第31回(R5年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後131~135】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題131 上後腸骨棘と大転子近位端を結んだ線の中点から垂直下方に1~2横指下がったところを局所刺鍼点とすべき疾患で、陽性となる徒手検査法として最も適切なのはどれか。

1.エリーテスト
2.パトリックテスト
3.フライバーグテスト
4.ボンネットテスト

解答

解説

本症例のポイント

上後腸骨棘と大転子近位端を結んだ線の中点から垂直下方に1~2横指下がったところ
→梨状筋の【起始】仙骨の前面で第2~4前仙骨孔の両側、【停止】大転子の先端の後縁、【作用】股関節外旋、外転、【支配神経】仙骨神経叢の枝:L5~S2である。

1.× エリーテスト
Elyテスト(エリーテスト)は、大腿直筋の短縮のテストである。短縮していた場合、腹臥位で膝関節を最大屈曲した際に、股関節が屈曲し、殿部が持ち上がる(尻上がり現象)。

2.× パトリックテスト
Patrickテスト(パトリックテスト)は、股関節の炎症や痛みのテストである。背臥位で評価側の足背を反対側の膝蓋骨に載せ、評価側の膝を床へ押さえる。鼠径部に痛みが出れば陽性である。

3.〇 正しい。フライバーグテストが、陽性となる徒手検査である。
Freibergテスト(フライバーグテスト)は、梨状筋症候群の診断に使用される誘発テストである。背臥位で股関節を屈曲させて内旋させ、梨状筋を緊張させて痛みを増強させる。

4.× ボンネットテスト
Bonnetテスト(ボンネットテスト)は、根性坐骨神経痛の有無を調べるテストである。SLRの増強法の一つである。ちなみに、混合しやすいものにKボンネットテストがある。これが、梨状筋症候群の診断に使用される誘発テストである。

梨状筋症候群とは?

梨状筋症候群とは、坐骨神経が大坐骨切痕と梨状筋との間で圧迫を受ける絞扼性神経障害で、大腿後面のしびれを生じる。代表的な症状は坐骨神経痛、梨状筋部の痛みや圧痛、足首・足指が動きにくくなるなどである。

 

 

 

 

 

問題132 アレルギー性鼻炎について正しいのはどれか。

1.他のアレルギー疾患は随伴しない。
2.粘液性の鼻汁がみられる。
3.片側性鼻閉が主となる。
4.鼻腔内の痒みを認めることが多い。

解答

解説

アレルギー性鼻炎とは?

アレルギー性鼻炎とは、アレルゲンが鼻粘膜から侵入し免疫反応が起こることによって、鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状が引き起こされる病気である。通年性アレルギー性鼻炎(一年を通して症状が出るタイプ)と、季節性アレルギー性鼻炎(特定の季節に症状が出るタイプ、いわゆる花粉症)とがあり、両者を合併しているタイプもみられる。

1.× 他のアレルギー疾患は随伴する
アレルギー疾患とは、アレルゲンによる免疫反応によって引き起こされる、人体に有害な局所的または全身的反応に係る疾患のことである。アレルギー疾患には、主に6疾患(気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎)がある。

2.× 粘液性の鼻汁がみられるのは、「かぜなどの感染症」である。
一方、アレルギー性鼻炎の鼻汁は、無色で粘り気がなくサラサラしている。

3.× 「片側性」ではなく両側性鼻閉が主となる。
鼻閉は、鼻粘膜における血管の血流量の増加や透過性の亢進によって引き起こされる。

4.〇 正しい。鼻腔内の痒みを認めることが多い
アレルギー性鼻炎とは、アレルゲンが鼻粘膜から侵入し免疫反応が起こることによって、鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状が引き起こされる病気である。

 

 

 

 

 

問題133 末梢神経麻痺における罹患神経と麻痺筋の組合せで正しいのはどれか。

1.橈骨神経:円回内筋
2.正中神経:母指内転筋
3.尺骨神経:掌側骨間筋
4.肩甲上神経:僧帽筋

解答

解説
1.× 橈骨神経:円回内筋
橈骨神経麻痺では、下垂手がみられる。手関節・手指の伸筋群と、長母指外転筋・短母指伸筋の麻痺により、手関節背屈、示指から小指のMP関節伸展、母指伸展・外転が困難となる。円回内筋の【起始】上腕頭:上腕骨内側上顆と内側上腕筋間中隔、尺骨頭:尺骨鈎状突起内側、【停止】橈骨外側面の中央部、【作用】肘関節回内、屈曲、【支配神経】正中神経(C6,C7)である。

2.× 正中神経:母指内転筋
正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。母指内転筋の【起始】横頭:第3中手骨掌面の全長、斜頭:有頭骨を中心とした手根骨、第2~3中手骨底の掌側面、【停止】種子骨、母指基節骨底、一部は指背腱膜、【作用】母指内転、【支配神経】尺骨神経深枝:C8,(T1)である。

3.〇 正しい。尺骨神経:掌側骨間筋
尺骨神経麻痺とは、尺骨神経損傷により手掌・背の尺側に感覚障害やFroment徴候陽性、鷲手がみられる麻痺である。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。掌側骨間筋の【起始】4個ある。それぞれ2頭もつ。第1~5中手骨の相対する面、【停止】基節骨、指背腱膜、中節骨底、末節骨底、【作用】第2,4指の外転、第3指の橈・尺側外転。母指の内転。掌側骨間筋と共同しておのおのの基節骨の屈曲、中節・末節骨(DIP)の伸展、【神経】尺骨神経(C8,T1)である。

4.× 肩甲上神経:僧帽筋
肩甲上神経絞扼障害とは、バレーボールショルダーともいい、肩甲上神経が、肩甲骨の肩甲切痕または棘窩切痕という箇所を通過するところで絞扼されることで起こる障害である。肩の痛みや腕が挙がりにくくなるなどの症状が現れる。また、肩の後面から腕にかけて放散する痛みがある。肩甲上神経支配の筋肉は、棘上筋棘下筋の支配神経である。
棘上筋の【起始】肩甲骨の棘上窩、棘上筋膜の内側、【停止】上腕骨大結節の上部、【作用】肩関節外転、【神経】肩甲上神経である。
棘下筋の【起始】肩甲骨の棘下窩、棘下筋膜の内側、【停止】上腕骨大結節の中部、【作用】肩関節外旋、上部は外転、下部は内転、【神経】肩甲上神経である。

 

 

 

 

 

問題134 糖尿病性末梢神経障害に特徴的な所見はどれか。

1.両側内果の振動覚低下
2.宙吊り型の解離性感覚障害
3.下肢から上行性に広がる弛緩性麻痺
4.しびれより筋力低下が顕著な上肢の神経障害

解答

解説
1.〇 正しい。両側内果の振動覚低下は、糖尿病性末梢神経障害に特徴的な所見である。
糖尿病の合併症(糖尿病性末梢神経障害)は、いわゆる手袋靴下型の感覚障害を引き起こす。左右対称に手袋・靴下型に異常感覚をきたしやすく、糖尿病足病変にも注意が必要である。振動覚の低下やアキレス腱反射の消失も糖尿病性末梢神経障害の特徴である。

2.× 宙吊り型の解離性感覚障害は、ブラウンセカール症候群にみられる。
解離性感覚障害とは、温痛覚解離ともいい温痛覚のみが障害されることをいう。したがって、脊髄が部分的に損傷した場合に生じるブラウンセカール症候群(Brown–Séquard症候群)や前脊髄動脈症候などによって引き起こされる。

3.× 下肢から上行性に広がる弛緩性麻痺は、ギランバレー症候群にみられる。
ギラン・バレー症候群とは、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)。

4.× しびれより筋力低下が顕著な上肢の神経障害は、中心性頸髄損傷にみられる。
中心性頸髄損傷は、転倒などにより、脊髄全体に外力が加わり、中心に近い脊髄灰白質が障害されたものである。高齢者において、脊椎の変形あるいは後縦靭帯骨化症などを合併して脊柱管狭窄をきたしている場合に、中心性頸髄損傷が発生しやすい。交通事故などの頸髄損傷に比べ、機能予後はよいが、下肢より上肢の運動障害が顕著であり、上肢の障害は残存することが多い。なぜなら、下肢に比べて上肢の錐体路の方が脊髄中心近くを通るためである。

 

 

 

 

 

問題135 次の文で示す症例で将来起こりうる徴候はどれか。
 「生後6か月の乳児。仰臥位で寝かせたときに右の大腿皮膚溝が左と比べて数が多く、深く、長い。右股関節の開排制限もある。」

1.アリス徴候
2.ガワーズ徴候
3.レルミット徴候
4.ロンベルグ徴候

解答

解説

(図:アリス徴候陽性)

1.〇 正しい。アリス徴候が、将来起こりうる徴候である。
アリス徴候は、背臥位で両膝を屈曲しながら、股関節を屈曲して両下腿をそろえ、左右の膝の高さを比べる診察法である。膝の高さに差があるときに陽性と診断し、股関節脱臼を疑う。これは、股関節の脱臼が生じると大腿骨頭が寛骨臼の後方に位置するため、左右差が生じる。一方、両側脱臼例や下肢に骨性の短縮が存在する症例の場合、有効ではないため注意が必要である。

2.× ガワーズ徴候
Gowers徴候(ガワーズ徴候:登はん性起立)とは、立ち上がる際に手を膝でおさえつつ、体を起こしていく方法である。筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。

3.× レルミット徴候
Lhermitte徴候(レルミット徴候)は、頚部屈曲時に感電したような痛みや刺すような痛みが、背中から両脚、片方の腕、体の片側へ走ることをいう。多発性硬化症に特徴的な症状であるが、他にも頚髄症、椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍なども出現する。

4.× ロンベルグ徴候
Romberg試験(ロンベルグ徴候)は、脊髄性障害(深部感覚の検査)に対して行う。Romberg試験(ロンベルグ徴候)は、①はじめは開眼にて、患者に直立不動の姿勢をとらせ、安定した姿勢保持が可能であることを確かめる。②次に、閉眼させ、体幹の動揺が生じたり、動揺が明らかに増悪、あるいは転倒した場合を陽性とする。

筋強直性ジストロフィーとは?

筋強直性(筋緊張性)ジストロフィーとは、進行性筋ジストロフィー内の一種で、常染色体優性遺伝(男女比ほぼ1:1)で大人で最も頻度の高い筋ジストロフィーである。そもそも進行性筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性及び壊死を主病変とし、進行性の筋力低下や萎縮をきたす遺伝性疾患である。

【筋強直性ジストロフィーの特徴】
①中枢神経症状(認知症状、性格変化、傾眠)
②顔面筋の筋萎縮により西洋斧様顔貌(顔の幅が狭くなった顔貌)、嚥下障害、構音障害
③前頭部若禿(前頭部の脱毛)
④遠位優位の筋萎縮
⑤ミオトニア(舌の叩打・母指球・把握)
⑥心伝導障害(房室ブロックなど)
⑦軽症例:糖尿病(耐糖能異常)、白内障がみられる。

(参考:「筋疾患分野|筋強直性ジストロフィー」難病情報センター様HPより)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)