第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午後51~55】

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問題51 心肺蘇生で誤っている組合せはどれか。

1.気道異物除去:上腹部圧迫法
2.用手的気道確保:上顎挙上法
3.胸骨圧迫心臓マッサージ:5cm以上圧迫
4.AED(自動体外式除細動器):心室細動

答え.2

解説
1.〇 正しい。気道異物除去:上腹部圧迫法
腹部圧迫法〈Heimlich法:ハイムリック法〉は、成人の気道の異物除去を目的とする。救助者は、患者の後ろに立って手を腹部に当て、突き上げるようにし横隔膜を圧迫する。

2.× 上顎挙上法は、「用手的気道確保」ではなく気道確保である。
頭部後屈顎先挙上法は、気道確保のために行われる手技である。気管挿管前に、救急人工呼吸手技の一環として行われる手法である。片手を額に当て、もう一方の手の人差指と中指の2本をあご先(骨のある硬い部分)に当てて、頭を後ろにのけぞらせ(頭部後屈)、あご先を上げる(あご先挙上)。

3.〇 正しい。胸骨圧迫心臓マッサージ:5cm以上圧迫
胸骨圧迫心臓マッサージ(胸骨圧迫)は、心肺蘇生法の一部である。胸骨圧迫とは、心停止した傷病者の心臓付近を圧迫することにより脳や心臓に血液の循環を促す心肺蘇生を目的とした一次救命処置である。成人と幼児で適する力の入れ具合や胸骨の沈み具合が異なる。成人では胸骨が、5cmほど沈むように胸骨圧迫をする。一方で、幼児では年齢に応じた体格の差があるため、成人のような絶対値を当てはめることができない。そのため、幼児においては個別の体格を判断したうえで、胸の厚さの1/3程度が沈む強さで胸骨圧迫を行うことが推奨されている。年齢にかかわらず100~120回を目安に行う。

4.〇 正しい。AED(自動体外式除細動器):心室細動
AED(自動体外式除細動器)とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器である。

 

 

 

 

 

問題52 頭部外傷と症状の組合せで誤っているのはどれか。

1.脳しんとう:セカンドインパクトシンドローム
2.頭蓋底骨折:髄液鼻漏
3.急性硬膜下血腫:意識障害
4.慢性硬膜下血腫:激しい頭痛

答え.4

解説
1.〇 正しい。脳しんとう:セカンドインパクトシンドローム
セカンドインパクト症候群とは、脳しんとうあるいはそれに準ずる軽症の頭部外傷を受け、数日から数週間後に 2 回目の頭部外傷を負い、致死的な脳腫脹をきたすものをいう。セカンドインパクト症候群の中には急性硬膜下血腫を併存するものがある。

2.〇 正しい。 頭蓋底骨折:髄液鼻漏
頭蓋底骨折は、頭蓋冠(椀を伏せた形のドーム型の部分)の線状骨折や陥没骨折とは病態も治療方針も異なる。なぜなら、頭蓋骨の底面である頭蓋底は、でこぼこして多くの孔が開いている複雑な構造をしているため。【頭蓋底骨折の症状】主に①髄液漏と②脳神経麻痺があげられる。①髄液漏とは、頭蓋底骨折をとおしてなかの脳脊髄液がもれ出てくる状態である。出てくるのは耳の穴(髄液耳漏)か鼻の穴(髄液鼻漏)で、髄液漏では頭蓋内(頭蓋骨よりも内側)に細菌が入って髄膜炎を起こす危険がある。また、髄液が流れ出る代わりに空気が頭蓋内に入る気脳症を起こすこともある。②脳神経麻痺について、頭蓋底の孔の多くには、脳から出て顔面や内臓に至る脳神経がとおっている。この孔に骨折が及ぶと、なかをとおっている脳神経を傷つけて脳神経麻痺を来すことがある。

3.〇 正しい。急性硬膜下血腫:意識障害
硬膜下血腫は、①急性と②慢性に大きく分類される。①急性硬膜下血腫とは、短時間のうちに硬膜と脳の間に血腫が形成された状態のことであり、頭部外傷としては重症に分類される。ほとんどが頭部外傷によるもので、児童虐待の死因として最も多い。症状として、血腫による圧迫と脳挫傷のため、頭蓋骨の内側の圧が高まり(頭蓋内圧亢進)、激しい頭痛、嘔吐、意識障害などがみられる。

4.× :激しい頭痛は、「慢性硬膜下血腫」ではなく急性硬膜下血腫である。
慢性硬膜下血腫とは、軽度の外傷により軽微な出血が起こり、経時的に血腫が増大し、やがて症状が現れる。症状として、認知障害、頭痛、尿失禁、歩行障害、片麻痺などである。CT画像から、急性硬膜下血腫に特徴的な①三日月状の高吸収域、②左側脳室体部の圧排変形、③midlineの偏位がみられる。

 

 

 

 

 

問題53 交通外傷により損傷を受けた臓器と胸腹部CT検査所見の組合せで誤っているのはどれか。

1.肺:気胸
2.肝:腹腔内出血
3.脾:後腹膜出血
4.消化管:腹腔内遊離ガス像

答え.3

解説
1.〇 正しい。肺:気胸
気胸とは、肺と胸壁の間の空間に空気が溜まる状態を指す。交通事故による強い衝撃により、肺が損傷し、気胸が生じる。これを内開放性気胸といい、肺が外傷により損傷され起こる気胸のことである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ときにショックに至る。

2.〇 正しい。肝:腹腔内出血
腹腔内出血(血腹)とは、腹腔内で急性の出血が起こり、血液が貯留した状態をいう。交通事故や落下事故などの外傷でも腹腔内での出血は認められる。

3.× 脾は、「後腹膜出血」ではなく腹膜内出血である。
なぜなら、腹膜内臓器であるため。

4.〇 正しい。消化管:腹腔内遊離ガス像
腹腔内遊離ガス像とは、腹腔内フリーエアーともいい、腹腔内に空気がたまることである。本来、腹腔内の空間には空気がない。しかし、消化管(胃や大腸など)に穴が開くと中の空気が腹腔内に漏れ出す。この時、胸部レントゲンを立位で撮影すると、腹腔内にある空気が上に集まり、横隔膜の下(腹腔内)に空気がたまる。

後腹膜器官とは?

後腹膜器官とは、後腹壁の壁側腹膜より後方に位置する臓器である。
・腹膜内臓器:胃、空腸、回腸、横行結腸、S状結腸、脾臓、卵巣、卵管、虫垂
・半腹膜内臓器:肝臓、膀胱、子宮、直腸、盲腸、上行結腸、下行結腸
・後腹膜器官:十二指腸、腎臓、副腎、尿管、腹部大動脈、下大静脈、交感神経幹。

 

 

 

 

 

問題54 28歳の男性。バイクを運転中に転倒し右側胸部を強打した。意識は清明。右側胸部に著明な疼痛があり、呼吸困難を訴えている。胸部エックス線検査で右第5.6肋骨骨折と右肺完全虚脱がみられた。
 まず行うべき治療はどれか。

1.外固定
2.開胸手術
3.気管内挿管
4.胸腔ドレナージ

答え.4

解説

本症例のポイント

・28歳の男性(バイク転倒:右側胸部を強打)。
・意識清明、右側胸部に著明な疼痛、呼吸困難。
・胸部エックス線検査:右第5.6肋骨骨折右肺完全虚脱
→肋骨骨折の治療として、骨折の有無にかかわらず、肋骨の痛みが強い場合は、日常生活での安静を基本とし、痛みなどの炎症を抑えるために湿布や内服薬にて経過をみる。また、呼吸や体動により痛みが誘発されるため専用のコルセット(胸に巻くベルト状のバンド)で固定することにより、動きをおさえ痛みの軽減を図る。

1.× 外固定
外固定法とは、ギプス包帯法やギプス副子法、装具療法で固定する方法のことである。一方、内固定法とは、鋼線やネジなどの金属で骨折した部分を体の中で直接固定する方法のことである。本症例は、胸部エックス線検査により右肺完全虚脱しているため、それに対する即時の対処が必要となる。

2.× 開胸手術
開胸手術の適応として、肺や心臓などの内臓に重篤な損傷がある場合や、内部出血が制御できない場合である。

3.× 気管内挿管
一般的な気管内挿管の適応として、①低酸素血症および高二酸化炭素血症による呼吸不全、②気道防御機能の破綻(咳嗽反射消失,舌根沈下など)、③NPPV(非侵襲的陽圧呼吸)で改善しない呼吸不全の3つの場合が挙げられる。

4.〇 正しい。胸腔ドレナージは、まず行うべき治療である。
胸腔ドレナージとは、胸壁を切開し、胸腔にチューブを挿入する医療技術である。主に何らかの疾患によって胸腔内に溜まった余分な空気、体液、膿胸などの分泌液を体外に排出するための処置として行われる。中等度以上の自然気胸では胸腔ドレナージを実施する。

非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法

非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法は、気管切開することなくマスクを介して換気を行う治療法である。高二酸化炭素血漿を伴う呼吸不全(Ⅱ型呼吸不全)が対象となる。非侵襲的陽圧換気は、挿管をせずに鼻・口にマスクを使用した陽圧換気法で、患者にとって負担の少ない補助換気法である。気管内挿管が不要であるため患者は、苦痛が少ないが、挿管をして換気を行う侵襲的陽圧換気法の方が気道確保や換気は確実である。

【睡眠時のNPPVの適応】
①慢性肺胞低換気(肺活量が60%以下の場合はハイリスク)
②昼間に酸素飽和度以下(94%以下)または高二酸化炭素血症(45mmHg以下)
③睡眠時SpO2モニターで、apnea-hypopnea index(AHI)が10/時間以上、SpO2が92%未満になることが4回以上か、全睡眠時間の4%以上

【睡眠時に加えて覚醒時のNPPVの適応】
①呼吸困難に起因する嚥下困難
②ひと息に長い文章を話せない
③慢性肺胞低換気症状を認め、昼間に酸素飽和度以下(94%以下)または高二酸化炭素血症(45mmHg以上)

(引用:NPPVガイドライン改訂第2版より)

 

 

 

 

 

問題55 骨癒合を促進させる因子でないのはどれか。

1.血流の存在
2.骨膜の残存
3.解剖学的な整復
4.力学的安定性の保持

答え.3

解説
1.〇 血流の存在
なぜなら、骨癒合には、骨細胞への酸素と栄養素の供給が必要であるため。これらは血流によって骨組織に運ばれる。

2.〇 骨膜の残存
なぜなら、骨膜は、骨組織の成長と修復を支える重要な細胞を含んでいるため。骨膜とは、骨の表面を覆っている膜のことをいう。骨幹の表面を覆うことで、骨を保護し、治癒する役割を果た。

3.× 解剖学的な整復は、骨癒合を促進させる因子でない。
解剖学的整復とは、骨折部をできるだけ元通りのかたちで癒合することである。

4.〇 力学的安定性の保持
なぜなら、力学的な安定性を保たれていないと、偽関節に陥りやすいため。偽関節とは、骨折部の癒合不全により異常可動をきたすことである。血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位の骨折が好発部位である。つまり、①大腿骨頸部骨折、②手の舟状骨骨折、③脛骨中下1/3骨折等は偽関節を起こしやすい。

 

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