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問16 関節可動域訓練で正しいのはどれか。
1.愛護的に伸張運動を行う。
2.1秒程度の持続時間で伸張運動を行う。
3.他動伸張が基本である。
4.伸張前に拘縮部を冷却する。
答え.4
解説
1.〇 正しい。愛護的に伸張運動を行う。愛護的とは、対象者の体に優しく、無理のない範囲で行うことである。非愛護的に扱うこと(粗暴な矯正手技)で、軟部組織の損傷や防御性収縮を伴いやすく、関節可動域の拡大には寄与しにくい。
2.× 「1秒」ではなく15~30秒程度の持続時間で伸張運動を行う。なぜなら、持続時間が、短すぎると筋肉が十分に伸びず、関節可動域の拡大には寄与しにくいため。持続的伸張法(ストレッチ効果)により、関節可動域の拡大を見込める。
3.× 「他動伸張だけ」ではなく自動伸張も基本である。どちらが基本というわけではない。なぜなら、他動運動には他動運動のメリット・デメリット、自動運動のメリット・デメリットがあるため。例えば、他動運動は、治療者が必要な一方、患者が自分で関節を動かせない場合や、対象者の筋力が不足している場合に行われる。
4.× 伸張前に拘縮部を「冷却」ではなく温熱する。なぜなら、温熱療法で軟部組織の柔軟性が増し、伸張運動が効果的になるため。冷却は、急性期の炎症や痛みの管理のために使用されることが多い。
温罨法(※読み:おんあんぽう)とは、身体の一部に温熱刺激を与える(温める)看護技術である。温熱刺激を体の一部に与えて血管、筋、神経系に作用させ、血液やリンパ液の循環を促進したり、老廃物の排出を促したり、筋肉の緊張や疼痛を緩和するなどの目的で行う。
【温罨法の作用】
血管拡張、循環促進、細胞の新陳代謝促進、筋の緊張緩和、鎮痛など。
【温熱療法の目的】
①組織の粘弾性の改善
②局所新陳代謝の向上
③循環の改善
慢性的な疼痛に対する温熱療法の生理学的影響として、血行の改善によるケミカルメディエーター(痛み物質)の除去、二次的な筋スパズムの軽減、疼痛閾値の上昇などがある。
問17 脳卒中に伴う障害で同時性障害はどれか。2つ選べ。
1.嚥下障害
2.褥瘡
3.変形性脊椎症
4.失認症
答え.1・4
解説
脳卒中とは、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、破れる「脳出血」や「くも膜下出血」など、脳が障害を受ける病気の総称である。 障害を受けた脳が司っていた身体機能や言語機能が失われたり、場合によっては死に至ることもある。
脳卒中の障害の分類として、①既往性障害、②同時性障害、③続発性障害があげられる。①既往性障害とは、もともともっていた障害のことで、この症状によって脳卒中のリスクを上げていたものが多い。②同時性障害とは、脳卒中とともに現れた障害のことである。脳卒中の症状といわれるものである。③続発性障害とは、麻痺や寝たきりになることによって筋力低下などが発生する脳卒中後に起こる症状である。
1.〇 正しい。嚥下障害は、脳卒中に伴う障害で同時性障害である。なぜなら、脳卒中により咽頭部や喉頭部の筋肉に麻痺が生じるため。
2.× 褥瘡は、脳卒中に伴う障害で続発性障害である。褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚の潰瘍あるいは皮下組織の損傷のことである。背臥位では、後頭骨や肩甲骨、肘頭、仙骨、踵部などの骨の突出している場所に好発する。予防法としては、最も負担がかかりやすい骨突出部を除圧し、面で支持することで一点に圧をかけることなく、圧の分散に努める。褥瘡予防マットやクッションなどを活用する。また、清潔を心がけ、体位変換を行う。
3.× 変形性脊椎症と脳卒中は、直接的な関連性は低い。変形性脊椎症は、加齢によって脊椎の椎体や椎間板に変化が起きる病気である。椎間板がつぶれて狭くなり、椎間関節も変形することで神経が圧迫され、腰痛や下肢のしびれなどの症状が現れる。
4.〇 正しい。失認症は、脳卒中に伴う障害で同時性障害である。失認症とは、視覚、聴覚、触覚の感覚の機能には問題はないが、それが何であるかがわからないことをいう。
問18 脳梗塞慢性期で左片麻痺がある。痙性麻痺で共同運動を認め、内反尖足のために歩行が不安定である。
歩行補助具として用いるのはどれか。
1.左短下肢装具
2.左長下肢装具
3.左膝装具
4.両側松葉杖
答え.1
解説
・脳梗塞慢性期で左片麻痺。
・痙性麻痺、共同運動あり
・内反尖足のために歩行が不安定。
→本症例は、左片麻痺の痙性麻痺で内反尖足である。内反尖足により、つまづきやすく不安定になっていると考えられ、足関節背屈へある程度の矯正能力を持つ装具を選択しよう。
1.〇 正しい。左短下肢装具は、歩行補助具として用いる。短下肢装具とは、足首の関節の動きを制限し、固定・動揺・拘縮などの治療を目的とした装具である。脳卒中患者の歩行の際に足首の固定や安定性の向上のために使用される。
2.× 左長下肢装具より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は、不安定ながらも歩行が可能な麻痺であるため。長下肢装具とは、立位訓練開始から装具をつけ、介助下での平行棒な歩行訓練が必要なレベルの重度の麻痺に適応となる。臨床では、重度弛緩性麻痺時には長下肢装具で立位練習を行い、股関節の収縮が得られてきた際に、短下肢装具へ移行しながら練習することが多い。
3.× 左膝装具より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は、歩行時の内反尖足が主問題であるため。膝装具とは、大腿部から下腿部までの構造で、膝の動きをコントロールし、膝関節の固定・動揺・不安定性・拘縮などの治療を目的とした装具である。変形性膝関節症や側副靭帯、十字靭帯などの損傷に用いられる。
4.× 両側松葉杖とは、2本の松葉杖で身体を支えることができるため、体重をかけない(免荷)ようにする事が目的である。松葉杖のそれぞれの下端を靴の脇約5cm、つま先の前方15cmのところに突き、上端が腋窩から指2~3本分(約5cm)下にくるように松葉杖の長さを調整する。ハンドグリップは肘が20°~30曲がる位置に来るよう調節する。
問19 脳卒中急性期の患者に対して他動的関節可動域訓練を施行する。
不動が長い場合、拘縮を生じやすい部位はどれか。
1.橈側手根伸筋
2.上腕三頭筋
3.大腿四頭筋
4.腓腹筋
答え.4
解説
1.× 橈側手根伸筋の作用は、手関節の背屈、橈屈である。肘・手・指関節は、屈筋群が拘縮を起こしやすい。
2.× 上腕三頭筋の作用は、肘関節伸展、肩関節伸展である。肘・手・指関節は、屈筋群(上腕二頭筋)が拘縮を起こしやすい。
3.× 大腿四頭筋の作用は、膝関節伸展である。膝関節は、屈筋群(ハムストリングス)が拘縮を起こしやすい。
4.〇 正しい。腓腹筋は、不動が長い場合、拘縮を生じやすい。腓腹筋の作用は、膝関節屈曲・足関節底屈、踵の挙上である。長期間の不動や痙性麻痺の影響で、足関節は内反尖足に陥りやすい。したがって、足首が底屈位で固定されやすく、腓腹筋が拘縮しやすくなる。
廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。関節拘縮や筋萎縮、褥瘡などの局所性症状だけでなく、起立性低血圧や心肺機能の低下、精神症状などの症状も含まれる。一度生じると、回復には多くの時間を要し、寝たきりの最大のリスクとなるため予防が重要である。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。
問20 頸髄損傷による完全四肢麻痺(第5頸髄節残存)で可能な目標はどれか。
1.自助具使用での食事動作
2.床上での更衣動作
3.頸髄損傷者用に改造した自動車の運転
4.下肢装具を使用しての歩行
答え.1
解説
1.〇 正しい。自助具使用での食事動作は、頸髄損傷による完全四肢麻痺(第5頸髄節残存)で可能な目標である。第5頸髄節の運動機能は、肩関節:屈曲・伸展、外転、内外旋、肘関節:屈曲・回外が行える。そのため、ハンドリムに工夫を行うことによって平地自走は可能である。ただし、プッシュアップ動作はできないため、平地では車椅子や電動車椅子を使用する。自助具を用いた食事動作は、C5機能残存レベル(装具やスプリングバランサーの装着、自助具の使用など)で食事動作の獲得が可能である。
2.× 床上での更衣動作は、困難である。なぜなら、プッシュアップ動作はできないため、床上から車椅子の乗り降りも困難であるため。ちなみに、肘の伸展によるプッシュアップ動作は、第7頚髄節(C7)の機能残存である。
3.× 頸髄損傷者用に改造した自動車の運転は、困難である。なぜなら、プッシュアップ動作はできないため、車椅子から車の乗り降りも困難であるため。一般的に、自動車の運転は、ハンドル旋回装置や手動装置を利用することで、C6レベルの機能残存が必要である。ただし、プッシュアップとベッドの側方移動が可能となるのは、第7頚髄節(C7)の機能残存である。
4.× 下肢装具を使用しての歩行は、困難である。第10胸髄節の機能残存レベルでは、下肢の麻痺および臍より下部の感覚消失があり、歩行は困難である。RGO(Reciprocating Gait Orthosis:交互歩行装具)は、第10胸髄節以下の完全対麻痺者の交互歩行実現を目的として開発された装具である。第12胸髄節の機能残存レベルでは、下肢の付け根(鼠径部)より下部の麻痺および感覚の消失があり、両短下肢装具を用いての歩行は困難である。長下肢装具とクラッチを使用し歩行を試みるレベルである。ちなみに、両短下肢装具を用いての歩行は、大腿四頭筋が働く第3腰髄節(L3)の機能残存からである。
(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)