問題96 臓腑に連絡しないのはどれか。
1.経脈
2.経別
3.経筋
4.絡脈
解答3
解説
1.〇 経脈は、臓腑と連絡する。
・正経十二経脈とは、各々が臓腑と連絡し、独立しながらも連絡しあい人体を循環する1本の環になる。陰経は臓に属して腑に絡し、陽経は腑に属して臓に絡する。
2.〇 経別は、臓腑と連絡する。
・十二経別とは、経脈の流れから分かれて体内深部に走行する支脈のことである。主に肘や膝から分かれ、五臓六腑のいずれかと連絡している。
3.× 経筋は、臓腑に連絡しない。
・十二経筋とは、十二経脈に相い応じた筋肉の部分をいう。経絡とは、違って触れたり、見たりすることの出来る。経筋は、「人体の骨格を結ぶ靭性のある帯状のもの」と定義されている。
4.〇 絡脈は、臓腑と連絡する。絡脈とは、経脈から分かれて働く細かい分枝のことである。十五絡脈は、十二経の絡脈は表裏関係にある経と連絡する。
①経筋は直接臓腑に属さない。
②四肢の末端に起始部を持つため、手の陰軽、足の陽経とは逆行する。
③経脈のように、循環はしない。
④経脈のように直接気血の循行とは関係がない。
⑤経脈と異なり、髄意運動が可能である。
⑥手足の三陽経筋は顔面・頭部に、足の三陰経筋は陰器に結合している。手の三陰経筋は、胸(腹)部に結合しているが、直接臓器との関係はない。
(※参考:「経筋療法の観点から指圧マッサージを見る」華学和博様より)
問題97 夏に最も影響を受けやすい外邪の特徴はどれか。
1.開泄性
2.乾燥性
3.炎上性
4.昇散性
解答4
解説
夏に最も影響を受けやすい外邪は、暑邪(熱邪)である。暑邪(熱邪)は、陽性の邪気で夏季のみに出現し、炎熱性、昇散性がある。気・津液を損傷しやすく、湿邪を伴う。
1.× 開泄性より優先されるものが他にある。
・風邪:陽性の邪気で軽揚性、開泄性、遊走性があり、他の外邪の先導役となる(百病の長)。
2.× 乾燥性より優先されるものが他にある。
・燥邪:陽性の邪気で乾燥性があり、肺を損傷しやすい。秋に現れることが多い。
3.× 炎上性より優先されるものが他にある。
・火邪(熱邪):陽性の邪気で炎上性があり、気・津液を損傷する。また、生風、動血という特徴も持つ。
4.〇 正しい。昇散性は、夏に最も影響を受けやすい外邪の特徴である。
・暑邪(熱邪):陽性の邪気で夏季のみに出現し、炎熱性、昇散性がある。気・津液を損傷しやすく、湿邪を伴う。
問題98 七情において、気を消耗する感情が過度に生じることでみられる症状はどれか。
1.頭痛
2.動悸
3.咳嗽
4.軟便
解答3
解説
1.× 頭痛
・怒:肝臓→上昇する。主な症状として頭痛・目の充血。
2.× 動悸より優先されるものが他にある。気を消耗する感情(悲)の特徴的な症状とはいえない。
3.〇 正しい。咳嗽は、七情において、気を消耗する感情(悲)が過度に生じることでみられる症状である。
憂・悲:肺→消耗する。主な症状として咳・息切れ・溜息。
4.× 軟便
・恐:腎臓→下降する。主な症状として失禁・髪が抜ける。
内因は、七情に分けられ、七情の刺激は直接内蔵(五臓六腑の「五臓」)に影響して疾病を引き起こす原因となる。これを「内傷七情」という。また、7つの感情と「気」の動きにも関係がある。
7情:【5臓】→気と主な症状
喜:心臓→気は緩む。主な症状として無気力・不安感・不眠。
怒:肝臓→上昇する。主な症状として頭痛・目の充血。
思:脾臓(胃腸)→停滞する。主な症状としてみぞおちのつかえ、食欲不振。
憂・悲:肺→消耗する。主な症状として咳・息切れ・溜息。
恐:腎臓→下降する。主な症状として失禁・髪が抜ける。
驚:腎臓→乱れる。主な症状として記憶力衰退・集中力低下。
問題99 裏実熱と裏虚熱が同時にみられるのはどれか。
1.肝火犯肺
2.心肝火旺
3.心腎不交
4.脾胃湿熱
解答3
解説
・裏実熱とは、体内の実証(邪気が盛んな状態)による熱を指す。
・裏虚熱とは、体内の虚証(正気が不足した状態)による熱(陰液不足によるものなど)を指す。
1.× 肝火犯肺は、裏実熱が中心の病態であり、肝気の滞りが長時間にわたると、熱を持ち、火に転じたりする状態で、頭痛、眩暈、耳鳴、目赤、急躁、易怒、舌辺紅、脈弦数などである。
2.× 心肝火旺は、裏実熱が中心の病態であり、心臓と肝臓の両方に負担がかかり、熱証を生じる証である。症状として、焦燥感、じっとしていられない、動悸、不眠症などである。
3.〇 正しい。心腎不交は、裏実熱と裏虚熱が同時にみられる。
・心腎不交とは、腎陰が損耗し、心陰を補えず、心火が亢進しすぎて不眠を生じる状態のことである。
4.× 脾胃湿熱は、裏実熱が中心の病態であり、湿が脾胃に長く影響し化熱したものである。脾胃湿熱は、だるさ、体の重さなどの湿の症状に熱象の症状として口渇、皮膚の痒み、泥状の熱感を伴った排便など湿熱の症候を呈す。
問題100 次の症例で最も適切な臓腑病証はどれか。
「75歳の男性。夜間の頻尿と咳で不眠が続いている。口が乾き、から咳がみられ、腰膝酸軟と盗汗を伴う。舌質は痩、脈は細を認める。」
1.心腎不交
2.心肝血虚
3.肺脾気虚
4.肺腎陰虚
解答4
解説
・75歳の男性。
・夜間の頻尿と咳で不眠が続いている。
・口が乾き、から咳がみられ、腰膝酸軟と盗汗を伴う。
・舌質は痩、脈は細を認める。
→本症例は、肺腎陰虚が疑われる。
・肺陰虚は、乾いた咳嗽、痰(粘稠で少量黄色)、盗汗、のぼせ、口乾、舌質紅など
・腎陰虚は、手足心熱、のぼせ、耳鳴、難聴、腰膝酸軟、口乾、舌質紅、脈数などがあげられる。
・盗汗とは、睡眠中にかく汗のことである。
・陰虚証(陰熱)は、ほてり、のぼせ、五心煩熱、手足身熱、盗汗、頬部紅潮、消痩、潮熱、舌質(紅)、舌苔(少)、脈(細脈)など。したがって、治療方針は、陰を養う。
1.× 心腎不交とは、腎陰が損耗し、心陰を補えず、心火が亢進しすぎて不眠を生じる状態のことである。
2.× 心肝血虚とは、心と肝の血がともに不足した病態である。
・心血虚は、心悸、不眠、眩暈、健忘、淡白色(顏面・口唇・爪など)、脈細弱などみられる。
・肝血虚は、目乾、目花、転筋、しびれ、不眠、多夢、脈細、舌質淡白などみられる。
3.× 肺脾気虚とは、肺と脾の気がともに不足した病態である。
・肺気虚は、無力な咳嗽・息切れ、倦怠感、鼻水、痰、易感冒、自汗などみられる。
・脾気虚は、食欲不振、腹脹、大便溏薄、倦怠感、息切れ、自汗、面色萎黄などがみられる。
4.〇 正しい。肺腎陰虚は、本設問の臓腑病証である。
・肺陰虚は、乾いた咳嗽、痰(粘稠で少量黄色)、盗汗、のぼせ、口乾、舌質紅など
・腎陰虚は、手足心熱、のぼせ、耳鳴、難聴、腰膝酸軟、口乾、舌質紅、脈数などがあげられる。
・盗汗とは、睡眠中にかく汗のことである。
・陰虚証(陰熱)は、ほてり、のぼせ、五心煩熱、手足身熱、盗汗、頬部紅潮、消痩、潮熱、舌質(紅)、舌苔(少)、脈(細脈)など。したがって、治療方針は、陰を養う。