第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午後36~40】

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問題36 頭蓋骨の骨打ち抜き像がみられるのはどれか。

1.血友病
2.悪性リンパ腫
3.多発性骨髄腫
4.再生不良性貧血

答え.

解説

MEMO

打ち抜き像とは、レントゲン検査により、骨の一部が黒く抜けて見える像のことをいう。頭蓋骨の打ち抜き像は多発性骨髄腫に特徴的だが、癌の骨転移やまれに痛風でもみられることがある。多発性骨髄腫は成人の造血系腫瘍の10〜15%を占め、高齢化が進めばさらに高頻度になると予想される。高齢者で骨粗鬆症や貧血、尿蛋白が高度な場合は本症を念頭におくことが重要である。血清・尿中のM蛋白の増加や骨髄穿刺で異型形質細胞の増殖を確認することで診断が確定する。

1.× 血友病
血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。伴性劣性遺伝(男児に多い)で、生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。治療として、凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーションが行われる。

2.× 悪性リンパ腫
悪性リンパ腫とは、血液細胞(血液中に存在する細胞)の中のリンパ球ががん化する病気である。一般的に、首や腋(わき)の下、脚の付け根などにあるリンパ節にしこりが生じる。進行した場合の症状として、発熱、体重減少、寝汗をかきやすくなるなどである。悪性リンパ腫はがん細胞の形や性質などによって70以上もの種類に分類されており、それぞれ症状や進行の仕方などの特徴が異なる。そのため、治療方針もさまざまである。治療では、放射線治療や薬物療法、造血幹細胞移植などが行われる。

3.〇 正しい。多発性骨髄腫は、頭蓋骨の骨打ち抜き像がみられる。
多発性骨髄腫とは、形質細胞がクローン性に増殖するリンパ系腫瘍である。増殖した形質細胞やそこから分泌される単クローン性免疫グロブリンが骨病変、腎機能障害、M蛋白血症などさまざまな病態や症状を引き起こす。多発性骨髄腫の発症年齢は65~70歳がピークで男性が女性より多く約60%を占める。腫瘍の増大、感染症の合併、腎不全、出血、急性白血病化などで死に至る。主な症状として、頭痛、眼症状の他に①骨組織融解による症状(腰痛・背部痛・圧迫骨折・病的骨折・脊髄圧迫症状・高カルシウム血症など)や②造血抑制、M蛋白増加による症状(貧血・息切れ・動悸・腎機能障害)、易感染性(免疫グロブリン減少)、発熱(白血球減少)、出血傾向(血小板減少)などである。

4.× 再生不良性貧血
再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中 の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。

 

 

 

 

 

問題37 皮膚・粘膜の色素沈着が認められるのはどれか。

1.橋本病
2.アジソン(Addison)病
3.バセドウ(Basedow)病
4.クッシング(Cushing)症候群

答え.

解説
1.× 橋本病
橋本病とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。

2.〇 正しい。アジソン(Addison)病は、皮膚・粘膜の色素沈着が認められる。
副腎皮質機能低下症(Addison病:アジソン病)は、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。

3.× バセドウ(Basedow)病
バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。

4.× クッシング(Cushing)症候群
クッシング症候群とは、副腎皮質機能の亢進で生じる。Cushing症候群の主な症状は、①満月様顔貌や②中心性肥満などである。ちなみに、副腎皮質機能低下症は、Addison病(アジソン病)で、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。

 

 

 

 

 

問題38 関節リウマチで正しいのはどれか。

1.男性に多い。
2.近位指節間関節に好発する。
3.関節以外には症状はみられない。
4.リウマトイド因子陽性ならば関節リウマチである。

答え.

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

1.× 「男性」ではなく女性に多い。
男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。

2.〇 正しい。近位指節間関節に好発する
ほかにも、関節リウマチの関節破壊と変形は、①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などが起こりやすい。

3.× 関節以外には症状も「みられる」。
関節リウマチの症状として、①全身症状(発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなど)、②関節症状、③その他(内臓病変)などみられる。

4.× リウマトイド因子陽性ならば関節リウマチであると断定することはできない
リウマトイド因子〈RF〉とは、関節リウマチのマーカーである。IgGに対する抗体の総称であり、そのほとんどがFc部分に反応するIgM型の抗体である。リウマトイド因子が陽性となる病態と陽性率との関係について、リウマトイド因子は、比較的感度の高い検査であるが、特異度は決して高くないのが特徴である。シェーグレン症候群やC型肝炎、クリオグロブリン血症などでも高値となる。つまり、リウマトイド因子陽性が、必ずしも関節リウマチや自己免疫疾患の存在を示すものではない。

手の変形性関節症

Heberden結節(へバーデン結節):DIP関節に生じる。
Bouchard結節(ブシャール結節):PIP関節に生じる。

 

 

 

 

 

問題39 皮膚筋炎の症状で誤っているのはどれか。

1.近位筋の筋力低下
2.ヘリオトロープ疹
3.蝶形紅斑
4.筋肉痛

答え.

解説

多発性筋炎(皮膚筋炎)とは?

多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。

(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

1~2.4.〇 正しい。近位筋の筋力低下/ヘリオトロープ疹/筋肉痛は、皮膚筋炎の症状である。
多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。ヘリオトロープ疹は、皮膚筋炎の皮膚症状である。ヘリオトロープ疹とは、上眼瞼の腫れぼったい紅斑のことである。

3.× 蝶形紅斑は、皮膚筋炎の症状ではない。
蝶形紅斑とは、顔面で、鼻を中心に頬まで左右対称に生じる鮮紅色ないし暗紫紅色のわずかに隆起した丘疹のことで、蝶が羽を広げたような形にみえる。原因として、全身性エリテマトーデ(SLE)に特徴的な所見である。ちなみに、全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。

 

 

 

 

 

問題40 急性腎盂腎炎でみられないのはどれか。

1.黄疸
2.発熱
3.頻尿
4.肋骨・脊椎角部(CVA)の叩打痛

答え.

解説

急性腎盂腎炎とは?

急性腎盂腎炎とは、細菌が腎臓の中に入って、炎症が起きている状態である。 20~40歳代では、男女比は1対30である。なぜなら、膀胱炎からの逆行性感染によって生じることが多いため。したがって、解剖学的に尿道が短く膀胱炎になりやすい女性に多い。また、女性は男性よりも尿道が短く尿道口と肛門が近いため、細菌が膀胱へ侵入しやすいことが原因の一つとして挙げられる。症状が急に現れるが、治療が早くできると症状は3日~5日で落ち着く。 しかし、症状が悪くなれば入院する必要があるため、注意する必要がある。

1.× 黄疸は、急性腎盂腎炎でみられない。
黄疸とは、皮膚や粘膜が胆汁色素(ビリルビン)で黄色に染まることで、胆汁色素の血漿中濃度の上昇により生じる。原因としては、①溶血によるもの、②肝細胞の障害によるもの、③胆汁の流れの障害によるもの、④体質によるもの、などがある。胆汁は肝臓で作られ、胆管を通じて十二指腸に排出されるが、その流れが障害されたときに生じる黄疸のことを閉塞性黄疸と呼ぶ。多くは総胆管結石や腫瘍により、胆管が閉塞することが原因となる。

2~4.〇 正しい。発熱/頻尿/肋骨・脊椎角部(CVA)の叩打痛は、急性腎盂腎炎の症状である。
急性腎盂腎炎とは、細菌が腎臓の中に入って、炎症が起きている状態である。腰背部の叩打痛が腎盂腎炎と膀胱炎との鑑別で確認する所見である。腎盂腎炎は、尿路感染症の一つで膀胱から尿管、腎臓へと細菌が上行して発症する。膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。側腹部痛の有無の確認には、腰背部の叩打することで確認する。

尿路感染症

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」より)

 

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