第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午後46~50】

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問46 間違っている組み合わせはどれか。

1.犬咬傷:一次縫合
2.血管縫合:外翻縫合
3.消化管吻合:内翻縫合
4.感染創:デブリドマン

答え.1

解説

汚染創とは?

汚染創とは、細菌、異物が創面に付着してはいるものの増殖して創周囲組織に浸潤していない状態である。感染創とは、菌が増殖して創周囲組織内に浸 潤している状態である。震災時に治療の対象となる創傷は、汚染創もしくは感染創である。

筋膜・筋:筋肉自体は縫合しなくてもよい。
神経:神経鞘を縫合
血管:外翻縫合
消化管:内翻縫合

1.× 犬咬傷は、「一次縫合」ではなく遅延縫合デブリドマンである。なぜなら、犬の咬傷には細菌が含まれている可能性が高く、感染リスクがあるため。ちなみに、遅延縫合とは、治癒不良の危険因子を持つ患者に対して行われる縫合のことである。デブリドマンとは、感染・壊死組織を除去し、創を清浄化することで他の組織への影響を防ぐ外科処置のことである。つまり、壊死組織や感染した組織、異物を創から除去することで、健康な組織が新たに形成されるのを助ける。これは感染創の治療である。

2.〇 正しい。血管縫合は、外翻縫合である。外翻縫合とは、血管縫合の一種で、内膜同士を接着(外翻)させることである。

3.〇 正しい。消化管吻合は、内翻縫合である。内反縫合とは、腸管吻合(縫合)の一種である。腸管壁の外側から漿膜筋層に糸をかけて粘膜下層に針を出し、粘膜に針をかけずに漿膜筋層を縫合する方法である。

4.〇 正しい。感染創は、デブリドマンである。デブリドマンとは、感染・壊死組織を除去し、創を清浄化することで他の組織への影響を防ぐ外科処置のことである。つまり、壊死組織や感染した組織、異物を創から除去することで、健康な組織が新たに形成されるのを助ける。これは感染創の治療である。

 

 

 

 

 

問47 全身麻酔の前投薬の目的で誤っているのはどれか。

1.不安の除去
2.感染症の予防
3.気道分泌の抑制
4.胃内容誤嚥の予防

答え.2

解説

全身麻酔前投薬の目的

①術前鎮静、抗不安作用などの快適性
②口腔内、気道内分泌液の抑制、迷走神経反射の抑制
③誤嚥(誤嚥性肺炎)
※麻酔薬の増強効果を期待して前投与されることもある。

1.〇 正しい。不安の除去は、全身麻酔の前投薬の目的である。全身麻酔は通常、患者が不安を感じる可能性があり、鎮静剤を用いることで、この不安を軽減できる。ベンゾジアゼピン類、ヒスタミンH1受容体拮抗薬、バルビツールなどが使用される。

2.× 感染症の予防は、全身麻酔の前投薬の目的で誤っている。感染症の予防は、術前の抗生物質投与によって行われることがあるが、各主治医の判断で行う。また、文献には「術後感染予防としての抗菌薬投与の目的は、手術開始前から投与を開始し、術野にて生じる細菌の混入を免疫能にて対応できる段階まで軽減することにあり、手術後新たに生じる感染を予防するものではないとされている」とされている(※引用:「術後感染予防に対するレポフロキサシンの術前単回投与の有用性について」著:対馬那由多らより)。

3.〇 正しい。気道分泌の抑制は、全身麻酔の前投薬の目的である。全身麻酔下では、気道の分泌物が増える可能性があり、気道を塞ぐ可能性がある。抗コリン薬などを用いる。

4.〇 正しい。胃内容誤嚥の予防は、全身麻酔の前投薬の目的である。全身麻酔下での吐き気や嘔吐は、胃内容物を誤嚥し肺炎を引き起こす可能性がある。抗ドパミン薬などが使用される。

 

 

 

 

 

問48 止血法で誤っているのはどれか。

1.鼻出血ではベロックのタンポン法を用いる。
2.食道静脈瘤では硬化療法を用いる。
3.静脈性出血では中枢側を圧迫する。
4.緊縛法では一時的に止血帯を緩める。

答え.3

解説

MEMO

止血法は、①一次的止血法(緊急時の応急止血)と、②永久的止血法(完全止血を期待できる)に大別される。①一次的止血法には、主に間接圧迫と直接圧迫に分類される。間接圧迫止血法とは、出血部より中枢側の動脈を圧迫して、出血部の血流を遮断し止血する方法である。一方で、直接圧迫止血法とは、創部を直接圧迫する方法である。②永久的止血法として、血管結紮法・熱凝固による止血・局所止血剤による止血などを指し、医療機関での専門的な処置などがあげられる。

1.〇 正しい。鼻出血ではベロックのタンポン法を用いる。ベロックのタンポン法とは、ガーゼタンポン(綿球)を用い、鼻腔に挿入して鼻出血(特に後鼻出血)に対する止血法である。

2.〇 正しい。食道静脈瘤では硬化療法を用いる。硬化療法とは、硬化剤を注入して静脈瘤を閉塞させる(静脈瘤そのものをつぶして治療する)方法である。

3.× 静脈性出血では、「中枢側」ではなく末梢側を圧迫する。静脈性出血の場合、出血部位の末梢側(心臓から遠い側)を圧迫する。一方、動脈性出血の場合、中枢側(心臓に近い側)を圧迫する。

4.〇 正しい。緊縛法では一時的に止血帯を緩める。なぜなら、長時間の締め付けによる組織損傷を防ぐため。通常、締め付け時間は最大でも2時間以内(一般的に30~45分程度)とされ、一時的に緩めて血流を回復させることが重要である。ちなみに、緊縛法とは、止血法でも止血困難な場合(四肢からの出血)に用いる方法である。 出血している四肢の傷口より心臓に近い場所を止血帯などで強く縛り止血する。

MEMO

静脈性出血とは、暗赤色の血液が、傷口から持続的にわき出てくる出血(非拍動性)である。
動脈性出血とは、鮮紅色の血液が、傷口から勢いよく拍動性に噴き出している出血である。

 

 

 

 

 

問49 意識障害で正しいのはどれか。

1.昏睡では呼びかけると覚醒する。
2.傾眠は刺激が無くなると眠ってしまう。
3.見当識障害では痛みに反応しない。
4.開眼していれば意識障害はない。

答え.2

解説

意識レベルの明瞭度

①明識困難状態とは、ごく軽い意識混濁。外界の認知は保たれているが、正常よりやや不活発でぼんやりしている。
②昏蒙とは、軽度の意識混濁。覚醒はしているが、精神活動は浅い眠りに近い状態。外界の認知に混乱が生じ、見当識が障害される。
③傾眠とは、放置すれば眠りに落ちてしまうような状態。刺激されれば容易に覚醒し、短時間なら合目的的な行動もできる。
④嗜眠とは、傾眠よりやや強い意識混濁。強く刺激すれば覚醒し、食事のような合目的的行動も可能。
⑤昏迷とは、中等度の意識混濁。閉眼、横臥し、強い刺激をしなければ覚醒しない。眼球運動も少なくなり失禁がみられる。強い刺激に反応しても発語ははっきりしない。見当識は失われ、健忘が残る。
⑥昏睡とは、重篤な意識混濁。強い刺激に対してもほとんど反応がない。自発運動はなく、深部腱反射・対光反射なども減弱ないし消失する。筋緊張が緩み、失禁状態となる。除脳硬直が起こることもある。呼吸、循環、体温調節などの植物機能にも変化が起こる。

1.× 呼びかけると覚醒するのは、「昏睡」ではなく傾眠である。昏睡とは、重篤な意識混濁。強い刺激に対してもほとんど反応がない状態である。

2.〇 正しい。傾眠は刺激が無くなると眠ってしまう。強く刺激すれば覚醒し、食事のような合目的的行動も可能。

3.× 痛みに反応しないのは、昏睡もしくは植物状態といえる。見当識障害とは、「今がいつか(時間)」「ここがどこか(場所)」がわからなくなる状態である。自分の周囲の状況や、 自分が置かれている状況(人や時間、 場所)が正しく理解できなくなる。ちなみに、植物状態とは、思考や意図を要する活動ができず、話すこと、指示に従うこと、意図的に腕や脚を動かすこと、痛みの刺激から逃れようと動くことなどは行えない状態である。

4.× 開眼して「いても」意識障害は「ある」。なぜなら、開眼していても精神活動は浅い眠りに近い状態(昏蒙)があるため。昏蒙(※読み:こんもう)とは、軽度の意識混濁のことで、覚醒はしているが、精神活動は浅い眠りに近い状態。

 

 

 

 

 

問50 脳卒中の初期症状で誤っている組み合わせはどれか。

1.橋出血:呼吸異常
2.被殼出血:片麻痺
3.小脳出血:回転性めまい
4.くも膜下出血:眼振

答え.4

解説
1.〇 正しい。橋出血は、呼吸異常がみられる。なぜなら、橋は脳幹の一部であるため。橋とは、中脳と延髄に挟まれた、脳幹の一部である。運動に関する情報を大脳から小脳に伝える役割をもつ。橋出血(脳幹出血)は、呼吸を制御する脳幹部分に影響を与える。

2.〇 正しい。被殼出血:片麻痺がみられる。被殻とは、大脳の中央部に左右1対あり、身体の運動調節や筋緊張、学習や記憶などの役割を持っている。したがって、被殻出血とは、頭痛や麻痺(片麻痺や顔面神経麻痺)、病側の共同偏視、優位半球障害時に運動失語、劣位半球障害時に失行・失認などがみられる。

3.〇 正しい。小脳出血:回転性めまいがみられる。小脳とは、後頭部の下方に位置し、筋緊張や身体の平衡の情報を処理し運動や姿勢の制御(運動系の統合的な調節)を行っている。小脳は、筋トーヌスと運動の調節に関与している。したがって、小脳出血により、回転性めまいやバランスの喪失が生じることがある。ただし、一般的に、回転性めまいというと、前庭系の障害やMénière病が疑われる。ちなみに、回転性めまいの責任病巣は、前庭系(耳の内部にある平衡器官)や前庭神経である。回転性めまいとは、自分は動いていないにも関わらず、自分や周囲(天井や壁など)がぐるぐる回っているようなめまいのことである。Ménière病とは、膜迷路を満たしている内リンパ液の内圧が上昇し、内リンパ水腫が生じる内耳疾患である。4大症状として、①激しい回転性のめまい、②難聴(感音難聴)、③耳鳴り、④耳閉感を繰り返す内耳の疾患である。

4.× くも膜下出血の初期症状には、突然の激しい頭痛(ほかにも嘔吐、意識障害など)である。一方、眼振は、自分の意思とは関係なく眼球が動く現象である。小脳性平衡機能障害に最も関連する異常である。

小脳の働き

・小脳半球(新小脳)は、四肢(特に上肢)の協調運動を司っている(失調性歩行、企図振戦、構音障害など)。失調性歩行は、ワイドベースや酩酊歩行、よろめき歩行ともいう。

・小脳虫部は、体幹と下肢の協調運動、片葉小節葉を含む古小脳は身体のバランス維持と頭頸部の協調運動を司る(主に体幹失調)。

 

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