第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午前16~20】

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問16 正中神経麻痺でみられないのはどれか。

1.母指球筋萎縮
2.猿手
3.ボタン穴変形
4.示指のしびれ

答え.3

解説
1.〇 母指球筋萎縮/猿手/示指のしびれは、正中神経麻痺でみられる。正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

3.× ボタン穴変形は、正中神経麻痺でみられない。ボタン穴変形は、主に関節リウマチなどに見られる。ちなみに、ボタン穴変形とは、DIP過伸展・PIP屈曲する変形である。正中索の断裂によりボタン穴変形が起こる。

”関節リウマチとは?”

 関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問17 骨折の癒合に好適な条件はどれか。

1.関節内の骨折
2.骨折部の血腫消失
3.骨折部に働く剪力
4.骨折部に働く圧迫力

答え.4

解説

骨治療の好適な条件

・軟部組織の損傷が少ない。
・両骨折端が血腫内にある。
・骨折面の密着した骨折線の長い螺旋状または斜骨折の場合。
・海綿質の骨折、噛合した骨折、若年者、両骨片への血行が良好、細菌感染がない、栄養状態が良好、骨疾患や全身疾患がない、骨折部にかかる力が圧迫力となり剪力が働いていない場合など

1.× 関節内の骨折は、骨治療の不適な条件である。なぜなら、関節内骨折は関節の動きにより骨片が動きやすいため。ちなみに、関節内骨折とは、骨折が関節の内部にまで及んでいる状態を指す。一方、関節外骨折とは、骨折する際にできる骨折線が関節の内部にない骨折のことである。

2.× 骨折部の血腫消失は、骨治療の不適な条件である。なぜなら、骨折部の血腫は初期の骨癒合過程に重要な役割を果たすため。血腫は細胞の侵入を助け、骨の修復に必要な因子を供給する。したがって、血腫が消失すると、骨癒合に必要な環境が損なわれる。

3.× 骨折部に働く剪力は、骨治療の不適な条件である。なぜなら、屈曲力、牽引力、回転力、剪力は骨片が動きやすいため。

4.〇 正しい。骨折部に働く圧迫力は、骨折の癒合に好適な条件である。なぜなら、圧迫力は骨片の接触面積を増やし、骨癒合に必要な環境を整えるため。したがって、骨折部に適度な圧迫力が働くと、骨片が安定し、骨癒合が促進される。

骨治療の不適な条件

・骨折端が広く離開している(関節内骨折、開放性骨折)。
・骨折部に絶えず力が作用している。
・骨折部の血腫消失、高度な軟部組織の損傷や欠損、高齢者、細菌感染がある、骨片への血流が悪い、高度の粉砕骨折、栄養状態が不良、骨疾患や全身疾患などがあるなど。

 

 

 

 

 

問18 骨折の後療法開始時期で正しいのはどれか。

1.整復終了後
2.固定施行後
3.仮骨出現後
4.固定除去後

答え.

解説

後療法とは?

後療法とは、損傷した組織を回復させる治療法の事をいう。後療法には大きく3つの治療法(物理療法・運動療法・手技療法)がある。目的は、早期に社会復帰させることである。

1.× 整復終了後は、時期尚早である。なぜなら、整復直後は骨が安定していないため。まず、固定を施行して骨折部が安定した状態にしてから後療法を開始する必要がある

2.〇 正しい。固定施行後は、骨折の後療法開始時期である。なぜなら、骨折部が適切に整復され固定された後は、骨折部が安定し、痛みも自制内であるため。この時期に適度な後療法(物理療法・運動療法・手技療法)を行うことで、関節の拘縮や筋力低下を予防できる。

3.× 必ずしも、仮骨出現後に行う必要はない。なぜなら、仮骨出現している目安が時期(しかも幅広い期間)しかなく、確認する方法が明確ではないため。仮骨が形成する時期は、1週間目から14週目ぐらいである。ちなみに、仮骨とは、骨折した場合に折れたり欠損したりした骨の代わりに、新たにできる不完全な骨組織のことである。

4.× 固定除去後は、時期として遅すぎる。なぜなら、固定除去後まで待つと、患部の関節の拘縮や筋力低下が進行するため。固定期間中にも適度運動や後療法(物理療法・運動療法・手技療法)を行うことが重要である。

MEMO

骨折の治癒過程において、「①炎症期→②仮骨形成期→③仮骨硬化期→④リモデリング期」となる。

①炎症期:骨折後2〜3日で活動のピークを迎える。骨折した人が経験する初期の痛みのほとんどがこの炎症によるものである。
②仮骨形成期:骨折後1週間が過ぎると骨芽細胞が活動し、1週間目から14週目ぐらいが仮骨が形成する時期である。仮骨とは、骨折した場合に折れたり欠損したりした骨の代わりに、新たにできる不完全な骨組織のことである。
③仮骨硬化期:8週間目から36週間目ぐらいにあたる。
④リモデリング期:硬化仮骨が患部の機能とともに回復に、本体の骨に吸収、添加作用していく時期である。これが20週目から52週目ぐらいにあたる。

 

 

 

 

 

問19 骨折の合併症で正しい組合せはどれか。

1.偽関節:続発症
2.遷延治癒:後遺症
3.脂肪塞栓症:続発症
4.外傷性皮下気腫:後遺症

答え.3

解説

骨折の合併症

併発症とは、別のものがほぼ同時に起こる意味合いが強い。例えば、関節、軟部組織、内臓、脳脊髓、血管、末梢神経の損傷である。

続発症とは、ある疾患を原因として、経過がたどるにつれ、別の疾患が発症することである。例えば、外傷性皮下気腫、脂肪塞栓症候群、仮骨の軟化および再骨折、遷延治癒、コンパートメント症候群、長期臥床による続発症などがある。他にも、沈下性肺炎、褥瘡、深部静脈血栓症、筋萎縮、尿路感染症、認知症などあげられる。

後遺症とは、病気・怪我など急性期症状が治癒した後も機能障害などの症状や傷痕が残ることである。例えば、過剰仮骨形成、偽関節、変形治癒、関節運動障害(強直、拘縮)、骨萎縮、阻血性骨壊死、フォルクマン拘縮、外傷性骨化性筋炎などがある。

1.× 偽関節は、「続発症」ではなく後遺症である。偽関節とは、骨折部の癒合不全により異常可動をきたすことである。血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位の骨折が好発部位である。つまり、①大腿骨頸部骨折、②手の舟状骨骨折、③脛骨中下1/3骨折等は偽関節を起こしやすい。

2.× 遷延治癒は、「後遺症」ではなく続発症である。遷延治癒とは、骨折治癒機転が遅れた状態である。偽関節とは、骨折端に骨癒合機能が消失した状態をいう。原因としては、①不適切な治療と固定性の不良、②固定期間の不足・受傷時の骨折の状態(骨片間の転位が大きい、骨折部の粉砕が強い、開放骨折で感染の影響など)が影響する。

3.〇 正しい。脂肪塞栓症は、続発症である。脂肪塞栓症とは、脂肪細胞に血管を塞栓された臓器が虚血による不全を起こす事が本症の病態である。塞栓される臓器によって様々な臓器不全を起こす。外傷時に脂質代謝が変化し血液内の脂肪が脂肪滴になるため、あるいは外傷部分の血管から骨髄などの脂肪が入り込むためと考えられている。 全身性の脂肪塞栓症の原因としては、骨折の他に、皮下脂肪組織の挫滅、脂肪肝による障害、急性膵炎、減圧症、広範囲の火傷、糖尿病、骨髄炎などがある。

4.× 外傷性皮下気腫は、「後遺症」ではなく続発症である。皮下気腫とは、皮下組織内に空気がたまった状態をいう。空気が侵入する経路としては、皮膚の損傷による外部からの侵入、損傷された壁側胸膜を通しての胸腔内空気(気胸)の侵入、期間・気管支損傷や食道損傷などに伴う縦隔からがある。原因として、交通事故の原因となる外傷(特に胸部の打撲)、高所からの転落、挟まれたことによる挟圧外傷などである。症状として、胸や頚部に空気がたまり、その部位が膨らみ、強い痛みが出る。握雪感や捻髪音も感知でき、胸痛や呼吸困難を訴える場合もある。

 

 

 

 

 

問20 顎関節前方両側脱臼で正しいのはどれか。

1.開口不能となる。
2.談話不能となる。
3.外側靱帯損傷を伴う。
4.弾発性固定はみられない。

答え.2

解説
1.× 「開口」ではなく閉口不能となる。両側性顎関節脱臼の症状として、閉口不能、下顎は前方へ突出し,咬合は前歯部で著しい開咬となる。 顔貌は面長で鼻唇溝の消失がみられ、咀嚼不能、口唇閉鎖困難のため流涎の状態となる。

2.〇 正しい。談話不能となる。なぜなら、顎関節前方両側脱臼では、口が開いたまま閉じることができなくなるため。したがって、正常な発声が困難になる。

3.× 必ずしも、外側靱帯損傷を伴うとはいえない。顎関節前方両側脱臼の原因として、極度の開口で関節頭が関節結節を越えて前方に転位し、外側靱帯、咬筋、外側翼突筋の牽引により固定されるなどで生じる。

4.× 弾発性固定は「みられる」。弾発性固定は、脱臼の固有症状である。弾発性固定とは、脱臼した位置で関節が動かなくなる状態をいう。患部を押しても反発するか、動いてもまた脱臼した位置に戻ろうとする特徴がある。

 

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