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問題26 腹壁静脈の怒張をきたす疾患はどれか。
1.肝硬変
2.胆嚢炎
3.虫垂炎
4.膀胱炎
答え.1
解説
肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。
1.〇 正しい。肝硬変は、腹壁静脈の怒張をきたす疾患である。
肝硬変などによって、門脈圧が亢進すると側副血行路がつくられ、食道や胃につくられることが多い(食道・胃静脈癌)。腹部の皮下につくられると腹壁静脈の怒張がみられる。ギリシャ神話に登場する頭にヘビが生えたメデューサという怪物になぞらえて「メデューサの頭」ともいう。
2.× 胆嚢炎
急性胆嚢炎とは、胆のうに炎症が生じた状態である。 胆のうがむくんで腫れ、炎症の進行とともに胆のうの壁が壊死していく。 症状は、初期には上腹部の不快感や鈍痛で、炎症の進行とともに右季肋部痛(右の肋骨の下あたり)になり、次第に激痛になる。原因の90%は、胆のうの中の胆石が胆嚢の出口に詰まることである。胆石は、脂質の多い食生活でみられやすい。
3.× 虫垂炎
虫垂炎とは、何らかの原因で虫垂に炎症が起こる病態を指し、一般的には「もうちょう」として知られている。典型的な初期症状は、吐気・嘔吐・食欲不振・心窩部痛であり、痛みは時間の経過とともに右下腹部に移行する。
4.× 膀胱炎
単純性膀胱炎とは、機能的・形態的に尿路に異常のない人の膀胱炎である。 原因として、女性では尿意を我慢したり、冷えや月経が原因で起こることがある。また、妊娠や便秘、性交渉などが誘因となって起こる。 症状として、頻尿や残尿感などである。
問題27 体幹・四肢の視診の組合せで正しいのはどれか。
1.扁平胸:マルファン(Marfan)症候群
2.内反膝:腓骨神経麻痺
3.くも状指:尺骨神経麻痺
4.腹部皮膚線条:妊娠を経験した女性
答え.4
解説
1.× マルファン(Marfan)症候群は、「扁平胸」ではなく漏斗胸である。Marfan症候群とは、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形:漏斗胸など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。ほかにも、漏斗胸は、くる病の症状である。ちなみに、漏斗胸とは、前胸壁が陥没し、あたかも漏斗のような外観を示す変形である。骨強度の減弱により生じる。
2.× 腓骨神経麻痺は、「内反膝」ではなく下垂足(鶏歩)となる。鶏歩は、腓骨神経麻痺などで足関節が背屈不能になり、下垂足が生じるためにみられる。鶏歩の特徴として、垂れ足 (drop foot)になっているために下肢を高く上げ、つま先から投げ出すように歩く。鶏歩を呈する病態には、 腓骨神経麻痺のほかにも①ポリオ、②Charcot-Marie-Tooth病などがある。
3.× くも状指は、「尺骨神経麻痺」ではなくMarfan症候群にみられる。くも状指とは、細く長い指となった状態をいう。Marfan症候群とは、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指:くも状指・背骨が曲がる・胸の変形:漏斗胸など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。ほかにも、漏斗胸は、くる病の症状である。ちなみに、漏斗胸とは、前胸壁が陥没し、あたかも漏斗のような外観を示す変形である。骨強度の減弱により生じる。
4.〇 正しい。腹部皮膚線条は、「妊娠を経験した女性」にみられる。
皮膚線条とは、皮膚に亀裂が生じることでできる、幅が数mm程度の線状の病変である。やや凹みを伴う。ほかにも線状皮膚萎縮症、伸展性皮膚線条とも呼ばれる。妊娠によって生じたものは妊娠線ともいう。
問題28 圧痛点と疾患の組合せで正しいのはどれか。
1.ムンロー点:三叉神経痛
2.ボアス点:胃潰瘍
3.オトガイ点:虫垂炎
4.マックバーネ点:胆嚢炎
答え.2
解説
1.× ムンロー点(モンロー点)は、「三叉神経痛」ではなく急性虫垂炎である。
モンロー圧痛点は、右上前腸骨棘と臍を結ぶ線の中間点を指し、腹直筋の外縁と交叉する部位に相当する圧痛点のことを指す。
2.〇 正しい。ボアス点は、胃潰瘍で圧痛がみられる。
第12胸椎の左側の圧痛点。 この部位を指で押したときに痛みを生じる場合、胃潰瘍、十二指腸潰瘍を示唆する。ちなみに、胃潰瘍とは、胃粘膜が炎症を起こし、粘膜の一部が欠損している状態である。症状として、みぞおちを中心とした鋭い痛み、吐き気、嘔吐、胸やけ、頻繁なげっぷ、食欲不振などである。
3.× オトガイ点は、「虫垂炎」ではなく三叉神経痛である。
バレー(Valleix)氏圧痛点:三叉神経の各枝は、頭蓋底にある穴を通って顔面骨にある穴から出てそれぞれの支配領域に分布する。
①第Ⅰ枝の眼神経:眼窩上孔から
②第Ⅱ枝の上顎神経:眼窩下孔から
③第Ⅲ枝の下顎神経:オトガイ孔から出ており、その部分を皮膚の上から押すと痛みが起こす。
4.× マックバーネ点は、「胆嚢炎」ではなく盲腸炎(急性虫垂炎)である。
McBurney圧痛点とは、盲腸炎(急性虫垂炎)の診断に役立つ、腹部の特定の点で感じる圧痛のことを指す。右下腹部(右上前腸骨棘と臍を結ぶ線を3等分し、右から3分の1)に位置する圧痛点である。盲腸炎の疑いがある場合、この点に圧力を加えると患者は痛みを感じる。医師は、この圧痛点に加えて他の診断方法を用いて盲腸炎の確定診断を行う。ほかにも、急性虫垂炎には、ランツ点、キュンメル点、モンロー点という特徴的な圧痛点がある。モンロー圧痛点は右上前腸骨棘と臍を結ぶ線の中間点を指し、腹直筋の外縁と交叉する部位に相当する圧痛点のことを指す。
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問題29 血圧測定で正しいのはどれか。
1.血圧は静脈の血管内圧を指す。
2.触診法は聴診法より高く測定される。
3.触診法でも拡張期血圧の測定ができる。
4.拍動音が聞こえ始めた点が収縮期血圧である。
答え.4
解説
1.× 血圧は、「静脈」で動脈の血管内圧を指す。
血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことである。血圧は、体のすべての血管にあるが、一般的に動脈特に上腕動脈の圧力を意味する。血圧の高さは、心臓が血液を押し出す力と血管の拡張で決まる。
2.× 触診法は聴診法より「高く」ではなく低く測定される。
10mmHg程度の誤差が出ることが多い。その理由として、触診法は、動脈の収縮期と拡張期の境目である脈波(拍動)を手で感じて血圧を測定するため、①拍動がはっきり確認できるまでの誤差、②収縮期血圧ちょうどに心拍しないことなどが考えられる。聴診法は、コロトコフ音を聴取よって血圧を測定する方法である。一方、触診法は、Korotkow音が弱くて聴診法での測定が困難な場合に代用する。方法として、橈骨動脈の拍動を触れながら、徐々に加圧していき、脈が触れなくなったところから、さらに20〜30mmHgほど圧を上げる。圧を徐々に下げて、再び橈骨動脈の拍動が触れるようになった時の圧を最高血圧の目安とする。中点として、触診法では最低血圧の測定はできない。
3.× 触診法では、拡張期血圧の測定が「できない」。
なぜなら、触診法は、脈が触れ始めた時点の圧を収縮期血圧とし検査終了するため。拡張期血圧が測定できるのは、聴診法である。
4.〇 正しい。拍動音が聞こえ始めた点が収縮期血圧である。
触診法は、脈が触れ始めた時点の圧を収縮期血圧とし検査終了する。
血圧測定には①触診法と②聴診法がある。
【触診法(収縮期血圧の測定)】
①橈骨動脈(または肘窩上腕動脈)を触知し、70mmHgまで速やかに加圧する。
②脈を触知しなくなるまで、10mmHgずつ加圧する。
③脈を触知しなくなった点から、20~30mmHg加圧する。
④1拍動に2~4mmHgの速度で減圧する。
⑤脈が触れ始めた時点の圧を収縮期血圧とする。
【聴診法(収縮期血圧と拡張期血圧の測定)】
①聴診器を肘窩上腕動脈の上に置く(マンシェットより末梢側)。
②触診法で確認した収縮期血圧の20~30mmHg上まで加圧する。
③1拍動につき2~4mmHgの速度で減圧する。
④コロトコフ音が聴こえ始めた時点の圧を収縮期血圧とする。
⑤1拍動につき2~4mmHgの速度で減圧を続ける。
⑥ コロトコフ音が聴こえなくなった時点の圧を拡張期血圧とする。
問題30 脊髄後索の病変で障害されるのはどれか。
1.味覚
2.痛覚
3.温度覚
4.振動覚
答え.4
解説
1.× 味覚
味覚の伝導路は、味蕾(味細胞)→顔面神経(舌前2/3)、舌咽神経(舌後1/3)→延髄孤束核→視床→大脳味覚野である。
2.× 痛覚
痛覚の伝導路は、末梢の受容器→脊髄神経節→後根→後角→白交連を通って反対側に交叉→側索→外側脊髄視床路→脳幹→視床→内包→大脳皮質中心後回(感覚野)である。
3.× 温度覚
温度覚の伝導路(外側脊髄視床路:温痛覚・粗大触圧覚)は、「感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野」である。
4.〇 正しい。振動覚は、脊髄後索の病変で障害される。
なぜなら、脊髄後索は深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路であるため。【深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路】後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野である。
聴覚:蝸牛神経→蝸牛神経核→上オリーブ核→中脳下丘→内側膝状体→上側頭回
視覚:視神経→視交叉→外側膝状体→視放線→視覚野
・外側皮質脊髄路 (錐体路・運動)
大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束―延髄で錐体交叉—脊髄の側索
・前皮質脊髄路(錐体路の一部・運動)
大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束—延髄—交叉せずに脊髄前索を下降(10~25%程度)
重要事項①延髄で交差せずに同側に下降すること、②支配はL2まで。
・前脊髄視床路(粗大な触覚・圧覚)
感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄前索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野
・外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)
感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野