第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午後26~30】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問26 皮膚の状態で誤っている組合せはどれか。

1.くも状血管腫:腎不全
2.陰部潰瘍:ベーチェット(Behcet)病
3.紫斑:再生不良性貧血
4.黄疸:肝硬変

答え.1

解説

慢性腎不全とは?

 慢性腎不全(慢性腎臓病とも)は、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。

慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。
①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。
②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。

1.× くも状血管腫は、「腎不全」ではなく肝硬変でみられる。例えば、肝臓が障害を受けると、エストロゲンの排出が障害される。したがって、エストロゲンが過剰になり、エストロゲンの作用で毛細血管が拡張し、くも状血管腫や手掌紅班が見られるようになる。他には、女性化乳房や睾丸萎縮などが見られるようになる。

2.〇 正しい。陰部潰瘍は、ベーチェット病でみられる。ベーチェット病とは、自己免疫疾患で、四徴として、①口腔粘膜のアフタ性潰瘍、②ぶどう膜炎、③皮膚症状(結節性紅斑や皮下硬結)、④外陰部潰瘍である。皮膚症状として、下腿に後発する。発赤や皮下結節を伴う結節性紅斑、圧痛を伴う皮下の遊走性血栓性静脈炎、顔面・頚部・背部などにみられる毛嚢炎様皮疹または痤瘡様皮疹などが出現する。

3.〇 正しい。紫斑は、再生不良性貧血でみられる。紫斑とは、皮膚や粘膜に出血によって紫調に変色した病変のことで、大別して血管に原因がある場合(血管炎)と、血小板が減少するか、はたらきの異常(紫斑病)で起こる。ちなみに、再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中 の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。

4.〇 正しい。黄疸は、肝硬変でみられる。なぜなら、肝硬変は肝臓の機能不全によってビリルビンの代謝が障害され、皮膚や眼球が黄色くなる(黄疸)ため。ちなみに、肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。

黄疸とは?

黄疸とは、皮膚や粘膜が胆汁色素(ビリルビン)で黄色に染まることで、胆汁色素の血漿中濃度の上昇により生じる。原因としては、①溶血によるもの、②肝細胞の障害によるもの、③胆汁の流れの障害によるもの、④体質によるもの、などがある。胆汁は肝臓で作られ、胆管を通じて十二指腸に排出されるが、その流れが障害されたときに生じる黄疸のことを閉塞性黄疸と呼ぶ。多くは総胆管結石や腫瘍により、胆管が閉塞することが原因となる。

 

 

 

 

 

問27 頸部の状態で正しい組合せはどれか。

1.翼状頸:クラインフェルター(Klinefelter)症候群
2.項部硬直:パーキンソン(Parkinson)病
3.頸部リンパ節腫脹:伝染性単核球症
4.痙性斜頸:バセドウ(Basedow)病

答え.3

解説

クラインフェルター症候群とは?

Kleinfelter症候群は、男性の性染色体にX染色体が一つ以上多いことで生じる一連の症候群で性染色体異常ある。高身長、やせ型、長い手足になることが多い。

1.× 翼状頸は、「クラインフェルター症候群」ではなくターナー症候群にみられる。ターナー症候群とは、典型的には身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみ(翼状頸)があり、学習障害がみられ、思春期が始まらないのが特徴である。2本のX染色体のうち1本の部分的または完全な欠失によって引き起こされる性染色体異常である。女性特有の染色体異常である。

2.× 項部硬直は、「パーキンソン病」ではなく髄膜炎にみられる。(細菌性)髄膜炎とは、なんらかの理由(主な病原体:髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌)で、髄膜が炎症を起こす病気である。症状は、髄膜炎の3大症状でもある発熱、頭痛、項部硬直で、75%以上の意識障害(傾眠~昏睡と程度は様々)である。他にも、嘔吐や羞明もよくみられる。けいれんは初期症状にみられ、髄膜炎の全経過を通して20~40%に起きる。ちなみに、細菌性髄膜炎では、病原体に合わせた抗菌薬療法や、症状に応じた対症療法が行われる。

3.〇 正しい。頸部リンパ節腫脹は、伝染性単核球症にみられる。伝染性単核球症とは、ヘルペスウイルスの一種であるEBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス)などに初感染することが原因で起こる、発熱やリンパ節の腫れなどの症状を起こす急性感染症である。ウイルス感染してから4週間以上の潜伏期間を経てから症状が現れる。1~2歳の乳幼児が発症しても微熱や扁桃腺の腫れなど症状は軽いが、学童期以降に発症すると重症化しやすい。主な症状は高熱や全身の倦怠感・疲労感、喉の腫れ・痛み、全身のリンパ節の腫れと肥大、発疹などである。

4.× 痙性斜頸は、「バセドウ病」ではなく、様々な原因(原因不明も)である。痙性斜頸とは、首や肩の周囲の筋肉が意思とは関係なく収縮し、それによって頭、首、肩などが不自然な姿勢を示してしまう病気である。原因として、①原因が明確なものと②原因不明なものに分かれる。①原因が明確なものとして、脳性まひや抗精神病薬などである。②原因不明なものとして、生活の習慣(ストレス、過労、持続的な姿勢)や遺伝的要因などである。ちなみに、バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。

パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。階段昇降は、歩行の改善、下肢筋力強化の効果も期待される。

 

 

 

 

 

問28 胸郭の変形と原因の組合せで正しいのはどれか。

1.鳩胸:マルファン(Marfan)症候群
2.扁平胸:心臓弁膜症
3.漏斗胸:胃癌術後
4.樽状胸:慢性閉塞性肺疾患

答え.4

解説

鳩胸とは?

鳩胸とは、鳩胸は前胸部の骨が突出した状態で、漏斗胸の5%以下の頻度でみられる。鳩胸は、くる病や骨形成不全症などの病気でみられる。鳩胸は、漏斗胸とは反対に、前胸壁が前方に突出した胸壁の先天異常である。前胸部変形以外に自覚症状はあまりない。

1.× マルファン(Marfan)症候群は、「鳩胸」ではなく漏斗胸がみられる。Marfan症候群とは、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形:漏斗胸など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。ほかにも、漏斗胸は、くる病の症状である。ちなみに、漏斗胸とは、前胸壁が陥没し、あたかも漏斗のような外観を示す変形である。骨強度の減弱により生じる。

2.× 心臓弁膜症は、「扁平胸」ではなく胸痛がみられる。心臓弁膜症とは、弁が加齢・感染症・外傷・先天的(生まれつき)などの問題によって正常に機能しなくなることで、心臓のポンプ機能に様々な支障をきたした状態をいう。特徴的な症状は、胸痛、失神、呼吸困難である。ちなみに、扁平胸とは、胸部が扁平(平ら)な状態を指す。胸郭(特に、肋軟骨)の成長過程に、なんらかの異常が起こり、多くの場合、成長とともに症状が顕著になりやすい。主な原因は遺伝的要素とされているが、具体的な遺伝メカニズムは完全には理解されていない。

3.× 胃癌術後は、「漏斗胸」ではなくダンピング症候群がみられる。胃の切除ではダンピング症候群が起きやすい。ダンピング症候群とは、胃切除後、摂取した食物が急速に小腸に流入するために起こる。 食事中や直後(30分程度)にみられる早期と、食後2~3時間たってみられる後期(晩期)に分けられる。早期ダンピング症候群食物が腸に急速に流れ込むことで起こる。主な症状は、動悸、めまい、冷汗、顔面紅潮、全身倦怠感などである。

4.〇 正しい。慢性閉塞性肺疾患は、樽状胸がみられる。樽状胸とは、肺に空気がたまり続け、膨張して胸が樽のように大きくなった状態である(※読み:たるじょうきょう)。樽状胸は、慢性閉塞性肺疾患に特徴的なもので、慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。

ダンピング症候群とは?

【早期ダンピング】
早期ダンピング症候群では、食後30分以内に全身症状と腹部症状が起こります。全身症状には、眠気・全身倦怠感・冷汗・動悸などです。腹部症状には腹部膨満・腹鳴・腹部不快感・下痢などがあります。
・1回の食事量を減らし、回数をわけて少しずつ食べましょう。
・食事中の水分量は少なめにし、流し込むような食べ方はやめましょう。
・お茶漬けにも注意しましょう。
・よく噛んでゆっくり(30分以上)時間をかけて食べるようにしましょう。
・症状がでた時は、頭を高くして横になって休みましょう。

【後期ダンピング】
後期ダンピング症候群は食後90分~3時間くらいで発症する低血糖症状です。
・予兆がある場合は早めに甘いもの(飴、ジュース、角砂糖)を摂りましょう。
・いつ起きても安心なように外出時は飴や角砂糖を持ち歩くようにしましょう。
・頻繁に起きる場合は、食後2時間くらいに糖質を多く含む捕食(わかる?)を摂るようにしましょう。
・症状がでた時は、甘いものを摂り、頭を高くして横になって休みましょう。

(※引用:「症状対処編」国際医療福祉大学様HPより)

 

 

 

 

 

問29 肺肝境界の位置を決めるのに用いられる身体の診察法はどれか。

1.視診
2.打診
3.聴診
4.触診

答え.2

解説

肺肝境界とは?

肺肝境界とは、第6肋間に位置し、安静呼吸時における肺の鼓音肝臓の濁音の境界となる。肺肝境界が上昇するのは、胸水貯留時・肝腫大などである。下降するのは、気胸・肺気腫・肝萎縮などである。

1.× 視診では、正確な肺肝境界の位置を決定できない。なぜなら、肺肝境界は、肺の鼓音肝臓の濁音の境界であるため。視診では判断できない。ちなみに、視診とは、患者の顔色や患部を目で見て診察することである。

2.〇 正しい。打診は、肺肝境界の位置を決めるのに用いられる身体の診察法である。打診とは、指先や打診器で胸・背などをたたき、その音で内臓の診察である。

3.× 聴診では、正確な肺肝境界の位置を決定できない。なぜなら、肺肝境界は、肺の鼓音肝臓の濁音の境界であるため。聴診では判断できない。聴診とは、聴診器を使って患者の体内の音(呼吸音、心音、腸音など)を聴く診察である。

4.× 触診では、正確な肺肝境界の位置を決定できない。なぜなら、肺肝境界は、肺の鼓音肝臓の濁音の境界であるため。聴診では判断できない。触診とは、例えば腹部触診の場合、臓器の位置や大きさ、腹水貯留、ガスや便の貯留、腫瘤の有無を確認する診察方法である。

フィジカルアセスメントとは?

フィジカルアセスメントとは、「フィジカル(身体的な)」「アセスメント(評価)」と訳すことができ、問診・視診・触診・聴診・打診などである。日本語では「身体診察技法」と呼ばれる。

 

 

 

 

 

問30 聴診で正しいのはどれか。

1.聴診では直接法を用いることが一般的である。
2.高周波数の音を聴く時にはベル型を用いる。
3.胸部の異常呼吸音ではグル音に注意する。
4.Ⅱ音は半月弁によって発生する。

答え.4

解説

聴診器の特徴

①膜型:高音の聴取に適する。
チェストピースを直接持ち皮膚に押し当てる。呼吸音(胸膜摩擦音、気管支肺胞音)、腸蠕動音、コロトコフ音の聴取に適応する。

②ベル型:低音の聴取に適する。
チェストピースを直接持たず、付け根のチューブ部分を持つ。皮膚には軽く触れるように当てる。心音の聴取に適する。

1.× 聴診では、「直接法(直接聴診法)」ではなく間接法(間接聴診法)を用いることが一般的である。直接聴診法とは、身体に直接耳を当てて聴く方法である。一方、間接聴診法とは、聴診器を使って音を聞く方法である。聴診器の使用により、音を増幅し、異常音をより明確に識別することができる。

2.× 高周波数の音(高音)を聴く時には、「ベル型」ではなく膜型を用いる。一方、低周波数の音(低音)を聴く時には、ベル型を用いる。

3.× 胸部の異常呼吸音では、「グル音」ではなく捻髪音や水泡音に注意する。グル音とは、消化管の運動によって生じる音であり、腹部を聴診すると聴こえる腸の活動音である。蠕動運動に伴って出るゴロゴロという音を、慣習的にグル音や腸雑音(正確には腸蠕動音)と呼ぶ。

4.〇 正しい。Ⅱ音は半月弁によって発生する。半月弁とは、左心室から大動脈に出る大動脈弁と、右心室から肺動脈に出る肺動脈弁の総称である。正常心音は、Ⅰ〜Ⅳ音に分類されるが、健康成人ではⅠ音とⅡ音しか確認できないことが多い。
Ⅰ音(心室収縮時に起きる音:おもに僧帽弁閉鎖音、大動脈弁開放音)
Ⅱ音(心室拡張の始まりに起きる音:おもに大動脈弁閉鎖音(ⅡA)と肺動脈弁閉鎖音(ⅡP))
Ⅲ音(心室拡張期の終わり:心室筋の伸展による音)
Ⅳ音(心房収縮音:Ⅰ音の直前)

捻髪音とは?

胸部聴診での捻髪音(高くて細かい断続音のこと)は、肺線維症・間質性肺炎・喘息・過敏性肺炎などで見られる。慢性閉塞性肺疾患で見られるのは、息をする時にヒューヒュー(笛音)やウーウー(いびき音)という連続性副雑音である。慢性閉塞性肺疾患のように、気管支、細気管支に炎症が起こると、咳や痰の症状がみられるようになり、気管支に痰が溜まって空気の通り道が狭くなるため。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)