第31回(R5年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後101~105】

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問題101 五心煩熱や盗汗がみられるのはどれか。

1.肝脾不和
2.心肝火旺
3.心脾両虚
4.心腎不交

解答

解説
1.× 肝脾不和(※読み:かんぴふわ)
肝脾不和とは、肝臓と脾臓の連携が乱れ、脾臓から肝臓への受け渡しがうまくいかない状態である。症状として、胃痛、腹痛、食欲不振、お腹や胸の張り、イライラ、憂うつ感などである。

2.× 心肝火旺(※読み:しんかんかおう)
心肝火旺とは、心臓と肝臓の両方に負担がかかり、熱証を生じる証である。症状として、焦燥感、じっとしていられない、動悸、不眠症などである。

3.× 心脾両虚(※読み:しんぴりょうきょ)
心脾両虚とは、心臓と脾臓の両方が虚弱になった状態である。症状として、不眠、貧血、物忘れ(健忘症)などである。

4.〇 正しい。心腎不交(※読み:しんじんふこう)は、五心煩熱や盗汗がみられる。
心腎不交とは、腎陰が損耗し、心陰を補えず、心火が亢進しすぎて不眠を生じる状態のことである。五心煩熱とは、手掌・足底がほてり、同時に胸の部分でそわそわして落ち着かない状態である。盗汗とは、睡眠中にかく汗のことである。

 

 

 

 

 

問題102 次の文で示す症例の経脈病証はどれか。
 「65歳の男性。2週間前から腰痛で、前かがみや仰向けができない。最近は下腹部が痛み、季肋部が腫れ、喉が渇き、下痢をする。」

1.足の太陰経
2.足の厥陰経
3.足の陽明経
4.足の少陽経

解答

解説

本症例のポイント

・65歳の男性。
・2週間前:腰痛、前かがみや仰向けができない。
・最近:下腹部が痛み、季肋部が腫れ、喉が渇き下痢
→本症例は、厥陰病の症状がみられる。

1.× 足の太陰経
太陰病の症状として、裏虚寒証(初期)、食欲不振、腹部膨満感、水様便などがあげられる。
足の太陰脾経:舌が強ばりやすくなり、食べるとからえずきし、胃の辺りが痛み、腹部が張ってよくゲップが出る。大便や放屁すると今まであった不快感がなくなり楽になる。身体全体が重くなる。舌本が痛み、身体が動かしにくく、食べた物がつかえてなかなか下に降りていかない。横になっても不快感や胸苦しさで寝付きが悪くなり、無理に立とうとすると膝の内側が腫れて引きつってくる。足の親指が動かしにくい。

2.〇 正しい。足の厥陰経(※読み:けついんけい)が、本症例の経脈病証である。
厥陰病の症状として、外感病末期。寒熱錯雑。胸部不快感口渇、四肢厥冷、嘔吐、下痢などがあげられる。
足の厥陰肝経;腰痛が起こり、仰向けになったりうつ伏せになれなくなる。男性は睾丸が腫れ少腹が拘急疼痛し、婦人は少腹が腫れる。のどが乾き、顔面が垢がたまっている様に黒くなる。嘔吐や粥状の下痢をしたり、鼠径ヘルニア、小便失禁、尿開が起こる。

3.× 足の陽明経
陽明病の症状として、裏実熱証。発汗、壮熱、口渇、潮熱、大便秘結、譫語、洪脈などがあげられる。
足の陽明胃経:顔面神経麻痺、喉や膝の皿が腫れたり痛んだりする。胃腸が張る。気衝~髀関、足の甲と流注上に痛みや熱感が出る。食べても食べてもお腹が空き、濃黄色の小便が出る。びっくりして不安な状態になる。独り塞ぎこんで窓を閉め家の中に閉じこもっている。高い所に登って歌を歌いだす。羞恥心を無くしたように裸になって走り出す。

4.× 足の少陽経
少陽病の症状として、半表半裹証。発汗、寒熱往来、胸脇苦満、口苦、眩暈、脈弦などがあげられる。
足の少陽胆経:口苦が起こり、大きなため息をつく、寝返りが打てない。顔に少し垢が付いたように黒くなる。体の艶が無くなる。足外反しほてる。頭やエラの所が痛む。まなじりが痛む。首に結核性のリンパ節炎ができる。往来寒熱の状態になり、あらゆる関節が痛む。

六経弁証

太陽病:外感病初期、表寒証。悪寒、発熱、頭痛、項強痛、脈浮など。
少陽病:半表半裹証。発汗、寒熱往来、胸脇苦満、口苦、眩暈、脈弦など。
陽明病:裏実熱証。発汗、壮熱、口渇、潮熱、大便秘結、譫語、洪脈など。
太陰病:裏虚寒証(初期)。食欲不振、腹部膨満感、水様便など。
少陰病:外感病の極期~後期、虚寒/虚熱証。四肢厥冷、心煩、不眠など。
厥陰病:外感病末期。寒熱錯雑。胸部不快感、口渇、四肢厥冷、嘔吐、下痢など。

 

 

 

 

 

問題103 汗と脈状の組合せで正しいのはどれか。

1.無汗:濇脈
2.戦汗:結脈
3.大汗:滑脈
4.手足心汗:細脈

解答

解説
1.× 無汗:濇脈(※読み:しょくみゃく)
無汗とは、発汗しない状態を指す。濇脈とは、血流の遅滞を感じさせる脈圧の立ち上がりが緩慢な脈(細く、遅い脈)のことである。

2.× 戦汗:結脈(※読み:けつまく)
戦汗とは、風邪などの病気の時に、悪寒の後に突然出る汗である。一方、結脈とは、脈が一拍欠落する不整脈のことである。決まった法則性はなく、ゆるやかな脈で、時々止まる。主に陰寒や積滞内阻による。

3.× 大汗:滑脈(※読み:かつみゃく)
大汗とは、大量の汗をかくことである。滑脈とは、脈の流れが滑らかで、指先にコロコロと触れるような脈のことである。

4.〇 正しい。手足心汗細脈(※読み:さいみゃく)
手足心汗とは、手のひら、足の裏に汗がかく状態である。一方、細脈とは、脈が細く、幅が狭く感じられる脈のことである。指の下で糸のように触れ、脈拍は遅く、軟弱無力である。

汗の異常

自汗:気虚、陽虚
頭汗:上焦の邪熱、中集の湿熱
盗汗:陰虚
手足心汗:鬱熱、陰虚、脾胃湿熱
大汗:実熱
半身の汗:痰濁、瘀血
絶汗・脱汗:危篤状態

脈の種類

浮脈(表証、虚証):軽く指を当てると拍動が感じられ、按じると感じ方が弱くなる、もしくは感じられなくなるもの。
沈脈(裏証):軽く指を当てただけでは拍動を感じられず、筋骨の間まで按じると感じるもの。
遅脈(寒証):脈拍が遅く、1呼吸に3拍以下のもの。
数脈(熱証):脈拍が速く、1呼吸に6拍以上のもの。
虚脈(虚証):浮・中・沈いずれも無力で、指を押し返す力の弱いもの。
実脈(実証):浮・中・沈いずれも力強く指を押し返すもの。
弦脈(肝胆病、痛証、痰飲):琴の弦に触れたような、長く真っすぐで緊張したもの。
緊脈(実寒、痛証):張った縄に触れたような、緊張して有力なもの。弦脈に似る。
細脈(血虚):脈幅が小さく細いが、指にはっきり感じられるもの。
微脈(気虚、陽衰):極めて細く、軟らかく、拍動がはっきりせず、按じると絶えそうなもの。
濡脈(湿証、虚証):浮位で触れ、脈幅が小さく軟らかい。少し按じると絶えそうなもの。
滑脈(痰湿、食滞):脈の流れが滑らかで、円滑に指に触れるもの。
濇脈(渋)脈(血瘀):脈の流れが悪く、ざらざらとして渋滞したようなもの。
短脈(気鬱、気虚):脈の長さが短く、寸・関・尺の範囲に満たないもの。
長脈(陽気有余):脈の長さが長く、寸・関・尺の範囲を超えるもの。

 

 

 

 

 

問題104 次の文で示す症例の腹診所見はどれか。
 「44歳の女性。主訴は頭痛。半年前に転職し、上司との人間関係がうまくいかず気が滅入る。頭部に刺すような痛みがあり、顔のシミが目立つようになってきた。」

1.腹裏拘急
2.心下痞鞭
3.小腹不仁
4.少腹急結

解答

解説

本症例のポイント

・44歳の女性(主訴:頭痛)
・半年前:転職、上司との人間関係がうまくいかず気が滅入る。
・頭部に刺すような痛みがあり、顔のシミが目立つ。
→本症例は、瘀血の症状がみられる。したがって、腹診所見を選択する。

1.× 腹裏拘急(※読み:ふくひこうきゅう)
腹直筋の異常なつっぱり。腹裏のひきつれ。虚労でみられる。

2.× 心下痞鞭(※読み:しんかひびょう)
心下部の自覚的なつかえを心下痞、他覚的に硬いものを心下鞭、ともにあるものを心下痞鞭という。※心・心包の病変に多い。

3.× 小腹不仁(※読み:しょうふくふじん)
下腹部(臍下)に力がなく、知覚純麻があるもの。※腎の病変に多い。

4.〇 正しい。少腹急結は、本症例の腹診所見である。
少腹急結(※読み:しょうふくきゅうけつ)とは、下腹部(特に左)に抵抗感や硬結のあるものである。瘀血の腹証。ちなみに、瘀血(おけつ)とは、血液が汚れたり、滞ったり、固まりやすくなった状態のことである。瘀血になると、血の流れが悪くなり、全身に栄養が行き渡らなくなるため、さまざまな症状が現れやすくなる。

腹診(傷寒論系)

心下痞鞭(※読み:しんかひびょう):心下部の自覚的なつかえを心下痞、他覚的に硬いものを心下鞭、ともにあるものを心下痞鞭という。※心・心包の病変に多い。
胸脇苦満(※読み:きょうきょうくまん):季肋下部に苦満感、圧痛などがあるもの。※肝・胆の病変に多い。
小腹不仁(※読み:しょうふくふじん):下腹部(臍下)に力がなく、知覚純麻があるもの。※腎の病変に多い。
小腹急結(※読み:しょうふくきゅうけつ):下腹部(特に左)に抵抗感や硬結のあるもの。瘀血の腹証。
裹急(腹裏拘急:ふくひこうきゅう):腹直筋の異常なつっぱり。腹裏のひきつれ。虚労でみられる。
結胸(※読み:けっきょう):心下部が膨満して石のように堅く、圧痛のあるもの。
虚里の動:左乳下の動(心尖拍動)。

 

 

 

 

 

問題105 六部定位脈診で左手関上の沈の部が実している場合、難経六十九難に基づく治療穴はどれか。

1.少府
2.経渠
3.陰谷
4.陽輔

解答

解説

六部定位脈診

【部位】
①左:浮・沈
寸:小腸・心
関:胆・
尺:膀胱・腎

②右:浮・沈
寸:大腸・肺
関:胃・脾
尺:三焦・心包

1.〇 正しい。少府は、六部定位脈診で左手関上の沈の部が実している場合、難経六十九難に基づく治療穴である。
六部定位脈診で左手関上の沈の部が実している場合、肝臓となる。肝臓の実証(瀉法)において、少府となる。

2.× 経渠(※読み:けいきょ)
【腎】復溜・経渠:湧泉・大敦
【脾】大都・少府・労宮:商丘・経渠

3.× 陰谷(※読み:いんこく)
【肝】曲泉・陰谷:行間・少府・労宮
【肺】太淵・太白:尺沢・陰谷

4.× 陽輔(※読み:ようほ)
【胆】侠渓・足通谷:陽輔・陽谷・支溝

難経六十九難に基づく取穴

【部位】虚証(補法):実証(瀉法)
【肝】曲泉・陰谷:行間・少府・労宮
【肺】太淵・太白:尺沢・陰谷
【心】少衝・大敦:神門・太白
【腎】復溜・経渠:湧泉・大敦
【脾】大都・少府・労宮:商丘・経渠
【心包】中衝・大敦:大陵・太白
【胆】侠渓・足通谷:陽輔・陽谷・支溝
【大腸】曲池・足三里:二間・足通谷
【小腸】後渓・足臨泣:小海・足三里
【膀胱】至陰・商陽:束骨・足臨泣
【胃】解渓・陽谷・支溝:厲兌・商陽
【三焦】中渚・足臨泣:天井・足三里

 

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