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問116 老人会で配られたおにぎりを食べた高齢者から食後2~4時間で悪心・嘔吐、腹痛、下痢を訴える者が多発した。おにぎりを作った調理人は手に切り傷があり、少し化膿しているものの、素手でおにぎりを握ったという。
正しいのはどれか。
1.抗菌薬の投与が有効である。
2.症状は病原体が産生する毒素による。
3.食品を加熱することにより予防できる。
4.他者に感染させない措置が必要である。
答え.2
解説
・老人会で配られたおにぎりを食べた高齢者。
・食後2~4時間で悪心・嘔吐、腹痛、下痢を訴える者が多発。
・おにぎりを作った調理人は手に切り傷があり。
・少し化膿しているものの、素手でおにぎりを握った。
→本症例は、ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌)による食中毒が疑われる。黄色ブドウ球菌は、毒素型食中毒の原因となる。黄色ブドウ球菌とは、食中毒の原因となるだけでなく、おでき、にきびや、水虫等に存在する化膿性疾患の代表的起因菌である。健康な人でものどや鼻の中などに高率で検出され、動物の皮膚、腸管、ホコリの中など身近にも存在している。5類感染症のひとつである。
1.× 抗菌薬の投与は無効である。なぜなら、症状は菌そのものではなく、菌が産生した毒素によるものであるため。治療は主に対症療法(症状を和らげる治療)になる。
2.〇 正しい。症状は病原体が産生する毒素による。黄色ブドウ球菌が食品内で産生するエンテロトキシン(耐熱性毒素)によって発症する。
3.× 食品を加熱しても予防できない。なぜなら、黄色ブドウ球菌そのものは加熱で死滅するが、エンテロトキシン(耐熱性毒素)は熱に強く、通常の調理加熱では分解されにくいため。食品を清潔に扱うことや適切な温度で保管することが予防の基本である。
4.× 他者に感染させない措置が必要とはいえない。なぜなら、黄色ブドウ球菌による食中毒は、毒素によるものであり、人から人への感染はないため。したがって、感染対策は必要ない。
食中毒とは、食中毒を起こすもととなる細菌やウイルス、有毒な物質がついた食べ物を食べることによって、下痢や腹痛、発熱、吐き気などの症状が出る病気のことである。①微生物(細菌、ウイルス等)によるもの、②化学物質によるもの、③自然毒によるもの及びその他に大別される。なかでも、①微生物(細菌性)の食中毒は、感染型と毒素型に大きく分類される。加熱が有効なのは感染型であり、毒素型に加熱は無効である。
【毒素型】毒素型細菌性食中毒、セレウス、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス
問117 垂直感染するのはどれか。
1.麻しん
2.B型肝炎
3.インフルエンザ
4.ノロウイルス感染症
答え.2
解説
・水平感染とは、感染源から周囲に伝播する様式であり、①接触感染、②飛沫感染、③空気感染などがある。
・垂直感染とは、一般的に母子感染とも呼び、何らかの微生物(細菌、ウイルスなど)がお母さんから赤ちゃんに感染することである。妊娠前から元々その微生物を持っているお母さん(キャリアと言います)もいれば、妊娠中に感染するお母さんもいます。「母子感染」には、赤ちゃんがお腹の中で感染する胎内感染、分娩が始まって産道を通る時に感染する産道感染、母乳感染の3つがあります。
1.× 麻しんは、主に飛沫感染や接触感染である。麻しんとは、麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症である。 麻しんウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染で、ヒトからヒトへ感染が伝播し、その感染力は非常に強い。麻疹ウイルスの感染後、10~12日間の潜伏期ののち発熱や咳などの症状で発症する。38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠感(小児では不機嫌)があり、上気道炎症状(咳、鼻みず、くしゃみなど)と結膜炎症状(結膜充血、目やに、光をまぶしく感じるなど)が現れて次第に強くなる。
2.〇 正しい。B型肝炎は、母子感染(垂直感染)である。B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって生じる肝臓の病気のことである。B型肝炎ウイルスは主に感染者の血液や体液を介して感染する。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染する。
3.× インフルエンザは、主に飛沫感染や接触感染である。インフルエンザとは、インフルエンザウイルスへの感染を原因に発症する。A型、B型、C型の3種類があり、このうち冬季に流行する「季節性インフルエンザ」はA型とB型によるものである。症状として、38℃以上の発熱や寒気、関節痛、全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪のような症状が現れる。上気道症状が1週間程度続くのが典型的である。
4.× ノロウイルス感染症は、主に接触感染や経口感染(汚染された食物や水を介して)である。ノロウイルスは、もっとも一般的な胃腸炎の原因である。感染者の症状は、非血性下痢、嘔吐、胃痛(悪心・嘔吐、水様性下痢腹痛、発熱等の急性胃腸炎)が特徴である。発熱や頭痛も発生する可能性がある。症状は、通常ウイルス曝露後12〜48時間で発症し、回復は通常1〜3日以内である。合併症はまれだが、特に若人、年配者、他の健康上の問題を抱えている人では、脱水症状が起こることがある。原因として、①カキ等の二枚貝、②感染者の嘔吐物等への接触や飛沫による二次感染である。感染経路は、経口感染、接触感染、飛沫感染、空気(飛沫核)感染による。
感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。
①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。
②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。
③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。
(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)
問118 施術における感染症予防で誤っているのはどれか。
1.施術所内を消毒する。
2.機械的清拭法により手を洗う。
3.皮膚の消毒に次亜塩素酸ナトリウムを用いる。
4.スタンダード・プリコーションにより対処する。
答え.3
解説
1.〇 正しい。施術所内を消毒する。なぜなら、手指や用具以外にも、ベッドやドアノブなど、不特定多数が触れる環境表面を定期的に清掃・消毒することは感染防止につながるため。
2.〇 正しい。機械的清拭法により手を洗う。消毒・滅菌の方法として、①物理的方法(機械的清拭法)と②化学的方法(化学的消毒法)がある。①物理的方法(機械的清拭法)とは、消毒剤を染み込ませたガーゼ、タオル、モップなどで器械・器具や環境の表面を拭き取ることにより消毒する方法である。浸漬できない器械・器具や環境に用いられる。②化学的方法(化学的消毒法)とは、消毒剤を用いて病原微生物を殺滅する方法である。消毒剤の効果は、消毒剤の種類と濃度により決まる。消毒の対象が生体か器具・環境か、あるいは、適応部位が皮膚か粘膜かなどにより適切な消毒剤を選択する必要がある。感染予防の基本となるのが「手洗い」である。
3.× 皮膚の消毒に「次亜塩素酸ナトリウム」ではなくアルコールやポビドンヨードなどを用いる。なぜなら、次亜塩素酸ナトリウムは、皮膚に対しては刺激が強すぎるため。次亜塩素酸ナトリウムとは、ノロウイルス感染症に罹患した患者の嘔吐物が床に飛び散っているこの処理に使用する消毒薬である。ノロウイルスの消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。ただし、次亜塩素酸ナトリウムの注意点として、毒性が強く、吸い込んでしまったり、目に入ってしまった場合には呼吸器や粘膜へ損傷を与える危険を伴う。
4.〇 正しい。スタンダード・プリコーションにより対処する。なぜなら、標準予防策(スタンダードプリコーション)により適切な予防策を講じることで、感染のリスクを最小限にすることができるため。
スタンダード・プリコーションとは、感染症の疑いや診断の有無にかかわらず、すべての患者に共通して実施される感染対策で、汗を除くすべての湿性生体物質(血液・体液・分泌物・排泄物・損傷した皮膚・粘膜)を感染源と見なし、対処する予防策である。
問119 医療施設から出る体液で汚染された廃棄物が該当するのはどれか。
1.一般廃棄物
2.産業廃棄物
3.放射性廃棄物
4.特別管理廃棄物
答え.4
解説
1.× 一般廃棄物とは、産業廃棄物以外の廃棄物であり、医療関係機関等からは紙くず、包帯、脱脂綿等が発生するがこれらのうち感染性廃棄物であるものを感染性一般廃棄物という。
2.× 産業廃棄物とは、法で6種類、令で14種類の廃棄物が定められており、医療関係機関等からは血液(廃アルカリ又は汚泥)、注射針(金属くず)、レントゲン定着液(廃酸)等が発生する。これらのうち感染性廃棄物であるものを感染性産業廃棄物といい、感染性がないものを非感染性産業廃棄物という。
3.× 放射性廃棄物は、放射性同位元素等の規制に関する法律に基づいて処理する。放射線障害を防止し、公共の安全を確保することにある。
4.〇 正しい。特別管理廃棄物は、医療施設から出る体液で汚染された廃棄物が該当する。なぜなら、感染症の汚染源となる可能性があるため。ちなみに、廃棄物処理法では、「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物」を特別管理廃棄物として規定している。例えば、廃油、廃酸、廃アルカリ、感染性産業廃棄物などが該当する。
(※図引用:「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」環境省HPより)
問120 公害と原因物質の組合せで正しいのはどれか。
1.イタイイタイ病:鉛
2.四日市喘息:硫化水素
3.新潟水俣病:メチル水銀
4.光化学スモッグ:一酸化炭素
答え.3
解説
有機水銀は特に胎児の中枢神経の発達に影響を及ぼすとされている。妊婦、幼児、近く妊娠を予定されている方は、有機水銀濃度が高い水産物を主菜とする料理を週1回以内(合計で週におおむね50~100g程度以下)にすることをお勧めしている。主に多くの有機水銀が含まれるものとして、マグロ類(マグロ、カジキ)、サメ類、深海魚類(キンメダイ、ムツ、ウスメバルなど)、鯨類(鯨、イルカ)などがあげられる。ちなみに、サンマ、イワシ、サバなどは、一般的に有機水銀濃度が低い水産物であるため、控える必要はない。
①四日市喘息(三重県):主に亜硫酸ガスによる大気汚染を原因。
②新潟水俣病:有機水銀(メチル水銀)による水質汚染や底質汚染を原因。
③イタイイタイ病(富山県):カドミウムによる水質汚染を原因
④熊本水俣病:有機水銀(メチル水銀)による水質汚染や底質汚染を原因
1.× イタイイタイ病は、「鉛」ではなくカドミウムである。水質汚染や土壌汚染が問題となった。腎機能障害を起こし、カルシウム吸収が障害されて、骨が脆くなり骨折しやすくなる。
2.× 四日市喘息は、「硫化水素」ではなく亜硫酸ガス(二酸化硫黄の気体)である。二酸化硫黄は、ガス状大気汚染物質に含まれ、主要大気汚染物質のひとつである。窒素酸化物とともに酸性雨の原因物質として知られる。 二酸化硫黄による汚染大気は呼吸器を刺激し、せき、ぜんそく、気管支炎などの障害を引き起こす。
3.〇 正しい。新潟水俣病:メチル水銀
水俣病とは、魚介類に蓄積された有機水銀を長期、大量に経口摂取することによって起こる神経系の疾患である。水俣病には、後天性と先天性(胎児性)があり、後天性水俣病の主要症状は、求心性視野狭さく、運動失調、難聴及び知覚障害である。また、胎児性水俣病は、知能発育障害、言語発育障害、咀嚼嚥下障害、運動機能障害、流涎等の脳性小児マヒ様の症状を呈する。
4.× 光化学スモッグは、「一酸化炭素」ではなく窒素酸化物(光化学オキシダント)である。窒素酸化物とは、物が高い温度で燃えたときに、空気中の窒素(N)と酸素(O2)が結びついて発生する、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)などのことをいう。ちなみに、光化学オキシダントとは、大気汚染物質である窒素酸化物と炭化水素類が太陽光(紫外線)エネルギーに反応して発生するもので、光化学スモッグを引き起こす。