第29回(R3年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後131~135】

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問題131 過活動膀胱の患者に対する治療で、仙髄排尿中枢を介した治療穴として最も適切なのはどれか。

1.水分
2.三焦兪
3.腎兪
4.中髎

解答

解説

仙髄排尿中枢の高さ

仙髄排尿中枢は、第2~3に位置する。

1.× 水分(※読み:すいぶん)
水分は、上腹部、前正中線上、臍中央の上方1寸に位置する。

2.× 三焦兪(※読み:さんしょうゆ)
三焦兪は、腰部、第1腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。

3.× 腎兪(※読み:じんゆ)
腎兪は、腰部、第2腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。

4.〇 正しい。中髎は、過活動膀胱の患者に対する治療で、仙髄排尿中枢を介した治療穴である。
中髎(※読み:ちゅうりょう):仙骨部、第3後仙骨孔に位置する。

過活動膀胱とは?

過活動膀胱とは、膀胱の蓄尿期において尿意切迫感があり、頻尿や尿失禁をきたす疾患である(切迫性尿失禁)。明らかな神経学的異常に起因する神経因性過活動膀胱と、原因を特定できない非神経因性過活動膀胱に分けられる。原因として、①加齢、②骨盤底筋の低下、③生活習慣病、④肥満などと関連するといわれている。有病率は高齢になるほど高くなる。過活動膀胱では、膀胱訓練や骨盤底筋訓練など機能訓練を行い、薬物療法で治療を行う。

 

 

 

 

 

問題132 次の文で示す症例で罹患神経の絞扼部位に対する刺鍼部位として最も適切なのはどれか。
 「33歳の女性。主訴は右手掌の母指から環指橈側にかけての痛みとしびれ。妊娠中に発症し、出産後、家事と育児で症状が増悪し、物がつまみにくくなった。」

1.肘頭と上腕骨外側上顆の間
2.肘頭と上腕骨内側上顆の間
3.橈側手根隆起と尺側手根隆起の間
4.豆状骨と有鈎骨鈎の間

解答

解説

本症例のポイント

・33歳の女性。
・主訴:右手掌の母指から環指橈側にかけての痛みとしびれ。
・妊娠中に発症し、出産後、家事と育児で症状が増悪し、物がつまみにくくなった。
→本症例は、正中神経麻痺(手根管症候群)が疑われる。手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。

1.× 肘頭と上腕骨外側上顆の間
上腕骨外側上顆には、主に橈骨神経支配の回外筋、長・短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、総指伸筋、小指伸筋など付着する。

2.× 肘頭と上腕骨内側上顆の間には、尺骨神経が走行する。
尺骨神経麻痺とは、尺骨神経損傷により手掌・背の尺側に感覚障害やFroment徴候陽性、鷲手がみられる麻痺である。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

3.〇 正しい。橈側手根隆起と尺側手根隆起の間は、この症例で罹患神経の絞扼部位に対する刺鍼部位である。
本症例は、正中神経麻痺(手根管症候群)が疑われる。手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。

4.× 豆状骨と有鈎骨鈎の間は、ギヨン管である。
ギヨン管:Guyon管は、尺骨神経管ともいい、豆状骨と有鈎骨、そして豆鈎靱帯によって形成されたトンネル(管)のことである。通るものとして、①尺骨神経、②尺骨動脈である。Guyon管症候群は、尺骨神経麻痺が起こる。尺骨神経麻痺の症状として、Froment徴候陽性や鷲手がみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

 

 

 

 

 

問題133 L4‒L5間の後外側への椎間板ヘルニアによる下肢の痛みに対する局所治療穴として最も適切なのはどれか。

1.承筋
2.陰谷
3.地機
4.足三里

解答

解説

腰椎椎間板ヘルニアとは?

椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

1.× 承筋(※読み:しょうきん)
承筋は、下腿後面、腓腹筋の両筋腹の間、膝窩横紋の下方5寸に位置する。腓腹筋の治療穴である。

2.× 陰谷(※読み:いんこく)
陰谷は、膝後内側、半腱様筋腱の外縁、膝窩横紋上に位置する。腓腹筋の治療穴である。

3.× 地機(※読み:ちき)
地機は、下腿内側(脛側)、脛骨内縁の後側、陰陵泉の下方3寸に位置する。

4.〇 正しい。足三(※読み:あしさんり)は、L4‒L5間の後外側への椎間板ヘルニアによる下肢の痛みに対する局所治療穴である。
足三里は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸に位置する。前脛骨筋の治療穴である。

 

 

 

 

 

問題134 次の文で示す症例の拘縮がみられる筋に対する局所治療穴として最も適切なのはどれか。
 「73歳の女性。主訴は左股関節の痛み。3か月前から痛みがひどくなった。エックス線検査にて軟骨下骨の硬化、骨棘形成がみられた。トーマステストは陽性、トレンデレンブルグ徴候とエリーテストは陰性。」

1.居髎
2.衝門
3.秩辺
4.髀関

解答

解説

MEMO

・73歳の女性(主訴:左股関節の痛み)。
・3か月前から痛みがひどくなった。
・エックス線検査:軟骨下骨の硬化、骨棘形成。
トーマステスト:陽性
・トレンデレンブルグ徴候とエリーテスト:陰性。
→本症例は変形性股関節症が疑われる。骨棘とは、骨同士の摩擦や変形によって発生する骨のトゲのことである。変形性膝関節症や変形性股関節症などでよく見られる。レントゲンによって判断が可能で、変形性関節症の進行度合いの確認指標となる。二次性変形性股関節症とは、何らかの病気(ペルテス病や先天性股関節脱臼)やケガが原因でおこっている。日本では、この二次性が大半を占め、先天性股関節脱臼と臼蓋形成不全によるものが約90%、圧倒的に女性に多い。壊死部は修復過程を経て正常の骨組織に戻るが、形態異常を伴って修復完了した場合、将来的に変形性股関節症を生じる可能性がある。トーマステストは、股関節屈曲拘縮を診るテストである。背臥位で股関節・膝関節を屈曲する。反対側の膝が持ち上がると陽性である。トレンデレンブルグ徴候は、中殿筋機能が低下して起こる。患肢で片脚立ちをしたとき、健肢側の骨盤が下がる現象である。エリーテストは、大腿直筋の短縮のテストである。短縮していた場合、腹臥位で膝関節を最大屈曲した際に、股関節が屈曲し、殿部が持ち上がる(尻上がり現象)。

1.× 居髎(※読み:きょりょう)
居髎は、殿部、上前腸骨棘と大転子頂点の中点に位置する。大腿筋膜張筋、中殿筋の治療穴である。

2.〇 正しい。衝門(※読み:しょうもん)は、この症例の拘縮がみられる筋に対する局所治療穴である。
なぜなら、本症例は、トーマステスト陽性であるため。トーマステストは、股関節屈曲拘縮(腸腰筋拘縮)を診るテストである。背臥位で股関節・膝関節を屈曲する。反対側の膝が持ち上がると陽性である。衝門は、鼠径部、鼠経溝、大腿動脈拍動部の外方に位置する。腸腰筋の治療穴である。

3.× 秩辺(※読み:ちっぺん)
秩辺は、殿部、第4後仙骨孔と同じ高さ、正中仙骨稜の外方3寸※下髎と同じ高さにあたる。大殿筋、中殿筋の治療穴である。

4.× 髀関(※読み:ひかん)
髀関は、大腿前面、3筋(大腿直筋と縫工筋と大腿筋膜張筋)の近位部の間の陥凹部に位置する。大腿筋膜張筋、大腿直筋、縫工筋の治療穴である。

 

 

 

 

 

問題135 次の文で示す症例の神経絞扼部に対する刺鍼部位として最も適切なのはどれか。
 「28歳の女性。職業は鍼灸師。回外位で左前腕にカバンを引っかけて持つことが多く、内側上顆から肘窩内側縁に沿った張り感とともに左手掌橈側にしびれを自覚する。最近、左手で艾を捻ることが困難である。」

1.孔最と少海の間
2.曲池と曲沢の間
3.間使と大陵の間
4.手三里と支正の間

解答

解説

本症例のポイント

・28歳の女性(職業:鍼灸師)。
・回外位で左前腕にカバンを引っかけて持つことが多い。
内側上顆から肘窩内側縁に沿った張り感。
左手掌橈側にしびれ。
・最近:左手で艾を捻ることが困難。
→本症例は 正中神経麻痺(特に円回内筋症候群)が疑われる。円回内筋症候群とは、円回内筋の支配神経で上肢腹側の真ん中を通っている正中神経が、肘関節周辺で圧迫されて痛みや痺れ、筋肉の衰えなどの症状を起こす疾患である。ちなみに、正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

1.〇 正しい。孔最と少海の間は、この症例の神経絞扼部に対する刺鍼部位である。
孔最(※読み:こうさい)は、前腕前外側、尺沢と太淵を結ぶ線上、手関節掌側横紋の上方7寸に位置する。円回内筋と腕橈骨筋の治療穴である。
少海(※読み:しょうかい)は、肘前内側、上腕骨内側上顆の前縁、肘窩横紋と同じ高さに位置する。円回内筋と尺側手根屈筋、長掌筋、橈側手根屈筋の治療穴である。

2.× 曲池と曲沢の間
曲池(※読み:きょくち)は、肘外側、尺沢と上腕骨外側上顆を結ぶ線上の中点に位置する。長・短橈側手根伸筋の治療穴である。
曲沢(※読み:きょくたく)は、肘前面、肘窩横紋上、上腕二頭筋腱内方の陥凹部に位置する。上腕二頭筋の治療穴である。

3.× 間使と大陵の間
間使(※読み:かんし)は、前腕前面、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋の上方3寸に位置する。浅指屈筋と長掌筋、橈側手根屈筋の治療穴である。
大陵(※読み:だいりょう)は、手関節前面、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋上に位置する。浅指屈筋と長掌筋、橈側手根屈筋の治療穴である。

4.× 手三里と支正の間
手三里(※読み:てさんり)は、前腕後外側、陽渓と曲池を結ぶ線上、肘窓横紋の下方2寸に位置する。長・短橈側手根伸筋の治療穴である。
支正(※読み:しせい)は、前腕後内側、尺骨内縁と尺側手根屈筋の間、手関節背側横紋の上方5寸に位置する。尺側手根屈筋の治療穴である。

 

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