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問題96 顎関節前方脱臼で正しいのはどれか。
1.関節円板は関節窩より逸脱する。
2.下顎頭は関節結節の後方に位置する。
3.外側翼突筋は弛緩する。
4.顔面神経麻痺を合併する。
答え.1
解説
1.〇 正しい。関節円板は関節窩より逸脱する。
開口により、関節頭が関節結節を越えて前方に転位する。
2.× 下顎頭は、関節結節の「後方」ではなく前方に位置する。
顎関節脱臼とは、下顎頭が下顎窩から前方に転位し、顎運動障害が生じた状態である。
3.× 外側翼突筋は、「弛緩」ではなく収縮する。
外側靭帯や咬筋、外側翼突筋の収縮(牽引)により固定される。外側翼突筋の【起始】上頭・蝶形骨(側頭下稜、蝶形骨大翼の側頭下面)。下頭・上顎骨(翼状突起外側板の外面)、上顎結節、【停止】下顎骨(関節突起)、顎関節の関節包、関節円板、【作用】下顎骨を前方に引く。両側が働けば下顎骨を前方に引き(開口)、片側が働けば、対側に動いてすりつぶし運動を行う、【神経】外側翼突筋神経(三叉神経第3枝、下顎神経)である。
4.× 顔面神経麻痺を合併しない。顎関節前方脱臼の症状に、開口不能や咀嚼障害、唾液流出などがみられるが、これは骨や関節の構造的問題であり、顔面神経麻痺によるものではない。ちなみに、顔面神経麻痺とは、ある日突然顔の半分、あるいは一部分が思うように動かせなくなる状態である。その中で最も多いのが、「ベル麻痺」、「ハント症候群」という呼ばれるウイルスが顔面神経管の中の顔面神経に感染して生じる。
問題97 肩関節脱臼の発生頻度が高い理由で誤っているのはどれか。
1.骨頭に対して関節窩が深い。
2.各方向に広い可動域を持つ。
3.関節の安定性は筋力に依存する。
4.肩関節は突出し外力を受けやすい。
答え.1
解説
(※図引用:「illustAC様」)
1.× 骨頭に対して関節窩が「深い」のではなく浅い。
これは、例えば、股関節と比較すると、肩関節が脱臼しやすい要因である。
2.〇 正しい。各方向に広い可動域を持つ。
各方向に広い可動域を持つことは、関節窩が浅いことが要因としてあげられる。各方向に広い可動域を持つ反面、関節に負担がかかり、脱臼のリスクが上昇する。
3.〇 正しい。関節の安定性は筋力に依存する。
特に肩関節の安定性は、腱板が寄与する。腱板(回旋筋腱板:ローテーターカフ)とは、肩甲骨と上腕骨をつないでいる4つの筋肉の腱の総称である。① 棘上筋、②棘下筋、③小円筋、④肩甲下筋から成る。
4.〇 正しい。肩関節は突出し外力を受けやすい。
なぜなら、肩関節は体の外側に位置しているため。したがって、落下や衝突などの事故により肩関節が脱臼しやすくなる要因である。
問題98 股関節後方脱臼の合併症で誤っているのはどれか。
1.大腿骨頭壊死
2.大腿骨頸部骨折
3.大腿神経損傷
4.外傷性股関節炎
答え.3
解説
股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。
【症状】弾発性固定(股関節屈曲・内転・内旋位)、大転子高位、下肢短縮、関節窩の空虚、股関節部の変形(殿部後上方の膨隆:骨頭を触れる)
【続発症】阻血性大腿骨頭壊死、外傷性股関節炎、骨化性筋炎など
1.〇 正しい。大腿骨頭壊死
なぜなら、大腿骨頭の血供給を損なうため。大腿骨頭壊死とは、大腿骨頭の一部が、血流の低下により壊死(骨が腐った状態ではなく、血が通わなくなって骨組織が死んだ状態)に陥った状態である。
2.〇 正しい。大腿骨頸部骨折
なぜなら、股関節脱臼は、強力な外力によって引き起こされるため。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。
3.× 大腿神経損傷は、股関節後方脱臼の合併症ではない。
一般的に、股関節後方脱臼は坐骨神経の損傷を伴う。なぜなら、坐骨神経は、股関節の後方に位置しているため。一方、大腿神経は前方に走行している。
4.〇 正しい。外傷性股関節炎
なぜなら、股関節脱臼は、関節面にダメージを与え、炎症を引き起こすため。ちなみに、外傷性股関節炎とは、その名の通り、外傷(外力由来)により、股関節に炎症が生じている状態を指す。炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。
問題99 膝関節前方脱臼で正しいのはどれか。
1.膝関節屈曲位で発生する。
2.不全脱臼となることが多い。
3.血管損傷に注意する。
4.膝蓋骨骨折を合併する。
答え.3
解説
膝関節脱臼には、一般的に動脈損傷または神経損傷が伴う。膝関節脱臼は肢の温存を脅かす。この脱臼は,医学的評価がなされる前に自然に整復する場合がある。診断は通常,X線による。血管および神経学的評価が必要であり,血管損傷はCT血管造影により同定される。非観血的整復および血管損傷の治療を直ちに行う。(※引用:「膝関節(脛骨大腿関節)脱臼」MSDマニュアル様より)
【原因】膝関節過伸展の強制による介達外力、脛骨近位端に後方からまたは大腿骨遠位端に前方からの直達外力によって生じる。膝関節脱臼の中で最も頻度が高い。【固定】軽度膝関節屈曲位。
1.× 膝関節「屈曲位」ではなく過伸展で発生する。
なぜなら、膝関節前方が脱臼するため。膝関節過伸展の強制による介達外力、脛骨近位端に後方からまたは大腿骨遠位端に前方からの直達外力によって生じる。
2.× 「不全脱臼」ではなく完全脱臼となることが多い。
なぜなら、かなり強い衝撃が加わった脱臼であるため。ちなみに、不完全脱臼とは、骨の一部を関節に残したまま、骨が関節からずれた状態のことをいう。 不完全脱臼は「亜脱臼」と呼ばれることも多い。 一方、完全脱臼とは、関節において骨と骨が外れる脱臼の中でも骨同士の接地面がなく完全に関節が外れた状態のことである。骨の正しい位置からずれてしまい部分的に骨同士が接触する「亜脱臼」とは異なり、自分で骨の位置を戻す「整復」ができないのが特徴である。
3.〇 正しい。血管損傷に注意する。
なぜなら、近くに走行する膝窩動脈の損傷が懸念されるため。他にも合併症として、側副靭帯や十字靭帯の損傷、総腓骨神経、脛骨神経の圧迫、損傷、断裂などがあげられる。
4.× 膝蓋骨骨折の合併は「膝関節前方脱臼」ではなく膝関節後方脱臼である。
なぜなら、膝関節後方脱臼は、ダッシュボード損傷で多いため。股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。
膝蓋骨骨折の原因は、交通事故でダッシュボードに膝をぶつけたり、膝の上に固い物が落下してあたったなどによる強い外力によるものが多い。介達外力によるものでは、横骨折を呈する。症状として、膝関節の著明な疼痛・腫脹、限局性圧痛、膝関節伸展障害、膝蓋腱膜断裂で骨折部の著明な離開、陥凹触知などを呈する。ただし、腱膜損傷がなければ転位は軽度である。固定として、転位が軽度なら膝関節軽度屈曲位で、4~5週の副子固定(絆創膏orリング固定を併用)である。一方、転位が大きいものは観血療法である。長期固定による膝関節拘縮を合併することがある。
問題100 上肢の軟部組織損傷で誤っているのはどれか。
1.上腕二頭筋長頭腱損傷は結節間溝部での断裂が多い。
2.動揺性肩関節の検査にサルカス徴候がある。
3.内側型野球肘は遅発性尺骨神経麻痺を生じる。
4.SLAP損傷は上腕三頭筋長頭の拘縮を合併する。
答え.4
解説
1.〇 正しい。上腕二頭筋長頭腱損傷は結節間溝部での断裂が多い。
なぜなら、上腕二頭筋の長頭腱は、上腕骨の大結節と小結節の間の結節間溝を通過するため。炎症が起こりやすく、上腕二頭筋長頭腱が、上腕骨の大結節と小結節の間の結節間溝を通過するところで炎症が起こっている状態のことである。腱炎・腱鞘炎・不全損傷などの状態で肩の運動時に痛みが生じる。Speedテスト(スピードテスト)・Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)で、上腕骨結節間溝部に疼痛が誘発される。治療は保存的治療やステロイド局所注射となる。
2.〇 正しい。動揺性肩関節の検査にサルカス徴候がある。
サルカスサインとは、反復性肩関節脱臼などの肩関節不安定性を評価する検査である。肩関節外転外旋位で、上腕骨頭を後方から前方へ押し出すストレスをかけた際の不安感を確認する。ストレスをかけた際に不安感や怖さを感じたら陽性である。
3.〇 正しい。内側型野球肘は遅発性尺骨神経麻痺を生じる。
なぜなら、内側型野球肘は、投球運動による強い外反ストレス(肘を外側に広げようとする力)が働くため。これが尺骨神経に影響を及ぼし、麻痺を引き起こす。
4.× SLAP損傷は、「上腕三頭筋長頭」ではなく上腕二頭筋の拘縮を合併する。
SLAP損傷(Superior Labrum Anterior and Posterior lesion)とは、上方関節唇損傷のことをさす。野球やバレーボールなどのオーバーヘッドスポーツにおける投球動作やアタック動作などを反復することによって上腕二頭筋長頭腱に負荷がかかり、関節唇の付着部が剥がれてしまう状態を指す。また、腕を伸ばした状態で転倒した際に上腕骨頭の亜脱臼に合併してSLAP損傷が生じることや、交通事故などの外傷性機序で発症することがある。スポーツでは、スライディングで手をついたり、肩を捻った時に発症することがある。