第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午後31~35】

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問題31 陽性のとき錐体路障害を示唆するのはどれか。

1.腹壁反射
2.足底反射
3.アシュネル(Aschner)反射
4.チャドック(Chaddock)反射

答え.

解説
1.× 腹壁反射
腹壁反射(腹皮反射)とは、表在反射のひとつである。表在反射とは、皮膚や粘膜を刺激することでみられる反射のことで、消失により錐体路障害を示す徴候である。腹壁反射とは、検者を背臥位にして両膝を軽く屈曲し膝を立て、腹筋を弛緩させる。先の鈍い針で肋骨縁①にそって上から下に向けてこする。また、腹壁を上②、中③、下④の3つに分けて、腹壁皮膚を外側より内側に向けてこすり、刺激側の腹筋が収縮し、臍が刺激側へ動けば陽性である。陽性の場合、錐体外路系の障害により消失する。【判定】刺激側の腹筋が収縮し、臍が刺激側へ動けば陽性である。

2.× 足底反射
足底反射とは、表在反射のひとつである。表在反射とは、皮膚や粘膜を刺激することでみられる反射のことで、消失により錐体路障害を示す徴候である。足底を背、ピン、ハンマーの柄などで踵から足先に向けてこする。【判定】足趾屈曲すれば陽性である。

3.× アシュネル(Aschner)反射
アシュネル反射とは、眼球心臓反射とも呼ばれ、両側の眼球を圧迫した時に起こる眼球心臓反射(徐脈)を診る試験のことである。機序として、眼球圧迫→眼神経より延髄の副交感神経中枢→同側の迷走神経が刺激される。

4.〇 正しい。チャドック(Chaddock)反射が陽性のとき錐体路障害を示唆する。
チャドック反射とは、足の外果の下方を後ろから前へこする。バビンスキー反射の変法で、錐体外路障害で陽性となる。バビンスキー反射は、下肢の病的反射のひとつで、刺激によって母趾がゆっくりと背屈すれば陽性(母趾現象または伸展足底反射)ときには他の4指が開く(開扇現象)。正常では足底反射より母趾屈曲が起こる。

錐体路とは

錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

【錐体路徴候】
・深部腱反射亢進
・病的反射(+)
・表在反射(消失)
・痙性麻痺

【錐体外路症状】
・深部腱反射正常
・表在反射(+)
・病的反射(-)
・不随意運動の出現

 

 

 

 

 

問題32 羽ばたき振戦を呈する疾患はどれか。

1.神経症
2.肝性脳症
3.低カルシウム血症
4.甲状腺機能亢進症

答え.

解説
1.× 神経症
神経症とは、うつ病や統合失調症、不安障害といわれる生活支障が著しい「…病」といわれる疾患ほどには症状がきつくないものの、それらに類似した心身の不調を有する疾患群の呼び方である。症状は、精神面では、あまりにも不安が強いために緊張したり、イライラする。また、過剰な恐怖感を持ったり、強迫的な考えにとらわれたり、また気分が落ち込んだりする。身体的にも症状があらわれ、不眠になったり、動悸やめまい、呼吸困難、吐きけ、ふるえなどに悩まされる。

2.〇 正しい。肝性脳症は、羽ばたき振戦を呈する疾患である。
羽ばたき振戦とは、手関節を背屈させたまま手指と上肢を伸展させ、その姿勢を保持するように指示すると、「手関節及び中指関節が急激に掌屈し、同時に、元の位置に戻そうとして背屈する運動」が認められる。手関節や手指が速くゆれ、羽ばたいているようにみえるので、このように呼ばれる。肝性脳症やウィルソン病、呼吸不全(CO2ナルコーシス)など代謝性神経疾患で出現する。肝性脳症とは、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気である。長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生する。 原因として、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発される。正常な肝なら代謝されるはずの有害物質(アンモニアなど)が脳に達することによって生じる。肝性脳症は多くの場合、治療により予後良好である。主に、①ラクツロース、②抗菌薬が用いられる。①合成糖であるラクツロースは、下剤として作用し、食物が腸を通過する速度を速めることで、体に吸収されるアンモニアの量が減少させる。②口から投与しても腸から吸収されない抗菌薬(リファキシミンなど)を処方することにより、腸に残り、消化中に毒素を作り出す細菌の数を減らす効果が期待できる。(※参考「肝性脳症」MSDマニュアル家庭版)

3.× 低カルシウム血症
低カルシウム血症とは、血漿タンパク質濃度が正常範囲内にある場合に血清総カルシウム濃度が8.8mg/dL(2.20mmol/L)未満であること、または血清イオン化カルシウム濃度が4.7mg/dL(1.17mmol/L)未満となった状態である。 原因には、副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症、および腎疾患がある。症状として、しびれ感、テタニー(手指の不随意な筋収縮)、けいれん(すべての形)、喉頭けいれん・気管支けいれん、歯牙発育障害などがある。

4.× 甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。

甲状腺機能亢進症とは?

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。

【治療後1週間の注意事項】
・不要な放射性ヨウ素を早く体外に出すため十分に水分を摂る。
・排泄後、2度水を流す。尿の飛散による汚染を軽減させるため便座に座る。
・汗に少量の放射性ヨウ素が出るから入浴は最後に入る。
・可能ならば1人で寝る。
・唾液や体液にごく少量の放射性ヨウ素が出るからキスやセックスを避ける。
・子供との親密に接触(距離1m以内)すること、近くで長時間過ごすこと(添い寝など)などは避ける。

 

 

 

 

 

問題33 気管支喘息で正しいのはどれか。

1.IgA抗体が上昇する。
2.気道狭窄は不可逆性である。
3.発作時には呼気延長がある。
4.日中に発作を起こしやすい。

答え.

解説

気管支喘息とは?

【症状】
喘鳴、呼吸困難、呼気延長など(1秒率の低下)、アレルギー反応やウイルス感染が誘引となる。

【治療】気道の炎症を抑えて、発作が起きない状態にする。発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため治療が難しくなる。そのため、日頃から気道の炎症を抑える治療を行い、喘息をコントロールすることが重要である。

1.× 「IgA抗体」ではなくIgE抗体が上昇する。
IgEとは、肥満細胞や好塩基球の細胞表面に存在している。ヒスタミン遊離によりアレルギー疾患を引き起こす。ちなみに、IgAとは、体内では2番目に多い免疫グロブリンで、鼻汁、涙腺、唾液、消化管、膣など、全身の粘膜に存在している。IgAは、粘膜の表面で病原体やウイルスと結合し、病原体やウイルスが持っている毒素を無効化して感染しないように阻止する働きがある。母乳(特に初乳)に多く含まれる。児が自分自身でも生産するため、徐々に濃度が上昇し10歳ごろに成人と同じレベルに達する。

2.× 気道狭窄は、「不可逆性」ではなく可逆性である。
なぜなら、通常、治療(例えば、吸入や内服)により気道を拡大することができるため。ただし、気管支喘息により生じた気道壁のリモデリングは、不可逆性気道の慢性炎症性疾患とされている。 気道壁のリモデリングとは、上皮下基底膜が肥厚する、気道平滑筋が肥大、増殖するなど、気道の形態が変化するといったことである。ちなみに、不可逆的とは、もとには戻らないという意味である。

3.〇 正しい。発作時には呼気延長がある
なぜなら、発作時は、気道の狭窄と炎症が生じるため。症状として、喘鳴、呼吸困難、呼気延長など(1秒率の低下)があげられ、誘因として、アレルギー反応やウイルス感染があげられる。

4.× 日中に発作を「起こしにくい」。
なぜなら、特定のトリガー(例えば、運動、冷たい空気、アレルゲン)によって引き起こされるため。したがって、夜間、特に早朝悪くなることが多く、日中は症状が良くなることが多い。また、風邪をひくと発作が起こりやすくなる。

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題34 肺血栓塞栓症で誤っているのはどれか。

1.肺静脈に血栓を認める。
2.悪性腫瘍に合併しやすい。
3.突然の呼吸困難で発症する。
4.下肢深部静脈の血栓が原因となる。

答え.

解説

肺血栓塞栓症とは?

肺血栓塞栓症とは、肺の血管(肺動脈)に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。多く原因は、足の深いところにある静脈(深部静脈)に血液の塊である血栓ができて、その血栓が血流に乗って心臓を介して肺動脈に詰まることである。

1.× 「肺静脈」ではなく肺動脈に血栓を認める。
肺血栓塞栓症とは、肺の血管(肺動脈)に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。

2.〇 正しい。悪性腫瘍に合併しやすい。
なぜなら、がんやがんの転移した腫瘍により、静脈周囲で拡大、静脈を圧迫し静脈の流れを悪くするため。血管の中では血液が固まりやすくなり、静脈血栓が出来やすくなる。また、骨転移や脳神経系の転移により、下肢麻痺などが生じると下肢の血流が悪くなり静脈血栓塞栓症が増加する。

3.〇 正しい。突然の呼吸困難で発症する。
肺血栓塞栓症とは、肺の血管(肺動脈)に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。

4.〇 正しい。下肢深部静脈の血栓が原因となる。
多く原因は、足の深いところにある静脈(深部静脈)に血液の塊である血栓ができて、その血栓が血流に乗って心臓を介して肺動脈に詰まることである。したがって、ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。

 

 

 

 

 

問題35 心房細動で誤っているのはどれか。

1.左房内血栓を生じやすい。
2.脳梗塞を起こしやすい。
3.脈は規則的である。
4.高齢者に多い。

答え.

解説

心房細動とは?

心房細動は、心原性脳塞栓症の原因として最も多い不整脈である。心房細動は、心臓がこまかく震えている状態である。血栓ができやすいため脳塞栓の原因となり最多である。心房細動の特徴として、心房の興奮が形・大きさともに不規則であり、基線が揺れている(f波)。心房が正常に収縮しないためにP波が消失し、QRS波が不規則である。

心房細動を洞調律に戻す非薬物療法には、カテーテルアブレーションのほかに電気的除細動という方法もある。電気的除細動を行うのは、心房細動が起こると①血圧が急に下がって強い症状のために動けなってしまうような場合、②抗不整脈薬が有効でない場合、③肥大型心筋症・心アミロイドーシスや心不全などがあるため抗不整脈薬を使うよりも電気的除細動の方が安全と判断される場合などである。

1.〇 正しい。左房内血栓を生じやすい。
なぜなら、心房細動は、心臓の中の左心房(左心耳)に、血液の滞りが続き、血液の塊、血栓が出来やすくなるため。

2.〇 正しい。脳梗塞を起こしやすい。
心房細動は、心原性脳塞栓症の原因として最も多い不整脈である。

3.× 脈は、「規則的」ではなく不規則的である。
したがって、AEDによる除細動が必要となる。自動体外式除細動器<AED>は心室細動に適応となる。AED(自動体外式除細動器)とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器である。

4.〇 正しい。高齢者に多い。
心房細動のリスク要因は、加齢である。 加齢のほか、高血圧、弁膜症、狭心症、心不全、心筋梗塞などの心臓に関連した病気、糖尿病、飲酒や喫煙の習慣のある方などである。

 

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