第29回(R3年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後106~110】

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問題106 腰殿部外側と大腿外側の脹痛に対して、侠渓を取穴した治療の法則はどれか。

1.局所取穴
2.循経取穴
3.分刺による取穴
4.難経六十九難の取穴

解答

解説

ポイント

腰殿部外側と大腿外側の脹痛
・侠渓を取穴した治療の法則
→侠渓(※読み:きょうけい)は、足の少陽胆経で、足背、第4~5指間、みずかきの近位、赤白肉際に位置する。足の少陽胆経は、口苦が起こり、大きなため息をつく、寝返りが打てない。顔に少し垢が付いたように黒くなる。体の艶が無くなる。足外反しほてる。頭やエラの所が痛む。まなじりが痛む。首に結核性のリンパ節炎ができる。往来寒熱の状態になり、あらゆる関節が痛む。

1.× 局所取穴
局所取穴とは、局所の改善を目的に用いられる。主に主訴とその周囲の改善を図る。本症例の主訴は、「腰殿部外側と大腿外側の脹痛」で、侠渓(第4~5指間)を対象としている。

2.〇 正しい。循経取穴は、侠渓を取穴した治療の法則である。
循経取穴とは、経絡・経筋病証に対して用いられる。本症例は、侠渓に対し、足の少陽胆経を用い治療している。

3.× 分刺による取穴
分刺とは、分肉の間を刺す治療法で、毫鍼、員鍼で行う。

4.× 難経六十九難の取穴
難経六十九難の治療原則は「虚すれば其の母を補い、実すれば其の子を瀉す」という考え方である。

 

 

 

 

 

問題107 外眼角で接続する経脈の井穴の組合せで正しいのはどれか。

1.少商:商陽
2.少沢:至陰
3.湧泉:中衝
4.関衝:足竅陰

解答

解説

経脈の流注と接続部

【中焦】①手の太陰肺経‐【手示指端】→②手の陽明大腸経‐【鼻翼外方】→③足の陽明胃経‐【足第1指内側端】→④足の太陰脾経‐【心中】→⑤手の少陰心経‐【手小指端】→⑥手の太陽小腸経‐【内眼角】→⑦足の太陽膀胱経‐【足第5指端】→⑧足の少陰腎経‐【胸中】→⑨手の厥陰心包経‐【手薬指端】→⑩手の少陽三焦経‐【外眼角】→⑪足の少陽胆経‐【足第1指外側端】→⑫足の厥陰肝経‐【中焦】→①手の太陰肺経

1.× 少商:商陽は、示指末端で接続する。
手の太陰肺経である少商(※読み:しょうしょう)は、母指、末節骨橈側、爪甲角の近位外方1分(指寸)、爪甲橈側縁の垂線と爪甲基底部の水平線の交点に位置する。
手の陽明大腸経である商陽(※読み:しょうよう)は、示指、末筋骨橈側、爪甲角の近位外方1分(指寸)、爪甲橈側縁の垂線と爪甲基底部の水平線の交点に位置する。

2.× 少沢:至陰は、内眼角で接続する。
手の太陽小腸経である少沢(※読み:しょうたく)は、小指、末節骨尺側、爪甲角の近位内方1分(指寸)、爪甲尺側縁の垂線と爪甲基底部の水平線の交点に位置する。
足の太陽膀胱経である至陰(※読み:しいん)は、足の第5指、末節骨外側、爪甲角の近位外方1分(指寸)、爪甲外の垂線と爪甲基底部の水平線の交点に位置する。ちなみに、経絡の流注で横隔膜を貫かないのは膀胱経のみである。

3.× 湧泉:中衝は、胸中で接続する。
足の少陰腎経である湧泉(※読み:ゆうせん)は、足底、足指屈曲時、足底の最陥凹部に位置する。
手の厥陰心包経である中衝(※読み:ちゅうしょう)は、中指、中指先端中央に位置する。別説:中指、末節骨橈側、爪甲角から近位外方1分(指寸)、爪甲橈側縁の垂線と爪甲基底部の水平線の交点に位置する。

4.〇 正しい。関衝:足竅陰は、外眼角で接続する。
手の少陽三焦経である関衝(※読み:かんしょう)は、薬指、末節骨尺側、爪甲尺側縁の垂直線と爪甲基底部の水平線との交点に位置する。
足の少陽胆経である足竅陰(※読み:あしきょういん):足の第4指、末節骨外側、爪甲角の近位外方1分(指付)、爪甲外側縁の垂線と爪甲基部の水平線の交点に位置する。

 

 

 

 

 

問題108 すべての陽経脈と連絡している奇経の郄穴はどれか。

1.跗陽
2.交信
3.陽交
4.築賓

解答

解説

陰・陽のつく奇経八脈の郄穴

陰維脈-築賓【腎】
陰蹻脈-交信【腎】
陽維脈-陽交【胆】
→陽維脈(すべての陽経脈と連絡している):金門
陽蹻脈-跗陽【膀】

1.× 跗陽(※読み:ふよう)
跗陽は、下腿後外側、腓骨とアキレス腱の間、崑崙の上方3寸に位置する。

2.× 交信(※読み:こうしん)
交信は、下腿内側、脛骨内縁の後方の陥凹部、内果尖の上方2寸に位置する。

3.〇 正しい。陽交(※読み:ようこう)は、すべての陽経脈と連絡している奇経の郄穴である。
陽交は、下腿外側、腓骨の後方、外果尖の上方7寸に位置する。外丘と飛揚(膀胱経)との間にあたる。

4.× 築賓(※読み:ちくひん)
築賓は、下腿後内側、ヒラメ筋とアキレス腱の間、内果尖の上方5寸に位置する。

奇経八脈の特徴

【奇経名(別名)】:起こる場所
①督脈(脳に入る、陽脈の海):胞中(小骨盤腔)
②任脈(陰脈の海):胞中(小骨盤腔)
③衝脈(十二正経の海、経脈の海、血海):胞中(小骨盤腔)
④帯脈:腰腹部を一回り
⑤陽蹻脈(膀胱経の別脈):踵
⑥陰蹻脈(腎経の別脈):踵
⑦陽維脈(すべての陽経脈と連絡している):金門
⑧陰維脈(すべての陰経脈と連絡している):築賓

 

 

 

 

 

問題109 骨度で脛骨内側顆下縁から膝蓋骨尖までと同じなのはどれか。

1.臍中央から小腸の募穴
2.前正中線から肝の募穴
3.胸骨体下端から心の募穴
4.恥骨結合上縁から三焦の募穴

解答

解説

MEMO

脛骨内側顆下縁から膝蓋骨尖まで
2寸

1.× 臍中央から小腸の募穴は、3寸である。
小腸の募穴は、関元である。ちなみに、関元(※読み:かんげん)は、下腹部、前正中線上、臍中央の下方3寸に位置する。

2.× 前正中線から肝の募穴は、4寸である。
肝の募穴は、期門である。期門(※読み:きもん)は、前胸部、第6肋間、前正中線の外方4寸に位置する。

3.〇 正しい。胸骨体下端から心の募穴は、骨度で脛骨内側顆下縁から膝蓋骨尖までと同じ(2寸)である。心の募穴は、巨闕である。巨闕(※読み:こけつ)は、上腹部、前正中線上、臍中央の上方6寸に位置する。

4.× 恥骨結合上縁から三焦の募穴は、3寸である。
三焦の募穴は、石門である。石門(※読み:せきもん)は、下腹部、前正中線上、臍中央の下方2寸に位置する。

骨度法とは?

骨度法とは、骨を基準にして、身体各所の長さを尺寸によって定める方法である。

骨度法:1尺10寸、1寸10分
【頭顔面部】
前髪際中点~後髪際中点:1尺2寸
眉間~前髮際中点:3寸
両額角際間:9寸
両乳様突起間:9寸

【胸腹部】
頸切痕~胸骨体端:9寸
胸骨体下端~臍中央:8寸
臍中央~恥骨結合上縁:5寸
両乳頭間:8寸

【上肢】
左右の肩甲棘内端縁間:6寸
中指尖~手関節横紋:8寸5分
腋窩横紋前端または後端~肘窩:9寸
肘窩~手関節横紋:1尺2寸

【下肢】
恥骨結合上縁~膝蓋骨上縁:1尺8寸
膝蓋骨尖~内果尖:1尺5寸
脛骨内側顆下縁~内果尖:1尺3寸
脛骨内側顆下縁~膝蓋骨尖:2寸
大転子頂点~膝窩:1尺9寸
殿溝~膝窩:1尺4寸
膝窩~外果尖:1尺6寸
内果尖~足底:3寸
足指尖~踵(足底):1尺2寸

 

 

 

 

 

問題110 八脈交会穴が関係する奇経の組合せで正しいのはどれか。

1.陰維脈:帯脈
2.陽維脈:督脈
3.陽蹻脈:衝脈
4.陰蹻脈:任脈

解答

解説

八脈交会穴(八総穴)

【衝脈】公孫:内関【陰維脈】
【帯脈】足臨泣:外関【陽維脈】
【督脈】後渓:申脈【陽蹻脈】
【任脈】列欠:照海【陰蹻脈】

1.× 陰維脈は、「帯脈」ではなく衝脈である。
【衝脈】公孫:内関【陰維脈】

2.× 陽維脈は、「督脈」ではなく帯脈である。
【帯脈】足臨泣:外関【陽維脈】

3.× 陽蹻脈は、「衝脈」ではなく督脈である。
【督脈】後渓:申脈【陽蹻脈】

4.〇 正しい。陰蹻脈:任脈
【任脈】列欠:照海【陰蹻脈】

 

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