第32回(R6年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後166~170】

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問題166 鍼施術を行う場合、感染症対策として適切でないのはどれか。

1.手洗い後の手指の乾燥にはペーパータオルを使用する。
2.鍼皿は滅菌済みディスポーザブルのものを使用する。
3.施術野の消毒には70%イソプロピルアルコールを使用する。
4.抜鍼時に使用した消毒綿花は一般廃棄物として処理する。

解答

解説
1.〇 正しい。手洗い後の手指の乾燥にはペーパータオルを使用する。
布タオルは菌が増殖しやすいため使用を控える。

2.〇 正しい。鍼皿は滅菌済みディスポーザブルのものを使用する。
ディスポーザブルとは、使い捨てという意味である。

3.〇 正しい。施術野の消毒には70%イソプロピルアルコールを使用する。
イソプロピルアルコールとは、エタノールと同じアルコール類の一種である。エタノールとは異なる点は、飲むことはできないことである。アルコール類は、エタノールやプロパノールがあげられる。消毒用エタノールとは、皮膚や手術部位の消毒、医療器具の洗浄消毒などに用いられている。また、種々の添加物成分を混合した製剤(エタノール製剤またはアルコール製剤)として、新指定医薬部外品や食品添加物の用途でも使われている。

4.× 抜鍼時に使用した消毒綿花は、「一般廃棄物」ではなく感染性廃棄物として処理する。
感染性廃棄物とは、医療関係機関等から生じ、人が感染し、若しくは感染するおそれのある病原体(感染性病原体)が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれのある廃棄物を言い、廃棄物処理法施行令第1条第1項第8号に定める感染性一般廃棄物と、同法施行令第2条の4第1項第4号に定める感染性産業廃棄物を指す。

(※図引用:「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」環境省HPより)

 

 

 

 

 

問題167 切皮時に一次痛が生じた。関与する侵害受容器はどれか。

1.高閾値機械受容器
2.ポリモーダル受容器
3.メルケル盤
4.毛包受容器

解答

解説
1.〇 正しい。高閾値機械受容器が関与する侵害受容器である。
高閾値機械受容器は、侵害受容器のひとつでAδ線維である。特徴として、①侵害性機械刺激に対し強度に応じた反応を示す、②繰り返し刺激で反応は減弱する、③刺激が終了すれば後発射を示さないことなどがあげられる。

2.× ポリモーダル受容器
ポリモーダル受容器は、侵害受容器のひとつである。主にC線維終末にある皮膚の受容器である。特徴として、①皮膚のみならず骨格筋、関節、内臓諸器官と広く全身に分布している。②非侵害刺激から侵害刺激まで広い範囲で刺激強度に応じて反応する。③侵害刺激を繰り返し与えると反応性が増大し閾値の低下がみられる。

3.× メルケル盤は、触覚や圧力の感覚受容器である。

4.× 毛包受容器は、毛根部に神経線維が巻きついたもので、毛幹の傾きの変化をとらえる。

 

 

 

 

 

問題168 痛覚の伝導に関与するのはどれか。

1.脊髄灰白質中間質
2.脊髄前側索
3.脊髄後側索
4.脊髄後索

解答

解説
1.× 脊髄灰白質中間質は、痛覚の伝導に関与しない
灰白質の腹側の突出部は前角とよばれ、背側は後角、その中間を中間質という。

2.〇 正しい。脊髄前側索は、痛覚の伝導に関与する。
脊髄前側索は、痛覚の二次性ニューロンが上行する。外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野の経路をたどる。

3.× 脊髄後側索は、痛覚の伝導に関与しない
後索路は、深部感覚、識別的な触圧覚を伝える経路である。

4.× 脊髄後索は、痛覚の伝導に関与しない
後索は、深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路である。後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野

 

 

 

 

 

問題169 鍼刺激による発汗に関与し、エクリン腺に分布する受容体で最も適切なのはどれか。

1.α受容体
2.β受容体
3.ニコチン受容体
4.ムスカリン受容体

解答

解説

MEMO

エクリン腺は口唇・亀頭・陰唇を除く全身の皮膚に分布する。手掌・足底・額に特に多い。エクリン汗の成分はアポクリン腺からの汗(アポクリン汗)に比べて薄い。一方、アポクリン汗腺は、主に脇や陰部などの真皮に存在する。

1.× α受容体/β受容体よりもエクリン腺に分布する受容体がほかにある
・α1作用:主に血管収縮
・α2作用:ノルアドレナリン放出抑制によるネガティブフィードバック
・β1作用:心臓の陽性変性作用
・β2作用:血管、気管支の弛緩

3.× ニコチン受容体よりもエクリン腺に分布する受容体がほかにある
ニコチン受容体は、アセチルコリン受容体の1種である。ニコチン性アセチルコリン受容体(ニコチン受容体)に作用してアセチルコリンと同様の効果をしめす。

4.〇 正しい。ムスカリン受容体は、鍼刺激による発汗に関与し、エクリン腺に分布する受容体である。
アセチルコリン受容体には、①イオンチャネル型のニコチン受容体と②代謝型受容体であるムスカリン受容体がある。副交感神経性の反応に関与している。

 

 

 

 

 

問題170 鍼刺激による皮膚の血流増加に関係するのはどれか。

1.NO
2.セロトニン
3.アンジオテンシン
4.ノルアドレナリン

解答

解説

血管拡張物質

ブラジキニン、CO2、NO、乳酸、ヒスタミン、アデノシン、ATP、水素イオン

1.〇 正しい。NOは、鍼刺激による皮膚の血流増加に関係する。NOとは、一酸化窒素のことで、窒素(N)と酸素(O)が結合した物質である。常温では無色・無臭の気体で、水に溶けにくく、空気よりやや重い。血管の内皮細胞から放出される物質で、血管を拡張してしなやかにして、血圧を安定させる働きを持つ。

2.× セロトニンとは、うつ病と関連が深い神経伝達物質である。脳内だけに分泌される神経伝達物質で、交感神経を刺激し、血圧を上昇させる作用がある。ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用のある伝達物質でもある。

3.× アンジオテンシン
腎臓の輸入細動脈の壁にある傍糸球体細胞からレニンが分泌され、血液中のアンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンⅠという物質をつくる。アンジオテンシンⅠとは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンⅡに変換される。アンジオテンシンⅡとは、全身の動脈を収縮させるとともに、副腎皮質からアルドステロンを分泌させる。アルドステロンは、Naを体内に溜める働きがあり、これにより循環血液量が増加して心拍出量と末梢血管抵抗が増加する。これをレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(Renin-Angiotensin-Aldosterone System:RAAS)といい、血圧上昇後にはレニンの分泌は抑制され、この系の働きが低下する。

4.× ノルアドレナリンとは、激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出される物質である。ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態となる。副腎髄質ホルモンとして放出されると、主に血圧上昇と基礎代謝率の増加をもたらす。

MEMO

ケミカルメディエーターとは、化学伝達物質ともいい、細胞間の情報伝達に作用する化学物質のことである。肥満細胞が放出するケミカルメディエーターは、さまざまなアレルギー反応(血管透過性の亢進、血流の増加、炎症細胞の遊走など)を起こす。

【例】
・ヒスタミン
・ロイコトリエン
・トロンボキサン
・血症板活性化因子
・セロトニン
・ヘパリンなど。

 

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