上斜筋を支配する神経である。上斜筋は、内側直筋と協調して眼球を内下方へと動かす。

4.× 外転神経
外転神経とは、外側直筋を支配する神経である。外転神経は、眼球を外方へと動かす。

眼球運動の筋と支配神経

【眼球運動:筋】
外側:外直筋
内側:内直筋
外上方:外直筋+上直筋
内上方:内直筋+下斜筋
外下方:外直筋+下直筋
内下方:内直筋+上斜筋

【支配神経】
①動眼神経:内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋
②滑車神経:上斜筋
③外転神経:外側直筋

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題83、問題84の問いに答えよ。
 「70歳の男性。約20年前に2型糖尿病と診断され薬物治療を受けている。最近急に複視が出現した。正中視で右眼は外転位をとっている。対光反射は異常なく眼瞼下垂もない。」

問題84 神経症状発現の病態生理として正しいのはどれか。

1.浮腫
2.虚血
3.炎症
4.圧迫

解答

解説

MEMO

糖尿病の合併症(糖尿病性末梢神経障害)は、いわゆる手袋靴下型の感覚障害を引き起こす。左右対称に手袋・靴下型に異常感覚をきたしやすく、糖尿病足病変にも注意が必要である。振動覚の低下やアキレス腱反射の消失も糖尿病性末梢神経障害の特徴である。

1.× 浮腫
浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起こることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。

2.〇 正しい。虚血は、神経症状発現の病態生理である。
糖尿病は、血液の中に、たくさんのブドウ糖が存在していて、血糖値が高い状態 (高血糖)になっている。したがって、血管の中は、血液がドロドロ、 ネバネバし、血管内で血液が流れにくくなり最終的に血管内で詰まる。

3.× 炎症
炎症とは、壊死や刺激・侵襲に対する生体反応のことである。
【炎症の4徴】①発熱(局所の熱感)、②発赤、③腫脹、④疼痛+⑤機能障害を加えて、炎症の5徴と呼ぶ場合もある。

4.× 圧迫
圧迫は、骨折など機械的な刺激により軟部組織などが構造的に圧縮されている状態を指す。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題85、問題86の問いに答えよ。
 「75歳の男性。脚立から落下し、手足が動かなくなった。非骨傷性脊髄損傷と診断され入院した。肘関節の屈曲は可能、手関節の伸展と屈曲および肘関節の伸展は不能であった。」

問題85 本患者の脊髄節残存高位はどれか。

1.C5
2.C6
3.C7
4.C8

解答

解説

本症例のポイント

・75歳の男性(非骨傷性脊髄損傷
・脚立から落下し、手足が動かなくなった。
・肘関節の屈曲:可能
・手関節の伸展と屈曲および肘関節の伸展:不能
非骨傷性脊髄損傷とは、脱臼や骨折以外での脊髄の損傷を指す。症状には、頸部の圧迫感やしびれ、手足の麻痺、排尿や排便のしにくさなどである。

1.〇 正しい。C5は、本患者の脊髄節残存高位である。
第5頸髄節の運動機能は、肩関節:屈曲・伸展、外転、内外旋、肘関節:屈曲・回外が行える。そのため、ハンドリムに工夫を行うことによって平地自走は可能である。ただし、プッシュアップ動作はできないため、平地では車椅子や電動車椅子を使用する。

2.× C6
第6頸髄節(BⅢ)の運動機能は、円回内筋、橈側手根屈筋、上腕三頭筋と作用する。上腕三頭筋のプッシュアップ動作ができる。手関節背屈による把持作用をテノデーシスアクション(腱固定作用)が可能である。肩関節の動作は保たれ、肘関節は屈曲のみ可能で、上腕三頭筋による肘関節伸展動作はできない。トランスファーボードの利用などにより移乗ができ更衣・整容・食事も自助具を使用し自立可能である。

3.× C7
第7頸髄節の運動機能は、上腕三頭筋と橈側手根屈筋まで可能である。移動は車椅子駆動で、自動車の運転も可能となる。プッシュアップとベッドの側方移動が可能となり、車椅子にて日常生活のほとんどが自立まで至る。

4.× C8
第8頸髄節(A)の運動機能は、深指屈筋が作用する。

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

 

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