第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午後101~105】

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問題101 五十肩の病期分類にないのはどれか。

1.炎症期
2.拘縮期
3.萎縮期
4.解氷期

答え.3

解説

五十肩とは?

肩関節周囲炎(五十肩)は、慢性炎症に分類される。肩関節周囲炎(五十肩)は、肩関節とその周辺組織(肩峰下滑液包や腱板など)の退行性変性が原因となり肩関節の痛みと運動の制限を伴うものである。加齢による退行変性を基盤に発症し、疼痛(運動時痛、夜間時痛)と運動障害を主徴とする。肩関節周囲炎は痙縮期、拘縮期、回復期と分けられ、筋萎縮は拘縮期に肩甲帯筋の廃用性萎縮としてみられる。リハビリとして、Codman体操(コッドマン体操)を実施する。肩関節周囲炎の炎症期に使用する運動であり、肩関節回旋筋腱板の強化や肩関節可動域拡大を目的に使用する。患側の手に1~1.5㎏の重錘を持ち、振り子運動を行う。

①痙縮期(約2~9か月):急性期で疼痛が主体となる。明らかな誘因はなく、肩の違和感や痛みで出現。運動時痛や安静時・夜間時痛が出現し、急速に関節が硬くなる。局所の安静、三角巾固定痛みの出る動作は避ける。

②拘縮期(約4~12か月):亜急性期で拘縮が主体となる。徐々に安静時痛・夜間痛は軽減しますが、肩関節は拘縮し、可動域制限が残りやすくなる。過度に動かすと強いつっぱり感が出現する。徐々に運動範囲を広げる(お風呂やホットパックでの保温、愛護的に関節可動域の拡大)

③回復期(約6~9か月):慢性期で、症状は徐々に改善する。可動域制限も徐々に回復し、運動時痛も消失する。積極的な運動(ストレッチング)を実施する。

1.〇 炎症期
痙縮期(約2~9か月):急性期で疼痛が主体となる。明らかな誘因はなく、肩の違和感や痛みで出現。運動時痛や安静時・夜間時痛が出現し、急速に関節が硬くなる。局所の安静、三角巾固定痛みの出る動作は避ける。

2.〇 拘縮期
拘縮期(約4~12か月):亜急性期で拘縮が主体となる。徐々に安静時痛・夜間痛は軽減しますが、肩関節は拘縮し、可動域制限が残りやすくなる。過度に動かすと強いつっぱり感が出現する。徐々に運動範囲を広げる(お風呂やホットパックでの保温、愛護的に関節可動域の拡大)

3.× 萎縮期は、五十肩の病期分類にない。
萎縮は、退行性病変である。退行性病変とは、量・質的に異常物質の過剰な沈着が細胞内や間質に認められるものをさす。例えば、生体内の組織の局所的な死のことである。大きな分類として、①萎縮、②変性、③壊死と死があげられる。萎縮は、生理的加齢によって脳の容積が縮小しているときの細胞の状態である。萎縮とは、組織や臓器を構成する細胞の個々の容積が減少する①単純萎縮と、構成細胞の数が減少する②数的萎縮にわけられる。その他の原因としては、血流の低下、機械的圧迫、低栄養老化などがある。

4.〇 解氷期(回復期)
回復期(約6~9か月):慢性期で、症状は徐々に改善する。可動域制限も徐々に回復し、運動時痛も消失する。積極的な運動(ストレッチング)を実施する。

 

 

 

 

 

問題102 肘部管症候群の症状で正しいのはどれか。

1.感覚障害はない。
2.フローマン徴候は陽性となる。
3.下垂指が出現する。
4.母指対立筋の筋力低下が生じる。

答え.2

解説

肘部管症候群とは?

肘部管症候群は、尺骨神経が肘関節背面内側にある尺側骨手根屈筋下の肘部管を通過する際に生じる絞拒性障害である。尺骨神経麻痺を来し、指の開閉運動障害や鷲手変形を生じる。

1.× 感覚障害は認められる
なぜなら、尺骨神経が傷害されるため。尺骨神経の感覚領域は、主に小指と環指小指側1/2の掌背側の感覚と前腕の尺側の領域を支配している。

2.〇 正しい。フローマン徴候は陽性となる
なぜなら、フローマン徴候は、尺神経麻痺の診断に使用されるテストであるため。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

3.× 下垂指が出現するのは、後骨間神経麻痺(橈骨神経遠位の障害)で生じる。
下垂指(手首の背屈は可能だが、手指の付け根の関節の伸展ができなくなり、指のみが下がった状態)がみられる。

4.× 母指対立筋の筋力低下が生じるのは、正中神経麻痺である。
正中神経麻痺で、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

前骨間神経と後骨間神経について

前骨間神経と後骨間神経は、前腕の橈骨と尺骨という2つ骨の間を繋ぐ骨間膜の前後を走る神経である。両者とも触覚に異常がないのが特徴である。神経炎以外にも、外傷、絞扼性神経障害でも生じる。

【前骨間神経】
・肘の辺りで正中神経から分岐して主に母指(親指)と示指の第1関節を動かす筋肉を支配している。ほかにも、長母指屈筋、方形回内筋を支配する。
→涙のしずくが陽性。

【後骨間神経】
・肘の辺りで橈骨神経から分岐して回外筋にもぐりこみ、指を伸展する筋肉を支配している。
→下垂指(drop finger)となる。

 

 

 

 

 

問題103 ド・ケルバン(deQuervain)病で正しいのはどれか。

1.背側腱第2区画部の狭窄性腱鞘炎である。
2.両側の発症は少ない。
3.長母指伸筋腱部に圧痛を認める。
4.単純エックス線検査で異常所見を認める。

答え.2

解説

ド・ケルバン病とは?

de Quervain病とは、狭窄性腱鞘炎ともいい、短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が原因で起こる腱鞘炎である。母指の使いすぎや妊娠出産期、更年期の女性に多く見られる。手首に腫れと痛みを伴い、母指を小指側に牽引したときに痛みが増強する。また、親指を握って尺屈すると疼痛が出現するフィンケルシュタインテスト(アイヒホッフテスト)で陽性となる。

1.× 「背側腱第2区画部」ではなく背側腱第1区画部の狭窄性腱鞘炎である。
伸筋支帯と橈骨・尺骨との聞には、伸筋の腱を通す6つのトンネルがある。各トンネルの問では伸筋支帯の一部が骨に密着して、となり合う腱トンネルを仕切る区画(腱区画)をなす。de Quervain病とは、狭窄性腱鞘炎ともいい、短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が原因で起こる腱鞘炎である。
第1菅:長母指外転筋と短母指伸筋
第2菅:長橈側手根伸筋と短橈側手根伸筋
第3菅:長母指伸筋
第4菅:総指伸筋と示指伸筋
第5菅:小指伸筋
第6菅:尺側手根伸筋

2.〇 正しい。両側の発症は少ない
なぜなら、母指の使いすぎや妊娠出産期、更年期の女性に多く見られるため。手の使用頻度によって、発症が異なる。

3.× 「長母指伸筋腱部」ではなく短母指伸筋腱と長母指外転筋腱に圧痛を認める。
de Quervain病とは、狭窄性腱鞘炎ともいい、短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が原因で起こる腱鞘炎である。短母指伸筋腱と長母指外転筋腱に圧力をかけるときに、炎症を呈している腱は痛みが発生する。

4.× 単純エックス線検査で異常所見を「認めにくい」。
なぜなら、腱など軟部組織は、単純エックス線像では映らないため。ちなみに、単純エックス線検査とは、極めて低線量のX線を用いて画像を撮影し、病気の診断に役立てる。骨を中心とした検査であり、骨に変形が生じている場合や骨棘の有無は確認できる。基本的な撮影メカニズムはCTと同じだが基本的に胸部や骨折部位の特定など一枚の撮影に用いられることが多い。単純CTのように断層として見ることができない。

 

 

 

 

 

問題104 幼児に多いのはどれか。

1.鼠径部痛症候群
2.大腿骨頭すべり症
3.単純性股関節炎
4.大腿骨頭壊死症

答え.3

解説
1.× 鼠径部痛症候群は、20歳前後の男子選手に多い。
鼡径部痛症候群とは、鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)ともいい、ランニングや起き上がり、キック動作など腹部に力を入れたときに鼠径部やその周辺に痛みが生じものをさす。他の競技と比べサッカー選手に多く見られ、一度なると治りにくいのが特徴である。体幹から股関節周辺の筋や関節の柔軟性(可動性)の低下による拘縮や骨盤を支える筋力(安定性)低下による不安定性、体幹と下肢の動きが効果的に連動すること(協調性)が出来ず不自然な使い方によって、これらの機能が低下し、痛みと機能障害の悪循環が生じて症状が慢性化する。

2.× 大腿骨頭すべり症は、9歳から15歳頃に多い。
大腿骨頭すべり症とは、大腿骨近位骨端軟骨の脆弱化、体重負荷により、大腿骨頭が頚部に対して、後下方に転位する疾患である。原因として、肥満と成長期のスポーツ活動による力学的負荷が大腿骨に加わるために生じる。成長ホルモンと性ホルモンの異常で発症することもある。9歳から15歳頃の股関節の成長軟骨板(成長線)が力学的に弱い時期に発症する。

3.〇 正しい。単純性股関節炎は、幼児に多い。
単純性股関節炎とは、原因は不明で、1週間ほど安静にしていれば痛みも治まり、自然治癒する。エックス線写真において、特段異常所見は見られない。3~10歳に好発する。男女の比率はおおよそ4:1とされる。超音波検査やMRIで関節液の貯留が確認される。ほとんど片側性で、強い発赤や腫脹、発熱は見られないが、股関節の運動時疼痛を訴え、運動制限、跛行が見られる。

4.× 大腿骨頭壊死症は、30~40歳代の男性に多い。
大腿骨頭壊死症とは、大腿骨の上端の大腿骨頭の骨組織が壊死し、関節が変形・破壊する病気であり、このうち原因がはっきりしないものをいう。エックス線写真は初期では変化が見られないことが多いが、悪化すると壊死に伴う骨折となり関節面直下の軟骨下に起こりやすく(圧潰)、軟骨下骨に円弧状に走向する線状透亮像として認められる。

 

 

 

 

 

問題105 大腿四頭筋の肉ばなれで正しいのはどれか。

1.求心性収縮で発生する。
2.中間広筋に多発する。
3.完全断裂では陥凹を触れる。
4.受傷直後から皮下出血斑を認める。

答え.3

解説

大腿四頭筋の肉ばなれとは?

肉離れとは、筋肉が過度に引き伸ばされたり、筋肉が縮んだ状態から引き伸ばされた際に筋線維が切れることである。肉離れの予防として、①柔軟性の向上、②血行改善、③アイシング、④違和感があった際の中断が必要となる。

【好発部位】
大腿四頭筋:太ももの前側(大腿直筋)で起こりやすい。なぜなら、股関節と膝関節の二つの関節の動きに作用する二関節筋であるため。股関節伸展位、膝関節屈曲位で筋を遠心性収縮したときに発生しやすい。
ハムストリングス:大腿二頭筋(筋腱移行部)で起こりやすい。
下腿三頭筋:筋線維の多くは筋腱移行部での部分損傷で、特に腓腹筋内側頭で起こりやすい。10代からみられ、各年齢層にまんべんなく発生する。受傷機序として、日常生活中やスポーツ現場では階段を下りた際や、ランニングやダッシュの途中などにふくらはぎに鋭い痛みが走り、その後の歩行が困難になるケースがよく見られる。足関節底屈の際、親指のほうが大きく力を発揮するのに適しており、親指側に力が入りやすいため、外側より内側のほうが受傷しやすい。

1.× 「求心性収縮」ではなく遠心性収縮で発生する。
一般的に肉離れは、筋が強制的に伸ばされる状況(例えば、走行中に急に方向を変える、ジャンプして着地するなど)で発生する。これは、遠心性収縮の状況でよく見られる。ちなみに、遠心性収縮とは、加えられた負荷が筋張力よりも大きく、筋は収縮しているが伸びる状態のこと。これは最大張力の場合だけでなく、種々の筋張力レベルで起こる。日常の運動動作は、重力方向との関係で身体の種々の部分で遠心性収縮が起きている。遠心性収縮は、筋力増強効果が大きいとされるが、筋の損傷も大きい。筋力増強効果は、遠心性→等尺性→求心性の順に大きい。一方、求心性収縮とは、筋は負荷に打ち勝つだけの張力を発生して、筋の短縮が起こる状態のこと。

2.× 「中間広筋」ではなく大腿直筋に多発する。
なぜなら、股関節と膝関節の二つの関節の動きに作用する二関節筋であるため。股関節伸展位、膝関節屈曲位で筋を遠心性収縮したときに発生しやすい。

3.〇 正しい。完全断裂では陥凹を触れる
なぜなら、大腿四頭筋が完全な断裂した場合、筋肉の端が引き寄せられ、その場所にくぼみ(陥凹)が生じるため。

4.× 「受傷直後」ではなく受傷翌日から3日程度から皮下出血斑を認める。
なぜなら、肉離れは打撲のような直接的外力に寄与する受傷ではないため。皮下出血斑とは、皮下出血(内出血)したときに紫色のアザのことである。紫斑病ともいう。内出血が起こるメカニズムは、何かにぶつかるなど外部からの衝撃が身体に加わることにより皮膚や皮下の組織が壊れてしまい出血が身体の内部だけに溜まることで起こる。つまり、原因としては転倒などによる打撲や打ち身、捻挫が多く、ひどい肉離れなどでみられる。

 

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