第31回(R5年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後136~140】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題136 次の文で示す症例で最も適切な所見はどれか。
 「40歳の女性。半年前から回転性のめまい発作に苦しむ。耳鳴り、難聴、耳閉塞感が生じる。悪心・嘔吐を伴うこともある。カロリックテスト陰性。」

1.失調性歩行がみられる。
2.難聴は感音性である。
3.グリセロール検査は陰性である。
4.特定の頭位でめまい発作が生じる。

解答
対応:すべて正解として扱う。
理由:設問に不備があるため(※引用:「第31回はり師及びきゅう師国家試験における採点除外等の扱いをした問題について」厚生労働省様HPより)
※解説者の考え:おそらくメニエール病として解く問題であるが、メニエール病と断定できる材料や所見が少ないため。

本症例のポイント

・40歳の女性。
・半年前から回転性のめまい発作に苦しむ。耳
・耳鳴り、難聴、耳閉塞感、悪心・嘔吐を伴う。
・カロリックテスト陰性。
→カロリックテストとは、温度刺激検査ともいい、耳に刺激をあたえてめまいを起こし、どちら側の耳に異常があるかを調べる。耳の中に冷たい水またはお湯を注入すると、体温との温度差によって内耳が刺激され、耳の機能が正常な場合はめまいが誘発される。主に、前庭神経炎の診断に用いる。

Ménière病とは、膜迷路を満たしている内リンパ液の内圧が上昇し、内リンパ水腫が生じる内耳疾患である。4大症状として、①激しい回転性のめまい、②難聴(感音難聴)、③耳鳴り、④耳閉感を繰り返す内耳の疾患である。主な原因は「内リンパ水腫」で、 その根底にはストレス・睡眠不足・疲労・気圧の変化・几帳面な性格などがあると考えられている。耳発作時では安静を第一に考えた指導を行い、間欠期では発作が起こらないようにするための指導をする。

解説
1.〇 失調性歩行がみられる。
なぜなら、メニエール病は内耳(蝸牛、前庭、三半規管)の障害によって起こる疾患であるため。失調性歩行(酩酊歩行、よろめき歩行、ワイドベースとも)は、運動失調(小脳障害・前庭障害)で起こる歩行障害である。

2.〇 難聴は感音性である。
なぜなら、メニエール病は内耳(蝸牛、前庭、三半規管)の障害によって起こる疾患であるため。伝音性難聴とは、外耳や中耳などの「伝音器」と呼ばれる部分の障害によって起こる難聴である。一方、感音性難聴とは、内耳や聴神経など「感音器」と呼ばれる部分の障害によって起こる難聴である。

3.× グリセロール検査は、「陰性」ではなく陽性である。
グリセロール検査とは、メニエール病の主な病態である内リンパ水腫(内耳の膜迷路に過剰に内リンパ液が貯まって膨張している状態)を診断するための試験である。

4.× 特定の頭位でめまい発作が生じるのは、良性発作性頭位めまい症である。
メニエール病は、突然、激しいめまいが起こり、難聴や耳鳴り、吐き気などを伴う病気である。めまいの特徴として、数分~数時間続く回転性のめまい発作が不定期に繰り返し起こる。

良性発作性頭位めまい症とは?

良性発作性頭位眩暈症は、特定の頭位をとったときにごく短時間の激しい眩暈(めまい)が生じる疾患である。理学療法にて改善が見込める疾患である。具体的に、姿勢を変化させながら耳石を移動させる方法(エプリー法)や、眩暈を誘発させて眩暈に慣れさせることで症状を軽減することができる。

 

 

 

 

 

問題137 高齢者に対する評価法とその内容の組合せで最も適切なのはどれか。

1.タイムドアップアンドゴーテスト:主観的QOL
2.ファンクショナルリーチテスト:ADL
3.バーセル・インデックス:立位動的バランスの状態
4.ロコモ度テスト:年齢相応の移動能力

解答

解説
1.× タイムドアップアンドゴーテストは、「主観的QOL」ではなく運動器不安定症の指標である。
下肢の筋力、バランス、歩行能力、易転倒性といった日常生活機能との関連性が高いことが示唆されている。ちなみに、カットオフ値は14秒程度である。

2.× ファンクショナルリーチテストは、「ADL」ではなく立位動的バランスの状態である。
ファンクショナルリーチテストは、立位で、足が前に出たり浮いたりせず、水平方向に上肢をできるだけ伸ばす。平均25~30cmであり、30cm以上では転倒リスクは低い。一方、20cm未満だと非常にバランスを崩しやすく危険な状態、20〜25cmで転倒リスクありと判断できる。

3.× バーセル・インデックスは、「立位動的バランスの状態」ではなく日常生活活動(ADL)である。
バーセル・インデックスの評価項目は、10項目(①食事、②椅子とベッド間の移乗、③整容、④トイレ動作、⑤入浴、⑥移動、⑦階段昇降、⑧更衣、⑨排便コントロール、⑩排尿コントロール)あり、100点満点で評価される。

4.〇 正しい。ロコモ度テスト:年齢相応の移動能力
ロコモ度テストとは、①下肢筋力、②歩幅、③身体状態・生活状況を評価する 3 つのテストを行い、これらのテスト結果を年齢平均値と比較することによって、年齢相応の移動能力を維持しているかを判定するものである。もし年齢相応の移動能力に達していない場合、将来ロコモとなり得る危険度が高いと考えられる。

ロコモティブシンドロームとは?

ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害により移動能力が低下し、「要介護」のリスクが高い状態のことである。(提唱:日本整形外科学会)予防策として、片脚立位・スクワットからなる「ロコトレ」を行うよう推奨している。対象者がすでに運動器の障害や身体機能低下を有している場合も多いため、トレーニングの際には、疼痛や転倒などに十分配慮して行う必要がある。

 

 

 

 

 

問題138 次の文で示す症例で考えられる疾患はどれか。
 「65歳の女性。軽度の肥満。主訴は膝痛。膝の内側が動作開始時や疲労時に痛む。膝のロッキングはみられない。」

1.腸脛靱帯炎
2.内側滑膜ひだ障害(タナ障害)
3.変形性膝関節症
4.膝蓋靱帯炎

解答

解説

本症例のポイント

・65歳の女性(軽度肥満。主訴:膝痛)。
・膝の内側が動作開始時や疲労時に痛む。
・膝のロッキングはみられない。
→それぞれの疾患の特徴を押さえておこう。特に、膝内側の動作時痛は変形性膝関節症の特徴の一つである。

1.× 腸脛靱帯炎は、痛みの部位が膝外側となる。
腸脛靱帯炎とは、ランナー膝ともいい、膝の屈伸運動を繰り返すことによって腸脛靱帯が大腿骨外顆と接触して炎症(滑膜炎)を起こし、疼痛が発生している状態を指す。特にマラソンなどの長距離ランナーに好発し、ほかにバスケットボール、水泳、自転車、エアロビクス、バレエ等にも多い。ちなみに、Graspingテスト(グラスピングテスト)は、腸脛靭帯を圧迫してテンションをかけた状態で、膝の曲げ伸ばしで症状が再現されるかどうかで判断する。

2.× 内側滑膜ひだ障害(タナ障害)は、クリック音が認められる。
滑膜ヒダとは、膝関節の関節包内にあるひだ状の部分で、膝の屈伸時にクリック音を触知する特徴がある。ほかにも、運動時に疼痛や違和感を生じる。膝関節の膝蓋内側滑膜ヒダが屈伸運動時に膝蓋骨と大腿骨内側課との間に挟まり機能的刺激を受けて肥厚する。内側滑膜ヒダは関節鏡で見ると棚のようにみえることから、タナ障害とも呼びます。

3.〇 正しい。変形性膝関節症は、本症例で考えられる疾患である。
変形性膝関節症は、①疼痛、②可動域制限、③腫脹、④関節変形などがみられる。進行度にかかわらず、保存療法が第一選択となる。減量や膝に負荷のかかる動作を回避するような日常生活動作指導、筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法、装具や足底板などの装具療法、鎮痛薬や関節内注射などの薬物療法が行われる。

4.× 膝蓋靱帯炎は、痛みの部位が膝蓋靭帯となる。
大腿四頭筋腱炎とは、(ジャンパー膝:膝蓋靭帯炎)ともいい、反復したジャンプ動作によって起こる。バレーボール・バスケットボールの選手などに多く発症し、膝蓋骨遠位部に圧痛を認める。

 

 

 

 

 

問題139 次の文で示す症例で障害筋への局所治療穴として最も適切なのはどれか。
 「53歳の男性。最近、長時間歩くと、足がつる。今朝は、ウォーキング中に母指が屈曲する筋けいれんとともに下腿後面の深部に疼痛が生じたが、しばらく休むと軽快した。」

1.飛揚
2.膝関
3.合陽
4.外丘

解答

解説

本症例のポイント

・53歳の男性。
・最近:長時間歩くと、足がつる。
・今朝:ウォーキング中に母指が屈曲する筋(長母趾屈筋)けいれんとともに下腿後面の深部に疼痛が生じた。
・しばらく休むと軽快した。
→本症例は、脊柱管狭窄症の間欠性跛行が生じていると考えられる。腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間欠性破行が特徴である。

1.〇 正しい。飛揚は、本症例で障害筋への局所治療穴である。
飛揚(※読み:ひよう)は、下腿後外側、腓腹筋外側頭下縁とアキレス腱の間、崑崙の上方7寸にある。飛揚は、腓腹筋とヒラメ筋が障害筋の場合に用いる。母指が屈曲する筋として、長母趾屈筋があげられる。長母趾屈筋の【起始】腓骨体後面(内側稜と後縁との間)、後下腿筋間中隔の下半、【停止】母趾の末節骨底、【作用】足関節底屈、母趾屈曲、【支配神経】脛骨神経(L5~S2)である。

2.× 膝関は、薄筋半腱様筋が障害筋の場合に用いる。
膝関(※読み:しつかん)は、下腿脛骨面、脛骨内側顆の下方、陰陵泉の後方1寸にある。

3.× 合陽は、腓腹筋が障害筋の場合に用いる。
合陽より優先される選択肢が他にある。合陽(※読み:ごうよう)は、下腿後面、腓腹筋外側頭と内側頭の間、膝窩横紋の下方2寸にある。

4.× 外丘は、長腓骨筋が障害筋の場合に用いる。
外丘(※読み:がいきゅう)は、下腿外側、腓骨の前方、外果尖の上方7寸にある。

 

 

 

 

 

問題140 詐病が疑われる腰痛患者に対して、坐位で膝を他動的に伸展させるのはどれか。

1.ケンプ徴候
2.サギング徴候
3.フリップ徴候
4.ブラガードテスト

解答

解説

詐病とは?

詐病とは、経済的または社会的な利益の享受などを目的として病気であるかのように偽る詐偽行為である。

1.× ケンプ徴候
Kempテスト(ケンプテスト)の陽性は、脊椎管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアを疑う。検者は患者の両肩に手を置き、患者の体幹を回旋しながら左右の斜め後方に伸展させる。

2.× サギング徴候
後方落込徴候(サギング徴候)とは、後十字靭帯損傷の検査で、膝屈曲位での下腿の後方落ち込む現象のことを指す。後十字靭帯損傷の検査である。

3.〇 正しい。フリップ徴候は、詐病が疑われる腰痛患者に対して、坐位で膝を他動的に伸展させる。
フリップ徴候とは、患者は座位にて腰椎前弯を維持した状態で、検査者は患者の膝関節を伸展する。通常は、坐骨神経痛の増強がみられ、体幹が後方へのけぞる(疼痛回避姿勢)。そうならない場合は、詐病を疑う。

4.× ブラガードテスト
Bragardテスト(ブラガードテスト)は、椎間板ヘルニアの検査である。下肢伸展挙上テスト(SLR)で下肢痛を生じた位置より、角度を少し減じた位置で、足関節を背屈させ、同様の下肢痛を認めたときに陽性とする。

MEMO

Hoover徴候(フーバー徴候)は、解離性障害(ヒステリー性)の詐病を疑う患者にみられる。仰臥位にして、両踵の下に手を入れ、一側下肢の膝を伸展したまま挙上させ、他側の踵に加わる力を感じとる。反対圧がかからない場合には意識的に足の挙上を抑制しているため陽性となる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)