第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午後41~45】

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問題41 認知症を生じるのはどれか。

1.褐色細胞腫
2.正常圧水頭症
3.ネフローゼ症候群
4.マロリー・ワイス(Mallory-Weiss)症候群

答え.2

解説
1.× 褐色細胞腫
褐色細胞腫とは、交感神経(自律神経の一種)に働きかけるホルモンであるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の産生能を有する腫瘍である。主に、腎臓の上に位置する副腎髄質から発生する。カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に、重要な役割を果たす。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈する。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもある。

2.〇 正しい。正常圧水頭症は、認知症を生じる。
正常圧水頭症とは、脳脊髄液(髄液)の循環障害によって拡大した脳室が、頭蓋骨内面に大脳半球を押しつけることにより、数々の脳の障害を引き起こす一連の病態である。①認知症、②尿失禁、③歩行障害の三徴がみられる。脳外科的な手術であるシャント術で改善する。

3.× ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。小児の治療として、ステロイド治療により改善することが多い。ネフローゼ症候群に対する食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。

4.× マロリー・ワイス(Mallory-Weiss)症候群
Mallory-Weiss症候群とは、繰り返す激しい嘔吐のために食道に圧が加わり、食道胃接合部付近の粘膜が破れ出血する疾患である。激しい嘔吐を繰り返すと、急激に上昇した腹腔内圧が食道に加わり、食道胃接合部付近(食道下部から胃の入り口=噴門部)の粘膜に裂傷が起こる。つまり、嘔吐を繰り返すことで腹圧が上がり、食道下部から胃の入り口付近にかけての粘膜に強い圧力がかかり、嘔吐後に下部食道の裂創が生じ、吐血・下血をきたす。

 

 

 

 

 

問題42 33歳の女性。5年前から日光過敏を自覚していた。1年前から口内炎を繰り返し、6か月前から両側の手関節の関節痛と脱毛を認めた。1か月前から発熱が持続したため来院した。体温38.2℃。尿所見では、タンパク陽性、潜血陽性。血液検査では、血小板減少、抗二本鎖DNA抗体陽性を認めた。
 最も考えられる疾患はどれか。

1.皮膚筋炎
2.全身性強皮症
3.全身性エリテマトーデス
4.ベーチェット(Behcet)病

答え.3

解説

本症例のポイント

・33歳の女性(5年前から日光過敏)。
・1年前:口内炎を繰り返す。
・6か月前:両側の手関節の関節痛と脱毛を認めた。
・1か月前:発熱が持続した(体温38.2℃)。
・尿所見:タンパク陽性、潜血陽性。
・血液検査:血小板減少、抗二本鎖DNA抗体陽性
→診断基準として、顔面紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔内潰瘍、抗核抗体陽性など4項目以上満たすと全身性エリテマトーデス(SLE)を疑う。

1.× 皮膚筋炎
多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)。

2.× 全身性強皮症
強皮症には大きく、皮膚や内臓などが硬くなる全身性強皮症と、皮膚のみが硬くなる限局性強皮症の2種類がある。強皮症とは、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどである。

3.〇 正しい。全身性エリテマトーデスは、最も考えられる疾患である。
全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。診断基準として、顔面紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔内潰瘍、抗核抗体陽性など4項目以上満たすと全身性エリテマトーデス(SLE)を疑う。

4.× ベーチェット(Behcet)病
Behçet病(ベーチェット病)は、自己免疫疾患である。四徴として、①口腔粘膜のアフタ性潰瘍、②ぶどう膜炎、③皮膚症状(結節性紅斑や皮下硬結)、④外陰部潰瘍である。皮膚症状として、下腿に後発する。発赤や皮下結節を伴う結節性紅斑、圧痛を伴う皮下の遊走性血栓性静脈炎、顔面・頚部・背部などにみられる毛嚢炎様皮疹または痤瘡様皮疹などが出現する。

 

 

 

 

 

問題43 75歳の女性。道ばたで転倒しているのが発見された。症状を尋ねたところ、右手足が動きにくいと訴えたため救急車を要請した。
 誤っているのはどれか。

1.頸髄損傷
2.橋左側の脳出血
3.右被殻部の脳出血
4.パーキンソン(Parkinson)症候群

答え.3

解説
1.〇 頸髄損傷
中心性頸髄損傷は、転倒などにより、脊髄全体に外力が加わり、中心に近い脊髄灰白質が障害されたものである。高齢者において、脊椎の変形あるいは後縦靭帯骨化症などを合併して脊柱管狭窄をきたしている場合に、中心性頸髄損傷が発生しやすい。交通事故などの頸髄損傷に比べ、機能予後はよいが、下肢より上肢の運動障害が顕著であり、上肢の障害は残存することが多い。

2.〇 橋左側の脳出血
橋出血では他の脳出血と違い両手両足の麻痺がおこることが特徴である。重症例では、意識障害、呼吸障害、四肢麻痺、嚥下障害が起こる。

3.× 右被殻部の脳出血は考えにくい。
なぜなら、右被殻部の脳出血の場合、左片麻痺症状が出現するため。本症例は、「右手足が動きにくい」と訴えていることから、疾患名と症状が一致しない。

4.〇 パーキンソン(Parkinson)症候群
パーキンソン症候群とは、パーキンソニズムともいい、パーキンソン病の症状(①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害)を呈する疾患の総称のことをいう。パーキンソニズムは、脳の病気、脳損傷、または特定の薬剤や毒素によって引き起こされる。

 

 

 

 

 

問題44 機械的損傷はどれか。

1.低温による凍傷
2.紫外線による熱傷
3.気圧による減圧症
4.電気による電撃傷

答え.3

解説

外傷とは?

外傷とは、外力(①機械的、②非機械的:物理的、化学的)により生じた組織・臓器の損傷をさす。
①機械的:創傷、気圧(減圧症)
②非機械的:物理的(熱傷、凍傷)、化学的(放射線、電撃)

1.× 低温による凍傷/紫外線による熱傷/電気による電撃傷
これらは、非機械的損傷に分類される。

3.〇 正しい。気圧による減圧症は、機械的損傷である。
機械的損傷とは、転んだり、打撲などの外力によって起こる損傷で、機械的外力の創傷や、気圧の減圧症である。

 

 

 

 

 

問題45 Ⅲ度の広範囲熱傷の治療で適切でないのはどれか。

1.十分な輸液
2.抗潰瘍薬の投与
3.抗菌薬の全身投与
4.血漿膠質浸透圧の補正

答え.3

解説

MEMO

Ⅲ度の熱傷は、皮下組織までの深さであり、疼痛はなく、白く乾燥、炭化水泡形成はない。また治癒には一か月以上かかり、小さいものは瘢痕治癒するが、植皮が必要なレベルである。

熱傷のリハビリテーション

熱傷のリハビリプログラムは、主に①急性期と②慢性期に分けることができる。一般的に、熱傷のリハビリでは急性期においてより、慢性期に比重がおかれるが、リハビリプログラムは熱傷の受傷直後より開始されなければならない。

①急性期:熱傷の程度、部位と範囲が予後に重大な影響を及ぼす。重度熱傷では、ショックに陥るため、蘇生術や心肺機能、腎機能の維持と電解質、体液のバランスが急務となる。また、熱風の吸引などによる気管の損傷は呼吸不全をきたすため、時には気管切開も必要となる。

②慢性期:全身状態が落ち着き、この時期の課題は、疼痛、感染、植皮術、ケロイド、拘縮、ADL、心理的な問題となる。ケロイドとは、皮膚の深いところにある真皮という部分で炎症が続いてしまうことにより生じる疾患である。

(参考:「総合リハビリテーション 7巻4号 (1979年4月発行)熱傷のリハビリテーション」著 千野 直一より)

1.4.〇 十分な輸液/血漿膠質浸透圧の補正
なぜなら、重度熱傷では、ショックに陥るため。蘇生術や心肺機能、腎機能の維持と電解質、体液のバランスが急務となる。

2.〇 抗潰瘍薬の投与
熱傷に対して、外用薬は①ステロイド外用薬、②油脂性軟膏、③抗潰瘍外用薬が用いられる。抗潰瘍外用薬は、壊死や感染に対するものと、肉芽形成・上皮化を促進するものに大別され、壊死や感染に対する抗潰瘍外用薬は、更に壊死組織融解作用により壊死組織を除去するものと、ヨウ素を含有することで感染を制御するものに分けられますが、両者を兼ね備えたものもある。

3.× 抗菌薬の全身投与は、Ⅲ度の広範囲熱傷の治療で適切でない。
なぜなら、免疫機能まで低下させる恐れがあるため。局所的な抗菌薬の投与は医師の判断のもと行うことがある。ちなみに、抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。

熱傷の分類

Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

 

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