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問題1 癌とそのリスク因子の組合せで誤っているのはどれか。
1.胃癌:塩・塩蔵物
2.大腸癌:肥満
3.乳癌:ヒトパピローマウイルス
4.食道癌:喫煙
答え.3
解説
1.〇 正しい。胃癌:塩・塩蔵物
胃癌は、塩蔵食品が危険因子の一つである。他にも、ヘリコバクター・ピロリ感染、アルコール、喫煙、遺伝などがある。 一方、リスクを下げるものとして野菜・果物、緑茶などがある。ちなみに、塩蔵品とは、魚介類など腐敗しやすい食品を食塩に漬けて細菌を繁殖させにくくし、長期保存できるように加工された食品である。塩蔵品には、塩蔵魚卵(たらこ、いくらなど)、塩蔵魚(めざし、塩サケなど)や塩辛、練りうになどがある。
2.〇 正しい。大腸癌:肥満
大腸癌は、生活習慣(喫煙や肥満)により発生する。不健康な食生活(赤肉や加工肉の過剰摂取、果物や野菜の摂取不足)なども関連する。
3.× ヒトパピローマウイルスは、「乳癌」ではなく子宮頸がんである。
乳癌の原因は、不明である。ただし、乳がんのリスク要因は、①初経年齢が早い、②閉経年齢が遅い、③出産歴がない、④初産年齢が遅い、⑤授乳歴がないことなどがあげられる。閉経後の肥満は乳がん発症の高リスクであると考え、 また閉経後の女性では運動による乳がんリスク減少の可能性が示されている。一方、子宮頸がんとは、子宮頸部(子宮下部の管状の部分)に生じるがんのことである。子宮頸がんは、子宮がんのうち約7割程度を占める。近年、20~30歳代の若い女性に増えてきており、30歳代後半がピークとなっている。子宮頸がんの原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染である。このウイルスは性的接触により子宮頸部に感染する。初期では無症状だが、進行するにつれて帯下の増加や悪臭のある帯下、周囲臓器の浸潤による疼痛などの症状が現れる。子宮頸がんの予防方法は、HPVワクチンを接種することで、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防することが挙げられる。また、子宮頸がん検診を定期的に受けることで、がんになる過程の異常(異形成)やごく早期のがんを発見し、医師と相談しながら、経過観察したり、負担の少ない治療につなげたりすることができる。
4.〇 正しい。食道癌:喫煙
食道癌とは、食道に発生した上皮性腫瘍のことである。組織学的に約90%が扁平上皮癌である。好発部位は、胸部中部食道、胸部下部食道の順で、胸部中部食道が約50%を占める。喫煙のほか、アルコール、喫煙、熱い食事、Barrett食道、アカラシアなどが誘因である。
問題2 健康増進法との関連性が低いのはどれか。
1.健康日本21
2.国民健康・栄養調査
3.受動喫煙対策
4.長寿医療制度
答え.4
解説
健康増進法は、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。平成14(2002)年に制定された。
【市町村が行う健康増進事業】
①健康手帳、②健康教育、③健康相談、④訪問指導、⑤総合的な保健推進事業、⑥歯周疾患検診、⑦骨粗鬆症検診、⑧肝炎ウイルス検診、⑨がん検診、⑩健康検査、⑪保健指導などである。
【都道府県の役割】
都道府県は、都道府県健康増進計画において、管内市町村が実施する健康増進事業に対する支援を行うことを明記する。都道府県保健所は、市町村が地域特性等を踏まえて健康増進事業を円滑かつ効果的に実施できるよう、必要な助言、技術的支援、連絡調整及び健康指標その他の保健医療情報の収集及び提供を行い、必要に応じ健康増進事業についての評価を行うことが望ましい。都道府県は、保健・医療・福祉の連携を図るとともに、市町村による健康増進事業と医療保険者による保健事業との効果的な連携を図るために、地域・職域連携推進協議会を活性化していくことが望ましい。
1.〇 健康日本21
日本における健康対策の現状や第三次国民健康づくり対策(健康日本21)の最終評価で提起された課題などを踏まえ、第四次国民健康づくり対策として、21世紀における第二次国民健康づくり運動「健康日本21(第二次)」が平成24年6月に策定された。健康日本21(第二次)の期間は、平成25年度から平成34年度までであり、①健康寿命の延伸と②健康格差の縮小などが盛り込まれた。健康日本21(第二次)では、生活習慣病の予防やこころの健康など5つの分野にわたり、53項目の数値目標を設定している。健康日本21(第二次)の目標項目として、①「健康寿命の延伸と健康格差の縮小の実現」、②「生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底」、③「社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上」、④「健康を支え、守るための社会環境の整備」、⑤「生活習慣および社会環境の改善」があげられている。(※参考:「健康日本21(第二次)」厚生労働省HPより)
2.〇 国民健康・栄養調査
国民健康・栄養調査とは、国民の健康状態、生活習慣や栄養素摂取量を把握するための調査である。 毎年、食生活状況、各種身体・血液検査や飲酒、喫煙、運動習慣などを調べており、国における健康増進対策や生活習慣病対策に不可欠な調査となっている。国民健康・栄養調査は、『健康増進法』に基づき、国民の身体の状況、栄養素等摂取状況および生活習慣の状況についての調査で、標本調査により実施される。
3.〇 受動喫煙対策
望まない受動喫煙の防止を目的とする改正健康増進法が平成30年7月に成立した。この改正により、学校・病院等には令和元年7月1日から原則敷地内禁煙(屋内全面禁煙)が、飲食店・職場等には令和2年4月1日から原則屋内禁煙が義務づけられている。
4.× 長寿医療制度は、健康増進法との関連性が低い。
長寿医療制度とは、75歳以上の高齢者の方々に「生活を支える医療」を提供するとともに、これまで長年、社会に貢献してこられた方々の医療費を国民みんなで支える「長寿を国民皆が喜ぶことができる仕組み」である。急速な高齢化に伴い老人医療費が増大する中、現役世代と高齢者世代の負担を明確化し、公平で分かりやすい制度にするため、老人保健制度を廃止し、平成20年4月から75歳以上の方を原則対象として「長寿医療制度(後期高齢者医療制度)」が創設された。
問題3 喫煙と肺癌発生の疫学的因果関係の検討で正しい組合せはどれか。
1.関連の強固性:たばこの煙には様々な発がん物質が含まれる。
2.関連の一致性:肺癌発生率は喫煙者が非喫煙者に比べ高い。
3.関連の時間性:長期間の喫煙歴が肺癌の発生に先行する。
4.関連の整合性:喫煙と肺癌発生の関連は、様々な国の研究で認められる。
答え.3
解説
疫学的因果関係とは、疫学的方法により証明された法的因果関係のことをいう。
【疫学的因果関係の判定基準】
①時間性:暴露が疾患の発生よりも前に存在する。
②一致性:複数の同様の関連性がみられる。
③強固性:相対危険比が高い。
④特異性:要因と結果に特異的な関係を認める。
⑤整合性:生物学的に矛盾なく説明できる。
1.× たばこの煙には様々な発がん物質が含まれるのは、「関連の強固性」ではなく関連の整合性である。
たばこの煙には様々な発がん物質が含まれる。これは、肺癌の生物学的な可能性を示すものである。
2.× 肺癌発生率は喫煙者が非喫煙者に比べ高いのは、「関連の一致性」ではなく関連の強固性である。
肺癌発生率は喫煙者が非喫煙者に比べ高い。これは、喫煙と肺癌の間に存在する統計的な関連性を示している。
3.〇 正しい。関連の時間性:長期間の喫煙歴が肺癌の発生に先行する。
長期間の喫煙歴が肺癌の発生に先行する。関連の時間性とは、暴露が疾患の発生よりも前に存在することをさす。
4.× 喫煙と肺癌発生の関連は、様々な国の研究で認められるのは、「関連の整合性」ではなく関連の一致性である。
世界中の様々な文化や地域で喫煙と肺癌の間に一貫した関連性が見られる。研究の結果が一貫性(一致性)を持つことを示している。
問題4 近年の我が国の死因で最も多いのはどれか。
1.悪性新生物
2.心疾患
3.脳血管疾患
4.老衰
答え.1
解説
死因別にみると、死因順位の第1位は悪性新生物<腫瘍>(全死亡者に占める割合は 26.5%)、第2位は心疾患(高血圧性を除く)(同 14.9%)、第3位は老衰(同 10.6%)となっている(データ引用:「令和3年人口動態統計月報年計の概況」厚生労働省HPより)。
1.〇 正しい。悪性新生物は、近年の我が国の死因で最も多い。
第1位は悪性新生物<腫瘍>(全死亡者に占める割合は 26.5%)である。
2.× 心疾患
第2位は心疾患(高血圧性を除く)(同 14.9%)である。
3.× 脳血管疾患
第4位は脳血管疾患(同 15.7%)である。
4.× 老衰
第3位は老衰(同 10.6%)である。
問題5 介護予防対策で有用性が低いのはどれか。
1.がん対策
2.スタンダード・プリコーションの実施
3.生活習慣病の予防
4.ロコモティブシンドロームの予防
答え.2
解説
1.〇 がん対策
国内の死因で最も多いがんに対する医療レベルの更なる向上を目指し、がん対策基本法が制定された。がん対策基本法の目標は、 「地域格差がないがん治療の提供」「患者の意向を尊重した、治療方法の選択」などである。がん対策基本法とは、がんの治療法や予防法、早期発見対策などを効率的・計画的に推進するため、平成18年に定められた法律である。
2.× スタンダード・プリコーションの実施は、介護予防対策で有用性が低い。
スタンダード・プリコーションは、感染症の予防策である。スタンダード・プリコーションとは、標準予防策ともいい、感染症の疑いや診断の有無にかかわらず、すべての患者に共通して実施される感染対策で、汗を除くすべての湿性生体物質(血液・体液・分泌物・排泄物・損傷した皮膚・粘膜)を感染源と見なし、対処する予防策である。
3.〇 生活習慣病の予防
生活習慣病とは、「食習慣、運動習慣、休養の取り方、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・進展に関与する疾患群」と定義されている。生活習慣病の背景因子として、①遺伝性因子、②環境因子、③生活習慣因子が考えらえているが、「生活習慣因子」は生活習慣病の積極的予防に最も重要な要素とされている。
4.〇 ロコモティブシンドロームの予防
ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害により移動能力が低下し、「要介護」のリスクが高い状態のことである。(提唱:日本整形外科学会)予防策として、片脚立位・スクワットからなる「ロコトレ」を行うよう推奨している。対象者がすでに運動器の障害や身体機能低下を有している場合も多いため、トレーニングの際には、疼痛や転倒などに十分配慮して行う必要がある。