第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午後46~50】

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問題46 広範囲熱傷の処置で誤っているのはどれか。

1.無菌的な操作
2.壊死組織の切除
3.植皮による創閉鎖
4.抗菌薬の全身投与

答え.

解説

広範囲熱傷の処置

広範囲熱傷患者は、皮膚のバリア機能の喪失により、通常健常人には感染をおこさない病原性の弱い病原菌による感染(日和見感染)を生じやすい。また、熱傷が広範囲で生命を脅かす場合は、最初に最大の焼痂を切除し、できるだけ広範囲の熱傷創をできるだけ早期に閉鎖する。 (熱傷の焼痂切開 四肢の全周に及ぶ焼痂は末梢循環を収縮させ、胸郭の焼痂は呼吸を抑制する。焼痂切開は、焼痂を切開して収縮を解除することで、末梢循環を回復させ、十分な換気を可能にする外科的処置である。

1.〇 正しい。無菌的な操作
広範囲熱傷患者は、皮膚のバリア機能の喪失により、通常健常人には感染をおこさない病原性の弱い病原菌による感染(日和見感染)を生じやすいため。

2~3.〇 正しい。壊死組織の切除/植皮による創閉鎖
なぜなら、感染のリスクを軽減し、健康な組織が再生するのを助けるため。壊死組織は新しい皮膚の成長を妨げ、感染の温床になる。

4.× 抗菌薬の全身投与は、広範囲熱傷の処置ではない。
抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。

 

 

 

 

 

問題47 急性炎症の症状で誤っているのはどれか。

1.発赤
2.腫脹
3.疼痛
4.冷感

答え.

解説

炎症の4徴候とは?

炎症の4徴候は、発赤、熱感、腫脹、疼痛をいい、そこに「機能障害」を含め、炎症の5大徴候と呼ぶことがある。

1.〇 正しい。発赤
発赤とは、皮膚や粘膜の一部が充血して赤くなることである。炎症により毛細血管の拡張と、局所の血流が増加していることを指す。

2.〇 正しい。腫脹
腫脹とは、炎症によって毛細血管の透過性が亢進することである。炎症などが原因で、からだの組織や器官の一部に血液成分が溜まってはれ上がる。

3.〇 正しい。疼痛
疼痛とは、痛みのことで体に損傷が起こったこと、あるいは起こった可能性があることを知らせる不快な感覚である。

4.× 冷感は、急性炎症の症状ではない。
四肢冷感とは、手足が冷たくなること、または冷たく感じることである。原因として様々であるが、主に①自律神経の不調(自律神経失調症など)や②ホルモンバランスの乱れ(更年期障害など)、③血行障害(閉塞性動脈硬化症まど)、④循環不全(チアノーゼ、心不全、血圧低下、膠原病)などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題48 蜂窩織炎で正しいのはどれか。

1.発赤を伴わない。
2.真菌感染が多い。
3.びまん性化膿性炎症である。
4.切開排膿が基本となる。

答え.

解説

蜂窩織炎とは?

蜂窩織炎とは、皮膚とその下にある皮下脂肪にかけて、細菌が入り込んで、感染する皮膚の感染症である。スキンケアが重要である。また、浮腫が出現した時の対処として、①スキンケア、②マッサージによるリンパドレナージ、③圧迫療法、④浮腫減退運動療法を総合的に行う。一般的に、 ブドウ球菌とレンサ球菌が原因となる。接触感染の感染経路をとり、個室隔離の必要はない。

1.× 発赤を「伴う」。
蜂窩織炎の症状は、患部の皮膚に赤み、腫れ、熱感、痛みが出現し、急速に広がる。また、発熱、悪寒、倦怠感などを伴うことも多くある。

2.× 「真菌」ではなく細菌感染が多い。
蜂窩織炎の原因は、一般的にブドウ球菌とレンサ球菌である。他にも大腸菌や緑膿菌などで生じる。

3.〇 正しい。びまん性化膿性炎症である
蜂窩織炎は、真皮から皮下脂肪組織にかけてのびまん性化膿性炎症性疾患で、四肢(特に下腿)に好発する。ちなみに、びまん性とは、病変が比較的均等に広がっている状態をさす。化膿性炎症とは、滲出物に多量の好中球を含む炎症のことをさす。

4.× 切開排膿が基本となる。
蜂窩織炎は病原菌が引き起こす感染症であるため、最も原因菌の可能性が高い細菌を標的とした抗菌薬を投与するのが効果的である。切開排膿とは、ドレナージのことをいい、血液・膿・滲出液・消化液などを感染原因の除去や減圧目的で患者の体外に誘導、排泄することをさす。抗菌薬投与で軽快しない場合に適応となる。

 

 

 

 

 

問題49 腫瘍診断の検査の組合せで正しいのはどれか。

1.細胞診:悪性度判定
2.超音波検査:侵襲的検査
3.MRI検査:放射線被曝
4.腫瘍マーカー:早期癌検出

答え.

解説

経腟超音波検査とは?

経腟超音波検査とは、婦人科で行う超音波検査の一つで、子宮や卵巣などを観察するための検査である。小さな異常も確認することができる、婦人科では、内診と合わせて基本的な検査の一つである。経腟エコー検査では、子宮や卵巣の中の状態まで詳しく観察することができる。

1.〇 正しい。悪性度判定は、細胞診を用いる。
細胞診とは、病気が疑われる臓器に皮膚表面から針を刺し、病変の細胞を吸引採取し、顕微鏡で観察し、良性悪性の判定や病変の推定(腫瘍なのか炎症なのかなど)を行う検査である。

2.× 超音波検査は、「侵襲的検査」ではなく非侵襲的検査である。
侵襲とは、生体を傷つけることを意味している。 手術による切除や、皮膚・身体の開口部に器具を挿入するなど、身体に負担を与える治療法のことを侵襲的治療と呼ぶ。 対義として、手術を必要としない非侵襲的治療(投薬治療や酸素療法など)がある。ちなみに、超音波検査は非侵襲的な画像診断法で、高周波の音波を利用して体内の組織を視覚化する。

3.× 放射線被曝は、「MRI検査」ではなくレントゲン検査やCT検査である。
核磁気共鳴画像法(MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。一方、CT検査とは、脳内の腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位は低吸収域(黒)としてうつる。エックス線を使用した撮影である。

4.× 腫瘍マーカーは、早期癌検出には適さない
なぜなら、腫瘍マーカー検査は、がんの診断の補助や、診断後の経過や治療の効果をみることを目的に行うため。腫瘍マーカーとは、がんの種類によって特徴的に作られるタンパク質などの物質である。がん細胞やがん細胞に反応した細胞によって作られるが、がんの有無やがんがある場所は、腫瘍マーカーの値だけでは確定できないため、画像検査など、その他の検査の結果も合わせて、医師が総合的に判断する必要がある。また、肝障害、腎障害、飲酒や喫煙などの生活習慣、いつも飲んでいる薬、がん以外にかかっている病気などの影響により、がんの有無とは無関係に高い値になることもあり、反対に、がんがあっても値が高くならないこともある。

 

 

 

 

 

問題50 輸血する際の指標で誤っているのはどれか。

1.血圧
2.呼吸数
3.尿量
4.中心静脈圧

答え.

解説

輸血後の観察項目

輸血開始後5分間は急性反応確認のため、ベッドサイドを離れないで観察する。 観察項目は、血圧、脈拍、体温、酸素飽和度(SpO2)である。

1.〇 正しい。血圧
なぜなら、輸血を受けることで、蕁麻疹や発熱、呼吸困難や血圧の変動などの副作用や感染症が起こるため。

2.△ 呼吸数は、輸血する際の指標ではない。
ただし、輸血を受けることで、蕁麻疹や発熱、呼吸困難や血圧の変動などの副作用や感染症が起こるため、経過を観察する必要がある。これは、輸血に随伴する循環過負荷による心不全が起こるため生じる。もし、呼吸数は、輸血する際の指標ではないと言い切れる根拠をご存じの方いらしたら、コメント欄にてご教授ください。

3.〇 正しい。尿量
なぜなら、急性溶血性輸血の副作用が生じた際は、直ちに輸血を中止する必要があるため。血管を確保した状態で点滴に代え、全速で滴下する。患者の全身状態をモニターし,呼吸循環状態尿量保持(>100mL/時)に専念する必要がある。

4.〇 正しい。中心静脈圧
なぜなら、輸血の際の中心静脈圧の急激な上昇は、循環過負荷の可能性があるため。ちなみに、中心静脈圧とは、心臓の右心房近くの大静脈の血圧のことをいう。中心静脈圧が上昇している場合、循環血液量が上回る状態、静脈うっ血の右心不全状態、心タンポナーデ等の心拡張障害が疑われる。反対に中心静脈圧が低下している場合、循環血液量が減少している状態(大量出血、脱水、熱傷など)が疑われる。

 

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