次の症例について、問題 155、156 の問いに答えよ。
「35歳の男性。インスタント麺ばかり食べている。全身がだるく、最近は下肢にしびれがみられる。膝蓋腱反射は減弱し、近医でビタミン不足と言われた。」
問題156 症状改善に効果があるとされる、8つの腧穴の組合せに含まれるのはどれか。
1.膝陽関
2.内膝眼
3.陽陵泉
4.上巨虚
解答4
解説
・35歳の男性。
・インスタント麺ばかり食べている。
・全身がだるく、最近は下肢にしびれがみられる。
・膝蓋腱反射は減弱し、近医でビタミン不足と言われた。
→本症例は、ビタミンB1欠乏による脚気が疑われる。
【脚気八処の穴】
・風市【胆】、伏兎【胃】、外膝眼【奇】、犢鼻【胃】、足三里【胃】、上巨虚【胃】、下巨虚【胃】、懸鍾【胆】
1.× 膝陽関は、膝外側、大腿二頭筋腱と腸脛靭帯の間の陥凹部、大腿骨外側上顆の後上縁に位置する。
2.× 内膝眼は、膝前面、膝蓋靱帯内方の陥凹部に取る。【主治】膝関節疾患、脚気、中風、下肢痛、下肢倦怠感である。
3.× 陽陵泉は、下腿外側、腓骨頭前下方の陥凹部に位置する。
4.〇 正しい。上巨虚が、症状改善に効果がある。なぜなら、脚気八処の穴に該当するため。
・上巨虚は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方6寸に位置する。
次の症例について、問題 157、158 の問いに答えよ。
「28歳の男性。職場でハラスメントを受けている。腹痛と下痢がひどく、出勤途中に数回トイレに行く。血便はなく、休日は症状が出ない。舌質は淡紅、舌苔は少、脈は弦を認める。」
問題157 疾患として最も適切なのはどれか。
1.胃食道逆流症
2.潰瘍性大腸炎
3.過敏性腸症候群
4.機能性ディスペプシア
解答3
解説
・28歳の男性。
・職場でハラスメントを受けている。
・腹痛と下痢がひどく、出勤途中に数回トイレに行く。
・血便はなく、休日は症状が出ない。
・舌質は淡紅、舌苔は少、脈は弦を認める。
→本症例は、過敏性腸症候群が疑われる。過敏性腸症候群とは、通常の検査では腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないにも関わらず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じる症候群である。腸の内臓神経が何らかの原因で過敏になっていることにより、引き起こされると考えられている。それぞれタイプが存在し、①下痢型(ストレスや緊張などのわずかなきっかけによって腹痛と激しい便意とともに下痢を生じる)、②便秘型(便秘に伴ってお腹の張りなどの症状が起こる)、③混合型(便秘と下痢が交互に繰り返すもの)がある。
1.× 胃食道逆流症は、主に胃の中の酸が食道へ逆流することにより、胸やけや呑酸などの不快な自覚症状を感じたり、食道の粘膜がただれたり(食道炎)する病気である。胸が詰まるような痛みを感じたり、のどの違和感や慢性的に咳が持続する。胃酸の逆流は食後2~3時間までに起こることが多いため、食後にこれらの症状を感じたときは胃酸の逆流が起きている可能性を考える。治療としては、胃酸分泌抑制薬による内服が優先される。発症しやすい食生活の習慣として、①過食傾向、②早食い、③食べてすぐ寝る、④高脂肪食が好き、⑤アルコールをよく飲む、⑥タバコを吸う、⑦肥満傾向、⑧前かがみ姿勢になりがちなことがあげられる。
2.× 潰瘍性大腸炎とは、主に大腸の粘膜を侵し、再燃と寛解を繰り返す慢性のびまん性炎症性腸疾患である。症状として、繰り返す粘血便・下痢・腹痛・発熱・体重減少などがみられる。したがって、潰瘍性大腸炎の食事は、易消化性で高エネルギー、高タンパク、低脂肪、低残渣食を基本とする。
3.〇 正しい。過敏性腸症候群が疾患として考えられる。
・過敏性腸症候群とは、通常の検査では腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないにも関わらず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じる症候群である。腸の内臓神経が何らかの原因で過敏になっていることにより、引き起こされると考えられている。それぞれタイプが存在し、①下痢型(ストレスや緊張などのわずかなきっかけによって腹痛と激しい便意とともに下痢を生じる)、②便秘型(便秘に伴ってお腹の張りなどの症状が起こる)、③混合型(便秘と下痢が交互に繰り返すもの)がある。
4.× 機能性ディスペプシアとは、胃の内視鏡検査などで異常が見られないにもかかわらず、胃の不快な症状が慢性的に続く病気である。主な症状は、食事を少ししか食べていないのにすぐお腹がいっぱいになる「早期満腹感」、食後の「胃もたれ」、みぞおちの「痛み」や「焼ける感じ」などである。はっきりした原因は特定されていない。治療は、症状を和らげる薬を使ったり、生活習慣の改善を行ったりする。
次の症例について、問題 157、158 の問いに答えよ。
「28歳の男性。職場でハラスメントを受けている。腹痛と下痢がひどく、出勤途中に数回トイレに行く。血便はなく、休日は症状が出ない。舌質は淡紅、舌苔は少、脈は弦を認める。」
問題158 治療方針として最も適切なのはどれか。
1.肝と心の火を降ろす。
2.肝と脾の調和を図る。
3.肺と腎の陰液を補う。
4.心と腎の交わりを図る。
解答2
解説
・28歳の男性。
・職場でハラスメントを受けている。
・腹痛と下痢がひどく、出勤途中に数回トイレに行く。
・血便はなく、休日は症状が出ない。
・舌質は淡紅、舌苔は少、脈は弦を認める。
→本症例は、過敏性腸症候群が疑われる。主に「肝気鬱結(ストレスによる肝の気の滞り)」が脾胃の運化機能に影響を及ぼす「肝脾不和」という病態として捉えられる。
・肝気鬱結とは、精神的ストレスによる症状をさす。気の巡りが悪く、イライラ、憂うつ、胸脇部の張り、ため息などの症状を呈する。女性では、生理時に乳房が張って痛む、生理痛、生理不順などの症状もみられる。
・肝脾不和とは、肝臓と脾臓の連携が乱れ、脾臓から肝臓への受け渡しがうまくいかない状態である。症状として、胃痛、腹痛、食欲不振、お腹や胸の張り、イライラ、憂うつ感などである。
1.× 肝と心の火を降ろす。
これは、肝火上炎や心火亢盛に対して実施する。肝火上炎は、頭痛、眩暈、耳鳴、目赤、急躁、易怒、舌辺紅、脈弦数などがみられる。
2.〇 正しい。肝と脾の調和を図る。なぜなら、本症例は精神的なストレスによる肝気鬱結が、脾胃の運化機能に影響を及ぼし、腹痛や下痢といった消化器症状を引き起こしている「肝脾不和」の病態であるため。
3.× 肺と腎の陰液を補う。
これは、肺陰虚や腎陰虚に対して実施する。肺陰虚は、乾いた咳嗽、痰(粘稠で少量黄色)、盗汗、のぼせ、口乾、舌質紅などである。
4.× 心と腎の交わりを図る。
これは、心腎不交に対して実施する。心腎不交とは、腎陰が損耗し、心陰を補えず、心火が亢進しすぎて不眠を生じる状態のことである。
次の症例について、問題 159、160 の問いに答えよ。
「52歳の女性。右側の表情筋麻痺で来院。同側の額のしわ寄せは不能で、涙液減少、聴覚過敏、味覚障害、唾液分泌障害を伴う。」
問題159 四総穴の主治を踏まえて治療する場合、最も適切な経穴はどれか。
1.合谷
2.列欠
3.委中
4.足三里
解答1
解説
・52歳の女性(右側の表情筋麻痺)。
・同側の額のしわ寄せは不能で、涙液減少、聴覚過敏、味覚障害、唾液分泌障害を伴う。
→本症例は、顔面神経の障害が疑われる。
四総穴
足三里【胃】:腹部一切
委中【膀】:腰背部
列欠【肺】:頭項部疼痛
合谷【大】:顔面・目
1.〇 正しい。合谷が四総穴の主治を踏まえて治療する。合谷は、顔面・目に該当する。
・合谷は、手背、第2中手骨中点の橈側に位置する。
2.× 列欠は、頭項部疼痛に該当する。
・列欠は、前腕橈側、長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の間、手関節掌側横紋の上方1寸5分に位置する。
3.× 委中は、腰背部に該当する。
・委中は、膝後面、膝窩横紋の中点に位置する。深部に脛骨神経が通る。
4.× 足三里は、腹部一切に該当する。
・足三里は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸に位置する。
次の症例について、問題 159、160 の問いに答えよ。
「52歳の女性。右側の表情筋麻痺で来院。同側の額のしわ寄せは不能で、涙液減少、聴覚過敏、味覚障害、唾液分泌障害を伴う。」
問題160 後遺障害として出現の可能性が最も高いのはどれか。
1.ワニの涙
2.眼球陥凹
3.眼瞼下垂
4.共同偏視
解答1
解説
・52歳の女性(右側の表情筋麻痺)。
・同側の額のしわ寄せは不能で、涙液減少、聴覚過敏、味覚障害、唾液分泌障害を伴う。
→本症例は、顔面神経の障害が疑われる。の症状は、顔面神経の本幹や、そこから分枝する神経(涙腺、アブミ骨筋、味覚、唾液腺などを支配)の障害を示唆している。
1.〇 正しい。ワニの涙は、後遺障害として出現の可能性が最も高い。
「ワニの涙症候群」:顔面神経麻痺の後遺症で、唾液の分泌を支配する神経と涙の分泌を支配する神経が混同してしまうと、食事の時に涙が勝手に出てしまうこと。他にも、眼輪筋と口輪筋が正しく繋がらず、開眼すると口角が動くなどの病的共同運動を生じることがある。
2.× 眼球陥凹は、主にホルネル症候群などにみられる。
・Horner 徴候(ホルナーもしくは、ホルネル徴候)とは、ホルネル(ホルナー)症候群の交感神経遠心路の障害によって生じる。中等度縮瞳、眼瞼下垂(眼裂狭小)、眼球陥凹(眼球後退)を三大徴候とする。
3.× 眼瞼下垂は、主に神経筋接合部の障害(例:重症筋無力症)にみられる。
4.× 共同偏視とは、両目が同じ方向または対称性を持ち、偏って位置する状態のことである。主に、脳梗塞や脳出血(被殻出血、視床出血、小脳出血など)に伴って生じる。共同偏視は、被殻出血(病側への共同偏視)や小脳出血(健側への共同偏視)で生じる。共同偏視は、PPRF(水平方向の眼球運動の中枢)の機能障害で起こる。
重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。
【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。
【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害 薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用 される。
(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)