第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後61~65】

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問題61 静脈瘤で正しいのはどれか。

1.男性に多い。
2.立位で消失する。
3.上肢に多く発生する。
4.表在静脈に多く発生する。

答え.4

解説

下肢静脈瘤とは?

下肢静脈瘤とは、体のすみずみに行きわたった血液が、心臓に戻る血管を静脈といい、足の静脈が太くなって瘤(こぶ)状に浮き出て見えるようになった状態のことをさす。

1.× 「男性」ではなく女性に多い。
男女比では1対4で女性に多く、年齢的には40歳以上の人に多く見られる。これは、特に妊娠、更年期、長時間の立ち仕事などが要因と考えられる。

2.× 立位で、「消失」ではなく著明となる。
なぜなら、血液が重力の影響を受け、下肢の静脈内に貯まるため。したがって、静脈瘤は通常、立位や長時間座っているときにより目立つ傾向がある。一方で、横になると血流が改善し、静脈瘤は減少または消失することがある。

3.× 「上肢」ではなく下肢に多く発生する。
なぜなら、重力と立位や座位による静脈内圧の増加が関与しているため。上肢の静脈瘤は比較的まれで、特定の原因(例えば、先天的な異常、静脈炎、または静脈に対する以前の外傷など)による。

4.〇 正しい。表在静脈に多く発生する
表在静脈とは、皮膚の下を流れる体表付近の静脈である。太ももからふくらはぎの内側にある大伏在静脈と、ふくらはぎのうしろ側にある小伏在静脈がある。深部静脈は、筋肉の間や中にある足の深い部分の静脈である。表在静脈より太く、後述の筋ポンプ作用と深いかかわりがある。

 

 

 

 

 

問題62 手根管症候群の症状で正しいのはどれか。

1.小指球筋萎縮
2.手背感覚鈍麻
3.母指対立運動低下
4.手指開排運動低下

答え.3

解説

手根管症候群とは?

手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。

1.4.× 小指球筋萎縮/手指開排運動低下は、尺骨神経麻痺でみられる。
肘部管症候群とは、肘の内側を通る尺骨神経が圧迫され、小指・薬指がしびれたり、手が使いにくくなる病気である。肘関節を十分に曲げた状態を続けることでしびれ、痛みが悪化するかどうかを見る(誘発テスト)。症状が悪化する場合は肘屈曲テスト陽性と判断する。

2.× 手背感覚鈍麻は、尺骨神経麻痺や橈骨神経麻痺でみられる。
正中神経は、橈側の手掌の感覚を支配する。

3.〇 正しい。母指対立運動低下は、手根管症候群の症状である。
手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。猿手は、正中神経障害によって生じる。猿手とは、母指球が萎縮し、母指が内転位となり、母指とその他の手指との対立運動が不能となる状態である。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。

 

 

 

 

 

問題63 化膿性関節炎で正しいのはどれか。

1.起炎菌は連鎖球菌が多い。
2.小児では血行感染が多い。
3.安静時に疼痛はない。
4.関節穿刺は禁忌である。

答え.2

解説

化膿性関節炎とは?

化膿性関節炎とは、関節に細菌が入り込んで感染し、炎症を起こす病気である。 関節に炎症が起こると、その部位が激しく痛み、表面の皮膚が赤くはれあがって熱を持つ。 そのほか、全身に現れる症状として、悪寒や倦怠感、食欲の低下などがある。血液検査で高値を示すのは白血球数とCRPである。

化膿性関節炎の感染経路は、①血行性感染(最も多い)、②外傷、手術、関節内注射などの直接感染、③骨髄炎、軟部組織感染などの近接病巣からの拡大などがある。 糖尿病や高齢者などの免疫機能が低下した患者に多くみられる。

1.× 起炎菌は、連鎖球菌ではなく「黄色ブドウ球菌」が多い。
化膿性関節炎とは、関節内に細菌が侵入し化膿してしまう病気である。その原因菌は、黄色ブドウ球菌が最も多く、続いて連鎖球菌、肺炎球菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が多いと報告されている。ちなみに、起炎菌とは、感染症を起こす原因となった菌である。(※読み:きれんきん)

2.〇 正しい。小児では血行感染が多い
小児における化膿性関節炎の主な原因は血行感染で、他の部位の感染が血液を介して関節に広がる場合が多い。ちなみに、血行感染(血流感染)の原因は主に、①医療従事者の手指、②患者の皮膚の細菌叢、③側管、接続部の汚染、④輸液の汚染がある。

3.× 安静時に疼痛がみられる
化膿性関節炎では、 関節に炎症が起こると、その部位が激しく痛み、表面の皮膚が赤くはれあがって熱を持つ。

4.× 関節穿刺は「禁忌」ではなく診断手段である。
化膿性関節炎の診断は、関節穿刺し、関節内にたまっている膿を確認して行う。また、採血をすると、白血球の増加やCRPというタンパク質の上昇、赤沈の亢進といった変化がみられる。ちなみに、関節穿刺とは、注射針などを刺し、内部の体液を採取することである。

溶連菌感染症とは?

溶連菌感染症とは、溶連菌(溶血性性連鎖球菌)という細菌に感染することによって、かぜ症候群と呼ばれる上気道感染症や皮膚の化膿を引き起こす感染症である。

溶連菌(溶血性連鎖球菌)は、細菌であり、
①化膿性連鎖球菌(A群β型連鎖球菌)は、猩紅熱、急性糸球体腎炎、リウマチ熱などの原因となる。
②B群連鎖球菌(GBS)は、新生児の髄膜炎、敗血症の原因となる。
③緑色連鎖球菌は、亜急性感染性心内膜炎(SBE)の原因となる。

 

 

 

 

 

問題64 骨折と受傷機転の組合せで誤っているのはどれか。

1.骨性槌指:DIP関節屈曲位強制
2.舟状骨骨折:手関節背屈位強制
3.スミス(Smith)骨折:手関節掌屈位強制
4.ベネット(Bennett)骨折:母指MP関節背屈位強制

答え.4

解説

橈骨遠位端骨折

・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。

主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。

コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。

1.〇 正しい。骨性槌指:DIP関節屈曲位強制
槌指とは、DIP関節の過屈曲によりDIP関節の伸筋腱の断裂で起こる。DIP関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自動伸展は不能で、自分で伸ばそうと思っても伸びない。しかし、他動伸展は可能である。

2.〇 正しい。舟状骨骨折:手関節背屈位強制
舟状骨骨折の受傷機転は、ほとんどが過伸展損傷といい手関節を過度に背屈した際に生じる。橈骨遠位端骨折も同様な機序で起こりますが、骨質の低下した高齢者では舟状骨よりも橈骨が先に折れることがある。

3.〇 正しい。スミス(Smith)骨折:手関節掌屈位強制
スミス骨折とは、橈骨遠位端骨折のひとつで、遠位骨片が掌側に転位しているのが特徴である。手首が強制的に掌屈されるとき(手首が手の掌側に曲がる動き)に起こりやすい。通常、受傷直後に痛みや腫れなどの明らかな症状がある。

4.× ベネット(Bennett)骨折は、「母指MP関節背屈位強制」ではなく母指MP関節掌屈位強制である。
Bennett骨折(ベネット骨折)とは、第一中手骨基部の関節内骨折で、第一中手骨の脱臼を伴いやすい。母指先端にボールが当たったり喧嘩やボクシングで母指の先端に力が加わった際に起こりやすい。骨棘は、骨折や関節の摩耗により関節周囲の骨が増殖する現象である。

偽関節とは?

偽関節とは、骨折部の癒合不全により異常可動をきたすことである。血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位の骨折が好発部位である。つまり、①大腿骨頸部骨折、②手の舟状骨骨折、③脛骨中下1/3骨折等は偽関節を起こしやすい。

 

 

 

 

 

問題65 足の変形の組合せで正しいのはどれか。

1.凹足:内側縦アーチが高い。
2.尖足:脛骨神経麻痺で生じる。
3.内反足:前足部の外転を伴う。
4.扁平足:踵部が内反する。

答え.1

解説
1.〇 正しい。凹足:内側縦アーチが高い。
凹足とは、土踏まずであるアーチ(内側縦アーチ)が高まった状態である。腓骨筋の筋力低下や後脛骨筋の緊張により起こる。ちなみに、内側縦アーチとは、踵骨・距骨・舟状骨・内側楔状骨・第1中足骨からなる。一方、外側縦アーチは、踵骨・立方骨・第5中足骨からなる。

2.× 尖足は、「脛骨神経麻痺」ではなく脳卒中による痙縮で生じる。
尖足とは、つま先立ちの状態の足で、踵を地面に着けようとしても可動域がなく、歩行時に踵が床に付かない状態である。つまり、足関節の背屈制限がある歩行状態である。具体的疾患は、脳卒中などからくる下腿後面の筋肉の痙縮、小児麻痺でみられる下腿前面の筋肉の麻痺などが原因で起こる。

3.× 内反足は、「前足部の外転」ではなく前足部の内転を伴う。
内返しとは、回外・内転・底屈の複合した運動である。

4.× 扁平足は、踵部が「内反」ではなく外反する。
扁平足とは、足関節外反位に加えにアーチの低下などアライメント不良を起こした状態である。したがって、外反扁平足ともよぶ。

 

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