第29回(R3年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後166~170】

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問題166 鍼通電装置と近接使用してはならないのはどれか。

1.超音波
2.紫外線
3.マイクロ波
4.赤外線

解答

解説

鍼通電装置とは?

特殊鍼法である鍼通電は、鍼に低周波通電する方法で、鍼麻酔が代表的である。鍼の腐食を考慮し、3~5番鍼(20~24号銅)以上の鍼を用いる。通電(電気療法)は妊婦、ペースメーカー、知覚脱失、循環障害、重篤な動脈疾患、原因不明の発熱、強い皮膚病変などの患者には禁忌とされる。また、通電装置の出力に影響を及ぼすため、通電装置と超短波治療器あるいはマイクロ波治療器を近接して使用すべきではない。20号鍼(3番鍼)以上の太さが推奨される。病的共同運動には高Hz(100HZ)で行うとよい。

1~2/4.〇 超音波/紫外線/赤外線
これらは、出力に影響を及ぼさない。

3.× マイクロ波は、鍼通電装置と近接使用してはならない。
なぜなら、通電装置の出力に影響を及ぼすため。通電装置と超短波治療器あるいはマイクロ波治療器を近接して使用すべきではない。

(※図引用:「X線とは(基礎知識)」松定プレシジョン様HPより)

 

 

 

 

 

問題167 衛生的な鍼施術を行う場合、感染症対策として最も適切なのはどれか。

1.逆性石けんを用いた手指洗浄
2.エアータオルによる乾燥
3.クリーン・ニードル・テクニック
4.抜鍼後消毒綿花の一般廃棄物処理

解答

解説
1.× 「逆性石けん」ではなくアルコールを用いた手指洗浄を行う。
逆性石鹸とは、手指、粘膜、機器の消毒に使用され、細菌には有効であるが、ウイルスには無効である。

2.× 「エアータオル」ではなくペーパータオルによる乾燥を行う。
エアータオルとは、ハンドドライヤーともいい、手を風で乾かすための乾燥機である。空気中に菌を飛散させる恐れもある。

3.〇 正しい。クリーン・ニードル・テクニックは、衛生的な鍼施術を行う場合の感染症対策である。
米国カリフォルニア州の鍼師試験で採用されているクリーンニードルテクニックとは、滅菌した鍼をできるだけ清潔な状態で刺入することを指す。

4.× 抜鍼後消毒綿花の一般廃棄物処理を行う。
これは、処理方法として正しいが、感染症対策というより廃棄物処理法に定められている。

(※図引用:「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」環境省HPより)

 

 

 

 

 

問題168 痛覚の一次性ニューロンが二次性ニューロンに交代する部位はどれか。

1.脊髄前角
2.脊髄後角
3.薄束核
4.楔状束核

解答

解説
1.× 脊髄前角
随意運動の伝導路(錐体路)に関与する。錐体路は、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。

2.〇 正しい。脊髄後角は、痛覚の一次性ニューロンが二次性ニューロンに交代する部位である。
外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野の経路をたどる。

3~4.× 薄束核/楔状束核は、深部感覚の一次ニューロンである。
深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路である。後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野をたどる。

MEMO

 体性感覚性神経系には、触覚・固有覚(位置覚と振動覚)を伝える後索・内側毛帯路と、温痛覚(温度覚と痛覚)を伝える脊髄視床路の二つの伝導路がある。どちらの伝導路も、感覚受容器から大脳皮質に情報が伝わるまでに3種類のニューロンがかかわっている。このニューロンを末梢から順に一次・二次・三次ニューロンという。

①一次ニューロンは、侵害受容器から、細胞体がある脊髄後根神経節を経由し、二次ニューロンとシナプスする後角の手前までのことをいう。

②二次ニューロンは、二次ニューロンの細胞体が主に存在する後角から脊髄を経由し、三次ニューロンとシナプスする視床の手前までのことをいう。

③三次ニューロンは、視床から頭頂葉の中心後回(ブロードマンの脳地図の3,1,2野)にある感覚野までをいう。(参考:Wikiより)。

 

 

 

 

 

問題169 ポリモーダル受容器の興奮で生じる軸索反射により、受容器末端から放出されるのはどれか。

1.サブスタンスP
2.ヒスタミン
3.ブラジキニン
4.プロスタグランジン

解答

解説

MEMO

ポリモーダル受容器は、侵害受容器のひとつである。特徴として、①皮膚のみならず骨格筋、関節、内臓諸器官と広く全身に分布している。②非侵害刺激から侵害刺激まで広い範囲で刺激強度に応じて反応する。③侵害刺激を繰り返し与えると反応性が増大し閾値の低下がみられる。

1.〇 正しい。サブスタンスPは、ポリモーダル受容器の興奮で生じる軸索反射により、受容器末端から放出される。
軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRPサブスタンスP)が考えられている。

2.× ヒスタミン
ヒスタミンとは、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

3.× ブラジキニン
ブラジキニン(生理活性ペプチド)は炎症やアレルギー反応に関与する。発痛作用、血管拡張(血圧降下作用)、血管透過性亢進といったさまざまな作用をもつ。ブラジキニンは、プロテアーゼの作用により血漿中のグロブリン前駆体から生成される物質である。

4.× プロスタグランジン
プロスタグランジンとは、子宮の内膜がはがれ落ちるときに増え、子宮を収縮させて、血液(経血)を押し出すはたらきがある。プロスタグランジンが過剰につくられると、子宮が激しく収縮するので、月経痛がひどくなる。また、一般的に、プロスタグランジンとは、細菌感染による急性炎症反応で増加する。プロスタグランジンは、①血管拡張、②気管支平滑筋収縮、③急性炎症時の起炎物質で発痛作用がある。非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>は、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。したがって、非ステロイド性抗炎症薬が効果的であるのは、侵害受容性疼痛である。

 

 

 

 

 

問題170 血管内皮細胞で産生され、血管平滑筋を弛緩させる物質はどれか。

1.一酸化窒素(NO)
2.セロトニン
3.アセチルコリン
4.ノルアドレナリン 

解答

解説

MEMO

軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

1.〇 正しい。一酸化窒素(NO)は、血管内皮細胞で産生され、血管平滑筋を弛緩させる物質である。
一酸化窒素とは、窒素(N)と酸素(O)が結合した物質である。常温では無色・無臭の気体で、水に溶けにくく、空気よりやや重い。血管の内皮細胞から放出される物質で、血管を拡張してしなやかにして、血圧を安定させる働きを持つ。

2.× セロトニン
セロトニンとは、うつ病と関連が深い神経伝達物質である。脳内だけに分泌される神経伝達物質で、交感神経を刺激し、血圧を上昇させる作用がある。ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用のある伝達物質でもある。

3.× アセチルコリン
アセチルコリンとは、代表的な神経伝達物質であり、①運動神経の神経筋接合部、②交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出される。アセチルコリンは、中枢神経で働く場合と末梢神経で働く場合で作用が異なる。①運動神経の神経筋接合部では、筋収縮に作用する。

4.× ノルアドレナリン
ノルアドレナリンとは、激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出される物質である。ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態となる。

神経伝達物質

【アセチルコリン】
・交感神経の節前線維
・副交感神経の節前線維
・副交感神経の節後線維

【ノルアドレナリン】
・交感神経系の節後線維

 

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