第33回(R7年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前81~85】

 

問題81 関節リウマチによる関節変形で最も適切なのはどれか。

1.MP関節の尺側偏位
2.O脚
3.凹足
4.翼状肩甲

解答

解説

関節リウマチの変形

①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などがある。

1.〇 正しい。MP関節の尺側偏位は、関節リウマチによる関節変形である。尺側偏位とは、手関節が尺骨側(手の小指側)に偏位する変形をいう。

2.× O脚(内反膝)は、変形性膝関節症でよくみられる症状である。

3.× 凹足の原因の多くは、遺伝シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth病)である。Charcot-Marie-Tooth病(シャルコー・マリー・トゥース病)とは、遺伝子異常により、一般的に四肢、特に下肢遠位部の筋力低下と感覚障害を示す疾患である。まれに、四肢近位部優位の筋力低下・筋萎縮を示す例もある。筋肉が緩徐進行性で萎縮し、同部位の感覚が少し鈍くなる。歩行は、下腿の筋萎縮により鶏歩(下垂足)となる。
・凹足とは、土踏まずであるアーチが高まった状態である。腓骨筋の筋力低下や後脛骨筋の緊張により起こる。

4.× 翼状肩甲の主な原因として、長胸神経の障害である。長胸神経支配の前鋸筋麻痺や三角筋拘縮(短縮)症でみられる。過去問より肩甲背神経、長胸神経の両方を選択する問題があったが、一般的であるのは長胸神経の障害である。
・翼状肩甲とは、肩甲骨内側縁が後方に突出して鳥の翼のような形状をとることをいう。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題82 社会的リハビリテーションに含まれる内容はどれか。

1.家族への介護指導
2.職場環境の整備
3.個別の理学療法
4.管理栄養士による栄養管理

解答

解説

社会的リハビリテーションとは?

社会リハビリテーションとは、社会生活力を高めることを目的としたプロセスである。 社会生活力とは、様々な社会的な状況の中で、自分のニーズを満たし、一人ひとりにとって可能な最も豊かな社会参加を実現する権利を行使する力を意味する。

1.× 家族への介護指導は、教育リハビリテーションに該当する。
・教育リハビリテーションとは、障害のある児童や人の能力を向上させ、潜在能力を開発し、自己実現を図れるように支援することを目的にした支援活動である。

2.〇 正しい。職場環境の整備は、社会的リハビリテーションに含まれる。
・社会リハビリテーションとは、社会生活力を高めることを目的としたプロセスである。 社会生活力とは、様々な社会的な状況の中で、自分のニーズを満たし、一人ひとりにとって可能な最も豊かな社会参加を実現する権利を行使する力を意味する。

3~4.× 個別の理学療法/管理栄養士による栄養管理は、医学的リハビリテーションに該当する。
・医学的リハビリテーションとは、病院や診療所などの医療機関で行われる、障害がある人のリハビリテーションの過程において、保健・医療などの医学的なことに対応する領域である。

リハビリテーションの種類

①医学的リハビリテーション、②教育リハビリテーション、③職業リハビリテーション、④社会的リハビリテーション

 

 

 

 

 

 

次の症例について、問題 83、84 の問いに答えよ。
 「17歳の男子。バイク走行中に転倒し救急搬送。ヘルメットの右外側に傷があり、右肩に外傷がある。右上肢は自動運動不能で知覚異常を認めた。意識は清明、独歩可能、脳神経に異常はない。」

問題83 診断に有用性が最も低いのはどれか。

1.CT検査
2.MRI検査
3.筋電図検査
4.超音波検査

解答

解説

本症例のポイント

・17歳の男子(バイク走行中に転倒)。
・ヘルメットの右外側に傷があり、右肩に外傷がある。
右上肢は自動運動不能知覚異常を認めた
意識清明独歩可能脳神経に異常はない
→本症例は、意識は清明で脳神経に異常がないことから、脳自体や脳神経の直接的な損傷よりは、右肩周囲の構造、特に腕神経叢(首から肩を通って腕に広がる神経の束)や、鎖骨、肩甲骨、上腕骨といった骨、肩関節周囲の軟部組織(筋肉、靭帯)などの損傷が強く疑われる。

1.〇 CT検査は、この症例の診断において有用性が高い検査である。なぜなら、CT検査は、骨折の有無やその詳細な形態(複雑骨折かどうかなど)を診断するのに非常に優れているため。
・CT検査とは、脳内や肺の腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位(急性)は高吸収域(白)としてうつる。エックス線を使用した撮影である。

2.〇 MRI検査は、この症例の診断において有用性が高い検査である。なぜなら、MRI検査は、神経組織や筋肉、靭帯などの軟部組織を詳しく描出するのに優れているため。
・MRI検査とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

3.〇 筋電図検査は、この症例の診断において有用性が高い検査である。なぜなら、筋電図検査により、本症例の右上肢の自動運動不能や知覚異常の原因が、神経(特に腕神経叢)の損傷によるものなのか、その損傷が神経のどのあたりで、どの程度の重症度なのかを客観的に評価できるため。
・筋電図検査とは、筋肉や神経に異常がないかについて、筋肉が収縮する時や神経を電気で刺激するなどの筋肉や神経の信号の伝わり方を記録する検査である。筋肉を随意的に収縮してもらったり、神経に電気的刺激をしたりすることにより、神経や筋肉に生じる電気的活動を記録する。この記録を評価することにより、神経や筋肉に疾患があるかを調べられる。

4.× 超音波検査は、診断に有用性が最も低い。なぜなら、一般的な超音波検査は、がんの評価に用いられるため。また、超音波検査で肩関節周囲の腱板の一部を評価することはできるが、鎖骨や肩甲骨の奥深くにある腕神経叢全体や、骨によるアーチの下にある血管などを鮮明に描出したり、複雑な骨折の全体像を把握したりすることは難しい。
・超音波検査とは、「高い周波数の音」を用いる検査で、肝臓や胆のう、膵臓、腎臓、膀胱、卵巣、子宮、前立腺などの腹部にある臓器や、甲状腺や乳腺などさまざまな臓器にできたがんを検査する。主な禁忌としては、血管の疾患(血栓性静脈炎など)、急性敗血症(感染の拡大や塞栓剥れの為)、放射線療法(少なくとも6ヶ月は禁忌)、腫瘍(成長促しや転移が生じる為)、心疾患(心臓を刺激する為、星状神経節や迷走神経部位は避ける)、妊婦、成長期の子供の骨端線への照射などである。

 

 

 

 

 

次の症例について、問題 83、84 の問いに答えよ。
「17歳の男子。バイク走行中に転倒し救急搬送。ヘルメットの右外側に傷があり、右肩に外傷がある。右上肢は自動運動不能で知覚異常を認めた。意識は清明、独歩可能、脳神経に異常はない。」

問題84 身体所見では肘の屈曲・手関節の背屈が不能で、手指の屈曲もできない。上肢の骨折や関節の脱臼はない。損傷部位はどれか。

1.側頸部
2.腋窩部
3.上腕部
4.肘部

解答

解説

本症例のポイント

・17歳の男子(バイク走行中に転倒)。
・ヘルメットの右外側に傷があり、右肩に外傷がある。
・右上肢は自動運動不能、知覚異常を認めた
・意識清明、独歩可能、脳神経に異常はない。
・身体所見:肘の屈曲・手関節の背屈、手指の屈曲も不能
上肢の骨折や関節の脱臼はない
→本症例は、意識は清明で脳神経に異常がないことから、脳自体や脳神経の直接的な損傷よりは、右肩周囲の構造、特に腕神経叢(首から肩を通って腕に広がる神経の束)や、鎖骨、肩甲骨、上腕骨といった骨、肩関節周囲の軟部組織(筋肉、靭帯)などの損傷が強く疑われる。

(※図引用:「腕神経叢」Wikiより)

1.〇 正しい。側頸部は、損傷部位といえる。なぜなら、本症例は、特に腕神経叢(首から肩を通って腕に広がる神経の束)の障害が疑われるため。特に、提示された「肘の屈曲不能」「手関節の背屈不能」「手指の屈曲不能」という症状は、それぞれ上肢を支配する主要な末梢神経である筋皮神経、橈骨神経、正中神経、尺骨神経といった、複数の神経の支配領域の運動機能が広範囲に障害されている。

2~4.× 腋窩部/上腕部/肘部より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は、バイク転倒で右肩に外傷があるため。したがって、肩への直接的な衝撃や、首と肩が引き離されるような力が加わったことが推測される。

 

 

 

 

 

 

次の症例について、問題 85、86 の問いに答えよ。
 「30歳の男性。右手小指のしびれを主訴に受診。手関節の可動域制限はないが、右肘関節の屈曲可動域は120度であった。幼少期に右肘関節骨折の治療歴がある。」

問題85 身体所見上認められるのはどれか。

1.肘関節屈筋力低下
2.外反肘
3.下垂手
4.猿手

解答

解説

本症例のポイント

・30歳の男性(主訴:右手小指のしびれ)。
・手関節の可動域制限はない。
・右肘関節の屈曲可動域は120度
・幼少期に右肘関節骨折の治療歴がある。
→本症例は、遅発性尺骨神経麻痺が疑われる。尺骨神経麻痺では、Froment徴候陽性や鷲手がみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

1.× 肘関節屈筋力低下は、筋皮神経の障害(主に上腕二頭筋、上腕筋など)で起こる。

2.〇 正しい。外反肘が身体所見上認められる。
・外反肘とは、上腕の軸に対して前腕の軸が、正常(10~15°程度外反)より外側を向いている状態(手部が外側に開く状態)である。逆に内側に向いているのが内反肘である。原因として、先天性では先天性橈骨頭脱臼など、後天性では上腕骨外顆骨折後の偽関節や変形治癒で生じる。外反肘では、肘の内側にある尺骨神経が肘関節伸展位において伸ばされるため、数年から数十年経過して徐々に麻痺が出現する、遅発性尺骨神経麻痺となりやすい。

3.× 下垂手は、橈骨神経の障害で起こる。
・橈骨神経とは、頸神経(C5~T1)の前枝に由来する。母指背側の感覚と上腕三頭筋・腕橈骨筋・長、短橈側手根伸筋、総指伸筋などの伸筋群を支配する。感覚領域は、親指から中指の背側、手背の橈側(親指側)、前腕の背側、上腕の背側と外側である。

4.× 猿手は、正中神経の障害で起こる。
・正中神経とは、腕神経叢を出たのち上腕骨に沿って走り、前腕では橈骨と尺骨の間を走り、手根管をくぐりぬけて、主に手の親指側に分布する。支配する感覚の領域は手のひら側の親指から薬指の半分とその下の手のひら、手背側では親指から薬指の半分の指先である。正中神経麻痺で、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

 

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