第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午後31~35】

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問題31 誤っている組合せはどれか。

1.髄膜炎:項部硬直
2.小脳疾患:筋トーヌスの低下
3.膝関節液貯留:膝蓋骨跳動
4.筋萎縮性側索硬化症:筋の仮性肥大

答え.4

解説
1.〇 正しい。項部硬直は、「髄膜炎」でみられる。
(細菌性)髄膜炎とは、なんらかの理由(主な病原体:髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌)で、髄膜が炎症を起こす病気である。症状は、髄膜炎の3大症状でもある発熱、頭痛、項部硬直で、75%以上の意識障害(傾眠~昏睡と程度は様々)である。他にも、嘔吐や羞明もよくみられる。けいれんは初期症状にみられ、髄膜炎の全経過を通して20~40%に起こる。ちなみに、細菌性髄膜炎では、病原体に合わせた抗菌薬療法や、症状に応じた対症療法が行われる。

2.〇 正しい。筋トーヌスの低下は、「小脳疾患」でみられる。
なぜなら、小脳は、筋トーヌスと運動の調節に関与しているため。小脳とは、後頭部の下方に位置し、筋緊張や身体の平衡の情報を処理し運動や姿勢の制御(運動系の統合的な調節)を行っている。

3.〇 正しい。膝蓋骨跳動は、「膝関節液貯留」でみられる。
膝蓋骨跳動は、関節貯留液の有無の検査である。膝蓋骨を押すと大腿骨に衝突してコツコツと音がすると陽性である。

4.× 筋の仮性肥大は、「筋萎縮性側索硬化症」ではなく筋ジストロフィーでみられる。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

MEMO

筋ジストロフィーは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。病状が進行していくと①腰椎の前弯、①股関節・膝関節の屈曲拘縮、③足部の尖足・内反変形が起こる。したがって、短縮しやすい筋としては、腸腰筋、大腿筋膜張筋、ハムストリングス、下腿三頭筋(腓腹筋)である。

 

 

 

 

 

問題32 生命徴候で異常値はどれか。

1.脈拍90/分
2.血圧124/90mmHg
3.腋窩体温36.0℃
4.安静時呼吸数16/分

答え.2

解説
1.× 脈拍90/分
脈拍の正常値範囲:60~90回/分、頻脈の場合は100回/分以上である。

2.〇 血圧124/90mmHgは、生命徴候で異常値である。
高血圧の基準は家庭血圧で135/85mmHg以上、診察室血圧では140/90mmHg以上と定義されている。拡張期血圧90mmHg以上であるため、1度高血圧として生命徴候で異常値である。

3.× 腋窩体温36.0℃
体温の正常範囲は、36~37℃程度とされており、直腸温は腋窩より0.5℃高く、口腔は両者の中間といわれている。

4.× 安静時呼吸数16/分
呼吸数の正常範囲は、12~18回/分である。

 

 

 

 

 

問題33 脳波検査が必要なのはどれか。

1.糖尿病治療中の患者が顔面蒼白となり意識を失った。
2.突然、体の動きが止まり回復後もその間の記憶がない。
3.足関節を急激に背屈させると間代性に底屈、背屈を繰り返す。
4.何もしていないときに丸薬をこねるような手指の運動が続く。

答え.2

解説
1.× 糖尿病治療中の患者が顔面蒼白となり意識を失った。
これは、低血糖症状の可能性が高い。ちなみに、低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

2.〇 正しい。突然、体の動きが止まり回復後もその間の記憶がない
これは、一過性てんかん性健忘の症状である。てんかん発作が原因で一時的に記憶障害が起こる病気である。
特徴として、もの忘れの症状が目立ち、急に認知症になったと間違われることもある。また、脳波で異常(てんかん波 、 徐波) が見つかることが多い。抗てんかん薬の内服で治療をおこなう。

3.× 足関節を急激に背屈させると間代性に底屈、背屈を繰り返す。
これは、足クローヌスである。足クローヌス陽性は、深部反射の著明な亢進により生じ、痙直型四肢麻痺に特徴的な症状である。上位運動ニューロンの障害による痙性麻痺を主症状(筋トーヌス亢進、深部腱反射亢進、病的反射出現、クローヌス出現、折りたたみナイフ現象)とする。

4.× 何もしていないとき(安静時)に丸薬をこねるような手指の運動が続く。
これは、安静時振戦である。パーキンソン病にみられやすい。ちなみに、パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

 

 

 

 

 

問題34 肝細胞癌の原因疾患で最も多いのはどれか。

1.A型肝炎
2.B型肝炎
3.C型肝炎
4.E型肝炎

答え.3

解説

肝細胞癌とは?

肝細胞癌とは、肝臓の細胞ががん化したものである。肝細胞がんの発生には、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などによる、肝臓の慢性的な炎症や肝硬変が影響している。肝臓は、肝動脈と門脈の二重血流支配を受けており、肝細胞癌は主に肝動脈からの血流支配を受けている。そのため、肝細胞癌を支配する肝動脈を塞栓物質で血流遮断することで治療する。

1.× A型肝炎
A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染する。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等で、一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残る。治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。

2.× B型肝炎
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって生じる肝臓の病気のことである。B型肝炎ウイルスは主に感染者の血液や体液を介して感染する。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染する。しかし、B型肝炎にはワクチンがあるため、適切にワクチンを接種することによって感染を予防することができる。

3.〇 正しい。C型肝炎は、肝細胞癌の原因疾患で最も多い。
C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することによって起こる肝臓の病気である。C型肝炎ウイルスは、主に感染者の血液や体液から感染する。感染の危険性がある行為としては注射器の使い回しや剃刀(かみそり)の共用などがある。そのほか、妊娠中の母親から胎児への感染や性行為による感染もあるが、感染する確率は低いと考えられている。

4.× E型肝炎
E型肝炎ウイルスとは、急性肝炎の原因となるRNAウイルスである。水や豚・猪のレバーなど食物を介して経口感染する。従来、経口伝播型非A非B型肝炎とよばれてきたウイルス性の急性肝炎で、その病原体はE型肝炎ウイルス(RNAウイルス)である。E型肝炎の致死率はA型肝炎の10倍といわれ、妊婦では実に20%に達することがある。

 

 

 

 

 

問題35 急性膵炎で誤っているのはどれか。

1.疼痛は仰臥位で軽減する。
2.アルコール多飲が誘因となる。
3.血液検査でアミラーゼが上昇する。
4.腹部エコーで膵臓の腫大がみられる。

答え.1

解説

急性膵炎とは?

急性膵炎とは、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまであるが、通常は治まる。主な原因は、胆石とアルコール乱用である。男性では50歳代に多く、女性では70歳代に多い。症状として、飲酒・過食後に左上腹部痛・心窩部痛が発症する。悪心・嘔吐、悪寒、発熱、背部への放散痛もみられ、腹痛はアルコールや脂質の摂取で増悪する。
検査:膵臓の炎症・壊死により膵臓由来の消化酵素(アミラーゼとリパーゼの血中濃度)が上昇する。
【治療】
軽症例:保存療法(禁食、呼吸・循環管理、除痛 等)
重症例:集中治療[臓器不全対策、輸液管理、栄養管理(早期経腸栄養)、感染予防、腹部コンパートメント症候群対策]

(※参考:「急性膵炎」MSDマニュアル家庭版より)

1.× 疼痛は「仰臥位」ではなく体幹屈曲位(前かがみ)で軽減する。
なぜなら、仰臥位では腹部が伸長ストレスが加わるため。

2.〇 正しい。アルコール多飲が誘因となる。
急性膵炎の主な原因は、胆石アルコール乱用である。

3.〇 正しい。血液検査でアミラーゼが上昇する。
なぜなら、膵臓の炎症・壊死が起こるため。ほかに、リパーゼも上昇する。ちなみに、アミラーゼとは、でんぷんを分解して糖にする酵素である。体内では主に、膵臓、耳下腺(唾液腺)から分泌される。

4.〇 正しい。腹部エコーで膵臓の腫大がみられる。
なぜなら、膵臓が炎症を起こしている状態であるため。炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。

 

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