第29回(R3年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前86~90】

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次の文で示す症例について、問題85、問題86の問いに答えよ。
 「75歳の男性。脚立から落下し、手足が動かなくなった。非骨傷性脊髄損傷と診断され入院した。肘関節の屈曲は可能、手関節の伸展と屈曲および肘関節の伸展は不能であった。」

問題86 退院時には屋内歩行が可能となったが、箸がうまく使えなかった。退院の準備として正しいのはどれか。

1.長下肢装具の作製
2.意思伝達装置の導入
3.歩行ロボットの導入
4.食事に対する自助具の作製

解答

解説

本症例のポイント

・75歳の男性(非骨傷性脊髄損傷
・脚立から落下し、手足が動かなくなった。
・肘関節の屈曲:可能
・手関節の伸展と屈曲および肘関節の伸展:不能
非骨傷性脊髄損傷とは、脱臼や骨折以外での脊髄の損傷を指す。症状には、頸部の圧迫感やしびれ、手足の麻痺、排尿や排便のしにくさなどである。

1.× 長下肢装具の作製/歩行ロボットの導入の優先度は低い
なぜなら、本症例の設問に「退院時には屋内歩行が可能」と記載されているため。長下肢装具とは、立位訓練開始から装具をつけ、介助下での平行棒な歩行訓練が必要なレベルの重度の麻痺に適応となる。臨床では、重度弛緩性麻痺時には長下肢装具で立位練習を行い、股関節の収縮が得られてきた際に、短下肢装具へ移行しながら練習することが多い。

2.× 意思伝達装置の導入の優先度は低い
なぜなら、本患者の脊髄節残存高位はC5であるため。口腔の動きは制限されていない。意思伝達装置とは、指先や目のまばたき等でスイッチ操作し、文章を作成することのできるコミュニケーション手段である。

4.〇 正しい。食事に対する自助具の作製は、退院の準備である。
本患者の脊髄節残存高位はC5である。また、設問に「箸がうまく使えない」と記載されている。第5頸髄節の運動機能は、肩関節:屈曲・伸展、外転、内外旋、肘関節:屈曲・回外が行える。そのため、ハンドリムに工夫を行うことによって平地自走は可能である。ただし、プッシュアップ動作はできないため、平地では車椅子や電動車椅子を使用する。

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題87、問題88の問いに答えよ。
 「14歳の男子。サッカー部に入部してから3か月が経過した。最近腰部を反らすと腰に痛みが出るようになり来院した。」

問題87 予想される診察所見はどれか。

1.体前屈で腰痛が増強する。
2.体幹回旋で腰痛が増強する。
3.SLRテストは陽性となる。
4.FNSテストは陽性となる。

解答

解説

本症例のポイント

・14歳の男子。
・サッカー部に入部:3か月経過。
・最近腰部を反らすと腰に痛みが出る。
→本症例は、腰椎分離症が疑われる。腰椎分離症とは、腰部の繰り返しのスポーツ動作によるストレスで起こる関節突起間部の疲労骨折である。日本人男性の約8%にみられ、また成長期のスポーツ選手の腰痛の原因の30~40%を占める。L5に好発し、腰部から殿部の痛みと圧痛・叩打痛がみられる。椎弓と呼ばれる腰椎の後方部分が分離した状態のことを指す。歩行時に下肢痛やしびれなどの症状が出現する。また、Kemp徴候(他動的な後側屈による放散痛)がみられる。

1.× 体前屈で腰痛が増強するのは、「腰椎椎間板ヘルニア」である。
椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

2.〇 正しい。体幹回旋で腰痛が増強する
腰椎分離症とは、腰部の繰り返しのスポーツ動作によるストレスで起こる関節突起間部の疲労骨折である。日本人男性の約8%にみられ、また成長期のスポーツ選手の腰痛の原因の30~40%を占める。L5に好発し、腰部から殿部の痛みと圧痛・叩打痛がみられる。椎弓と呼ばれる腰椎の後方部分が分離した状態のことを指す。歩行時に下肢痛やしびれなどの症状が出現する。また、Kemp徴候(他動的な後側屈による放散痛)がみられる。

3.× SLRテストが陽性となるのは、「椎間板ヘルニア」である。
腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間歇性跛行が特徴である。SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)は、脊髄後根で圧迫を受ける疾患(坐骨神経痛、椎間板ヘルニアなど)の有無、ハムストリングス損傷や短縮をみる。背臥位で、下肢を挙上し痛みが生じたら陽性である。

4.× FNSテストが陽性となるのは、「腰椎椎間板ヘルニア」である。
FNSテスト(大腿神経伸展テスト:Femoral Nerve Stretching Test)は、L3・L4の神経根障害で陽性となる。腹臥位になってもらい、膝を曲げて太ももを背中側に挙げる。ふとももの前に痛みが誘発された場合、陽性となる。第2/3腰椎間、第3/4腰椎間の椎間板ヘルニアに特徴的な検査である。

腰椎椎間板ヘルニアとは?

椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題87、問題88の問いに答えよ。
 「14歳の男子。サッカー部に入部してから3か月が経過した。最近腰部を反らすと腰に痛みが出るようになり来院した。」

問題88 本症例に特徴的な単純エックス線所見はどれか。

1.椎間板腔の狭小化
2.腰椎前弯の消失
3.テリアの首輪
4.椎体の変形

解答

解説

本症例のポイント

・14歳の男子。
・サッカー部に入部:3か月経過。
・最近腰部を反らすと腰に痛みが出る。
→本症例は、腰椎分離症が疑われる。腰椎分離症とは、腰部の繰り返しのスポーツ動作によるストレスで起こる関節突起間部の疲労骨折である。日本人男性の約8%にみられ、また成長期のスポーツ選手の腰痛の原因の30~40%を占める。L5に好発し、腰部から殿部の痛みと圧痛・叩打痛がみられる。椎弓と呼ばれる腰椎の後方部分が分離した状態のことを指す。歩行時に下肢痛やしびれなどの症状が出現する。また、Kemp徴候(他動的な後側屈による放散痛)がみられる。

1.× 椎間板腔の狭小化は、「椎間孔狭窄症」でみられる。
椎間板腔の狭小化とは、椎間板が変性して骨同士の隙間が狭くなることである。椎間板腔の狭小化は、加齢によって生じる余分な骨(骨棘)や、椎間板の変性によって起こる。

2.× 腰椎前弯の消失は、「腰椎椎間板ヘルニア」でみられる。
腰椎前弯消失とは、腰の反りがなくなることである。ヘルニア以外にも、腰椎前弯消失の原因には、猫背や不良姿勢、デスクワーク、椅子に浅く腰掛けて座るなどがある。

3.〇 正しい。テリアの首輪は、本症例に特徴的な単純エックス線所見である。
テリアの首輪とは、関節突起間部と呼ばれる部分が折れている所見をいう。腰椎分離症でみられる所見である。

4.× 椎体の変形は、「圧迫骨折」でみられる。
骨粗鬆症による圧迫骨折をきたしやすい椎骨には、①椎体の楔状変形、②魚椎変形、③骨陰影の減少を認める。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題89、問題90の問いに答えよ。
 「45歳の女性。2か月前から易疲労感、動悸、息切れ、体重減少が出現した。血液検査では、血中ヘモグロビンと平均赤血球容積は低値であった。」

問題89 症状発現の基礎疾患となるのはどれか。

1.心臓弁膜症
2.子宮筋腫
3.甲状腺機能亢進症
4.気管支喘息

解答

解説

本症例のポイント

・45歳の女性。
・2か月前:易疲労感、動悸、息切れ、体重減少。
・血液検査:血中ヘモグロビン平均赤血球容積は低値。
→血中ヘモグロビンとは、血液中に含まれるヘモグロビンの量のことで、血色素量とも呼ばれる。
→平均赤血球容積とは、赤血球1個あたりの平均容積(大きさ)を指す。貧血の種類を判別するために、血液検査で調べた赤血球数、ヘマトクリットから算出される。

本症例は、貧血症状が出ており、血液検査より貧血であることが考えられる。甲状腺機能亢進症は、症状だけ見た場合は否定できないが、血液検査から否定できる。

1.× 心臓弁膜症
心臓弁膜症とは、弁が加齢・感染症・外傷・先天的(生まれつき)などの問題によって正常に機能しなくなることで、心臓のポンプ機能に様々な支障をきたした状態をいう。特徴的な症状は、胸痛、失神、呼吸困難である。

2.〇 正しい。子宮筋腫は、症状発現の基礎疾患となる。
子宮筋腫とは、子宮を構成している平滑筋という筋肉組織由来の良性腫瘍で、比較的若い方から閉経後の方まで高頻度に見られる疾患である。子宮筋腫は切迫流産・早産、前期破水、胎盤の位置異常、妊娠高血圧症候群などのリスクとなる。分娩時または産後に、次回の妊娠を希望する場合や妊娠中の合併症を増加させないために、子宮筋腫核出術を行う場合もある。

3.× 甲状腺機能亢進症は優先度が低い
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。

4.× 気管支喘息
気管支喘息とは、主に気管支に炎症が起きている状態である。炎症により気管支が狭くなったり(狭窄)、刺激に対して過敏な反応を示したりする。喘息は乳幼児期に発症することが多く、全体の60~70%が2~3歳までに発症する。子どもの喘息の多くは思春期の頃には症状がよくなるが、そのうちの約30%は大人になっても続くといわれている。

 

 

 

 

 

「45歳の女性。2か月前から易疲労感、動悸、息切れ、体重減少が出現した。血液検査では、血中ヘモグロビンと平均赤血球容積は低値であった。」

問題90 薬物治療にて症状は改善した。今後食事で特に摂取すべきものはどれか。

1.赤身の肉類
2.豆腐
3.緑黄色野菜
4.海藻

解答

解説

本症例のポイント

・45歳の女性。
・2か月前:易疲労感、動悸、息切れ、体重減少。
・血液検査:血中ヘモグロビン平均赤血球容積は低値。
→血中ヘモグロビンとは、血液中に含まれるヘモグロビンの量のことで、血色素量とも呼ばれる。
→平均赤血球容積とは、赤血球1個あたりの平均容積(大きさ)を指す。貧血の種類を判別するために、血液検査で調べた赤血球数、ヘマトクリットから算出される。

本症例は、貧血症状が出ており、血液検査より貧血であることが考えられる。甲状腺機能亢進症は、症状だけ見た場合は否定できないが、血液検査から否定できる。

1.〇 正しい。赤身の肉類は、今後食事で特に摂取すべきである。
なぜなら、本症例は、鉄欠乏性貧血が考えられるため。鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。

2~4.× 豆腐/緑黄色野菜/海藻
これらの摂取も予防に関して重要であるが、優先度が高いものが他にある。鉄欠乏性貧血を予防するためには、毎日の食事から鉄分が不足しないよう十分に取ることが必要である。鉄はレバ-や赤身の肉類、あさり、かき、血合いの多い魚、大豆製品、緑黄色野菜、海藻などに多く含まれている。特に、ヘム鉄の多い肉類や魚類は有効である。

 

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