第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午後36~40】

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問題36 気管支喘息の治療薬で誤っているのはどれか。

1.アドレナリン
2.β2遮断薬
3.抗アレルギー薬
4.吸入ステロイド薬

答え.2

解説

気管支喘息とは?

【症状】
喘鳴、呼吸困難、呼気延長など(1秒率の低下)、アレルギー反応やウイルス感染が誘引となる。

【治療】気道の炎症を抑えて、発作が起きない状態にする。発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため治療が難しくなる。そのため、日頃から気道の炎症を抑える治療を行い、喘息をコントロールすることが重要である。

1.〇 正しい。アドレナリン
なぜなら、アドレナリンは、気管支を拡張し空気の通りがよくなる方向に作用するため。

2.× 気管支喘息の治療薬は、「β2遮断薬」ではなくβ2刺激薬である。
なぜなら、β2刺激薬には気管支拡張作用があり、吸入で使用すれば即効性が期待できるため。一方、β遮断薬とは、気管支収縮作用があるため、喘息は悪化する。通常、慢性心不全の方は心機能が低下しているため、交感神経が活発化している。しかし、長期間このような状態が続くと、心不全はだんだんと悪化していく。β遮断薬は、この神経の働きを抑えることで、無理をしている心臓の動きを少し休める作用がある。長期的に服用することで心不全の悪化を防ぐ薬でもある。

3.〇 正しい。抗アレルギー薬
なぜなら、気管支喘息の発作は、アレルギー反応やウイルス感染が誘引となるため。

4.〇 正しい。吸入ステロイド薬
吸入ステロイド薬の作用は、体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑制したりする。気管支喘息による炎症を抑制し、喘息の発作を予防できる。

 

 

 

 

 

問題37 肺癌で正しいのはどれか。

1.女性に多い。
2.好発年齢は40~50歳代である。
3.腫瘍マーカー検査で診断を確定する。
4.末梢に発生すると多くは無症状である。

答え.4

解説
1.× 「女性」ではなく男性に多い。
男女比は約2.5:1である。これは長年にわたる喫煙の影響が大きいとされている。喫煙率は男性のほうが多く、男性 27.1%、女性 7.6%である。

2.× 好発年齢は、「40~50歳代」ではなく60~70歳代である。
これは長年にわたる喫煙の影響が大きいとされている。

3.× 腫瘍マーカー検査で診断を確定することはできない
なぜなら、腫瘍マーカー検査は、がんの診断の補助や、診断後の経過や治療の効果をみることを目的に行うため。腫瘍マーカーとは、がんの種類によって特徴的に作られるタンパク質などの物質である。がん細胞やがん細胞に反応した細胞によって作られるが、がんの有無やがんがある場所は、腫瘍マーカーの値だけでは確定できないため、画像検査など、その他の検査の結果も合わせて、医師が総合的に判断する必要がある。また、肝障害、腎障害、飲酒や喫煙などの生活習慣、いつも飲んでいる薬、がん以外にかかっている病気などの影響により、がんの有無とは無関係に高い値になることもあり、反対に、がんがあっても値が高くならないこともある。

4.〇 正しい。末梢に発生すると多くは無症状である
末梢型は、早期では無症状であることが多く、進行すると周囲に肺炎を引き起こし、胸痛や肩痛、発熱、咳嗽が出現する。一方で、中枢型は、早期より著明な咳嗽や血痰がみられ、進行すると発生部位よりも末梢の気道が閉塞し無気肺や肺炎となり、胸部単純写真でも無気肺像や肺炎像が出現する。

 

 

 

 

 

問題38 心不全の症状で誤っているのはどれか。

1.発熱
2.下腿浮腫
3.起座呼吸
4.労作時の息切れ

答え.1

解説

心不全とは?

心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。

心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの(呼吸困難、起座呼吸、尿量減少など)
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの(頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など)
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。

1.× 発熱は、心不全の症状で誤っている。
発熱は、主に炎症を伴う感染症などにみられる。ちなみに、炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。

2.〇 正しい。下腿浮腫は、右心不全によくみられる。
心臓が血液を効率的にポンプできないと、体の組織や臓器に血液が滞留し、下腿における浮腫(腫れ)を引き起こす。

3~4.× 起座呼吸/労作時の息切れは、左心不全によくみられる。
なぜなら、左心房の機能不全(肺循環系にうっ血が著明)になると、肺循環系が機能不全を起こすため。ちなみに、起座呼吸とは、上半身を起こした状態で呼吸をする様子を指す。背臥位では呼吸困難を呈するため起座呼吸を行う。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

 

 

 

 

 

問題39 糖尿病の合併症でないのはどれか。

1.眼底出血
2.慢性腎臓病
3.くも膜下出血
4.閉塞性動脈硬化症

答え.3

解説

糖尿病の3大合併症

①網膜症、②腎症、③神経障害である。

1.〇 眼底出血
眼底出血は、糖尿病網膜症の一症状である。糖尿病患者では、糖が多く固まりやすい状態になっているため、網膜の毛細血管を詰まらせたり、血管の壁に負担をかけて、眼底出血のリスクが高い。

2.〇 慢性腎臓病
慢性腎不全(慢性腎臓病とも)は、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。

3.× くも膜下出血は、糖尿病の合併症でない。
くも膜下出血とは、くも膜と呼ばれる脳表面の膜と脳の空間(くも膜下腔と呼ばれ、脳脊髄液が存在している)に存在する血管が切れて起こる出血である。約85%が、破裂脳動脈瘤が原因である。くも膜下出血ではくも膜下腔に血液が流入し、CTでは高吸収域として抽出される。合併症には、①再出血、②脳血管攣縮、③正常圧水頭症などがある。①再出血:発症後24時間以内が多く、死亡率も高い。②脳血管攣縮:72時間後〜2週間後(ピークは8〜10日)が多く、脳血管攣縮による梗塞の好発部位は、「前交通動脈」である。③正常圧水頭症:数週〜数ヶ月後に認知症状、尿失禁、歩行障害などの症状が出現する。

4.〇 閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症は、糖尿病の主要な合併症の一つである。血糖値が高い状態が持続すると、動脈の内壁に脂質が溜まりやすくなり、それが硬化となり、血流が阻害される。特に、下肢の血管に影響を与え、深刻な場合は切断を必要とする場合もある。

糖尿病性腎症とは?

糖尿病性腎症とは、糖尿病の合併症で、糖尿病によって高血糖状態が持続し、腎臓の内部に張り巡らされている細小血管が障害を受けることで発症する。悪化すると腎不全に移行し、血液透析などが必要となる。糖尿病性腎症の場合、徐々に病気が進行するため、できるだけ早期に発見し、適切な治療をすることが重要である。糖尿病性腎症が原因で透析を受けることになった人が、全透析患者のうち44.1%と最も多い割合を占めている。一般的な糖尿病の食事療法としては、標準体重と身体活動量により摂取エネルギー量を算出し、50~60%が糖質、蛋白質が20%までとし、残りは脂質とする。また、糖尿病腎症の治療には血糖・血圧コントロールが重要であり、腎症 3 期(顕性腎症)では、食塩制限に加えたんぱく質摂取量にも注意が必要である。これは、たんぱく質や塩分がさらに腎臓に対し負担をかけるためである。つまり、①エネルギー量の管理、②食塩量の制限、③タンパク質量の調整が必要となる。

閉塞性動脈硬化症とは?

閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

【病期】
Ⅰ期:「しびれ」「冷感」。
Ⅱ期:「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」。一定距離を歩くと脚が傷み、休むとまた歩けるようになる。
Ⅲ期:「安静時疼痛」。安静にしていても脚に痛みが生じる。
Ⅳ期:「潰瘍」「壊疽」。血液が足の先に行かないので、足に潰瘍ができ、ついには足が腐ってしまう。

【治療】
まず動脈硬化の原因である糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療を行う。喫煙者は禁煙する。初期の手足の冷感やしびれには血管拡張薬や血液を固まりにくくする薬(抗血小板剤)を用いる。また歩くことによって、側副血行路が発達し血行の流れの改善をはかる。

(※参考:「閉塞性動脈硬化症」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題40 腎前性腎障害の原因となるのはどれか。

1.脱水
2.腎梗塞
3.尿管結石
4.糸球体腎炎

答え.1

解説

腎前性腎障害とは?

腎前性急性腎不全の原因は心不全である。腎前性とは、尿が腎臓を出る前にある場合をいう。主な原因は、腎臓に流れる血液量が減少することである。したがって、心不全のほかにも、外傷による大量出血、消化管出血、脱水、頻発する嘔吐・下痢などによる体液量の減少などである。

1.〇 正しい。脱水は、腎前性腎障害の原因となる。
腎前性腎障害とは、尿が腎臓を出る前に障害がある場合をいう。主な原因は、腎臓に流れる血液量が減少することである。したがって、心不全のほかにも、外傷による大量出血、消化管出血、脱水、頻発する嘔吐・下痢などによる体液量の減少などである。

2.× 腎梗塞は、腎性腎障害に分類される。
腎性腎不全は、腎臓そのものの障害により発症する。例えば、糸球体に障害が起こる糸球体腎炎、間質や尿細管に炎症が起こる間質性腎炎や腎盂腎炎などがこれにあたる。また、腎臓内の小血管に炎症が起こる血管炎や小血管が詰まる血栓症・塞栓症も急性腎障害の原因となる。

3.× 尿管結石は、腎後性腎不全に分類される。
腎後性腎不全とは、尿の排出経路が閉塞することで発症するものをいう。例えば、著しい前立腺肥大、前立腺がん、左右両側の尿路結石、子宮頸がんなどによる尿管の圧迫などが原因としてあげられる。

4.× 糸球体腎炎は、腎性腎障害に分類される。
急速進行性糸球体腎炎とは、糸球体腎炎のうちで数週から数カ月の短い期間に急速に腎機能が低下する病気である。腎生検の所見は、多くの糸球体に半月体という細胞の増殖する構造物が観察される。

 

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