第31回(R5年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前51~55】

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問題51 神経性やせ症(神経性食欲不振症)について正しいのはどれか。

1.中年に多い。
2.栄養吸収障害が原因である。
3.電解質異常は起こしにくい。
4.心理療法が有効である。

解答

解説

摂食障害とは?

摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用、抑うつの症状がみられる。特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。

①神経性無食欲症は、思春期~青年期の若い女性に発症しやすい。
【神経性無食欲症の主な特徴】①病的な痩せ願望、②ボディーイメージのゆがみ、③極端な食べ物制限と下剤などの乱用、④月経の停止、うぶげの増加、⑤乳房委縮はみられない、⑥性格的には頑固で競争心が強い、⑦母親との心的葛藤をみることがある。

1.× 「中年」ではなく思春期~青年期の若い女性に多い。

2.× 栄養吸収障害が原因であるのは、神経性過食症の典型的な特徴である。
なぜなら、食べることと吐くことを繰り返すことで、体内バランスが崩壊し、多臓器不全を起こしやすいため。食べ物を吸収される前に下剤や嘔吐で吸収を阻害してしまう。

3.× 電解質異常は起こしやすい
電解質異常とは、体内の電解質バランスが崩れることによって引き起こされる病気のことである。電解質とは、体内の液体に存在するイオン(带電粒子)のことで、主なものにナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)などがある。電解質異常は、体液の浸漏や脱水、腎臓や腸の異常、薬剤などによって引き起こされる。症状は異常によって異なる。

4.〇 正しい。心理療法が有効である
治療法として指示的精神療法(カウンセリング)、認知行動療法、対人関係療法、家族療法などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題52 肘内障について正しいのはどれか。

1.肘に腫脹はない。
2.腕尺関節の脱臼である。
3.徒手整復は困難である。
4.反復性に移行しやすい。

解答

解説

肘内障とは?

肘内障とは、乳幼児に特有の外傷で、橈骨頭が引っ張られることによって、橈骨頭を取り巻いている輪状靭帯と回外筋が橈骨頭からずれた状態(亜脱臼)になったものである。5歳くらいまでの子どもに発症する。 輪状靭帯の付着がしっかりする6歳以降では起こりにくい。

1.〇 正しい。肘に腫脹はない
なぜなら、肘内障とは、橈骨頭が引っ張られることによって発症するため。出血を呈するほどの軟部組織の損傷まで及ばないため、著明な炎症症状(特に腫脹と発赤)はみられにくい。

2.× 「腕尺関節の脱臼」ではなく近位橈尺関節の亜脱臼である。
肘内障とは、乳幼児に特有の外傷で、橈骨頭が引っ張られることによって、橈骨頭を取り巻いている輪状靭帯と回外筋が橈骨頭からずれた状態(亜脱臼)になったものである。

3.× 徒手整復は、「困難」ではなく容易である。
手術や全身麻酔は不要で、診察室で数秒で終了することがほとんどである。

4.× 反復性に移行しやすいとはいえない
なぜなら、肘内障は、乳幼児に特有の外傷で、橈骨頭が引っ張られることによって起こるため。したがって、後遺症も起こりにくい。

 

 

 

 

 

問題53 細菌感染症はどれか。

1.デング熱
2.破傷風
3.日本脳炎
4.手足口病

解答

解説
1.× デング熱
デング熱とは、蚊(デングウイルス)に刺されることによって感染する疾患である。 症状として、急激な発熱で発症し、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などがみられる。通常、発症後2~7日で解熱し、発疹は解熱時期に出現する。

2.〇 正しい。破傷風は、細菌感染症である。
破傷風とは、接触感染で、破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。

3.× 日本脳炎
日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスにより発生する疾病で、蚊を介して感染する。以前は子どもや高齢者に多くみられた病気である。初期症状として、突然の高熱・頭痛・嘔吐などで発病し、意識障害や麻痺等の神経系の障害を引き起こす病気で、後遺症を残すことや死に至ることもある。

4.× 手足口病
手足口病とは、手のひらや足の裏、口の中などに小さな水ぶくれのような発疹ができるウイルス感染症である。原因はコクサッキーウイルスやエンテロウイルスといったウイルスへの感染である。5歳までの子どもがかかることが多く、夏に流行のピークを迎える。

感染時の血液の変化

①細菌感染の場合:白血球・CRP増加(特に好中球が働く)

②ウイルス感染の場合:白血球・CRPわずかに増加(特にリンパ球が働く)

 

 

 

 

 

問題54 細菌性腸炎の原因菌と食品の組合せで誤っているのはどれか。

1.サルモネラ属:ハチミツ
2.腸炎ビブリオ:生鮮魚介類
3.ブドウ球菌:にぎりめし
4.カンピロバクター:鶏肉

解答

解説
1.× ハチミツは、「サルモネラ属」ではなくボツリヌス菌である。
サルモネラとは、人をはじめ、牛や豚やにわとりなどの家畜の腸内、河川・下水など自然界に広く生息していている細菌である。感染して12時間から72時間の症状のない期間があった後に下痢、腹痛、発熱などが見られ、まれにサルモネラが血液中に入り、他の臓器に病気を起こし、重症化することもある。ちなみに、はちみつにはボツリヌス菌が含まれている。厚生労働省は、腸内環境が整っていない1歳未満の乳児にはちみつを与えると乳児ボツリヌス症を発生する危険性が高いため、与えないように注意喚起をしている。

2.〇 腸炎ビブリオ:生鮮魚介類
腸炎ビブリオとは、食中毒の原因となる細菌で、海水や海産の魚介類などに生息している。4℃以下ではほとんど繁殖しない。腸炎ビブリオの症状は、潜伏期間が12時間前後で、主症状としては耐え難い腹痛があり、水様性や粘液性の下痢がみられる。下痢は日に数回から多いときで十数回で、しばしば発熱(37〜38℃)や嘔吐、吐き気がみられる。

3.〇 ブドウ球菌:にぎりめし
黄色ブドウ球菌の原因は、加工食品(にぎりめし、弁当類)である。潜伏期間は約3時間程度で、発熱はしないが、症状として嘔吐(重度)、腹痛(中等度)、下痢(中等度)がみられる。

4.〇 カンピロバクター:鶏肉
カンピロバクターとは、生肉・生乳が主な原因食品であり、鶏、牛、野鳥など多くの動物が保有する細菌である。潜伏期間は、2~7日である。症状は、腹痛を伴う下痢、発熱などである。

 

 

 

 

 

問題55 肺結核について正しいのはどれか。

1.主な感染経路は飛沫感染である。
2.抗結核薬は単剤で用いる。
3.結核と診断したら直ちに届け出る。
4.医療者はサージカルマスク着用が推奨される。

解答

解説

肺結核とは?

肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

1.× 主な感染経路は、「飛沫感染」ではなく空気感染である。
結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。

2.× 抗結核薬は、「単剤」ではなく多剤で用いる。
結核の標準的な治療は、抗結核薬のうち2剤から4剤を使った6ヶ月間の多剤併用療法である。なぜなら、結核菌には自然耐性菌という生まれながらにして薬の効かない菌がわずかにあるため。

3.〇 正しい。結核と診断したら直ちに届け出る
なぜなら、肺結核は2類感染症に分類されているため。
【保健所への届出期間】
1~3類感染症:診断後ただちに届け出を行う。
4類感染症:原則、診断後7日以内に届け出を行う。
5類感染症(全数把握):原則、診断後7日以内に届け出を行う。
5類感染症(定点把握):次の月曜日まで、または翌月初日まで。

4.× 医療者は、「サージカルマスク(一般マスク)」ではなくN95マスク着用が推奨される。
なぜなら、N95マスクは空気感染源を捕集し、空気感染リスクを低下させるマスクであるため。

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律とは?

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法、感染症法、感染症新法)は、感染症の予防および感染症患者に対する医療に関する措置について定めた日本の法律である。平成10年(1998年)に制定された。主な内容は、①1~5類感染症の分類と定義、②情報の収集・公表、③感染症(結核を含む)への対応や処置。

【「感染症法」の対象となる感染症】
①1類感染症(7疾患:エボラ出血熱 ・クリミア・コンゴ出血熱・痘そう(天然痘) ・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱)
対応:原則入院・消毒等の対物措置(例外的に建物への措置,通行制限の措置も適用対象とする)

②2類感染症(6疾患:・急性灰白髄炎(ポリオ)・結核 ・ジフテリア ・重症急性呼吸器症候群(SARS)・特定鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) ・中東呼吸器症候群(MERS))
対応:状況に応じて入院・消毒等の対物措置

③3類感染症(5疾患:・コレラ・細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症(0157等)・腸チフス ・パラチフス)
対応:・特定職種への就業制限・消毒等の対物措置

④4類感染症(44疾患:※一部抜粋。・E型肝炎・A型肝炎 ・黄熱・Q熱・狂犬病・チクングニア熱・鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)・炭疽 ・ボツリヌス症 ・マラリア ・野兎病・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・デング熱・ジカウイルス感染症・日本脳炎・その他感染症(政令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開,提供・媒介動物の輸入規制・消毒等の対物措置

⑤5類感染症(46疾患:※一部抜粋。・インフルエンザ(鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等感染症を除く)・ウイルス性肝炎(E型・A型を除く)・クリプトスポリジウム症・後天性免疫不全症候群(AIDS)・性器クラミジア感染症 ・梅毒・麻疹・百日咳・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症・その他感染症(省令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開情報提供

 

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