第32回(R6年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前51~55】

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問題51 ギラン・バレー症候群について正しいのはどれか。

1.中年女性に多い。
2.遺伝性疾患である。
3.骨格筋に病因がある。
4.先行感染を認めることが多い。

解答

解説

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

1.× 中年女性に多い「とはいえない」。男女比は3:2で男性に多く、発症年齢は20~30代をピークとして、幼小児期から90歳代まで分布する。

2.× 遺伝性疾患「とはいえない」。先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。

3.× 骨格筋に病因「とはいえない」。免疫系が末梢神経の髄鞘(ミエリン)や軸索を攻撃することにより神経伝達が阻害される炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。

4.〇 正しい。先行感染を認めることが多い先行感染による自己免疫的な機序である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。

病因とは?

病因とは、病気の原因をといい、①内因と②外因に分けられる。

①内因とは、生体側の因子で,病気にかかりやすい準備状態を指す。内因のみでは病気は発現しない。内因は素因ともいう。
例:①生理的素因(年齢、人種、性など)、②病理的素因(個人的素因:皮膚癌を生じやすい紅皮症、アレルギー体質、糖尿病の易感染性など)

②外因とは、外部から生体に対し障害性に働くものをいう。
例:①栄養的外因(蛋白質過剰による痛風、ビタミンB1欠乏による脚気など)、②物理的外因(外傷、熱傷、放射線障害など)、③化学的外因(重金属中毒、医薬品、体内で産生されるエンドトキシン、アンモニア、アセトンなど)、④病原微生物(ウイルス、細菌、原虫など)

 

 

 

 

 

問題52 水痘の症状はどれか。

1.耳下腺の腫脹
2.両頬部のびまん性紅斑
3.水疱へと進行する紅斑
4.解熱前後の斑状丘疹性発疹

解答

解説

水痘とは?

水痘とは、いわゆる「みずぼうそう」のことで、水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスによって引き起こされる発疹性の病気である。子供の頃にかかった水痘ウイルスが数十年の潜伏期間を経て、免疫力が低下した時などに再活性化(回帰感染)して起こる。

1.× 耳下腺の腫脹は、流行性耳下腺炎の特徴的な症状である。流行性耳下腺炎とは、2~3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側の唾液腺の腫脹を特徴とするウイルス感染症である。通常1~2 週間で軽快する。最も多い合併症は髄膜炎であり、その他髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを認める場合がある。流産の危険性が高くなる可能性があるが明確ではない。

2.× 両頬部のびまん性紅斑は、伝染性紅斑(りんご病)の特徴的な症状である。伝染性紅斑とは、頬に出現する蝶翼状の紅斑を特徴とし、小児を中心にしてみられる流行性発疹性疾患である。春から夏にかけて流行する傾向があり、4~5年周期で流行がみられる。近年では、2007年と2011年の流行の後、2015年に全国的な流行があった。妊婦が初めて感染した場合、約2割でウイルスが胎盤を通過し胎児感染を起こし、そのうち約2割が胎児の貧血や胎児水腫を起こす。これは、全初感染妊婦のおよそ4%にあたる。

3.〇 正しい。水疱へと進行する紅斑は、水痘の症状である。水痘は、水痘・帯状庖疹ウイルスによる感染症で、急性期には空気感染により水痘を発症する。治癒後は、水痘・帯状庖疹ウイルスが三叉神経節や脊椎後根神経節に数年~数十年潜伏し、免疫力が低下したときに再活性化することで帯状疱疹を発症する疾患である。水痘では、紅斑から盛り上がった赤い発疹である丘疹が出現し、次第に水疱へと進行し、痂皮化(かひか)する。

4.× 解熱前後の斑状丘疹性発疹は、突発性発疹の特徴的な症状である。突発性発疹とは、乳児期に罹患することが多く、突然の高熱と解熱前後の発疹を特徴とするウイルス感染症(ヒトヘルペスウイルス)である。一般的に、予後は一般に良好である。38℃以上の発熱が3日間ほど続いた後、解熱とともに鮮紅色の斑丘疹が体幹を中心に顔面、四肢に 数日間出現する。随伴症状としては、下痢、眼瞼浮腫、大泉門膨隆、リンパ節腫脹などがあげられるが、多くは発熱と発疹のみで経過する。

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

問題53 急性骨髄性白血病について正しいのはどれか。

1.幼若芽球が増殖する。
2.小児に多くみられる。
3.細菌感染が関係する。
4.ミエロペルオキシダーゼ染色は陰性である。

解答

解説

急性骨髄性白血病とは?

急性骨髄性白血病とは、骨髄の中にある幼若な血液細胞が癌化して白血病細胞となり骨髄の中で急速に分裂して数を増やす疾患である。はっきりした原因は不明である。白血病細胞が骨髄の中で増えてくる結果、骨髄の本来の機能である造血能が著しく障害される。初期症状として、発熱・貧血・出血傾向・骨痛・倦怠感がみられる。

1.〇 正しい。幼若芽球が増殖する。幼若芽球とは、形態的に最も幼若な血液細胞である芽球の一種で、未成熟な造血前駆細胞を指す。

2.× 小児に多くみられるのは、急性リンパ性白血病である。急性骨髄性白血病は、主に成人(高齢者以降)に多くみられる。

3.× 細菌感染が関係するとはいえない。急性骨髄性白血病は、はっきりした原因は不明である。

4.× ミエロペルオキシダーゼ染色は、「陰性」ではなく陽性である。ちなみに、3%未満の場合(陰性)は、急性リンパ性白血病と診断される。急性リンパ性白血病(リンパ芽球性リンパ腫)とは、白血球の一種であるリンパ球になる前の細胞に異常が起こり、がん化した細胞(白血病細胞)が骨髄で無制限に増える病気である。

ミエロペルオキシダーゼ(MPO)反応とは?

 急性白血病の診断において、白血病細胞が骨髄系かリンパ系かを調べるための重要な検査である。ミエロペルオキシダーゼ(MPO)反応で染色する細胞が3%以上(陽性)ならば骨髄系、3%未満(陰性)ではリンパ系の急性白血病となる。ただし、骨髄系の急性白血病のー部には陰性となるものがある。

 

 

 

 

 

問題54 気管支拡張症について正しいのはどれか。

1.気道の変化は不可逆性である。
2.小児喘息の既往をもつことが多い。
3.喀血をきたすことはない。
4.治療は抗菌薬を短期投与する。

解答

解説

気管支拡張症とは?

気管支拡張症とは、気道(特に中小気管支)が恒久的に拡張し、不可逆的な変化が生じる疾患である。主な症状は、咳・痰・血痰(喀血)である。原因は、先天的な原因や幼小児期の肺炎、繰り返す感染などで、気管支壁が壊れたり弱くなることにより生じる。異物を排除して感染予防に重要な呼吸器系の線毛の機能が低下するため感染が生じ易くなり、その結果、副鼻腔炎と気管支拡張症を生じる。また、線毛と関連して精子の鞭毛の異常を伴う。

1.〇 正しい。気道の変化は不可逆性である。気管支拡張症とは、気道(特に中小気管支)が恒久的に拡張し、不可逆的な変化が生じる疾患である。したがって、主な治療目標は、症状の管理と進行予防である。

2.× 小児喘息の既往をもつ関連性は低い。気管支拡張の原因は、先天的な原因や幼小児期の肺炎、繰り返す感染などで、気管支壁が壊れたり弱くなることにより生じる。

3.× 喀血を「きたすことが多い」。ちなみに、喀血とは下気道からの出血のことである。このうち少量の血液が痰に付着、または混入しているものを血痰という。また、少量の喀血は、大喀血の前兆となる可能性があるという報告もある。

4.× 治療は抗菌薬を「短期」ではなく長期投与する。なぜなら、気管支拡張症とは、気道(特に中小気管支)が恒久的に拡張し、不可逆的な変化が生じる疾患であるため。慢性的な感染の制御や予防を目的となる。ちなみに、抗菌薬とは、細菌の増殖を抑制したり殺したりする働きのある化学療法剤のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。

 

 

 

 

 

問題55 肺結核について正しいのはどれか。

1.空気感染する。
2.治療薬は単剤を用いる。
3.感染すると半数が発病する。
4.我が国の2021年の新規発症患者数は1000人以下である。

解答

解説
1.〇 正しい。空気感染する。肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

2.× 治療薬は、「単剤」ではなく複剤を用いる。治療は抗結核薬の多剤併用療法(3~4種類)が基本となり、治療期間は約6カ月である。2ヶ月治療したら2種類の治療薬に減ることが多い。

3.× 感染すると、「半数」ではなく1割が発病する。残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

4.× 我が国の2021年の新規発症患者数は、「1,000人以下」ではなく11,519人程度である。毎年、1万人程度である。(※参考データ:「2021年 結核登録者情報調査年報集計結果について」厚生労働省HPより)

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

 

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