第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午後96~100】

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問96 絞扼性神経障害を起こす絞扼部位と神経の組み合わせで正しいのはどれか。

1.肩甲切痕部:肩甲下神経
2.クアドリラテラルスペース:腋窩神経
3.フローセの腱弓:尺骨神経
4.浅指屈筋腱弓:橈骨神経

答え.2

解説
1.× 肩甲切痕部は、「肩甲下神経」ではなく肩甲上神経である。肩甲上神経絞扼障害とは、バレーボールショルダーともいい、肩甲上神経が、肩甲骨の肩甲切痕または棘窩切痕という箇所を通過するところで絞扼されることで起こる障害である。肩の痛みや腕が挙がりにくくなるなどの症状が現れる。また、肩の後面から腕にかけて放散する痛みがある。肩甲上神経支配の筋肉は、棘上筋と棘下筋の支配神経である。
棘上筋の【起始】肩甲骨の棘上窩、棘上筋膜の内側、【停止】上腕骨大結節の上部、【作用】肩関節外転、【神経】肩甲上神経である。
棘下筋の【起始】肩甲骨の棘下窩、棘下筋膜の内側、【停止】上腕骨大結節の中部、【作用】肩関節外旋、上部は外転、下部は内転、【神経】肩甲上神経である。

2.〇 正しい。クアドリラテラルスペースは、腋窩神経が通る。クアドリラテラルスペースとは、四辺形間隙ともいい、上腕骨、小円筋、大円筋、上腕三頭筋で囲まれた肩の後ろ側の四角い隙間のことである。この隙間を腋窩神経と後上腕回旋動静脈が通り抜ける。このすき間が狭くなると、腋窩神経の障害から、支配筋である三角筋の筋力低下が起こり、上腕挙上困難(四辺形間隙症候群)になる。

3.× フローセの腱弓は、「尺骨神経」ではなく橈骨神経深枝である。フローセ腱弓とは、回外筋腱弓ともいい、回外筋が橈骨神経深枝を包むように覆う構造(トンネルのような構造)のことである。回外筋の【起始】上腕骨外側上顆、尺骨の回外筋稜、肘関節包後面、橈骨輪状靭帯、【停止】橈骨上部外側面、【作用】前腕回外、【支配神経】橈骨神経深枝:C5~C7である。

4.× 浅指屈筋腱弓は、「橈骨神経」ではなく正中神経である。浅指屈筋腱弓とは、上腕二頭筋腱膜と浅指屈筋腱の間にある部分である。正中神経が浅指屈筋腱弓で絞扼されると、回内筋症候群を引き起こす。

 

 

 

 

 

問97 疼痛が主症状であるのはどれか。

1.動揺性肩関節
2.デュピュイトラン(Dupuytren)拘縮
3.ベーカー(Baker)嚢腫
4.膝蓋軟骨軟化症

答え.4

解説
1.× 動揺性肩関節とは、原因が外力や肩関節の軟部組織に異常がないにも関わらず、肩関節に動揺性を認める関節不安定症をいう。若年者や女性、投球やスパイクなどでオーバーアーム動作を行うスポーツ選手に多い。急性期は安静、ストレッチ、痛み止め・湿布の使用、物理療法などを行う。 回復期はリハビリテーション(筋力強化、ストレッチなど)の機能回復を行う。また、リハビリでは再発予防の指導も適宜行う。

2.× デュピュイトラン(Dupuytren)拘縮とは、中年以降の男性に多く、原因不明で、手掌腱膜の肥厚(瘢痕化)による手掌部の伸展制限、手指の屈曲拘縮を認める。

3.× ベーカー(Baker)嚢腫とは、膝の裏にある関節液(滑液)という液体を含んだ滑液包が炎症を起こし膨らむことである。過剰な圧や摩擦が加わると炎症が起こる。症状としては、膝裏の腫れ、違和感、不快感などで、痛みは強くなりにくい特徴がある。

4.〇 正しい。膝蓋軟骨軟化症は、疼痛が主症状である。膝蓋軟骨軟化症とは、15~30歳に好発し、膝蓋骨関節軟骨に軟化・膨隆・亀裂などをきたした状態のことである。症状として運動時・階段昇降時などに、膝前方の疼痛があげられる。膝蓋骨グラインディングテストにて検査する。

 

 

 

 

 

問98 初期変形性膝関節症の痛みの特徴はどれか。

1.動作開始時
2.動作中
3.動作後
4.夜間就寝時

答え.1

解説

変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症は、①疼痛、②可動域制限、③腫脹、④関節変形などがみられる。進行度にかかわらず、保存療法が第一選択となる。減量や膝に負荷のかかる動作を回避するような日常生活動作指導、筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法、装具や足底板などの装具療法、鎮痛薬や関節内注射などの薬物療法が行われる。

1.〇 正しい。動作開始時は、初期変形性膝関節症の痛みの特徴である。なぜなら、動作開始時に、体動前が血流循環であることや立位になり膝の内側の軟骨がすり減っている状態で骨同士が接触することで痛みが生じるため。したがって、日常生活の指導では、歩行前(動作前)に座位で足踏みなど軽く運動するよう伝えることが多い。

2~4.× 動作中/動作後/夜間就寝時/は、初期変形性膝関節症の痛みの特徴とは言えない。夜間時痛が直腸であるのは、肩関節周囲炎である。

 

 

 

 

 

問99 膝関節内反動揺検査で正しいのはどれか。

1.内側側副靱帯損傷の重傷度を判定する。
2.患側から先に検査を行い健側と比較する。
3.大腿四頭筋を収縮させて行うと検査が容易である。
4.30度屈曲位で動揺がなければ伸展位の検査は必要ない。

答え.4

解説

MEMO

外反ストレステストは、背臥位にて患側膝30°屈曲位と伸展位の両方で、検者は外反方向にゆっくりと強制する。側方動揺性や関節裂隙の開大が認められれば陽性と判断する。

1.× 「内側」ではなく外側側副靱帯損傷の重傷度を判定する。内側側副靭帯とは、膝の外側からのストレス(外反ストレス)に抵抗することで、関節の内側部分が開きすぎるのを防ぐ役割を持つ靭帯である。

2.× 逆である。「健側」から先に検査を行い「患側」と比較する。なぜなら、健側から先に行うことで、正常な動揺を基準とすることができるため。つまり、「健側」から先に検査を行うことで、患側の異常を評価することができる。

3.× 大腿四頭筋を収縮させて行うと検査が容易「とはならない」。なぜなら、大腿四頭筋を収縮させると膝関節が安定し、正確な動揺の評価が困難となるため。検査時には、患者にはリラックスした状態でいてもらう必要がある。ちなみに、膝周囲の靭帯損傷を呈した場合、医師に確認を取りながら、膝関節を安定させるため大腿四頭筋の筋力トレーニングを実施する。

4.〇 正しい。30度屈曲位で動揺がなければ伸展位の検査は必要ない。なぜなら、膝関節30°屈曲位が、最も外側側副靱帯が緩むため。ただし、伸展位での検査により、他の軟部組織の損傷を見逃さないきっかけになる可能性がある。

 

 

 

 

 

問100 踵の固定を目的とするテーピングはどれか。

1.a
2.b
3.c
4.d

答え.3

解説
1.× a(アンカー)である。アンカーは、テーピングを実施する範囲を規定する役割を持っている。最後のアンカーは、サポートとなるテープをしっかりと押さえる役割を持つ。

2.× b(スターアップ)である。スターアップは、足首のみに使用され、踵の左右の動きを固定する目的で行う。縦方向にVの字や平行となるように、踵を経由して反対側の同じ高さまで巻く。

3.〇 正しい。c(ヒールロック)は、踵の固定を目的とするテーピングである。内側・外側両方から脛に向かって貼っていく。左右のヒールロックを続けて巻く方法をアドバンスという。

4.× d(フィギアエイト)である。8の字の形となるように巻く方法である。主に関節全体を固定する場合や伸展するのを防ぐ時に使用する。通常2回巻く。

巻き方の名称とその方法

アンカー(錨):はじめのアンカーは、テーピングを実施する範囲を規定する役割を持っています。最後のアンカーは、サポートとなるテープをしっかりと押さえるものです。
スターアップ:足首のみに使用され、踵の左右の動きを固定する目的で行います。縦方向にVの字や平行となるように、踵を経由して反対側の同じ高さまで巻きます。
ホースシュー:これも足首のみに使用され、足関節の横への動きを固定する目的で行います。足底と平行となるよう横方向にUの字に巻きます。(馬蹄形=ホースシュー)
サーキュラー:リング状の巻き方をいいます。部位を一周一周切りながら、少しずらして貼っていきます。各部を圧迫する時や全体を最後に覆う時に使用します。(サーキュラーの連続版。続けて螺旋状に巻く方法をスパイラルといいます。)
フィギュアエイト:8の字の形となるように巻く方法です。主に関節全体を固定する場合や伸展するのを防ぐ時に使用します。通常2回巻くようにします。
バスケットウェーブ:スターアップとホースシューを交互に行い編み込んで行くものです。
ヒールロック:踵を固定するために行うものです。内側・外側両方から脛に向かって貼っていきます。(左右のヒールロックを続けて巻く方法をアドバンスといいます)
Xサポート:補強したい靭帯の上にXのテープの重なりの部分がくるように貼ります。Xサポートの数を増やすことで、固定力・サポート力を高めることができます。
縦方向のサポート:Xサポートと同様に靭帯の補強に使用されます。通常Xサポートと同時に使用され、補強したい靭帯の真上を通るように貼ります。
コンプレッション:膝の場合に使用し、膝頭をはずして、上下に迂回するように貼っていくものです。幅の広い伸縮テープを2本に切り分けて(スプリットテープ)、膝頭の上下から圧迫し固定します。

(※引用:「巻き方の名称とその方法」吉田 泰将(慶應義塾大学体育研究所准教授))

 

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