第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午後51~55】

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問51 ポビドンヨードの殺菌力を低下させるのはどれか。

1.脂肪
2.蛋白質
3.炭水化物
4.アルコール

答え.2

解説

ポビドンヨードとは?

ポビドンヨードとは、世界中で感染対策に使われている代表的な殺菌消毒剤の有効成分のひとつである。施設に感染症が流行していない場合は、ポビドンヨードやアルコール溶液などで断端を消毒することは勧められていない。

1.〇 正しい。脂肪/炭水化物/アルコールは、ポビドンヨードの殺菌力を低下させるという報告はない。

2.× 蛋白質は、ポビドンヨードの殺菌力を低下させる。なぜなら、ポビドンヨードは、細菌及びウイルス表面の膜タンパクと反応することで殺菌するため。したがって、余計なタンパク質を含むと、効果が低下する恐れがある。以下、参考文献:「水溶液中のポビドンヨード液はヨウ素を遊離し、その遊離ヨウ素(I2)が水を酸化して H2OI+が生じる。H2OI+は細菌及びウイルス表面の膜タンパク(-SH グループ、チロシン、ヒスチジン)と反応することにより、細菌及びウイルスを死滅させると推定される」と記載されている(※引用:「ポビドンヨード消毒液 10%」兼一薬品工業株式会社様HPより)。

 

 

 

 

 

問52 緊急性拒絶反応の出現時期として正しいのはどれか。

1.24時間以内
2.1週間以内
3.2か月以内
4.4か月以内

答え.3

解説

緊急性拒絶反応とは?

生体腎移植とは、健康な人から2つある腎臓の1つを摘出し、それをレシピエント(援助者)に移植する方法である。術後の合併症には注意する必要がある。①急性拒絶反応、②原疾患の再発、③感染症、④糖尿病などが当てはまる。

①急性拒絶反応とは、主に術後1ヶ月周辺(遅い場合3か月とも)で現れることがあり、この場合は移植腎機能が低下し、クレアチニンの上昇、蛋白尿、尿量の減少、体重増加、発熱、浮腫などが出現する。腎生検のために入院となり、治療法としてステロイド、サイモグロブリンといった免疫抑制薬で拒絶反応の抑制を図る。

1.× 24時間以内の場合、超急性拒絶反応(HVG反応)が考えられる。拒絶反応は移植した臓器の種類や拒絶反応が生じた時期によって症状が異なる。

2.× 1週間以内は、緊急性拒絶反応としては早すぎる。

3.〇 正しい。2か月以内は、緊急性拒絶反応の出現時期である。

4.× 4か月以内の場合(3か月以上)、慢性拒絶反応の出現時期である。

 

 

 

 

 

問53 補助器具を用いない人工呼吸法の際、息を吹き込む時間で適切なのはどれか。

1.1秒
2.3秒
3.5秒
4.7秒

答え.1

解説

一次救命処置とは?

 一次救命処置とは、呼吸が止まり、心臓も動いていないと見られる人の救命へのチャンスを維持するため、特殊な器具や医薬品を用いずに行う救命処置であり、胸骨圧迫と人工呼吸からなる心肺蘇生法(CPR)、そしてAEDの使用を主な内容とする。

成人に対する一次救命処置では、胸骨圧迫を30回したのち、人工呼吸を2回行い(30対2)、これを繰り返す。成人であれば胸骨が少なくとも5~6cm沈むように圧迫し、1分間に100~120回のテンポで行う。絶え間なく圧迫することが重要である。

1.〇 正しい。1秒が補助器具を用いない人工呼吸法の際、息を吹き込む時間である。人工呼吸の際は、1回あたり約1秒かけて2回息を吹き込む。吹き込む量は、傷病者の胸が軽く膨らむ程度である。吹き込んだ後は、口を離して息が自然に吐き出されるのを待ってから、2回目の吹き込みを行う。うまく人工呼吸ができたときは、息を吹き込んだときに盛り上がった胸が、口を離したときに沈んでいく。

2~4.× 3秒以上の吹き込むことは時間として長すぎる。過度に空気が吹き込まれ、気管や肺にダメージを与える可能性がある。また、リズムが遅すぎて十分な人工呼吸が行えない可能性があります。

一次救命処置の手順

①安全確認と感染防御
②意識状態の確認
③協力者を集める
④気道確保・呼吸の確認
⑤人工呼吸2回
⑥胸骨圧迫式心マッサージ
⑦AEDによる除細動

※安全確認と感染防御が最優先だが、設問の選択肢にないので、次の段階で優先される選択肢を選ぶ。

 

 

 

 

 

問54 65歳の男性。自転車走行中に転倒し、ガードレールで左前胸部を強打した。呼吸困難となり救急搬送された。来院時血圧98/64mmHg、脈拍100/分、呼吸数20/分。体表面に明らかな外傷はみられない。来院時の胸部エックス線写真を別に示す。
 考えられる診断はどれか。

1.無気肺
2.気胸
3.心臓破裂
4.大動脈破裂

答え.2

解説

本症例のポイント

・65歳の男性(左前胸部を強打)。
呼吸困難となり救急搬送された。
・来院時血圧98/64mmHg、脈拍100/分、呼吸数20/分。
・体表面に明らかな外傷はみられない。
・胸部エックス線写真:左前胸部に黒くなっている
→左前胸部に黒くなっていることから、空気が過剰に存在する(気胸)ことを示唆する。

1.× 無気肺は考えにくい。なぜなら、本症例は左前胸部を強打が受傷機転となっているため。また、無気肺のレントゲン写真は、気管支の閉塞し白く見られるため。無気肺とは気管支の閉塞などによって肺内の空気の出入りがなくなり、空気が抜けてしまった状態である。原因としては、肺門部の扁平上皮がんなどの原発性肺がん、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の粘液栓による気道の閉塞や気道異物などがあげられる。

2.〇 正しい。気胸が考えられる診断である。気胸とは、肺が破れて胸腔内に空気が漏れる状態である。レントゲン写真で、肺が黒く見えるのは典型的な所見である。また、胸腔内の圧力が変化するため、呼吸困難や血圧低下が生じることがある。

3~4.× 心臓破裂/大動脈破裂は考えにくい。なぜなら、心臓破裂/大動脈破裂で出血を伴う場合、レントゲン写真では白く映るため。心臓破裂は外傷による重大な状態で、急激な血圧低下やショックを伴う。

気胸とは?

【原発性自然気胸】
原発性自然気胸とは、肺疾患のない人に明らかな原因なく起こる気胸のこと。通常、肺のややもろくなった部分(ブラ)が破裂した際に発生する。特徴として、40歳未満で背が高い男性の喫煙者に最もよくみられる。ほとんどの人が完全に回復するが、最大で50%の人に再発がみられる。

【続発性自然気胸】
続発性自然気胸とは、基礎に肺疾患がある人に発生する気胸のこと。最も多いものは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のある高齢者である。他にも、嚢胞性線維症、喘息、ランゲルハンス細胞組織球症、サルコイドーシス、肺膿瘍、結核、ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎など、その他の肺疾患の患者でもみられる。特徴として、基礎に肺疾患があるため、原発性自然気胸に比べて症状や治療成績は一般に悪くなる。再発率は、原発性自然気胸と同程度である。

 

 

 

 

 

問55 スポーツ障害肩で正しいのはどれか。

1.インピンジメント症候群は上腕二頭筋と関節窩の衝突で生じる。
2.スラップリージョンは関節窩下方の骨棘である。
3.ベネット(Bennett)リージョンは下方関節唇の骨棘である。
4.肩甲上神経麻痺は肩鎖靱帯による絞扼で生じる。

答え.3

解説

スポーツ障害とは?

スポーツ障害とは、使い過ぎ症候群とも呼ばれ、スポーツによって関節、靭帯、腱、骨などに繰り返し外力が加わることで引き起こされる障害のことである。身体に過度の負担が繰り返しかかることで、負担のかかっている部分が徐々に損傷し、痛みを主症状とした慢性状態に移行したものをいう。例えば、オスグット病、シンスプリント、疲労骨折、腰椎分離症、野球肩、野球肘、テニス肘などである。

1.× インピンジメント症候群は、「上腕二頭筋と関節窩」ではなく上腕骨大結節と棘上筋腱停止部の衝突で生じる。肩峰下インピンジメント症候群とは、上腕骨大結節と棘上筋腱停止部が、烏口肩峰アーチを通過する際に生じる、棘上筋腱の機械的圧迫のことである。この機械的圧迫は棘上筋腱に集中して発生する。つまり、肩の近くの関節の細いところで、骨同士の隙間が、こすれがあっている状態である。 原因として、年齢や疲労、姿勢の影響で動きの連携がとれずに衝突するとされている。炎症や出血を起こす。

2.× スラップリージョンは、「関節窩下方の骨棘」ではなく上方関節唇損傷である。スラップリージョン(SLAP損傷:Superior Labrum Anterior and Posterior lesion)とは、上方関節唇損傷のことをさす。野球やバレーボールなどのオーバーヘッドスポーツにおける投球動作やアタック動作などを反復することによって上腕二頭筋長頭腱に負荷がかかり、関節唇の付着部が剥がれてしまう状態を指す。また、腕を伸ばした状態で転倒した際に上腕骨頭の亜脱臼に合併してSLAP損傷が生じることや、交通事故などの外傷性機序で発症することがある。スポーツでは、スライディングで手をついたり、肩を捻った時に発症することがある。

3.〇 正しい。ベネット(Bennett)リージョンは下方関節唇の骨棘である。ベネットリージョン(Bennett損傷:ベネット損傷)とは、軟部組織損傷ともいい、投球動作により上腕三頭筋長頭や肩関節後方関節包に繰り返しの牽引力がかかり起こる骨膜反応である。野球暦の長い選手、特に投手に多く、上腕三頭筋長頭や後方下関節包の拘縮を合併する。炎症を伴うため、疼痛があるときは投球を中止し、初期は、冷罨法、固定、提肘により運動を制限する。疼痛軽減後は、ストレッチ運動や筋力強化訓練を行う。

4.× 肩甲上神経麻痺は、「肩鎖靱帯」ではなく上肩甲横靭帯による絞扼で生じる。肩甲上神経麻痺とは、野球肩の1つで、上肩甲横靭帯による絞扼やガングリオンによる圧迫などが原因ととして、棘上筋、棘下筋に筋力低下や筋委縮がみられ、肩の重だるさ、脱力感や上げにくさがみられる。

リトルリーガー肩とは?

リトルリーガー肩とは、野球肩のひとつで、反復した投球動作によって起こる。使いすぎ障害として徐々に発症する場合が多い。リトルリーガー肩とは、成長過程にある少年、中学生前後では腕の骨の付け根に骨が伸びるための成長線が残っており、繰り返しの投球による牽引と回旋の力がかかることで、成長線を損傷することをいう。症状は、投球時の肩付近の痛みで発症する。痛みは投げるたびに徐々に強くなり、じっとしていても痛みを感じることがある。肩全体の痛みを訴えることが多いが、診察すると腕の付け根の外側に押すと痛い場所がある。ちなみに、野球肩は、滑液包炎、棘上筋腱炎、上腕二頭筋腱炎、肩甲上神経麻痺による棘下筋萎縮、インピンジメント症候群、上腕骨骨端線障害(リトルリーグ肩)など多くが含まれる。

 

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