第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午後56~60】

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問56 正しい組み合わせはどれか。

1.軟骨無形成症:青色強膜
2.骨形成不全症:顔面神経麻痺
3.大理石骨病:骨形成障害
4.マルファン(Marfan)症候群:解離性大動脈瘤

答え.4

解説

軟骨無形成症とは?

軟骨無形成症とは、先天異常(常染色体優性遺伝)で、成長軟骨と言われる部分の変化により、低身長や四肢の短さ、指の短さ、特異顔貌が引き起こされる病気である。合併症である肥満、水頭症、閉塞性睡眠時無呼吸、中耳炎、脊柱管狭窄症などの治療または予防が必要になる場合がある。軟骨無形成症の人の平均寿命は健常者の平均寿命より約10年で短いといわれている。

1.× 青色強膜は、「軟骨無形成症」ではなく骨形成不全症でみられる。骨形成不全症とは、易骨折性・進行性の骨変形などの骨脆弱性を示す病状に加え、様々な程度の結合組織の病状を示す先天性の疾患である。具体的な症状として、易骨折性、骨変形などの長管骨の骨脆弱性と脊椎骨の変形に加え、成長障害、青色強膜、歯牙(象牙質)形成不全、難聴、関節皮膚の過伸展などがみられる。さらに、脊柱変形による呼吸機能障害、心臓弁(大動脈弁、僧帽弁に多い)の異常による心不全などが引き起こされることがある。骨折は、乳児期や歩行の不安定な1~2歳ごろと運動をする機会が増える小学生で多いとされている。

2.× 顔面神経麻痺は、「骨形成不全症」ではなく大理石骨病でみられる。大理石骨病とは、破骨細胞という骨を溶かす役割をする細胞の機能が障害され、全身の骨がびまん性に硬くなる病気である。臨床症状は重症なものから軽症まで極めて多彩で、重症型(新生児型・乳児型)、中間型、遅発型などに大別され、それぞれの治療や予後は大きく異なる。重症型では貧血、出血傾向、感染しやすいなどの骨髄機能不全症状や著しい成長障害、脳神経障害(難聴、視力障害、顔面神経麻痺)、水頭症、低カルシウム血症などが早期より発症し、長期生存できない場合もある。

3.× 骨形成障害は、「大理石骨病」ではなく骨形成不全症でみられる。

4.〇 正しい。解離性大動脈瘤は、マルファン症候群でみられる。マルファン症候群とは、遺伝性疾患で、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。つまり、全身の結合組織がもろくなるため、大動脈癌や大動脈解離を生じやすい。

解離性大動脈瘤とは?

解離性大動脈瘤は、大動脈内膜に亀裂が生じ、内膜が内外の2層に解離し、そこに血流が入り込み、血腫を形成する。他にも、高血圧や動脈硬化などが原因となる。ちなみに、アテローム硬化とは、太い動脈や中型の動脈の壁の中に主に脂肪で構成されるまだら状の沈着物(アテロームあるいはアテローム性プラーク)が形成され、それにより血流が減少ないし遮断される病気である。

 

 

 

 

 

問57 くる病で誤っているのはどれか。

1.成長の障害
2.歩行開始の遅延
3.骨端線閉鎖後の発症
4.下肢の高度な変形

答え.3

解説

1~2.4.〇 正しい。成長の障害/歩行開始の遅延/下肢の高度な変形は、くる病の症状である。くる病とは、小児期に見られる骨の石灰化不全であり、主に成長障害骨の弯曲が起こる疾患である。ビタミンDの代謝あるいは感受性の障害により、骨に石灰化が起こらず、強度が不足する病気である。 成人期ではビタミンD依存性骨軟化症と呼ばれる。小児期には成長も障害され、骨X線検査で特徴的な所見を呈し、ビタミンD依存性くる病とも呼ばれる。

3.× 骨端線閉鎖後の発症は、くる病ではない。なぜなら、くる病は、小児期(12歳まで)に発症するため。骨端線閉鎖後、同様の症状で発症した場合、骨軟化症と診断されることが多い。

骨軟化症とは?

骨軟化症は、骨化の過程における石灰化障害が生じた結果、石灰化していない骨基質が増加し、骨強度が減弱することにより生じる。骨端線閉鎖前の小児期に発症したものをくる病という。病因は、低リン血症、ビタミンD代謝物作用障害、石灰化を障害する薬剤性(アルミニウム、エチドロネート等)などである。

 

 

 

 

 

問58 アテトーゼ型脳性麻痺で誤っているのはどれか。

1.麻痺は永続的である。
2.緊張時の不随意運動がある。
3.知能低下がある。
4.大脳基底核に障害がある。

答え.3

解説

アテトーゼ型脳性麻痺とは?

 アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。アテトーゼ型脳性麻痺の介助のポイントとして、体幹は包み込むようにして安定させ、四肢をフリーにしないことで安定させるとよい。また、上肢や体幹の極端な非対称性の体位は、体幹の側屈と短縮を引き起こすため避けるようにする。

1.〇 正しい。麻痺は永続的である。脳性麻痺の定義では、「脳性麻痺は受胎から新生児(生後4週以内)までの間に生じた、脳の非進行性病変にもとづく永続的な、しかし変化しうる運動および姿勢の異常(1968年の厚生省脳性麻痺研究班)」とされている。

2.〇 正しい。緊張時の不随意運動がある。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。

3.× 知能低下が「ある」と断言できない。アテトーゼ型脳性麻痺の患者には、知能が正常な場合もある。知能の低下を併発することもあるが、個人差がみられる。

4.〇 正しい。大脳基底核に障害がある。なぜなら、大脳基底核は、運動の調整に関与しており、障害されると不随意運動が発生するため。

大脳基底核とは?

大脳基底核とは、①線条体(被殻 + 尾状核)、②淡蒼球、③黒質、④視床下核である。小脳とともにからだの運動をスムーズにする役割がある。

 

 

 

 

 

問59 正しい組み合わせはどれか。

1.小児急性化膿性骨髄炎:骨端に好発
2.ブロディ(Brodie)膿瘍:瘻孔
3.化膿性関節炎:肺炎球菌
4.脊椎カリエス:流注膿瘍

答え.4

解説
1.× 小児急性化膿性骨髄炎は、「骨端」ではなく骨幹端に好発する。なぜなら、骨髄を中心に起こる炎症であるため。ちなみに、化膿性骨髄炎とは、骨髄を中心に骨皮質や骨膜にも細菌が感染して起こる炎症である。代表的な病原体は黄色ブドウ球菌(MRSAを含みます)であり、その他にもA群溶連菌、B群溶連菌、サルモネラ菌、肺炎球菌、緑膿菌などがあげられる。

2.× ブロディ(Brodie)膿瘍は、「瘻孔」と関連がない。ブロディ膿瘍とは、亜急性骨髄炎の一種で、長管骨の骨幹端に発生する骨髄炎である。下肢の骨に多く発生する。ちなみに、瘻孔とは、炎症などによって皮膚や粘膜と臓器をつなぐ、または臓器と別の臓器をつなぐ異常な管状の穴のことである(※読み:ろうこう)。

3.× 化膿性関節炎は、「肺炎球菌」ではなく黄色ブドウ球菌が主である。化膿性関節炎とは、関節に細菌(黄色ブドウ球菌が最も多い)が入り込んで感染し、炎症を起こす病気である。 関節に炎症が起こると、その部位が激しく痛み、表面の皮膚が赤くはれあがって熱を持つ。 そのほか、全身に現れる症状として、悪寒や倦怠感、食欲の低下などがある。血液検査で高値を示すのは白血球数とCRPである。ちなみに、肺炎球菌とは、肺炎の原因となる細菌である。肺炎球菌の主な感染経路は、飛沫感染である。 肺炎球菌は、主に、子どもがもっているが、咳やくしゃみで広がり、抵抗力の低下した高齢者に感染した場合には、肺炎を起こし、肺炎球菌感染症は重症化しやすい。

4.〇 正しい。脊椎カリエスは、流注膿瘍が形成される。脊椎カリエスとは、一種の骨関節感染症で、結核性脊椎炎ともいう。結核菌が脊椎へ感染した病気である。ちなみに、流注膿瘍とは、腰椎カリエスの膿瘍において、重力により組織間隙を伝わって遠隔部に膿瘍を形成することである(※読み:りゅうちゅうのうよう)。

 

 

 

 

 

問60 痛風発作時の治療として適切でないのはどれか。

1.インドメタシンの投与
2.尿酸のコントロール
3.飲水の奨励
4.コルヒチンの投与

答え.2

解説

痛風とは?

 痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足趾関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

1.〇 正しい。インドメタシンの投与は、痛風発作時に適応である。なぜなら、非ステロイド性鎮痛剤を短期間のみ比較的大量に投与することで、炎症の鎮静化を図れるため。発作中は、歩き回らずに安静にし、患部を冷やすと痛みが和らぐ。ちなみに、インドメタシンは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類される。非ステロイド性抗炎症薬とは、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。

2.× 尿酸のコントロールは、痛風「発作時」ではなく寛解期に行う。なぜなら、痛風発作時に、尿酸値を下げる薬(尿酸排泄促進剤、尿酸生成抑制剤)を提供すると、尿酸値を急激に変動し痛風の発作を悪化させる可能性があるため。したがって、急性発作がおさまるまで、尿酸排泄促進剤の投与は開始せず、急性発作がおさまったら、3~6ヵ月程をかけて徐々に尿酸値6mg/dL以下にコントロールする。

3.〇 正しい。飲水の奨励は、痛風発作時に適応である。なぜなら、水分不足(脱水)の場合は、血液が濃くなると血液中の尿酸の濃度が上昇し、痛風発作を起こしやすくなるため。一方、水分摂取は、尿中尿酸値の低下につながる。

4.〇 正しい。コルヒチンの投与は、痛風発作時に適応である。なぜなら、痛みや炎症を和らげるため。コルヒチンは、予兆期もしくは発症後遅くとも2時間以内に服用する。コルヒチンには、白血球の働きを抑える作用があるため、痛みや腫れを起こす白血球からの炎症物質が放出されないように働く。したがって、発作を抑える効果を期待できる。

 

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