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問21 43歳の男性。2か月前に高所での作業中に転落し、第5頸椎脱臼骨折をきたし頸髄を損傷した。脱臼骨折は整形外科で観血的整復固定術を施行されている。現在の徒手筋力テストは両肘関節の屈曲が4、手関節の背屈が4および肘関節の伸展が0であり、握力は0kgである。
リハビリテーションで正しいのはどれか。
1.ハンドリムにゴムを巻き車椅子駆動練習
2.車椅子移乗時の立ち上がり練習
3.車椅子での坂道の昇降練習
4.車椅子でのキャスターあげ練習
答え.1
解説
・43歳の男性(第5頸椎脱臼骨折:頸髄損傷)。
・2か月前:高所での作業中に転落(観血的整復固定術を施行)。
・現在の徒手筋力テスト:両肘関節屈曲4、手関節背屈4、肘関節伸展0、握力0kg。
→MMTの結果から、本症例はC6機能残存レベル(Zancolliの分類ではC6BⅠ~Ⅱ)である。肩・肘関節屈曲筋を用いて車いすを駆動でき実用的な車椅子駆動のほか、前方アプローチでの移乗動作が可能になる。C6機能残存レベルは、【主な動作筋】大胸筋、撓側手根屈筋、【運動機能】肩関節内転、手関節背屈、【移動】車椅子駆動(実用レベル)、【自立度】中等度介助(寝返り、上肢装具などを使って書字可能、更衣は一部介助)である。C6機能残存レベルのプッシュアップは、肩関節外旋位・肘関節伸展位・手指屈曲位にて骨性ロックを使用し、不完全なレベルであることが多い。
1.〇 正しい。ハンドリムにゴムを巻き車椅子駆動練習をリハビリテーションする。なぜなら、本症例は、C6機能残存レベル(Zancolliの分類ではC6BⅠ~Ⅱ)、握力0kgであるため。ハンドリムにゴムを巻くことで摩擦を増やし、腕の動きを使って車椅子を駆動しやすくすることができる。これにより自立した移動が可能となる。
2.× 車椅子移乗時の立ち上がり練習は、難易度が高すぎる。なぜなら、本症例は、下肢の筋力が失われているため。また、上腕三頭筋によるプッシュアップ動作も困難であることから、危険性が高い。したがって、車椅子移乗時のスライディングボードを使用した移乗練習を実施する。
3.△ 車椅子での坂道の昇降練習より優先されるものが他にある。ただし、本症例は、受傷2か月前で、車椅子駆動の練習や獲得状況が不明である。一般的に、C6機能残存レベルは、実用的な車椅子駆動が可能である。車椅子のブレーキには、①トグル式ブレーキと②介助用ブレーキがある。①トルグ式ブレーキは、一般的な駆動輪の隣にあるブレーキのことで軽い力で操作できる。自宅に緩い坂道がある場合は、車椅子に工夫を加え、安全の上で、坂道の昇降練習は必要となるリハビリテーションである。
4.× 車椅子でのキャスターあげ練習は、難易度が高すぎる。なぜなら、本症例の握力は0kgであるため。キャスター上げの保持(持続的なキャスター上げ、キャスターを上げたままの移動)は、手指屈筋群が機能するC8レベル以下の機能が必要になる。
(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)
問22 生理的な脊柱の弯曲はどれか。
1.頸椎前弯
2.胸椎前弯
3.胸椎側弯
4.腰椎後弯
答え.1
解説
(※図引用:「イラスト素材:脊柱(側面)」illustAC様より)
1.〇 正しい。頸椎前弯は、生理的な脊柱の弯曲である。
2.× 胸椎は、「前弯・側弯」ではなく後弯している。
4.× 腰椎は、「後弯」ではなく前弯している。
問23 関節リウマチでみられる手の変形はどれか。
1.猿手
2.鷲手
3.太鼓ばち指
4.手指尺側偏位
答え.4
解説
①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などがある。
1.× 猿手とは、母指球が萎縮し、母指が内転位となり、母指とその他の手指との対立運動が不能となる状態である。正中神経障害によって生じる。
2.× 鷲手とは、尺骨神経麻痺により手内筋が萎縮し、とくに環指と小指の付け根の関節(MP関節、中手指骨関節)が過伸展する一方、指先の関節(DIP関節、遠位指節間関節)と中央の関節(PIP関節、近位指節間関節)が屈曲した状態である。
3.× 太鼓ばち指とは、全ての指先が丸く膨らんで、爪甲が指先を包むように大きくなってくる状態を指す。慢性に経過する心疾患・肺疾患あるいは肝疾患などで見られる。これらの基礎疾患がなくとも先天性に変形していることもある。
4.〇 正しい。手指尺側偏位は、関節リウマチでみられる手の変形である。尺側偏位とは、手関節が尺骨側(手の小指側)に偏位する変形をいう。
関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。
(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)
問24 意識障害の評価に用いられるのはどれか。
1.前頭葉機能バッテリー(FAB)
2.Japan Coma Scale(3-3-9度方式)
3.Mini-mental state examination(MMSE)
4.長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
答え.2
解説
(※図引用:「意識レベル(JCS:Japan Coma Scale)」堺市HPより)
1.× 前頭葉機能バッテリー(FAB:Frontal Assessment Battery at bedside)は、前頭葉機能に対するスクリーニング検査である。類似課題(概念化)、言語流暢課題、Fist-edge-palm test(運動のプログラミング)、干渉課題、Go-No-Go課題、把握課題(被影響性)の下位6項目で構成されている(※参考:「前頭葉機能検査 Frontal Assessment Battery 」愛宕病院HPより)。
2.〇 正しい。Japan Coma Scale(3-3-9度方式)は、意識障害の評価に用いられる。Japan Coma Scaleとは、日本で主に使用される意識障害の深度分類である。覚醒度によって3段階に分け、それぞれ3段階あることから、3-3-9度方式とも呼ばれる。
3.× Mini-mental state examination(MMSE)とは、認知障害(認知症・せん妄・健忘性障害)のスクリーニングとして国際的によく用いられている検査である。内容は、見当識・記銘力・注意と計算・想起・言語・組み立ての各項目があり、30点満点で評価する。26点以下で軽度認知障害の疑いを示し、23点以下では認知障害の可能性が高いことを示す。
4.× 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)とは、簡便に知能を検査する方法である。見当識、記銘・再生、計算、言語の流暢性の各項目により、30点満点中20点以下を、軽度以上の認知症があるとする。
問25 下肢の閉塞性動脈硬化症で認められるのはどれか。
1.失調性歩行
2.間欠性跛行
3.アヒル歩行
4.トレンデレンブルグ歩行
答え.2
解説
閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。
【病期】
Ⅰ期:「しびれ」「冷感」。
Ⅱ期:「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」。一定距離を歩くと脚が傷み、休むとまた歩けるようになる。
Ⅲ期:「安静時疼痛」。安静にしていても脚に痛みが生じる。
Ⅳ期:「潰瘍」「壊疽」。血液が足の先に行かないので、足に潰瘍ができ、ついには足が腐ってしまう。
【治療】
まず動脈硬化の原因である糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療を行う。喫煙者は禁煙する。初期の手足の冷感やしびれには血管拡張薬や血液を固まりにくくする薬(抗血小板剤)を用いる。また歩くことによって、側副血行路が発達し血行の流れの改善をはかる。
(※参考:「閉塞性動脈硬化症」厚生労働省HPより)
1.× 失調性歩行(酩酊歩行、よろめき歩行、ワイドベースとも)は、運動失調(小脳障害・前庭障害)で起こる歩行障害である。
2.〇 正しい。間欠性跛行は、下肢の閉塞性動脈硬化症で認められる。ほかにも、脊柱管狭窄症でみられる。ちなみに、間欠性跛行とは、歩行を続けると下肢の痛みと疲労感が強くなり、足を引きずるようになるが、休むと再び歩けるというものである。「体幹前傾」ではなく休むと改善する。ちなみに、体幹前傾で改善するのは腰部脊柱管狭窄症である。
3~4.× アヒル歩行/トレンデレンブルグ歩行とは、動揺歩行やトレンデレンブルグ歩行ともいい、肢帯筋の筋力低下(中殿筋の筋力低下やDuchenne型筋ジストロフィー)で起こる。