第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後56~60】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題56 23歳の男性。バイクを運転中に転倒し、救急車にて搬入された。CT検査で後腹膜腔に多量の血腫を認めた。
 損傷を受けている臓器はどれか。

1.小腸
2.肝臓
3.膵臓
4.脾臓

答え.3

解説

本症例のポイント

・23歳の男性。
・バイクを運転中に転倒。
・CT検査:後腹膜腔に多量の血腫。
→腹膜後器官:①十二指腸、②腎臓、③副腎、④膵臓、⑤尿管、⑥腹大動脈、⑦下大静脈、⑧胸管、⑨乳び槽など

1~2.4.× 小腸/肝臓/脾臓
腹腔内に存在する臓器(腹腔内臓器)である。腹腔内臓器とは、腹腔内に収納されている臓器のことをいい、胃や肝臓、空腸、胆嚢、脾臓、回腸、虫垂、横行結腸、S状結腸などがあげられる。

3.〇 正しい。膵臓が損傷を受けている臓器である。
膵臓は、後腹膜腔に位置しており、CT検査の後腹膜腔に多量の血腫と一致する。

 

 

 

 

 

問題57 側弯症に伴う体幹変形はどれか。

1.亀背
2.円背
3.鳩胸
4.肋骨隆起

答え.4

解説

側弯症とは?

側弯症とは、背骨が左右に弯曲した状態で、背骨自体のねじれを伴うことがある。通常、小児期にみられる脊柱変形を指す。左右の肩の高さの違い、肩甲骨の突出、腰の高さの非対称、胸郭の変形、肋骨や腰部の隆起(前かがみをした姿勢で後ろから背中をみた場合)、などの変形を生じる。診断基準として、「コブ角」が 10°以上の場合が一般的である。コブ角とは、脊柱の上下で最も曲がりの強い椎体 から直線を伸ばし、その 2 本の直線の交差する角度のことである。

1.× 亀背(※読み:きはい)
亀背とは、背中が前方に丸く突出した姿勢を指す。突背ともいわれ、円背との違いは、背骨の拘縮の有無である。亀背は、背骨が丸くなり他動的に動かしても、背骨がまっすぐ伸びない状態である。一方、円背は、背臥位となれば自然と背骨が伸びる。ちなみに、亀背は、脊椎カリエスの際にしばしばみられる。脊椎カリエスとは、一種の骨関節感染症で、結核性脊椎炎ともいう。

2.× 円背(※読み:えんぱい)
円背とは、胸椎の後弯の増強したものである。一般的に「腰が曲がっている人」をさす。

3.× 鳩胸(※読み:はとむね)
鳩胸とは、鳩胸は前胸部の骨が突出した状態で、漏斗胸の5%以下の頻度でみられる。漏斗胸とは、胸板を形成する胸骨と肋軟骨の一部が、背中側の脊柱に向かって漏斗状に陥没している状態のことで、発生頻度は1000人に1人程度で、男子に多い特徴がある。

4.〇 正しい。肋骨隆起は、側弯症に伴う体幹変形である。
側弯症は、脊柱が左右に湾曲する状態を指す。これにより、脊柱が湾曲した側の肋骨が突出し、体表から見て明らかに肋骨が隆起して見える。これは側弯症の典型的な症状の一つである。

 

 

 

 

 

問題58 学校管理下の柔道で頭部外傷による死亡事故を最もきたしやすい技はどれか。

1.大外刈り
2.袈裟固め
3.払い腰
4.内股

答え.1

解説
1.〇 正しい。大外刈りは、学校管理下の柔道で頭部外傷による死亡事故を最もきたしやすい技である。
大外刈とは、引き手を効かせて相手の重心を崩し、鎌で草を刈るように払って倒す技である。相手のバランスを崩して後方に倒す技であるため、この技を受けると、相手は高い位置から後頭部に向かって直接落下する可能性がある。

2.× 袈裟固め
袈裟固めとは、相手の首に腕を回し、相手の体を自分の上半身で抑える技である。柔道の寝技の中でも、基本的な寝技であり、抑込技の中でもおなじみの技である。

3.× 払い腰
払い腰とは、相手の重心を前に崩し、さらに足を払って一気に投げる技である。相手を右または左後ろ腰に乗せ、そこを支点に、後ろに脚を払って、相手を横に泳がせる様に投げる技である。

4.× 内股
内股とは、相手を斜め前に崩し、太ももの裏側を使って相手を投げる技である。

 

 

 

 

 

問題59 単純エックス線で多房性の骨透過像を示す腫瘍はどれか。

1.内軟骨腫
2.骨巨細胞腫
3.孤立性骨嚢腫
4.線維性骨異形成

答え.2

解説

透過像とは?

透過像(エックス線透過像)とは、X線写真中の黒く見える部分のことをいう。のう胞などが透過像としてうつされる。

1.× 内軟骨腫(※読み:ないなんこつしゅしょう)
内軟骨腫とは、硝子軟骨を形成する良性腫瘍である。特に長骨の末端(手や足の骨)によく現れる。骨内に硝子軟骨が形成されることで、皮質骨が薄く弱くなる。単発性と多発性があり、骨格の片側に多発するとOllier病(オリエール病)、それに血管腫を合併するとMaffucci症候群(マフッチ病)という。

2.〇 正しい。骨巨細胞腫は、単純エックス線で多房性の骨透過像を示す腫瘍である。(※読み:こつきょさいぼうしゅ)
骨巨細胞腫とは、骨端軟骨線が閉鎖した後の20~30歳台に発生する骨腫瘍である。増殖力が強く骨破壊性の腫瘍で、WHOの分類では中間悪性の腫瘍に位置付けられている。長骨の末端(特に膝近く)に発生する。骨巨細胞腫は潜在的に悪性の骨腫瘍であるため、エックス線で多房性の骨透過像を示すことが多く、膨満性で境界が不明瞭である。

3.× 孤立性骨嚢腫(単発性骨嚢腫)
孤立性骨嚢腫とは、良性の骨腫瘍で、骨の中に空洞ができるまれな疾患である。好発部位は上腕骨・大腿骨近位骨幹端であり、女性に比較し男性に多く、発症平均年齢は9 歳前後と報告されている。特段症状のない場合は放置、病的骨折を起こす可能性が高い場合、実際に病的骨折を起こした場合などは手術適応となる。

4.× 線維性骨異形成
線維性骨異形成とは、骨の中が線維化して、骨がもろくなる病気である。主に太ももの骨とすねの骨に多く起こる。骨の痛みが主な症状で、悪化すると歩行困難や骨折がおこる。多くが単骨性に発生する。 10~20歳代に好発し、女性にやや多い。

 

 

 

 

 

 

問題60 悪性化あるいは悪性腫瘍併発の可能性があるのはどれか。

1.モルキオ(Morquio)病
2.ターナー(Turner)症候群
3.マルファン(Marfan)症候群
4.フォン・レックリングハウゼン(VonRecklinghausen)病

答え.4

解説
1.× モルキオ(Morquio)病
Morquio病とは、骨の変形が非常に強く、重症の方は身長も100cm前後となる特徴を持つ。ちなみに、知能は障害されません。幼児期から手足の変形、背骨のゆがみ、短い首と胴、X脚、低身長が観察される。また、背骨が強く変形して扁平になるために胴が短くなる。関節の靱帯が弛緩するために、関節がぐらぐらと不安定となる。

2.× ターナー(Turner)症候群
ターナー症候群とは、典型的には身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみ(翼状頸)があり、学習障害がみられ、思春期が始まらないのが特徴である。2本のX染色体のうち1本の部分的または完全な欠失によって引き起こされる性染色体異常である。女性特有の染色体異常である。

3.× マルファン(Marfan)症候群
マルファン症候群とは、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形:漏斗胸など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。ほかにも、漏斗胸は、くる病の症状である。ちなみに、漏斗胸とは、前胸壁が陥没し、あたかも漏斗のような外観を示す変形である。骨強度の減弱により生じる。

4.〇 正しい。フォン・レックリングハウゼン(Von Recklinghausen)病は、悪性化あるいは悪性腫瘍併発の可能性がある。
概要神経線維腫症Ⅰ型(フォン・レックリングハウゼン病)とは、カフェ・オ・レ斑と神経線維腫を主徴とし、その他骨、眼、神経系、(副腎、消化管)などに多彩な症候を呈する母斑症であり、常染色体性優性の遺伝性疾患である。主な症状は、カフェオレ斑(皮膚色素沈着)である。カフェオレ斑は楕円形のものが多く、子供では5mm以上、大人では15mm以上もある。重症合併症を有する割合は少ないが、健常人と比べて悪性腫瘍を合併する割合がやや高いと言われている。原因は17番染色体であり遺伝子疾患であるが、患者の半数以上は無症状の両親から生まれている。他の症状としては、脊柱側弯や長管骨の狭細化・弯曲・偽関節である。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)