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問題56 COPDについて正しいのはどれか。
1.肺拡散能(DLCO)は正常である。
2.労作時の呼吸困難が特徴である。
3.発作時に気管支狭窄音を伴う。
4.肺機能検査では拘束性換気障害が特徴である。
解答2
解説
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%がCOPDを発症する。慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。
増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2
減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2
1.× 肺拡散能(DLCO)は、「正常」ではなく低下する。
肺拡散能とは、肺胞から肺胞上皮および毛細血管内皮を介して赤血球へガスを運搬する能力を測定するものである。
2.〇 正しい。労作時の呼吸困難が特徴である。
安静時でも、呼吸によって使われるエネルギー量が、普通の人よりも15~25%も高くなるため、体重低下や栄養不足になるリスクが高くなる。また、食事中に息切れしたり、疲れを感じたりすることで、食べる量が少なくなるケースもみられる。
3.× 発作時に気管支狭窄音を伴うのは、「気管支喘息」である。
気管支狭窄音とは、狭くなった気道を空気が通り抜ける時に生じる雑音である。ヒューヒュー、ゼーゼーという音が聞こえる。
4.× 肺機能検査では「拘束性換気障害」ではなく閉塞性換気障害が特徴である。
混合性換気障害:肺気腫など
拘束性換気障害:肺結核、肺線維症など
閉塞性換気障害:気管支喘息、気管支拡張症など
問題57 肺癌患者にみられる所見と浸潤部位の組合せで正しいのはどれか。
1.縮瞳:上大静脈
2.顔面浮腫:交感神経
3.嗄声:反回神経
4.腰痛:横隔神経
解答3
解説
1.× 上大静脈の浸潤は、「縮瞳」ではなく顔面浮腫などを起こす。
上大静脈への圧迫または浸潤を呈した場合、上大静脈症候群という。上大静脈症候群とは、上大静脈への圧迫または浸潤に起因し、頭痛または頭部充満感、顔面または上肢の腫脹、仰臥位での息切れ、頸、顔、および体幹上部の静脈怒張、ならびに顔面および体幹の紅潮(多血)を引き起こす。
2.× 交感神経の浸潤は、「顔面浮腫」ではなく縮瞳などを引き起こす。
傍脊椎交感神経鎖または頸部星状神経節が侵されることで生じる症状のことをホルネル症候群という。ホルネル(ホルナー)症候群とは、交感神経遠心路の障害によって生じる。三大徴候:中等度縮瞳、眼瞼下垂(眼裂狭小)、眼球陥凹(眼球後退)とする症候群である。眼の徴候以外は、顔面の発汗低下と紅潮を特徴とする。
3.〇 正しい。嗄声:反回神経
反回神経は、運動神経、知覚神経を含む混合神経で声帯や嚥下機能を司っている。前枝は喉頭粘膜、声帯裂、甲状披裂筋、外側輪状披裂筋に分布する。後枝は後輪状披裂筋、横披裂筋、斜披裂筋に分布する。喉から胸にかけて走行する。反回神経の枝は喉頭や声帯に分布し、障害により嗄声を生じる。反回神経は、右が鎖骨下動脈を、左が大動脈弓を前方から後方へ回り、この周囲に癌が浸潤することで嗄声が生じる。嗄声とは、声帯を振動させて声を出すとき、声帯に異常が起こり「かすれた声」になっている状態である。嗄声の原因は、①声帯自体に問題がある場合と、②声帯を動かす神経に問題がある場合がある。
4.× 横隔神経の浸潤は、「腰痛」ではなく呼吸困難である。
なぜなら、横隔神経は横隔膜の運動を支配するため。横隔神経への浸潤による横隔膜麻痺に起因する呼吸困難および低酸素症を引き起こすことがある。
問題58 胸膜中皮腫と関連するのはどれか。
1.塩蔵食品
2.アスベスト
3.アセトアルデヒド
4.ジクロロプロパン
解答2
解説
1.× 塩蔵食品
塩蔵食品は、胃癌と関連性が高い。胃がんの危険因子は、他にも、ヘリコバクター・ピロリ感染、アルコール、喫煙、遺伝などがある。 一方、リスクを下げるものとして野菜・果物、緑茶などがある。ちなみに、塩蔵品とは、魚介類など腐敗しやすい食品を食塩に漬けて細菌を繁殖させにくくし、長期保存できるように加工された食品である。塩蔵品には、塩蔵魚卵(たらこ、いくらなど)、塩蔵魚(めざし、塩サケなど)や塩辛、練りうになどがある。
2.〇 正しい。アスベストは、胸膜中皮腫と関連する。
アスベストは、中皮腫(悪性胸膜腫)の主要な外因である。悪性胸膜中皮腫とは、胸膜(胸部にある膜)の中皮細胞(中間層の細胞)ががん化した状態を指す。悪性胸膜中皮腫は、アスベスト(石棉)の長期曝露によって引き起こされることが多いが、他にも遺伝子変異や環境因子、慢性的な感染などが考えられる。症状として、胸水、胸痛、呼吸器系の症状、疲れなどがあり、進行性に重症で、治療は困難であることが多い。早期発見と、アスベスト露出を減らすことが重要である。
3.× アセトアルデヒド
アセトアルデヒドとは、アルコールが体内で分解されてできる物質である。アルコールの分解酵素の働きが弱い人が多量飲酒すると、口腔、咽頭、食道の発がんリスクが高まる。
4.× ジクロロプロパン
ジクロロプロパンとは、印刷工場で塩素系有機洗浄剤の主成分として使用されていた化学物質である。この物質に大量にさらされると、胆管がんを発症する可能性がある。
問題59 右心不全によくみられる身体所見はどれか。
1.肺うっ血
2.頻呼吸
3.下肢の浮腫
4.四肢チアノーゼ
解答3
解説
心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。
心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの(呼吸困難、起座呼吸、尿量減少など)
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの(頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など)
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。
1.× 肺うっ血は左心不全である。
肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。
2.× 頻呼吸/四肢チアノーゼは左心不全である。
なぜなら、左心房の機能不全(肺循環系にうっ血が著明)になると、肺循環系が機能不全を起こすため。
3.〇 正しい。下肢の浮腫は、右心不全によくみられる身体所見である。
右心不全の代表的な症状として、①頚静脈怒張、②下腿浮腫、③肝腫・黄疸、④肝頚静脈逆流、⑤Kussmaul徴候(クスマウル徴候:吸気時に頸静脈の怒張が顕著となること)
(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)
問題60 ネフローゼ症候群の診断基準に含まれるのはどれか。
1.排尿痛
2.高LDLコレステロール血症
3.尿糖
4.高蛋白血症
解答2
解説
ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。小児の治療として、ステロイド治療により改善することが多い。ネフローゼ症候群に対する食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。
【成人における診断基準】
①蛋白尿:1日蛋白量3.5g以上を持続する。
②低蛋白血症:血清総蛋白量は6.0g/100ml以下(低アルブミン血症とした場合は血清アルブミン量3.0g/100ml以下)
③高脂血症:血清総コレステロール値250mg/100ml以上
④浮腫
1.× 排尿痛
これは、尿路感染や性感染症、尿管結石などで生じる。
2.〇 正しい。高LDLコレステロール血症は、ネフローゼ症候群の診断基準に含まれる。
ネフローゼ症候群は、血管内は水分を失い脱水となり、腎臓の働きに影響する。また、失ったアルブミンを補充しようとして肝臓がたくさん作るが、尿中へ出て行ってしまい増えない。その時に、同時にコレステロールに関する蛋白も作るため、高コレステロール血症も認める。
3.× 尿糖
これは、糖尿病で生じる。
4.× 高蛋白血症
これは、肝疾患、脱水症状、多発性骨髄腫、慢性炎症などで生じる。