第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後51~55】

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問題51 根治的手術はどれか。

1.幽門狭窄に対する胃腸吻合術
2.鼠径ヘルニアに対する修復術
3.脳圧亢進に対するシャント術
4.直腸癌に対する人工肛門造設術

答え.2

解説

根治的手術とは?

病気を完全に治すことを期待して行う手術のことです。根治手術では、がんをすべて取り除くことを目標としており、がんそのものの切除に加えて、がんの再発や転移が起こらないように、がんが広がっている可能性がある臓器や組織なども含めて切除することがあります(※引用:「用語集」がん情報サービスHPより)。

1.× 幽門狭窄に対する胃腸吻合術
胃腸吻合術とは、胃と小腸(空腸)とを縫合して連結し新しい消化管を再建する方法である。幽門狭窄症で幽門から空腸に狭窄や閉塞がある場合、胃癌などで根治手術が不可能な場合、あるいは胃切除を行なったときなどに実施する。これは症状を改善するための緩和的な手術である。

2.〇 鼠径ヘルニアに対する修復術は、根治的手術である。
鼠径ヘルニアとは、鼠径部の脆弱化した筋膜・腿膜の裂隙(すき間)から、壁側腹膜に包まれた腹腔内臓器が脱出したものである。主に2種類に大別される。①外鼠径ヘルニア、②内鼠径ヘルニアである。①外鼠径ヘルニアは、内鼠径輪からもともと存在する通路である鼠径管を通って腸管が脱出するものである。乳幼児期男児や成人男性に多い。②内鼠径ヘルニアは、横筋筋膜の脆弱化により、もともと穴が開いていない筋膜を突き破って腸管が脱出するものである。壮年期以降の男性に多い。症状として、鼠径部に膨らみができ、不快感や違和感、痛みが発生する。ちなみに、修復術は、この突出部を正しい位置に戻し、ヘルニアの発生を防ぐために腹壁を修復するため、病状を根本から治療できる。

3.× 脳圧亢進に対するシャント術
シャント術とは、脳室内にシャントを入れて脳脊髄液を外に出す手術のことを指す。シャントとは、血液が本来通るべき血管と別のルートを流れる状態のことである。脳圧亢進(水頭症や開頭術後)の症状を管理するための手術であり、原因疾患そのものを治療する根治的手術ではない。ちなみに、水頭症とは、過剰な量の髄液が集積した状態であり、脳室拡大および/または頭蓋内圧亢進が生じるものをいう。症状には、嘔吐、嗜眠状態、頭痛、頭部肥大などがあり、発作を起こす。

4.× 直腸癌に対する人工肛門造設術
人工肛門造設は、通常、直腸癌の進行による閉塞または他の原因により自然な排便が不可能になった場合に行われる。この手術は症状の管理や生活の質の改善を目的としているが、癌そのものを取り除く根治的手術ではない。ちなみに、人工肛門とは、手術によってお腹の壁から腸管の一部を出し、開いて固定をしたものである。自然の肛門と違い自分の意思で排せつをコントロールできないので、専用の袋(パウチ)を取り付け、排せつ物を受け止め、溜まったらトイレに流すという管理が必要となる。

開頭術後の合併症

開頭術後の合併症には、まず頭蓋内圧亢進症状に注意する必要がある。頭蓋内圧亢進により、①頭痛、②嘔気・嘔吐、③うっ血乳頭、④複視(外転神経麻痺)などを生じる。Cushing現象(脳ヘルニアの直前状態)で、①血圧上昇、②徐脈、③緩徐深呼吸などの症状が出現する。これらは、脳幹下部の脳圧亢進による乏血状態に対する生体の代償作用である。他にも、術後出血、脳浮腫、脳血管攣縮、感染症、深部静脈血栓症・肺血栓症などがあり、早期発見や予防を考慮した観察が重要である。

【開頭手術後に起こる合併症】
①脳損傷による神経脱落症状
②術後出血や脳還流障害による脳腫脹や頭蓋内圧損傷
③長期ベッド上安静による廃用症候群など

 

 

 

 

 

問題52 全身麻酔前投薬の目的で誤っているのはどれか。

1.不安除去
2.気道分泌抑制
3.胃内容誤嚥予防
4.深部静脈血栓予防

答え.4

解説

全身麻酔前投薬の目的

①術前鎮静、抗不安作用などの快適性
②口腔内、気道内分泌液の抑制、迷走神経反射の抑制
③誤嚥(誤嚥性肺炎)
※麻酔薬の増強効果を期待して前投与されることもある。

1.〇 不安除去
全身麻酔は通常、患者が不安を感じる可能性があり、鎮静剤を用いることで、この不安を軽減できる。ベンゾジアゼピン類、ヒスタミンH1受容体拮抗薬、バルビツールなどが使用される。

2.〇 気道分泌抑制
全身麻酔下では、気道の分泌物が増える可能性があり、気道を塞ぐ可能性がある。抗コリン薬などを用いる。

3.〇 胃内容誤嚥予防
全身麻酔下での吐き気や嘔吐は、胃内容物を誤嚥し肺炎を引き起こす可能性がある。抗ドパミン薬などが使用される。

4.× 深部静脈血栓予防は、全身麻酔前投薬の目的で誤っている。
全身麻酔は深部静脈血栓症のリスクを増加させる可能性があるが、予防には抗凝固薬が使用されることが多い。深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。ほかのリスク因子として、脱水や肥満、化学療法などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題53 移植で使用されない臓器はどれか。

1.小腸
2.副腎
3.腎臓
4.肝臓

答え.2

解説

臓器移植の対象となる臓器と主な病気

臓器移植は、病気や事故によって臓器が機能しなくなった人に、他の人の健康な臓器を移植して、機能を回復させる医療です。移植の対象となる臓器は、臓器移植法等により定められた心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸、(眼球)となります。そして、それぞれの臓器を移植することでしか有効な治療法がないときに対象となります。例えば、心臓では拡張型心筋症や補助人工心臓の装着している人など、肺は酸素療法などでも維持が困難な肺高血圧症など、また膵臓では専門の医師によっても血糖のコントロールが困難となった1型糖尿病などです。(※引用:「臓器移植の対象となる臓器と主な病気」日本臓器移植ネットワーク様HPより)

1.〇 小腸
短腸症候群など食事ができない人が対象となる。ちなみに、短腸症候群は、小腸の広範切除(通常、小腸の全長の3分の2以上)に起因する吸収不良である。生じる症状は残存小腸の長さおよび機能に依存するが、下痢は重度となることがあり、栄養欠乏がよくみられる。 治療は、食事を少量ずつ摂ることと止瀉薬のほか、ときに完全静脈栄養または小腸移植による。

2.× 副腎は、移植で使用されない臓器である。
なぜなら、①技術的な問題や②副腎の特性などがあげられる。①技術的な問題として、副腎は、腎臓の上に位置する約2~3cmの小さな三角形の臓器で、左右1対ずつある。1つは約4~5g程度の小さな臓器であり、体内の他の器官と密接に結合しており、この位置関係を保ったまま移植することは技術的に困難である。②副腎の特性としては、副腎はストレス応答に関与する重要なホルモンを産生する器官ですが、これらのホルモンは他の方法(薬物療法など)で補うことが可能である。つまり、副腎機能が失われた場合でも、移植が必要となるほどの生命に対する直接的な危険があるわけではない。

3.〇 腎臓
慢性腎不全など人工透析を受けている人が対象となる。ちなみに、慢性腎不全とは、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。

4.〇 肝臓
原発性硬化性胆管炎など肝臓が悪い人が対象となる。原発性硬化性胆管炎とは、胆管が障害されて胆管が狭くなり(胆管狭窄)、胆汁の流れが悪くなるとともに肝臓の働きが悪くなる病気である。特徴として、肝臓の中・外の比較的太い胆管が障害される。

 

 

 

 

 

問題54 ジャパン・コーマスケールⅢ-100の状態で正しいのはどれか。

1.見当識障害がある。
2.普通の呼びかけで容易に開眼する。
3.痛み刺激に対し払いのける動作をする。
4.痛み刺激に反応しない。

答え.3

解説

(※図引用:「意識レベル(JCS:Japan Coma Scale)」堺市HPより)

1.× 見当識障害がある。
ジャパン・コーマスケールⅠ-2の状態である。

2.× 普通の呼びかけで容易に開眼する。
ジャパン・コーマスケールⅡ-20の状態である。

3.〇 正しい。痛み刺激に対し払いのける動作をするのは、Ⅲ-100の状態である。

4.× 痛み刺激に反応しない。
ジャパン・コーマスケールⅢ-300の状態である。

 

 

 

 

 

問題55 胸腔ドレナージを直ちに必要とするのはどれか。

1.膿胸
2.縦隔気腫
3.肋骨骨折
4.緊張性気胸

答え.4

解説

胸腔ドレナージとは?

胸腔ドレナージとは、胸壁を切開し、胸腔にチューブを挿入する医療技術である。主に何らかの疾患によって胸腔内に溜まった余分な空気、体液、膿胸などの分泌液を体外に排出するための処置として行われる。中等度以上の自然気胸では胸腔ドレナージを実施する。

1.× 膿胸
膿胸とは、細菌などの病原微生物が、肺の周りの胸腔という空間に強い炎症を起こし、膿を作る病気である。感染の程度によっては、胸水と膿胸の間のような病態(複雑性肺炎随伴性胸水)になる。滲出性炎症とは、急性炎症の時に見られる炎症である。液性滲出物と炎症細胞の滲出が多く見られる傾向が強い。血管に多く、浸出性炎症、血管性炎症ともいわれる。

2.× 縦隔気腫
縦隔とは、左右の肺と胸椎・胸骨に囲まれた部分を指す。縦隔内には大きな静脈、動脈、心臓、気管などさまざまな臓器が存在している。縦隔気腫とは、縦隔に空気は存在しないが、何らかの原因で縦隔のなかに空気が入り込み、貯留した状態をいう。特別な治療は行わず、せき止めや痛み止めの服用や安静で自然治癒することが多い病気である。

3.× 肋骨骨折
肋骨骨折の治療として、骨折の有無にかかわらず、肋骨の痛みが強い場合は、日常生活での安静を基本とし、痛みなどの炎症を抑えるために湿布や内服薬にて経過をみる。また、呼吸や体動により痛みが誘発されるため専用のコルセット(胸に巻くベルト状のバンド)で固定することにより、動きをおさえ痛みの軽減を図る。

4.〇 正しい。緊張性気胸は、胸腔ドレナージを直ちに必要とする。
胸腔ドレナージにより、直ちに太い針を胸腔に刺し、空気を除去する必要がある。ちなみに、緊張性気胸とは、胸壁と肺との間に空気がたまることで胸部への圧力が高まり、心臓に戻る血液が減少することである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ショックに至ることがある。

 

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