第30回(R4年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後131~135】

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問題131 顎関節症患者に対して下顎骨の前方移動の作用がある筋を刺激する場合、最も適切なのはどれか。

1.下関
2.牽正
3.大迎
4.太陽

解答

解説

MEMO

・顎関節症
・下顎骨の前方移動の作用がある筋
→これは、外側翼突筋が該当する。外側翼突筋の【起始】上頭・蝶形骨(側頭下稜、蝶形骨大翼の側頭下面)。下頭・上顎骨(翼状突起外側板の外面)、上顎結節、【停止】下顎骨(関節突起)、顎関節の関節包、関節円板、【作用】下顎骨を前方に引く。両側が働けば下顎骨を前方に引き(開口)、片側が働けば、対側に動いてすりつぶし運動を行う、【神経】外側翼突筋神経(三叉神経第3枝、下顎神経)である。

咀嚼筋とは、下顎骨の運動(主に咀嚼運動)に関わる筋肉の総称である。咀嚼筋は一般的に、咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋の4種類が挙げられる。咀嚼筋は、主にⅤ:三叉神経支配である。
側頭筋の作用は、下顎を上げて、歯をかみ合させる(閉口)ほか、後部は下顎骨を後ろへ引く。
外側翼突筋の作用は、収縮すると関節包・関節円板に対して前内側方向の力が働く。
内側翼突筋の作用は、下顎骨を挙上し、口を閉じる運動の主要筋として働く。

1.〇 正しい。下関(※読み:げかん)に、顎関節症患者に対して下顎骨の前方移動の作用がある筋を刺激する。
下関は、咬筋外側翼突筋に対する局所治療穴である。ちなみに、下関は、顔面部、類骨弓の下縁中点と下顎切痕の間の陥凹部に位置する。

2.× 牽正(※読み:けいせい)
牽正は、顔面部、下関(胃)から下方に引いた垂線と、耳垂下縁を通る水平線との交点にとる。奇穴の【主治】顔面神経麻痺、耳下腺炎、口腔潰瘍である。

3.× 大迎(※読み:だいげい)
大迎は、顔面部、下顎角の前方、咬筋付着部の前方陥凹部、顔面動脈上に位置する。

4.× 太陽(※読み:たいよう)
太陽は、顔面部、眉毛の外端と外眼角との中央から後方1寸の陥凹部に取る。別名:当容(※読み:とうよう)ともいう。奇穴の【主治】片頭痛、眼疾患、歯痛、顔面神経麻痺である。

MEMO

側頭筋に対する局所治療穴は、角孫(三焦)、上関、頷厭、懸顱、懸釐、曲鬢、率谷、天衝、浮白(胆)である。

 

 

 

 

 

 

問題132 次の文で示す症例で罹患神経に対する治療穴として最も適切なのはどれか。
 「35歳の女性。妊娠に伴い母指から中指にかけてしびれが出現し、母指と示指で輪を作ろうとすると楕円型になる。」

1.小海
2.手五里
3.天井
4.内関

解答

解説

本症例のポイント

・35歳の女性。
・妊娠に伴い母指から中指にかけてしびれが出現。
母指と示指で輪を作ろうとすると楕円型になる
→本症例は、正中神経麻痺が疑われる。正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

1.× 小海(※読み:しょうかい)
小海は、肘後内側、肘頭と上腕骨内側上顆の間の陥凹部に位置する。

2.× 手五里(※読み:てごり)
手五里は、上腕外側、曲池と肩隅を結ぶ線上、肘窩横紋の上方3寸に位置する。深部に橈骨神経幹が通る。

3.× 天井(※読み:てんせい)
天井は、肘後面、肘頭の上方1寸、陥凹部に位置する。

4.〇 正しい。内関(※読み:ないかん)は、この症例で罹患神経に対する治療穴である。
内関は、前腕前面、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋の上方2寸に位置する。

手根管症候群とは?

手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。

手根管を通るもの:①浅指屈筋腱、②深指屈筋腱、③正中神経、④長母指屈筋腱、⑤橈側手根屈筋腱
ギヨンを通るもの:①尺骨動脈、②尺骨神経

 

 

 

 

 

問題133 末梢性顔面神経麻痺で過誤再生による後遺症はどれか。

1.兎眼
2.ワニの涙
3.味覚脱失
4.聴覚過敏

解答

解説
1.× 兎眼
目が閉じにくくなる(兎眼)は、脳腫瘍や脳血管障害によるベル麻痺、顔面神経の麻痺で起こる。その支配下にある眼輪筋が麻痺し、目を閉じることができなくなると、常に目を開いた状態になる。この状態を兎眼(とがん)という。

2.〇 正しい。ワニの涙は、末梢性顔面神経麻痺で過誤再生による後遺症である。
過誤再生(迷人再生)とは、走行の途中で障害を受けた神経線維が再生する際に、正しい神経支配と繋がらずに他の構造への神経線維に迷入してしまい、異常な連動運動などを生じることをいう。例「ワニの涙症候群」:顔面神経麻痺の後遺症で、唾液の分泌を支配する神経と涙の分泌を支配する神経が混同してしまうと、食事の時に涙が勝手に出てしまうこと。他にも、眼輪筋と口輪筋が正しく繋がらず、開眼すると口角が動くなどの病的共同運動を生じることがある。

3.× 味覚脱失
味覚脱失は、亜鉛不足や顔面神経や舌咽神経の障害などで生じる。心因性や薬剤性、口腔の病気などでも起こることがある。

4.× 聴覚過敏
聴覚過敏とは、周囲の音が激しい苦痛や不快感を伴って聞こえる状態を指す。原因は、てんかんや顔面神経麻痺などの病気や、不安や抑うつ、疲労などの心理的な要因などが挙げられる。

 

 

 

 

 

問題134 頭部の神経痛と局所治療穴の組合せで正しいのはどれか。

1.三叉神経痛(第1枝):太陽
2.大後頭神経痛:完骨
3.小後頭神経痛:天柱
4.大耳介神経痛:瘈脈

解答

解説

(※図引用:「illustAC様」)

1.× 太陽(※読み:たいよう)は、「三叉神経痛(第1枝)」ではなく三叉神経痛(第3枝)である。
太陽は、顔面部、眉毛の外端と外眼角との中央から後方1寸の陥凹部に取る。※別名:当容(※読み:とうよう)奇穴の【主治】片頭痛、眼疾患、歯痛、顔面神経麻痺である。

2.× 完骨(※読み:かんこつ)は、「大後頭神経痛」ではなく小後頭神経痛である。
完骨は、前頸部、乳様突起の後下方、陥凹部に位置する。ちなみに、大後頭神経は、後頭部の知覚を支配する。

3.× 天柱(※読み:てんちゅう)は、「小後頭神経痛」ではなく大後頭神経痛である。
天柱は、後頸部、第2頸椎棘突起上縁と同じ高さ、僧帽筋外縁の陥凹部に位置する。ちなみに、小後頭神経は、側頭部で耳の後ろを支配する。

4.〇 正しい。大耳介神経痛:瘈脈(※読み:けいみゃく)
瘈脈は、頭部、乳様突起の中央、翳風と角孫を結ぶ(耳の輪郭に沿った)曲線上、翳風から1/3に位置する。耳介を隔てて外耳孔と相対するところにあたる。ちなみに、大耳介神経は、頚神経叢の枝であり、耳介とその周辺の皮膚の感覚を司る神経である。大耳介神経の分布領域は広く、側頭部から耳介後部を経て後頭部、顔面の三叉神経第3枝領野と第2枝領野の一部、顎下部などに及んでいる。

 

 

 

 

 

問題135 サルコペニアの症状はどれか。

1.知人の名前が思い出せなくなってきた。
2.油っこいものを食べることが減ってきた。
3.歩くスピードが遅くなってきた。
4.夜間のトイレの回数が多くなってきた。

解答

解説

フレイルとサルコペニア

【フレイルとは?】

フレイルとは、健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間の状態のことをいう。多くは、「健康状態」→「フレイル」→「要介護状態」と経過する。
定義:加齢とともに心身の活動(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態である。
診断基準に含まれるのは【①体重減少、②主観的疲労度、③日常生活活動量の低下、④歩行速度の低下、⑤握力の減弱】である。

【サルコペニアとは?】
サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量と骨格筋力の低下によって身体的な障害やQOLの低下を招いている状態のことをいう。サルコペニアの診断には、四肢骨格筋量の低下があることに加えて身体機能(歩行速度)の低下または、筋力(握力)の低下、下腿周径、5回椅子立ち上がりテストがある。

1.× 知人の名前が思い出せなくなってきた。
これは、記憶力の低下(物忘れ)である。場合によって、軽度認知障害といわれることもある。

2.× 油っこいものを食べることが減ってきた。
食事とサルコペニアとの関係が薄い。

3.〇 正しい。歩くスピードが遅くなってきた
サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量と骨格筋力の低下によって身体的な障害やQOLの低下を招いている状態のことをいう。サルコペニアの診断には、四肢骨格筋量の低下があることに加えて身体機能(歩行速度)の低下または、筋力(握力)の低下、下腿周径、5回椅子立ち上がりテストがある。

4.× 夜間のトイレの回数が多くなってきた。
夜間頻尿とサルコペニアとの関係が薄い。

軽度認知障害〈MCI〉とは?

2012年の日本の65歳以上の高齢者における、認知症有病率推定値は15%で、認知症有病者数は約462万人と推計されている。軽度認知障害(MCI)の有病率は、13%と推定され、約400万人の軽度認知症の方がいると推計されている。ちなみに、軽度認知障害(MCI)とは、認知症と正常な状態の中間と定義され、時間経過とともにアルツハイマー型認知症を発症すると言われている。軽度認知障害(MCI)とアルツハイマー型認知症の違いは、日常生活を独立して行えるかどうかとされているが、その境界線は曖昧である。

【軽度認知障害〈MCI〉の診断基準】(Winblad B ら、2004)
1.認知症または正常のいずれでもないこと
2.客観的な認知障害があり、同時に客観的な認知機能の経時的低下、または、主観的な低下の自己報告あるいは情報提供者による報告があること
3.日常生活能力は維持されており、かつ、複雑な手段的機能は正常か、障害があっても最小であること

(※引用:「認知症と軽度認知機能障害と軽度認知機能障害について」厚生労働省様HPより)

 

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