第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午後61~65】

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問題61 変形と原因の組合せで正しいのはどれか。

1.三尖手:胸郭出口症候群
2.鷲手:外反肘
3.下垂手:後骨間神経麻痺
4.猿手:ギヨン(Guyon)管症候群

答え.2

解説

胸郭出口症候群とは?

胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

1.× 三尖手は、「胸郭出口症候群」ではなく軟骨無形成症で起こる。
軟骨無形成症とは、先天異常(常染色体優性遺伝)で、成長軟骨と言われる部分の変化により、低身長や四肢の短さ、指の短さ(三尖手とは、指が短く、伸ばすと中指と薬指の間にかなりの隙間がある状態)、特異顔貌が引き起こされる病気である。合併症である肥満、水頭症、閉塞性睡眠時無呼吸、中耳炎、脊柱管狭窄症などの治療または予防が必要になる場合がある。軟骨無形成症の人の平均寿命は健常者の平均寿命より約10年で短いといわれている。

2.〇 正しい。外反肘は、「鷲手」が起こる。
外反肘とは、上腕の軸に対して前腕の軸が、正常(10~15°程度外反)より外側を向いている状態(手部が外側に開く状態)である。逆に内側に向いているのが内反肘である。原因として、先天性では先天性橈骨頭脱臼など、後天性では上腕骨外顆骨折後の偽関節や変形治癒で生じる。外反肘では、肘の内側にある尺骨神経が肘関節伸展位において伸ばされるため、数年から数十年経過して徐々に麻痺が出現する、遅発性尺骨神経麻痺となりやすい。ちなみに、鷲手とは、尺骨神経麻痺により手内筋が萎縮し、とくに環指と小指の付け根の関節(MP関節、中手指骨関節)が過伸展する一方、指先の関節(DIP関節、遠位指節間関節)と中央の関節(PIP関節、近位指節間関節)が屈曲した状態である。

3.× 後骨間神経麻痺は、「下垂手」ではなく下垂指が起こる。
下垂手は、橈骨神経麻痺によって起こる。一方、下垂指とは、手首の背屈は可能だが、手指の付け根の関節の伸展ができなくなり、指のみが下がった状態である。

4.× ギヨン(Guyon)管症候群は、「猿手」ではなく鷲手が起こる。
猿手は、正中神経麻痺である。Guyon管(尺骨神経管)とは、豆状骨と有鈎骨、そして豆鈎靱帯によって形成されたトンネル(管)のことである。通るものとして、①尺骨神経、②尺骨動脈である。Guyon管症候群は、尺骨神経麻痺が起こる。尺骨神経麻痺の症状として、Froment徴候陽性や鷲手がみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

前骨間神経と後骨間神経について

前骨間神経と後骨間神経は、前腕の橈骨と尺骨という2つ骨の間を繋ぐ骨間膜の前後を走る神経である。両者とも触覚に異常がないのが特徴である。神経炎以外にも、外傷、絞扼性神経障害でも生じる。

【前骨間神経】
・肘の辺りで正中神経から分岐して主に母指(親指)と示指の第1関節を動かす筋肉を支配している。ほかにも、長母指屈筋、方形回内筋を支配する。
→涙のしずくが陽性。

【後骨間神経】
・肘の辺りで橈骨神経から分岐して回外筋にもぐりこみ、指を伸展する筋肉を支配している。
→下垂指(drop finger)となる。

 

 

 

 

 

問題62 つま先歩き破行になるのはどれか。

1.フライバーグ(Freiberg)病
2.プラント(Blount)病
3.ケーラー(Kohler)病
4.セーバー(Sever)病

答え.4

解説
1.× フライバーグ(Freiberg)病
Freiberg病(フランバーグ病)は、中足骨頭に阻血性骨壊死が起こる疾患である。骨幹端および成長板の微小外傷によって生じる。阻血性骨壊死により中足骨頭が扁平化する。第2中足骨頭が侵されることが最も多い。痛みは荷重負荷で最も顕著となる。診断はX線により確定する。治療法としては、コルチコステロイド注射、固定、矯正器具などがある。

2.× プラント(Blount)病
ブラント病とは、脛骨が彎曲する病気である。放置すると40%程が手術を必要となる。

3.× ケーラー(Kohler)病
ケーラー病は、足の舟状骨への血液供給が途絶えるためにその部分が壊死する病気(無腐性壊死)である。ケーラー病は骨軟骨症の一種である。ケーラー病の原因は、足の舟状骨への血液供給不足であるが、なぜ血液の供給が不足するのかは分かっていない。この病気は通常、3~5歳の小児(男児に多い)の片足のみに起こる。足が腫れて痛み、足のアーチ部分に圧痛が生じる。体重支持と歩行によって不快感が増すため、歩き方(歩様)に異常がみられる。スポーツの中止やアーチ足底板の利用により、舟状骨へのストレスを低減させることで良好な予後が期待できる。レントゲンの特徴として、正常よりも小さな舟状骨が確認できる。(※参考:「ケーラー病とは?」MSDマニュアル様HPより)

4.〇 正しい。セーバー(Sever)病は、つま先歩き破行になる。
セーバー病とは、主にスポーツに参加する10歳から15歳の子供の踵骨骨端部に生じる骨端症である。踵部の痛みを軽減するために、踵接地をしないため、つま先歩き破行となる。

 

 

 

 

 

問題63 化学療法に感受性の低い悪性骨腫瘍はどれか。

1.悪性リンパ腫
2.骨肉腫
3.軟骨肉腫
4.ユーイング(Ewing)肉腫

答え.3

解説

化学療法とは?

化学療法とは、抗がん剤を用いて癌を治療することをいう。抗がん剤には、癌細胞の増殖を抑えたり、再発や転移を防いだりする効果がある。また、骨肉腫(悪性腫瘍)の場合、好中球やマクロファージによる貪食細胞機能やオプソニン効果の低下や液性・細胞性免疫、抗原提示能が障害されており、通常健常人には感染をおこさない病原性の弱い病原菌による感染(日和見感染)を生じやすいため。他にも、糖尿病・肝硬変・腎不全・低栄養・無ガンマグロブリン血症などの基礎疾患をもつ患者や、重症外傷・広範囲熱傷患者、ステロイド・抗癌剤・免疫抑制剤の投与、放射線治療を受けた患者などは注意が必要である。

1.× 悪性リンパ腫
悪性リンパ腫とは、血液細胞(血液中に存在する細胞)の中のリンパ球ががん化する病気である。一般的に、首や腋(わき)の下、脚の付け根などにあるリンパ節にしこりが生じる。進行した場合の症状として、発熱、体重減少、寝汗をかきやすくなるなどである。悪性リンパ腫はがん細胞の形や性質などによって70以上もの種類に分類されており、それぞれ症状や進行の仕方などの特徴が異なる。そのため、治療方針もさまざまである。治療では、放射線治療や薬物療法、造血幹細胞移植などが行われる。

2.× 骨肉腫
骨肉腫とは、原発性悪性骨腫瘍の中で最も多い。10歳代に好発し、大腿骨遠位部と脛骨近位部の骨幹端部に多く発生する。骨Paget(骨ページェット病)などに続発する場合がある(二次性骨肉腫)。肺転移が多いが、5年生存率は近年70%以上にまで改善してきている。

3.〇 正しい。軟骨肉腫は、化学療法に感受性の低い悪性骨腫瘍である。
軟骨肉腫とは、組織学的に腫瘍性の軟骨形成を伴うが、腫瘍性の類骨・骨形成を伴わない悪性骨腫瘍と定義される。つまり、軟骨肉腫は、他の多くの骨腫瘍と異なる。腫瘍は遅く成長し、薬物が適切に浸透しないため化学療法に感受性の低く、手術が主な治療法となる。

4.× ユーイング(Ewing)肉腫
ユーイング肉腫とは、主として小児や若年者の骨や軟部組織に発生する肉腫である。粘膜や皮膚などの上皮組織に発生する悪性腫瘍は「がん」といい、骨、軟骨、筋肉や神経などの非上皮組織に発生する悪性腫瘍を「肉腫」と呼ぶ。ユーイング肉腫の症状は、病巣部位の間欠的な痛み(一定の時間を置いて起こる痛み)や腫れが特徴である。

 

 

 

 

 

問題64 30歳の男性。6か月前から運動で軽減する腰痛があり、腰椎の背屈制限を伴っている。
 この患者にみられる所見はどれか。

1.腱付着部炎
2.間欠性破行
3.関節内石灰沈着
4.腸骨翼形成不良

答え.1

解説

本症例のポイント

・30歳の男性。
6か月前:運動で軽減する腰痛。
・腰椎の背屈制限を伴っている。

1.〇 正しい。腱付着部炎が、この患者にみられる所見である。
腱付着部炎とは、筋肉が骨につく場所(腱の付着部)が炎症を起こす状態である。慢性腰痛に分類され、運動により腰痛は、下行性疼痛抑制系により、痛みが感じにくくなる。

2.× 間欠性破行は、脊柱管狭窄症の症状である。
腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間欠性破行が特徴である。

3.× 関節内石灰沈着は、石灰沈着性肩関節周囲炎にみられる。
石灰沈着性腱板炎とは、肩の腱板に、石灰(カルシウムの結晶)がたまる、原因不明の疾患である。石灰性腱炎、石灰沈着性腱炎、石灰沈着性肩関節周囲炎などと呼ばれることもある。痛みや肩の機能障害の原因となり、多くは自然に軽快する疾患である。

4.× 腸骨翼形成不良は、軟骨無形成症にみられる。
軟骨無形成症とは、先天異常(常染色体優性遺伝)で、成長軟骨と言われる部分の変化により、低身長や四肢の短さ、指の短さ、特異顔貌が引き起こされる病気である。合併症である肥満、水頭症、閉塞性睡眠時無呼吸、中耳炎、脊柱管狭窄症などの治療または予防が必要になる場合がある。軟骨無形成症の人の平均寿命は健常者の平均寿命より約10年で短いといわれている。

 

 

 

 

 

問題65 70歳の女性。転倒して大腿骨近位部を骨折した。二重エネルギーエックス線吸収法による腰椎の骨密度は若年成人平均値の78%であった。
 骨粗鬆症の薬物治療を開始する判断で正しいのはどれか。

1.今すぐに開始する。
2.喫煙歴があれば開始する。
3.脆弱性骨折の家族歴があれば開始する。
4.今後骨密度の低下が生じれば開始する。

答え.1

解説

本症例のポイント

・70歳の女性(転倒:大腿骨近位部を骨折)。
・二重エネルギーエックス線吸収法:腰椎の骨密度は若年成人平均値78%
→二重エネルギーエックス線吸収法とは、2種類の微量なX線を照射し、骨と軟部組織の差で骨密度を測定する方法である。被曝量が極めて少なく、迅速かつ精度の高い測定ができる。若年成人の骨密度の平均値を基準に判定し、80%以上ならば正常、 70~80%の場合は骨量減少、 70%未満だと骨粗鬆症と診断される。

1.〇 正しい。骨粗鬆症の薬物治療は、今すぐに開始する
なぜなら、本症例は骨粗鬆症になる手前であるため。また、骨粗鬆症は閉経後の女性に多く、骨の変形や痛み、易骨折性の原因となる。高齢者に多い骨折は①大腿骨頸部骨折、②脊椎圧迫骨折、③橈骨遠位端骨折、④上腕骨頸部骨折などがあり、これらは「高齢者の4大骨折」と呼ばれている。

2.× 喫煙歴/脆弱性骨折の家族歴があれば開始する必要はない
なぜなら、本症例はすでに転倒により骨折を呈しているため。なんらかの対応が必要となる。

4.× 今後、骨密度の低下が生じれば開始する必要はない
なぜなら、本症例はすでに骨粗鬆症と診断される手前であり、骨折を呈しているため。再転倒から再度骨折を呈しやすいため、直ちに処置が必要である。

 

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