第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午後56~60】

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問題56 大理石骨病で誤っているのはどれか。

1.骨硬化像を示す。
2.水頭症を合併する。
3.視力障害をきたす。
4.病的骨折を生じる。

答え.2

解説

大理石骨病とは?

大理石骨病とは、破骨細胞という骨を溶かす役割をする細胞の機能が障害され、全身の骨がびまん性に硬くなる病気である。臨床症状は重症なものから軽症まで極めて多彩で、重症型(新生児型・乳児型)、中間型、遅発型などに大別され、それぞれの治療や予後は大きく異なる。重症型では貧血、出血傾向、感染しやすいなどの骨髄機能不全症状や著しい成長障害、脳神経障害、水頭症、低カルシウム血症などが早期より発症し、長期生存できない場合もある。

1.〇 正しい。骨硬化像を示す。
骨硬化像とは、骨が異常に硬化しているため、X線画像では白く濃く映っている状態である。

2.× 水頭症を合併するのは、「くも膜下出血(数週間~数か月後)」である。
(正常圧)水頭症とは、脳脊髄液(髄液)の循環障害によって拡大した脳室が、頭蓋骨内面に大脳半球を押しつけることにより、数々の脳の障害を引き起こす一連の病態である。①認知症、②尿失禁、③歩行障害の三徴がみられる。脳外科的な手術であるシャント術で改善する。水頭症の脳MRIの特徴として、①シルビウス裂の拡大、②側脳室の拡大がみられる。

3.〇 正しい。視力障害をきたす。
なぜなら、病変が視神経を圧迫することがあるため。重症型では貧血、出血傾向、感染しやすいなどの骨髄機能不全症状や著しい成長障害、脳神経障害、水頭症、低カルシウム血症などが早期より発症し、長期生存できない場合もある。

4.〇 正しい。病的骨折を生じる。
なぜなら、大理石骨病には、骨吸収が妨げられ、骨が硬くなりすぎてしなやかさを失い、骨折しやすくなるため。ちなみに、病的骨折とは、骨の病変による強度低下が基盤となって、通常では骨折を起こすとは考えられない軽微な外力で生じる。

くも膜下出血とは?

くも膜下出血とは、くも膜と呼ばれる脳表面の膜と脳の空間(くも膜下腔と呼ばれ、脳脊髄液が存在している)に存在する血管が切れて起こる出血である。約85%が、破裂脳動脈瘤が原因である。くも膜下出血ではくも膜下腔に血液が流入し、CTでは高吸収域として抽出される。合併症には、①再出血、②脳血管攣縮、③正常圧水頭症などがある。①再出血:発症後24時間以内が多く、死亡率も高い。②脳血管攣縮:72時間後〜2週間後(ピークは8〜10日)が多く、脳血管攣縮による梗塞の好発部位は、「前交通動脈」である。③正常圧水頭症:数週〜数ヶ月後に認知症状、尿失禁、歩行障害などの症状が出現する。

 

 

 

 

 

問題57 続発性骨粗鬆症の原因で誤っているのはどれか。

1.関節リウマチ
2.副腎皮質ステロイド薬
3.甲状腺機能低下症
4.安静臥床

答え.3

解説

骨粗鬆症について

①原発性骨粗鬆症とは、閉経後や高齢者にみられる骨粗鬆症のことである。

②続発性骨粗鬆症とは、結果として二次的な骨量喪失が起こる骨粗鬆症のことをいう。例えば、骨代謝に影響を及ぼすホルモンやサイトカイン異常、不動など骨への力学的負荷の減少、骨構成細胞や物質の異常、全身的および血管障害などの局所的栄養障害などによって起こる。これら骨粗鬆症は原疾患に基づいて発症する続発性骨粗鬆症であるため、原疾患の適切な治療により正常化することが期待しうるが、骨代謝の正常化を期待するには不十分であることが多く、また先天性異常では改善は望めず、多くの症例で骨量喪失に対する治療を要することが多い。

1.〇 関節リウマチは、続発性骨粗鬆症の危険因子である。
関節リウマチとは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。

2.〇 副腎皮質ステロイド薬は、続発性骨粗鬆症の危険因子である。
ステロイドの機序として、ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。したがって、ステロイドの副作用として、軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌、重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)などがみられる。

3.× 甲状腺機能低下症は、続発性骨粗鬆症の原因で誤っている。
甲状腺機能亢進症は、続発性骨粗鬆症の危険因子である。甲状腺機能亢進症では、尿からのカルシウム排泄の増加や、血液中のビタミンDの活性の低下、腸管からのカルシウムの吸収も低下、骨塩量が低下し骨粗鬆症になりやすい状態となる。

4.× 安静臥床は、続発性骨粗鬆症の危険因子である。
なぜなら、長期の安静臥床や活動制限は、骨吸収が亢進、骨量は減少するため。リモデリングのバランスが崩れる。

甲状腺機能亢進症とは?

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。

【治療後1週間の注意事項】
・不要な放射性ヨウ素を早く体外に出すため十分に水分を摂る。
・排泄後、2度水を流す。尿の飛散による汚染を軽減させるため便座に座る。
・汗に少量の放射性ヨウ素が出るから入浴は最後に入る。
・可能ならば1人で寝る。
・唾液や体液にごく少量の放射性ヨウ素が出るからキスやセックスを避ける。
・子供との親密に接触(距離1m以内)すること、近くで長時間過ごすこと(添い寝など)などは避ける。

 

 

 

 

 

問題58 6歳の男児。ガワーズ徴候陽性で、両側の下腿三頭筋は肥大している。
 病状が進行するとみられる所見はどれか。

1.下肢深部腱反射亢進
2.分回し歩行
3.外眼筋麻痺
4.呼吸量減少

答え.4

解説

本症例のポイント

6歳の男児。
・ガワーズ徴候陽性
・両側の下腿三頭筋:肥大。
→Gowers(ガワーズ)徴候(登はん性起立)は、床から起立する時、まず床に手をついて、お尻を高くあげ、次にひざに手をあてて、手の力を借りて立ち上がる。Duchenne型筋ジストロフィーでみられる。Duchenne型筋ジストロフィーとは、幼児期から始まる四肢近位の筋力低下・動揺性歩行・登攀性歩行・仮性肥大を特徴とするX連鎖劣性遺伝病である。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。ちなみに、仮性肥大とは、ふくらはぎが異常に太くなることである。原因は、ふくらはぎに筋肉ではなく、脂肪や結合織が増えることにより、筋肉が再生されなくなるためで起こる。

1.× 下肢深部腱反射は、「亢進」ではなく低下する。
深部腱反射亢進は、錐体路障害徴候である。錐体路徴候は、深部腱反射亢進、病的反射(+)、表在反射(消失)、痙性麻痺がみられる。ちなみに、錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

2.× 分回し歩行は、片麻痺(錐体路障害)にみられる。
分回し歩行は、錐体路障害や上位運動ニューロン障害で生じる。ちなみに、動揺性歩行は、5歳のDuchenne型筋ジストロフィー児に認められる。動揺性歩行(アヒル歩行)は、下腹部と殿部を突き出して腰椎前弯を強めた姿勢で、腰部を左右に振りながら歩く様子が観察できる。Duchenne型筋ジストロフィー児や両中殿筋の低下・麻痺、発育性股関節形成不全などが原因として起こる。

3.× 外眼筋麻痺は、顔面神経麻痺でみられる。
顔面神経とは、表情筋の運動、涙腺や口蓋腺などの分泌作用制御の副交感神経、および味覚を司る感覚神経を含む混合神経である。したがって、顔面神経の障害により、顔面表情筋の障害、角膜反射低下、聴覚過敏、味覚低下(舌前2/3)、涙分泌低下、唾液分泌低下などが起こる。

4.〇 正しい。呼吸量減少は、病状が進行するとみられる所見である。
なぜなら、Duchenne型筋ジストロフィーは、病気の進行に伴い、 呼吸筋の筋力低下により呼吸障害を呈するため。Duchenne型筋ジストロフィーの呼吸障害は、呼吸筋の筋力低下のために、肺活量の減少を生じる。したがって、拘束性換気障害を生じる(呼吸筋によって肺を膨らませることができない状態)。5歳以降(特に20歳ころ)から生じることが多い。人工呼吸器を装着しない場合、多くは10歳代後半から20歳代前半ころに合併症により死亡する。

 

 

 

 

 

問題59 化膿性関節炎で誤っているのはどれか。

1.起炎菌は黄色ブドウ球菌が多い。
2.治療の第一選択は保存療法である。
3.小児では血行感染が多い。
4.糖尿病は発症の危険因子となる。

答え.2

解説

化膿性関節炎とは?

化膿性関節炎とは、関節に細菌(黄色ブドウ球菌が最も多い)が入り込んで感染し、炎症を起こす病気である。 関節に炎症が起こると、その部位が激しく痛み、表面の皮膚が赤くはれあがって熱を持つ。 そのほか、全身に現れる症状として、悪寒や倦怠感、食欲の低下などがある。血液検査で高値を示すのは白血球数とCRPである。

化膿性関節炎の感染経路は、①血行性感染(最も多い)、②外傷、手術、関節内注射などの直接感染、③骨髄炎、軟部組織感染などの近接病巣からの拡大などがある。 糖尿病や高齢者などの免疫機能が低下した患者に多くみられる。

1.〇 正しい。起炎菌は黄色ブドウ球菌が多い。
化膿性関節炎とは、関節内に細菌が侵入し化膿してしまう病気である。その原因菌は、黄色ブドウ球菌が最も多く、続いて連鎖球菌、肺炎球菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が多いと報告されている。ちなみに、起炎菌とは、感染症を起こす原因となった菌である。(※読み:きれんきん)

2.× 治療の第一選択は、「保存療法」ではなく手術による関節内の洗浄と抗生物質の全身投与である。
真菌と抗酸菌による感染には長期間の治療が必要である。関節が不安定になったりした場合には、関節固定術などが行われる。

3.〇 正しい。小児では血行感染が多い。
小児における化膿性関節炎の主な原因は血行感染で、他の部位の感染が血液を介して関節に広がる場合が多い。ちなみに、血行感染(血流感染)の原因は主に、①医療従事者の手指、②患者の皮膚の細菌叢、③側管、接続部の汚染、④輸液の汚染がある。

4.〇 正しい。糖尿病は発症の危険因子となる。
化膿性関節炎の感染経路は、①血行性感染(最も多い)、②外傷、手術、関節内注射などの直接感染、③骨髄炎、軟部組織感染などの近接病巣からの拡大などがある。 糖尿病や高齢者などの免疫機能が低下した患者に多くみられる。

 

 

 

 

 

問題60 シャルコー(Charcot)関節の原因疾患となりうるのはどれか。

1.糖尿病性神経炎
2.神経痛性筋萎縮症
3.エルプ(Erb)麻痺
4.シャルコー・マリー・トウース(Charcot-Marie-Tooth)病

答え.1

解説

神経病性関節症(Charcot関節)とは?

神経病性関節症(Charcot 関節)は、痛覚、深部感覚、位置覚が侵される神経疾患(脊髄癆、糖尿病、脊髄空洞症など)に合併して発症する。繰り返される外力から起こり、炎症性の関節の腫脹と、高度の関節変形を認める。関節変形は関節可動域制限より過伸展や内外反、脱臼などを呈する。ほとんど痛みがないため、無理な外力がかかり、関節の破壊を来す。反応性の炎症により滑膜が増殖する。炎症に伴い、関節液の貯留がみられる。軟骨は変性・壊死に陥っており、骨や関節の破壊が起こる。

1.〇 糖尿病性神経炎は、シャルコー関節の原因疾患となりうる。
神経病性関節症とは、糖尿病や脳卒中など、神経を侵す基礎疾患の結果として起こる。関節に損傷を与える傷を患者が感じることができないために起こる。典型的な症状として、関節のこわばり、液貯留、痛みなどがある。

2.× 神経痛性筋萎縮症
神経痛性筋萎縮症とは、一側上肢の神経痛で発症し、疼痛の軽快後に限局性筋萎縮が生じる疾患である。腕神経叢とその近傍を首座とする特発性末梢神経症で、感染、外傷、労作、遺伝的素因など複数の誘因があるとされている。

3.× エルプ(Erb)麻痺
Erb麻痺とは、上位型麻痺でC5、C6、時にこれらに加えてC7神経根に損傷を受けた場合に生じる麻痺である。肩の外転・外旋、肘の屈曲が主に侵され、手をそらすことができていればC7神経根は損傷を免れていると考えられる。

4.× シャルコー・マリー・トウース(Charcot-Marie-Tooth)病
Charcot-Marie-Tooth病(シャルコー・マリー・トゥース病)とは、遺伝子異常により、一般的に四肢、特に下肢遠位部の筋力低下と感覚障害を示す疾患である。まれに、四肢近位部優位の筋力低下・筋萎縮を示す例もある。筋肉が緩徐進行性で萎縮し、同部位の感覚が少し鈍くなる。歩行は、下腿の筋萎縮により鶏歩(下垂足)となる。

 

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