第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午後106~110】

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問題106 下腿コンパートメント症候群で誤っているのはどれか。

1.腫脹が著明である。
2.安静時痛がある。
3.足関節の屈曲運動ができる。
4.動脈の拍動が触知できる。

答え.3

解説

MEMO

コンパートメント症候群とは、骨・筋膜・骨間膜に囲まれた「隔室」の内圧が、骨折や血腫形成、浮腫、血行障害などで上昇して、局所の筋・神経組織の循環障害を呈したものをいう。症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢動脈の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。

1~2.〇 正しい。腫脹が著明である/安静時痛がある。
症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢動脈の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。

3.× 足関節の屈曲運動は「困難」である。
なぜなら、コンパートメント内の筋肉や神経が圧迫されるため。paralysis(運動麻痺)が生じる。

4.△ 動脈の拍動が「触知できる」とはいえない(わかる方コメントにて教えてください)。
コンパートメント症候群の症状として、足背動脈の減弱もしくは消失がみられる。足背動脈の拍動の有無も確認し、拍動がない場合は、血管損傷が疑われる。

 

 

 

 

 

問題107 圧痛部を別に示す。
 考えられる疾患はどれか。

1.フライバーグ(Freiberg)病
2.第1ケーラー(Kohler)病
3.モートン(Morton)病
4.種子骨障害

答え.4

解説


1.× フライバーグ(Freiberg)病
フライバーグ病とは、中足骨頭に阻血性骨壊死が起こる疾患である。骨幹端および成長板の微小外傷によって生じる。阻血性骨壊死により中足骨頭が扁平化する。第2中足骨頭が侵されることが最も多い。痛みは荷重負荷で最も顕著となる。診断はX線により確定する。治療法としては、コルチコステロイド注射、固定、矯正器具などがある。

2.× 第1ケーラー(Kohler)病
第1ケーラー病とは、足の中央分にある舟状骨が変形し、痛みを引き起こす疾患である。原因は、繰り返しの圧迫が与えられたことで血液の循環障害が生じ、舟状骨が壊死してしまうことである。

3.× モートン(Morton)病
モートン病とは、足趾へと向かう神経が、足趾の付け根の部位で圧迫を受けることで生じる神経障害である。 神経が圧迫される原因には、ハイヒールなどの爪先が細くヒールが高い靴を履くことや、外反母趾など骨の形態異常がある。中足骨頭周辺または足趾周辺の疼痛を特徴とする。

4.〇 正しい。種子骨障害が考えられる。
種子骨障害とは、足の親ゆびの付け根、足の裏側に左右に2個ずつある種子骨という骨の部分が何らかの原因で痛むものである。原因として、よく走るスポーツや、踏み込み動作の多いスポーツや労働などで、強い外力や、繰り返すストレスがかかることにより発生する。

ケーラー病とは?

ケーラー病は、足の舟状骨への血液供給が途絶えるためにその部分が壊死する病気(無腐性壊死)である。ケーラー病は骨軟骨症の一種である。ケーラー病の原因は、足の舟状骨への血液供給不足であるが、なぜ血液の供給が不足するのかは分かっていない。この病気は通常、3~5歳の小児(男児に多い)の片足のみに起こる。足が腫れて痛み、足のアーチ部分に圧痛が生じる。体重支持と歩行によって不快感が増すため、歩き方(歩様)に異常がみられる。スポーツの中止やアーチ足底板の利用により、舟状骨へのストレスを低減させることで良好な予後が期待できる。レントゲンの特徴として、正常よりも小さな舟状骨が確認できる。

(※参考:「ケーラー病とは?」MSDマニュアル様HPより)

 

 

 

 

 

問題108 15歳の男子。柔道の試合中に強引に背負い投げをかけた際、肩関節外転外旋が強制され肩関節を脱臼した。初めての脱臼だという。
 整復固定後、この患者への説明として適切なものはどれか。

1.「自分で固定を外して入浴可能です」
2.「明日から肩の可動域訓練を行います」
3.「競技復帰は3週後とします」
4.「再発する可能性があります」

答え.4

解説

本症例のポイント

・15歳の男子。
肩関節外転外旋が強制され肩関節を脱臼した。
・初めての脱臼。
→本症例は、肩関節前方脱臼(烏口下脱臼)が最も疑われる。烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。

1.× 自分で固定を外しての入浴は、「困難」である。
なぜなら、再脱臼の恐れがあるため。炎症がおさまり、関節の軟部組織の修復を待つのが望ましい。

2.× 肩の可動域訓練は、「明日から」ではなく受傷後4週間程度経ったのちに行うことが多い。
なぜなら、再脱臼の恐れがあるため。炎症がおさまり、関節の軟部組織の修復を待つのが望ましい。炎症がおさまり、関節軟部組織が修復し始めた受傷後4週目に固定を外し、リハビリテーションを開始する。

3.× 競技復帰は、「3週後」ではなく3か月である。
ただし、コンタクトプレーを要するスポーツ復帰は4か月をめどにしている。

4.〇 正しい。「再発する可能性があります」と伝える。
なぜなら、脱臼によって軟部組織が損傷し、その結果、関節の安定性が低下するため。繰り返し脱臼するのであれば、手術も検討される。

 

 

 

 

 

問題109 2歳の男児。公園の滑り台から転落し肩部を衝いたため来所した。患側の肩は下垂し、上肢は挙上不能。両腋窩を持って抱き上げたところ号泣した。
 最も考えられるのはどれか。

1.上腕骨顆上骨折
2.肘内障
3.鎖骨骨折
4.橈骨遠位端部骨折

答え.3

解説

本症例のポイント

・2歳の男児。
・滑り台から転落:肩部を衝いた
・患側の肩は下垂し、上肢は挙上不能。
・両腋窩を持って抱き上げる:号泣。
→本症例は、鎖骨骨折が疑われる。鎖骨骨折とは、全骨折中約10%を占めるほど多い骨折のひとつで、原因は転倒して肩や腕を強打した衝撃で生じる。他にもラグビーやアメリカンフットボール、柔道などの激しいコンタクトスポーツがきっかけとなる。

1.× 上腕骨顆上骨折
上腕骨顆上骨折とは、小児の骨折中最多であり、ほとんどが転倒の際に肘を伸展して手をついた場合に生じる。転移のあるものは、肘頭が後方に突出してみえる。合併症は、神経麻痺(正中・橈骨神経)、フォルクマン拘縮(阻血性拘縮)、内反肘変形などである。ちなみに、フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。

2.× 肘内障
肘内障は、急に引っ張られたり、転んで肘を突いたりした時に起こる。ちなみに、肘内障とは、乳幼児に特有の外傷で、橈骨頭が引っ張られることによって、橈骨頭を取り巻いている輪状靭帯と回外筋が橈骨頭からずれた状態(亜脱臼)になったものである。5歳くらいまでの子どもに発症する。 輪状靭帯の付着がしっかりする6歳以降では起こりにくい。

3.〇 正しい。鎖骨骨折が最も考えられる。
本症例は、鎖骨骨折が疑われる。鎖骨骨折とは、全骨折中約10%を占めるほど多い骨折のひとつで、原因は転倒して肩や腕を強打した衝撃で生じる。来院時の患者は、頚部をやや患側に傾け胸鎮乳突筋を弛緩させて疼痛を緩和し、患者の方は下垂し、その肩幅は減少する。鎖骨は皮膚直下に接しているため、骨折部の腫脹、変形、限局性圧痛は著明である。血腫形成による高度の腫脹の存在、皮下出血班の出現、上肢運動制限などが確認できる。

4.× 橈骨遠位端部骨折
橈骨遠位端骨折とは、橈骨の骨折のことで、転んで手をついたときに起こる比較的頻度が高い骨折である。同時に、尺骨の骨折も起こる。

 

 

 

 

 

問題110 13歳の男子。転倒した際に肘関節伸展位で左手を地面に衝いて受傷した。肘関節内側に著明な腫張と皮下出血斑を認める。同部に限局性圧痛を認め、肘関節の屈伸運動障害もみられる。受傷時の単純エックス線写真を示す。
 続発症で最も考えられるのはどれか。

1.前腕回外制限
2.肘関節屈曲障害
3.外反肘変形
4.尺骨神経麻痺

答え.4

解説

本症例のポイント

・13歳の男子。
・転倒;肘関節伸展位で左手を地面に衝いた。
・肘関節内側:著明な腫張、皮下出血斑。
・同部に限局性圧痛を認め、肘関節の屈伸運動障害あり。
・受傷時の単純エックス線:上腕骨内側上顆の連続性が絶たれている
→本症例は、上腕骨内側上顆骨折が疑われる。上腕骨内側上顆骨折の合併症として、肘関節後方脱臼、橈骨頭骨折、上腕骨小頭骨折、尺頭骨折(成人)である。後遺症として、①機能障害:肘関節伸展障害、前腕回内運動制限、②変形:外反肘、③神経障害:遅発性尺骨神経麻痺である。

1.× 前腕「回外」ではなく回内制限をきたす。
なぜなら、主な前腕屈筋群の【起始】上腕骨内側上顆、【停止】手根骨や指の骨である。 円回内筋、尺側手根屈筋、橈側手根屈筋、長掌筋、浅指屈筋などがあげられる。

2.× 肘関節「屈曲」ではなく伸展障害をきたす。
なぜなら、しばしば肘関節の脱臼を合併するため。肘関節伸展に伴う肘頭の滑走に支障をきたす。

3.× 「外反肘」ではなく内反肘変形をきたす。
なぜなら、骨折後の変形治癒や骨端線障害が生じやすいため。

4.〇 正しい。尺骨神経麻痺が続発症で最も考えられる。
なぜなら、内側上顆の後面を尺骨神経が走行しているため。

 

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