第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午後46~50】

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問題46 感染症の治療で正しい組合せはどれか。

1.破傷風:ペニシリン
2.ガス壊疽:抗毒素血清(テタノブリン)
3.皮膚カンジダ症:抗真菌薬
4.アスペルギルス症:テトラサイクリン

答え.3

解説
1.× ペニシリンは、「破傷風」ではなく神経梅毒ガス壊疽に用いる。
ペニシリンは、抗菌薬の一つで、神経梅毒ガス壊疽などに投与する。ちなみに、破傷風とは、破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。

2.× 抗毒素血清(テタノブリン)は、「ガス壊疽」ではなく破傷風に用いる。
テタノブリンとは、破傷風抗毒素により血中に存在している破傷風菌の産生する毒素と結合し、破傷風発症を予防できる。ちなみに、ガス壊疽とは、ガス産生菌が傷口から侵入して感染し、筋肉が壊死に陥り、全身に中毒症を起こす致死性の感染症である。筋肉を中心としてメタンや二酸化炭素などのガスが発生することにより、感染が広がる。クロストリジウム属(ウェルシュ菌など)の菌により起こるクロストリジウム性ガス壊疽と、他の細菌で起こる非クロストリジウム性ガス壊疽の2つに大別される。深刻な感染症で、急速に進行し、強い痛みを伴い、皮膚の下にある組織が壊死し、ガスを生じることからこの名前が付けられている。

3.〇 正しい。皮膚カンジダ症:抗真菌薬
カンジダ症とは、カンジダ属の真菌による感染症である。接触感染の感染経路をとり、個室隔離の必要はない。症状として、発疹、鱗屑、かゆみ、腫れなどがみられる。湿潤部位の皮膚で発生しやすい傾向がある。境界のあまりはっきりしない、ジクジクした紅斑で、その中や周囲に小さい水ぶくれや膿が多数見られる。

4.× テトラサイクリンは、「アスペルギルス症」ではなく性感染症に用いる。
テトラサイクリン系抗生物質とは、クラミジア感染症、リケッチア感染症、マイコプラズマ感染症などの感染症のほか、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎等の治療に使用される。ちなみに、アスペルギルス症とは、アスペルギルス属の真菌によって引き起こされる通常は肺の感染症である。肺や副鼻腔内に、菌糸、血液のかたまり、白血球が絡まった球状のかたまりが形成される。

 

 

 

 

 

問題47 輸血で正しいのはどれか。

1.採血後6日以内のものを新鮮血という。
2.保存血輸血は血小板の補給が期待できる。
3.凝固因子の補充には新鮮凍結血漿を用いる。
4.循環血液量の維持には血小板輸血を用いる。

答え.3

解説
1.× 採血後「6日」ではなく3日以内のものを新鮮血という。
新鮮血の特徴として、赤血球・白血球・血小板・血症(凝固因子)などが含まれ、リンパ球活性が高く、最も輸血後GVHDが起こりやすい。

2.× 保存血輸血は血小板の補給が期待「できない」。
なぜなら、長期保存された全血からは血小板は除去されるため。保存血輸血とは、赤血球が壊れるのを防ぐためにグルコースなどのエネルギー源と抗凝固剤を加えて低温下で貯蔵した血液のことである。採血後4~21日以内に輸血に使われる。一方、採血後3日以内のものは新鮮血液と呼ばれる。

3.〇 正しい。凝固因子の補充には新鮮凍結血漿を用いる
新鮮凍結血漿とは、採血して4時間以内の全血を遠心分離して得た血漿を凍結したものである。新生児には先天性血栓性血小板減少性紫斑病や凝固因子の補充、赤血球濃厚液輸血時などに使用される。

4.× 循環血液量の維持には、「血小板輸血」ではなく細胞外液補充液を用いる。
血小板輸血は、血小板成分を補充することにより止血を図り、又は出血を防止することを目的である。一方、細胞外液補充液は、出血などによる循環血液量が減少したときの補給・充填や、ナトリウムを投与したい低張性脱水などの補給・充填に用いられる。

 

 

 

 

 

問題48 クロルヘキシジンで殺菌効果が期待できないのはどれか。

1.結核菌
2.多剤耐性菌
3.グラム陽性球菌
4.B型肝炎ウイルス

答え.4

解説

クロルヘキシジンとは?

クロルヘキシジングルコン酸塩液は、手術時手洗い、手術部位の皮膚、創傷部位(創傷周辺皮膚)、血管内留置カテーテル挿入部位の皮膚などに使用する。特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しても有効である。

1.〇 結核菌より効果が期待できないものが他にある
クロルヘキシジンは、低水準消毒に用いられる消毒薬であるため、一般的に結核菌には効果が薄い。結核菌の消毒では、中水準消毒薬以上の消毒薬が必要である。ただし、選択肢の中でウイルス(B型肝炎ウイルス)があるため、最も効果が期待できないものとしてあげられる。

2.〇 多剤耐性菌
多剤耐性菌とは、多くの抗生剤(こうせいざい:抗菌薬、抗生物質ともいう)に対して、耐性を獲得してしまった細菌のことをいう。

3.〇 グラム陽性球菌
グラム陽性球菌とは、グラム染色で紫色に染まる球菌のことである。肺炎球菌感染症などを引き起こす。

4.× B型肝炎ウイルスは、クロルヘキシジンで殺菌効果が期待できない。
B型肝炎ウイルスは、①熱水98℃にて6分、②熱水80℃にて10分、③0.1%次亜塩素酸ナトリウムに30分~1時間浸漬、④70%以上のアルコール系消毒薬が有効とされている。ちなみに、B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって生じる肝臓の病気のことである。B型肝炎ウイルスは主に感染者の血液や体液を介して感染する。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染する。しかし、B型肝炎にはワクチンがあるため、適切にワクチンを接種することによって感染を予防することができる。

 

 

 

 

 

問題49 縫合で誤っているのはどれか。

1.汚染創では一次縫合を行う。
2.神経縫合では神経鞘を縫合する。
3.感染創ではデブリドマンを行う。
4.消化管縫合では自動吻合器が使用される。

答え.1

解説

汚染創とは?

汚染創とは、細菌、異物が創面に付着してはいるものの増殖して創周囲組織に浸潤していない状態である。感染創とは、菌が増殖して創周囲組織内に浸 潤している状態である。震災時に治療の対象となる創傷は、汚染創もしくは感染創である。

1.× 汚染創では一次縫合を行うべきではない
なぜなら、感染状態下での一次縫合は、感染の拡大のリスクを高める可能性があるため。したがって、傷の清浄化、デブリードメント(壊死組織などの除去)を行った後、二次縫合を行う。創傷治癒には、一次治癒(一次縫合)と二次治癒(二次縫合)がある。一次治癒とは、創縁と創縁が密着し、創縁と創縁の間に瘢痕をほとんど形成せずに治癒する状態をいう。二次治癒とは、創縁と創縁の間に肉芽組織を形成し瘢痕となり治癒に至ることをいう。

2.〇 正しい。神経縫合では神経鞘を縫合する。
神経損傷時には、末梢神経の修復を目指して神経鞘縫合を行う。また、「消化管縫合のうちAlbert-Lembert縫合は、2層縫合の代表として、今日でも比較的安全な方法として広く使用されている(※参考:「腸管縫合—Albert-Lembert縫合」著:吉田 紘一より)」

3.〇 正しい。感染創ではデブリドマンを行う。
デブリドマンとは、感染・壊死組織を除去し、創を清浄化することで他の組織への影響を防ぐ外科処置のことである。つまり、壊死組織や感染した組織、異物を創から除去することで、健康な組織が新たに形成されるのを助ける。これは感染創の治療である。

4.〇 正しい。消化管縫合では自動吻合器が使用される。
なぜなら、自動吻合器により、縫合時間を短縮し、漏れのリスクを低減できるため。ちなみに、吻合とは、外科手術では疾患部位を手術で摘出した後、分離している消化管などの環状臓器の断端を、その連続性を確保しながら結合することである。手技による手縫いの代行を行うのが自動吻合器である。

 

 

 

 

 

問題50 脳死と臓器移植で誤っているのはどれか。

1.急性拒絶反応の時期は移植後2~3か月以内である。
2.心臓移植後の生存率は3年生存率70~80%である。
3.脳死とは脳幹を含む全脳髄の可逆的な機能喪失の状態である。
4.改正臓器移植法では家族の同意を得れば脳死下の臓器摘出が可能である。

答え.3

解説

(※図引用:「改正臓器移植法と子ども虐待」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。急性拒絶反応の時期は、移植後2~3か月以内である。
急性拒絶反応とは、免疫系が移植臓器を攻撃し、臓器の機能が急激に低下することを指す。主に術後1ヶ月周辺で現れることが多い。

2.〇 正しい。心臓移植後の生存率は、3年生存率70~80%である。
ただし、図のように日本と欧米でも差があり、また患者の年齢、既往歴などにも左右されやすい。

3.× 脳死とは、脳幹を含む全脳髄の「可逆的」ではなく不可逆的な機能喪失の状態である。
つまり、一度脳死状態になると、脳の機能が回復する可能性は極めて低い状態を指す。

4.〇 正しい。改正臓器移植法では、家族の同意を得れば脳死下の臓器摘出が可能である。
これはH22年から施行されている。これにより、15才未満の方からの脳死下での臟器移植も可能になり、また、虐待を受けた児童から臓器が提供されることがないよう所要の対策を講じることとなった。

脳死の判定基準

脳死とは、脳幹を含む全脳の機能が停止した状態である。

①深い昏睡にあること
②瞳孔が固定し一定以上開いていること
③刺激に対する脳幹の反射がないこと
④脳波が平坦であること
⑤自分の力で呼吸ができないこと

の5項目を行い、6時間以上経過した後に同じ一連の検査(2回目)をすることで、状態が変化せず、不可逆的であることの確認できた場合。

 

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