第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午前126~128】

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問題126 エプスタイン・バーウイルス感染と関連があるのはどれか。

1.肝細胞癌
2.子宮頸癌
3.成人T細胞白血病
4.バーキット(Burkitt)リンパ腫

答え.4

解説
1.× 肝細胞癌
肝細胞癌とは、肝臓の細胞ががん化したものである。肝細胞がんの発生には、B型肝炎ウイルスC型肝炎ウイルスの感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などによる、肝臓の慢性的な炎症や肝硬変が影響している。肝臓は、肝動脈と門脈の二重血流支配を受けており、肝細胞癌は主に肝動脈からの血流支配を受けている。そのため、肝細胞癌を支配する肝動脈を塞栓物質で血流遮断することで治療する。

2.× 子宮頸癌
子宮頸がんとは、子宮頸部(子宮下部の管状の部分)に生じるがんのことである。子宮頸がんは、子宮がんのうち約7割程度を占める。近年、20~30歳代の若い女性に増えてきており、30歳代後半がピークとなっている。子宮頸がんの原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染である。このウイルスは性的接触により子宮頸部に感染する。初期では無症状だが、進行するにつれて帯下の増加や悪臭のある帯下、周囲臓器の浸潤による疼痛などの症状が現れる。

3.× 成人T細胞白血病
成人T細胞白血病とは、HTLV-Ⅰ(ヒトT細胞白血病ウイルス)というウイルス感染が原因である感染症である。このウイルスに感染した白血球中のT細胞ががん化し、それが無制限に増殖することで発症する。主に母乳を介して母子感染し、長い潜伏期間を経た後、成人T細胞白血病を発症することが多い。

4.〇 正しい。バーキット(Burkitt)リンパ腫は、エプスタイン・バーウイルス(Epsteir Barrウイルス:EBウイルス)感染と関連がある。
バーキットリンパ腫とは、悪性リンパ腫のうち非ホジキンリンパ腫に分類される高悪性度のB細胞リンパ腫である。成人では悪性リンパ腫の1~2%程度あるが、小児では25~40%を占め、比較的若い人に多く発症する。女性1人に対し、男性が2~3人で男性に多い傾向がある。キスを介して感染する。

ヒトT細胞性白血病ウイルスとは?

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)というリンパ球の悪性腫瘍や、HTLV-1関連脊髄症(HAM)と呼ばれる慢性の神経疾患の原因ウイルスで、日本に現在約80万人の感染者が存在すると推定されている。約40年以上の潜伏期の後に年間1000人に1人の割合で発症するとされている。ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の主な感染経路は、①性的接触、②血液感染、③母子感染である。母乳からウイルスが感染することが証明されている感染症は、①HIV(ヒト免疫不全ウイルス) 、②HTLV1(成人T 細胞白血病ウイルス )、③CMV(サ イトメガロウイルス)である。母子感染では、主に経母乳感染することから、母子感染率を減らすには人工栄養が最も確実な方法である。

【母乳における対応】
①人工栄養:もっとも確実で推奨される。感染源となるリンパ球を含んだ母乳を遮断できる。
②短期母乳:母体から移行抗体が存在するとされる生後90日以内の授乳のみ実施。
③加工母乳:搾乳して一定時間冷凍保存した母乳を与える。

 

 

 

 

 

問題127 悪性非上皮性腫瘍はどれか。

1.乳頭腫
2.腺癌
3.骨肉腫
4.血管腫

答え.3

解説


1.× 乳頭腫は、良性上皮性腫瘍である。
上皮性腫瘍とは、皮膚の表皮のように、表面をおおう細胞(上皮)に発生する腫瘍をいう。乳房にできる上皮性腫瘍としては、乳管のなかにできる良性の乳管内乳頭腫や乳管に分泌液が溜まり袋状になった囊胞内にできる嚢胞内乳頭腫などがある。これらは、超音波画像診断などでは腫瘤性の病変として認識されるが、乳頭状型の非浸潤性乳管がんとの鑑別診断をすることは時に非常に難しいことがあり、針生検で乳管内乳頭腫とされた場合でも、画像診断で非浸潤性乳管がんを疑う場合には切開生検を行い、診断を確定する必要がある。

2.× 腺癌は、良性上皮性腫瘍である。
腺癌とは、腺組織とよばれる上皮組織から発生するがんである。 胃、腸、子宮体部、肺、乳房、卵巣、前立腺、肝臓、膵臓、胆のうなどに発生する。なかでも、胃がんの90%以上は、胃壁の最も内側の粘膜上皮細胞から発生する腺癌である。

3.〇 正しい。骨肉腫は、悪性非上皮性腫瘍である。
骨肉腫とは、原発性悪性骨腫瘍の中で最も多い。10歳代に好発し、大腿骨遠位部と脛骨近位部の骨幹端部に多く発生する。骨Paget(骨ページェット病)などに続発する場合がある(二次性骨肉腫)。肺転移が多いが、5年生存率は近年70%以上にまで改善してきている。

4.× 血管腫は、良性非上皮性腫瘍である。
血管腫とは、赤あざの症状が現れる血管の異常である。血管の拡張や増殖によってできる良性の腫瘍で、出生時から大きさが変わらない血管腫を「血管奇形」ともいう。血管腫の根本的な原因は明らかになっておらず、ホルモンバランスや外傷、感染症など外的な刺激が要因だと考えられている。

いちご状血管腫とは?

いちご状血管腫とは、乳児血管腫ともいい、未熟な毛細血管が増殖してできる赤アザのことをさす。まれつきのあざではなく、赤ちゃんや乳幼児の生後数週以内に湿疹のような状態で現れ、表面がイチゴ状になり急速に範囲が広がったり盛り上がりを呈するようになる。体の表面、どこにでもできる赤あざである。多くは徐々に縮小し、ほとんどわからなくなるものの、稀に皮膚委縮や瘢痕を残す例もあり、7歳以降に存在するものは、手術となる場合もある。

 

 

 

 

 

問題128 扁平上皮癌でみられるのはどれか。

1.印環細胞
2.癌真珠
3.腺腔形成
4.粘液産生

答え.2

解説

扁平上皮癌とは?

扁平上皮癌とは、最上層が薄くて平らな細胞よりなる上皮からなる癌をいう。特徴として、分化度の異なる不均一からなる細胞から構成され、欠陥分布も均一性を欠く。好発部位は、舌が最も多く、次いで歯肉、頬、口底、口蓋である。

1.× 印環細胞は、単層円柱上皮にみられる。
印環細胞とは、他の臓器と比較し、に高頻度でみられる細胞質内に貯留した粘液が細胞核を辺縁に圧排する状態を指す。

2.〇 正しい。癌真珠は、扁平上皮癌でみられる。
癌真珠とは、典型的な胞巣状構造をとり、もっとも分化している状態では胞巣の中心が角化して同心円状の層構造を作っているものを指す。分化が低くなるにつれて、これらの分化はしだいに失われ、角化すなわち癌真珠が見られなくなり、さらに層状分化も不明確になる。

3.× 腺腔形成は、腺癌(特に乳がん)でみられる。
腺とは、分泌活動を行う細胞の集まりで、分泌物を出す穴のようになった部分を腺腔といいます。乳腺内に発生する乳がんは、すべて腺を構成する細胞(腺細胞)が元になっていて、がん化した後にも腺腔を作ろうとする性質が残っています。手術で取り出した組織を顕微鏡で見て、細胞の腺腔形成度が高い場合は、正常細胞に近く悪性度が低い、腺腔形成度が低い場合は悪性度が高い、と評価されます(※引用:「乳がん用語集」声を聴き合う患者たち&ネットワーク様より)。

4.× 粘液産生
粘液産生は、腺癌や粘液癌で一般的に見られる形態であり、これは癌細胞が粘液を産生し、腺腔内または細胞内に貯留する。粘液産生膵腫瘍とは、膵臓にできる嚢胞状の腫瘍の一種である。中年の女性に多く、膵臓の体部および尾部という場所にできることがほとんどである。

上皮組織の形態による分類

・単層扁平上皮:薄いので物質の交換などに向く。
(胸膜、腹膜、血管内皮、肺胞など)

・単層立方上皮:甲状腺の濾胞細胞など。
(甲状腺の濾胞上皮、尿細管など)

・単層円柱上皮:吸収と分泌を行う場所に向く。
消化器系(胃、小腸、大腸)、卵管・子宮など

・重層扁平上皮:摩擦など機械的刺激に強い。
皮膚、口腔~食道、肛門、膣など。

・多列線毛上皮:表面に線毛があり、杯細胞が豊富。線毛と粘液で塵や異物をからめとる。
鼻腔~気管・気管支(気道)

・移行上皮:伸び縮みすることができる。
腎杯~尿管~膀胱(尿路)

 

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