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問題41 パーキンソン(Parkinson)病の特徴的にみられるのはどれか。
1.姿勢反射障害
2.痙性対麻痺
3.体幹失調
4.平衡障害
答え.1
解説
パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
1.〇 正しい。姿勢反射障害は、パーキンソン病の特徴的にみられる。
パーキンソン病の4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害があげられる。健常人は、姿勢反射によって、体が傾いたときに、重心を移動してバランスを取る。それでも耐えきれないときは、足を踏み出して転倒を防ぐ(立ち直り反射)。 これらが障害されて転倒し易くなった状態を姿勢反射障害と呼ぶ。
2.× 痙性対麻痺
対麻痺とは、手や足の両側とも同時に麻痺を来した状態である。 脊髄障害が原因のことが多い。
3.× 体幹失調
体幹失調とは、随意運動遂行時に働く筋群に協調性が失われ、そのため運動が円滑に行われず開脚歩行などを呈する症状である。小脳虫部の損傷によって起こる。
4.× 平衡障害
平衡機能障害とは、姿勢を調節する機能の障害であり、四肢・体幹に異常がないにも関わらず起立や歩行に何らかの異常を来すものをさす。原因として、メニエール病や中耳性障害、抹消神経、中枢神経の障害などがあげられる。激しいめまいや耳鳴り、吐き気などの症状を伴うこともある。
問題42 病変部位と神経症状の組合せで正しいのはどれか。
1.後頭葉:ふらつき
2.錐体外路系:感覚低下
3.錐体路系:麻痺
4.小脳系:失語
答え.3
解説
1.× 後頭葉は、「ふらつき」ではなく視覚情報の処理である。
ちなみに、主に、ふらつき(協調性)は小脳系が担っている。
2.× 錐体外路系は、「感覚低下」ではなく運動制御である。
錐体外路とは、錐体路以外の全ての中枢神経系の経路のことで姿勢・運動に対する基本的かつ無意識的な運動をコントロールし、運動が円滑に行うことができるように筋緊張などを調節している。自分の意思とは関係なく症状が出現し、不随意運動による症状と筋緊張の異常を認め、明らかな運動麻痺が無いことが特徴である。
3.〇 正しい。錐体路系は、麻痺である。
錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。
4.× 小脳系は、「失語」ではなくふらつき(協調性)である。
ちなみに、失語は側頭葉である。
錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。
【錐体路徴候】
・深部腱反射亢進
・病的反射(+)
・表在反射(消失)
・痙性麻痺
【錐体外路症状】
・深部腱反射正常
・表在反射(+)
・病的反射(-)
・不随意運動の出現
問題43 梅毒の症状で正しいのはどれか。
1.子宮頸管炎
2.尿道分泌物
3.免疫不全
4.ゴム腫
答え.4
解説
梅毒とは、5類感染症の全数把握対象疾患であり、スピロヘータ(細菌)の一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。性行為や胎盤を通じて感染する。梅毒に特徴的な症状として、陰茎・外陰部を中心に生じる無痛性の硬結(指で触れることのできる硬い丘疹)やバラ疹(全身にできる淡い紅斑)などがあり、進行すると神経系の病変を生じて死に至ることもある。
【臨床的特徴】
Ⅰ期梅毒:感染後3~6週間の潜伏期の後に、感染局所に初期硬結や硬性下疳、無痛性の鼠径部リンパ節腫脹がみられる。
Ⅱ期梅毒:感染後3か月を経過すると皮膚や粘膜に梅毒性バラ疹や丘疹性梅毒疹、扁平コンジローマなどの特有な発疹が見られる。
経過晩期:感染後3年以上を経過すると顕症梅毒としてゴム腫、梅毒によると考えられる心血管症状、神経症状、眼症状などが認められることがある。なお、感染していても臨床症状が認められないものもある。先天梅毒は、梅毒に罹患している母体から出生した児で、①胎内感染を示す検査所見のある症例、②Ⅱ期梅毒疹、骨軟骨炎など早期先天梅毒の症状を呈する症例、③乳幼児期は症状を示さずに経過し、学童期以後にHutchinson3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、Hutchinson歯)などの晩期先天梅毒の症状を呈する症例がある。また、妊婦における梅毒感染は、先天梅毒のみならず、流産及び死産のリスクとなる。(※一部引用:「梅毒」厚生労働省HPより)
1.× 子宮頸管炎は、クラミジア・淋菌性尿道炎(淋菌感染症)の症状である。
クラミジアとは、日本国内で最も多い性感染症(STD)の一つで、クラミジア感染症とも呼ばれており、クラミジア・トラコマチスという病原体(細菌)が、性行為などにより粘膜に感染する。 感染した場合、クラミジア性尿道炎(男性)、クラミジア性子宮頚管炎(女性)、咽頭クラミジア(男性・女性)などの病気を引き起こす。また、出産時に母子感染する場合、分娩時の産道感染を引き起こす。出生後1週間前後に発症する結膜炎(目が赤くなり「目やに」の増加)、出生後1カ月前後には肺炎( 咳、哺乳力が低下)する。陽性者には内服薬(抗菌薬)を投与して治療する。ちなみに、淋菌感染症とは、淋菌の感染による性感染症である。淋菌は弱い菌で、患者の粘膜から離れると数時間で感染性を失い、日光、乾燥や温度の変化、消毒剤で簡単に死滅する。したがって、性交や性交類似行為以外で感染することはまれである。女性では男性より症状が軽くて自覚されないまま経過することが多く、また、上行性に炎症が波及していくことがある。米国ではクラミジア感染症とともに、骨盤炎症性疾患、卵管不妊症、子宮外妊娠、慢性骨盤痛の主要な原因となっている。その他、咽頭や直腸の感染では症状が自覚されないことが多く、これらの部位も感染源となる。淋菌感染症は何度も再感染することがある。
3.× 免疫不全は、後天性免疫不全症候群〈AIDS〉の症状である。
後天性免疫不全症候群〈AIDS〉は、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉によって引き起こされ、伝播は主に性行為、血液接触、母子感染によるものである。ちなみに、ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。後天性免疫不全症候群(AIDS)の状態にあると判断できる疾患(エイズ指標疾患)は、23種類ある。AIDS指標疾患としてもっとも頻度が高いのは、ニューモシスチス肺炎(39.3%)、ついでサイトメガロウイルス感染症(13.4%)、カンジダ症(13.1%)、活動性結核(7.1%)、カポジ肉腫(4.5%)、非結核性抗酸菌症(3.8%)の順であった。
4.〇 正しい。ゴム腫は、梅毒の症状である。
ゴム腫とは、ゴムのような腫瘍のことをいい、ゴム腫は周りの細胞を破壊する。梅毒の経過晩期において、感染後3年以上を経過すると顕症梅毒としてゴム腫、梅毒によると考えられる心血管症状、神経症状、眼症状などが認められることがある。
問題44 35歳の男性。7月の日曜日に会社の野球チームの練習に参加していた。当日は晴天で気温32°C、湿度80%であった。守備中に頭痛と倦怠感を訴えて倒れ、救護室に運ばれた。意識はあるが、体は熱く、多量の発汗を認めた。
正しい対応はどれか。
1.酸素吸入を行う。
2.身体を毛布で温める。
3.ブドウ糖を補給する。
4.ナトリウムを含んだ水分を補給する。
答え.4
解説
・35歳の男性。
・野球チームの練習に参加(晴天、気温32°C、湿度80%)。
・頭痛と倦怠感を訴えて倒れた。
・意識はあるが、体は熱く、多量の発汗。
→本症例は、熱中症が疑われる。熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指す。屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、 救急搬送されたり、場合によっては死亡することもある。主な初期症状として、めまい(目眩、眩暈)や立ちくらみ、一時的な失神などがあげられる。
1.× 酸素吸入を行う。
酸素吸入の目的は、低酸素血症の改善である。適用基準は、動脈血酸素分圧が、55mmHg以下(酸素飽和度が88%以下)があげられる。
2.× 身体を毛布で温める。
身体を毛布で温める目的は、低体温症の改善である。本症例の熱中症の疑いがあるものに対しては逆効果である。低体温症とは、深部体温が35℃未満となることで、症状は、シバリングおよび嗜眠から錯乱、昏睡および死亡へと進行する。脱水状態では、汗が出にくくなり、室温が高い場合には体温上昇を伴う。
3.× ブドウ糖を補給する。
ブドウ糖の補給の目的は、低血糖症状の改善である。低血糖症状とは、血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現した症状をさす。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。
4.〇 正しい。ナトリウムを含んだ水分を補給する。
熱中症のときには、上手な水分・塩分補給がポイントである。水分だけでなく塩分も補給することで、症状の改善が期待できる。塩分の補給には、塩分を含む飴・タブレットや梅干しなどもよい。
問題45 60歳の男性。糖尿病で1日4回インスリン注射を行っている。施術中に眠気を訴え生あくびをするようになった。皮膚は湿潤し、頻脈が認められた。
まず行うべきことはどれか。
1.昼寝
2.飲水
3.砂糖服用
4.インスリン自己注射
答え.3
解説
・60歳の男性(糖尿病)。
・1日4回インスリン注射を行っている。
・施術中:眠気を訴え生あくびをする。
・皮膚は湿潤、頻脈があり。
→本症例は、糖尿病による低血糖症状が疑われる。低血糖症状とは、血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現した症状をさす。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。
1~2.× 昼寝/飲水
糖分を含む飲食物を摂取する必要がある。
3.〇 正しい。砂糖服用をまず行うべきである。
本症例は、低血糖症状が疑われる。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。これにより、血糖値は上昇し、症状の改善が見込める。
4.× インスリン自己注射
低血糖症状に対して逆効果である。なぜなら、インスリンは血糖低下の働きがあるため。インスリンとは、膵臓のβ細胞で産生されるペプチドホルモンである。血中を流れるブドウ糖が、肝臓、脂肪細胞、骨格筋細胞に取り込まれるよう促し、炭水化物、タンパク質、脂肪の代謝を調節する。
1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。
①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。
【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)
【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。
(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)