第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午前21~25】

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問21 鎖骨骨折の固定法で誤っているのはどれか。

1.背8字帯固定法
2.セイヤー絆創膏固定法
3.ハンギングキャスト固定
4.デゾー包帯固定法

答え.3

解説

セイヤー絆創膏固定法

セイヤー絆創膏固定法とは、鎖骨骨折時の固定法である。
【役割】
腋窩枕子:末梢牽引を行うためのテコの支点の働き。
第1帯:肩を外方に引き鎖骨の短縮転位を防止する。
第2帯:患肢を挙上させて下方転位を防止する。
第3帯:前腕の重量で骨折部に圧迫力を加える。

1.〇 正しい。背8字帯固定法は、鎖骨骨折の固定法である。8字帯固定は、亀甲帯ともいい、鎖骨骨折の治療でよく用いられる方法である。関節部を中心に8の字に交差させながら巻いていく方法で、屈曲・伸展がある程度可能なので、肘関節や膝関節、足関節などの被覆(保護)にも用いられる。

2.〇 正しい。セイヤー絆創膏固定法は、鎖骨骨折の固定法である。セイヤー絆創膏固定とは、鎖骨骨折時の固定法で転位の少ないもの・応急処置時に用いられる。

3.× ハンギングキャスト固定は、鎖骨骨折の固定法ではない。ハンギングキャストは、ずれのある上腕骨近位端骨折に用いられる。脇の下から手部までギブスをまいてその重みで整復する。ちなみに、ずれが無いものは、三角巾固定で行う。

4.〇 正しい。デゾー包帯固定法は、鎖骨骨折の固定法である。冠名包帯法(デゾー包帯)とは、鎖骨骨折時の固定法である。腋→肩→肘の順番で包帯が巻かれる。
【目的】
第1帯:枕子の固定
第2帯:患肢の固定
第3帯:患部の固定・患肢の保持
第4帯:提肘

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問22 上腕骨外科頸外転型骨折の変形はどれか。

1.前内方凸
2.前外方凸
3.後内方凸
4.後外方凸

答え.1

解説

上腕骨外科頚骨折外転型について

発生機序:肩外転位で手掌、肘を衝いて転倒
鑑別疾患:肩関節前方脱臼
好発年齢層:高齢者
腱板損傷:棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋
整復前の確認:腋窩動脈(橈骨動脈)、腋窩神経の確認

【上腕骨外科頸外転型骨折の転位・変形】
・近位骨片は軽度内転
・遠位骨片は軽度外転
・遠位骨折端は前内上方へ転位
・骨折部は前内方凸の変形

1.〇 正しい。前内方凸は、上腕骨外科頸外転型骨折の変形である。なぜなら、遠位骨折端は前内上方へ転位するため。ちなみに、骨頭は軽度内転して、肩峰と大結節の距離は拡大する。

2~4.× 前外方凸/後内方凸/後外方凸は、上腕骨外科頸外転型骨折の変形とはいえない。

 

 

 

 

 

問23 コーレス(Colles)骨折で正しいのはどれか。

1.手関節橈屈強制によって発生する。
2.遠位骨片が手背方向に移動する。
3.母指と示指でのつまみ動作は可能である。
4.橈側転位はフォーク状変形を呈する。

答え.2

解説

橈骨遠位端骨折

コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)、神経障害などがある。主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。

1.× 手関節「橈屈」ではなく背屈強制によって発生する。なぜなら、手掌をついて転倒した際の手掌で地面に衝撃を受けた際に発生するため。

2.〇 正しい。遠位骨片が手背方向に移動する。逆に掌側の場合、スミス骨折となる。
回外(捻転):受傷機転が手掌を衝いて転倒した際、前腕遠位に長軸圧と背屈・回外が強制されておこる。
橈側:橈骨の構造上、橈骨茎状突起が斜めに位置するため、橈側に変位しやすい。
短縮転位:なぜなら、受傷機転が手掌を衝いて転倒した際、前腕遠位に長軸圧と背屈・回外が強制されておこるため。掌側から斜め背側近位に骨折線が走ることが特徴で、その骨折線に沿って短縮する。

3.× 母指と示指でのつまみ動作は、可能であると断言できない。なぜなら、合併症として、骨折による痛みや腫れ、さらに神経障害(橈骨・尺骨・正中神経麻痺)を呈するため。

4.× 「橈側」ではなく背側転位は、フォーク状変形を呈する。フォーク状変形とは、手首が背側に上がり、外見がフォークのような形になることから呼ばれる。背側転位が高度の場合フォーク状変形を呈し、橈側転位が高度の場合は銃剣状変形を呈す。

MEMO

【佐々木の不安定型Colles骨折の定準】
①粉砕型で転位があり。本来不安定な骨折。
・整復時に整復位を保つには十分な安定性がない。
・関節面に及ぶ高度な粉砕がある。
・高度の転位(dorsal tilt≧20°またはradial shortening≧10mm)があり、ギプス固定では整復位の保持困難が予想される。
②粉砕型でギプス固定後dorsal tilt≧5°またはradial shortening≧5mmの再転位を生じたもの

【Cooneyの不安定型骨折の判定基準】
20°以上の背屈変形もしくは高度な関節内障害があり。整復位を保つのが困難な高度粉砕型骨折

(※引用:「橈骨遠位端骨折診療ガイドライン」日本整形外科学会より)

 

 

 

 

 

問24 ベネット(Bennett)骨折時の骨折部の変形はどれか。

1.背側凸変形
2.掌側凸変形
3.外転屈曲変形
4.内転屈曲変形

答え.4

解説

Bennett骨折とは?

ベネット骨折とは、第一中手骨基部の関節内骨折で、第一中手骨の脱臼を伴いやすい。母指先端にボールが当たったり喧嘩やボクシングで母指の先端に力が加わった際に起こりやすい。骨棘は、骨折や関節の摩耗により関節周囲の骨が増殖する現象である。

1~3.× 背側凸変形/掌側凸変形/外転屈曲変形は、ベネット骨折時の骨折部の変形とはいえない。

4.〇 正しい。内転屈曲変形は、ベネット骨折時の骨折部の変形である。つまり、Bennett骨折の原因は、母指屈曲・内転位での末梢からの介達外力(または母指への外転強制)といえる。これは、長母指外転筋の収縮で中枢側への引っ張りによるため。その後、母指内転筋により、内転・屈曲変形となる。

 

 

 

 

 

問25 肩関節前方脱臼の症状で誤っているのはどれか。

1.持続性疼痛を訴える。
2.上腕軸は外転内旋位を呈する。
3.肩峰下に骨頭を触知する。
4.三角筋胸筋三角は消失する。

答え.3

解説

肩関節前方脱臼とは?

烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。

1.〇 正しい。持続性疼痛を訴える。なぜなら、脱臼により、肩周囲の軟部組織の損傷が起こるため。脱臼による正常な位置からの逸脱と、軟部組織の損傷による炎症症状として、疼痛が持続する。

2.〇 正しい。上腕軸は外転内旋位を呈する。これは、転倒の際に手掌をついて、肩関節が過度に伸展・外転を強制されるため。したがって、固定肢位は、肩関節軽度屈曲・内旋位とする。

3.× 「肩峰下」ではなく烏口突起下に骨頭を触知する。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる

4.〇 正しい。三角筋胸筋三角は消失する。三角筋胸筋三角とは、モーレンハイム窩ともいい、大胸筋上縁と三角筋前縁との境にある三角筋胸筋溝の上端部と鎖骨にて構成される領域のことである。

 

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