第31回(R5年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後151~155】

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次の文で示す症例について、問題151、問題152の問いに答えよ。
 「47歳の女性。頭痛が続き、いらだちがある。耳鳴りもあり受診した。口苦があり、睡眠が浅い。昨年に閉経。舌は紅、脈は弦数、腹は胸脇苦満を認める。」

問題151 内分泌検査で血中濃度が基準値より高いのはどれか。

1.バソプレシン
2.ゴナドトロピン
3.エストラジオール
4.プロスタグランジン

解答

解説

本症例のポイント

・47歳の女性(昨年:閉経)。
・頭痛、いらだち、耳鳴り。
・口苦、睡眠が浅い。
・舌は紅、脈は弦数、腹は胸脇苦満。
→本症例は、更年期障害が疑われる。更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

1.× バソプレシン
バソプレシンは、下垂体後葉から分泌され、水の再吸収を促進する抗利尿作用・血圧上昇が起こる。尿を濃くし尿量を減らす作用がある。

2.〇 正しい。ゴナドトロピンは、内分泌検査で血中濃度が基準値より高い。
hCG<ヒト絨毛性ゴナドトロピン>は、主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしているほか、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用も報告されている。

3.× エストラジオール
エストラジオール〈E2〉とは、エストロゲンの一種で、母体の肝臓と胎盤、胎児の副腎を経て生成されるため、その血中濃度は胎児の生命状態の指標として用いられる。エストロゲンの中で最も強い卵胞ホルモン作用を持つ物質で、女性の二次性徴に働き、卵巣機能調節、卵胞発育、子宮内膜増殖などの作用を示す。

4.× プロスタグランジン
プロスタグランジンとは、細菌感染による急性炎症反応で増加する。プロスタグランジンは、①血管拡張、②気管支平滑筋収縮、③急性炎症時の起炎物質で発痛作用がある。非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>は、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。したがって、非ステロイド性抗炎症薬が効果的であるのは、侵害受容性疼痛である。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題151、問題152の問いに答えよ。
 「47歳の女性。頭痛が続き、いらだちがある。耳鳴りもあり受診した。口苦があり、睡眠が浅い。昨年に閉経。舌は紅、脈は弦数、腹は胸脇苦満を認める。」

問題152 病証として最も適切なのはどれか。

1.腎気虚
2.心脾両虚
3.心腎不交
4.肝火亢進

解答

解説

本症例のポイント

・47歳の女性(昨年:閉経)。
・頭痛、いらだち、耳鳴り。
・口苦、睡眠が浅い。
・舌は、脈は弦数、腹は胸脇苦満
→本症例の症状から、肝臓に何らかの原因があると考える。肝臓の主な症状は、精神抑鬱、急躁、易怒、胸肋部痛、目赤、目のかすみ、舌辺紅、脈弦などである。胆の機能失調で口苦・耳鳴・眩暈などである。

1.× 腎気虚
腎気虚は、①腎気不固(遺尿、頻尿、流産・早産、倦怠感、脈沈弱など)、②腎不納気(呼吸困難、息切れ、呼多吸少、倦怠感、脈沈弱など)がある。

2.× 心脾両虚
心脾両虚とは、心臓・脾臓の両方が虚していることをさす。心血虚は、心悸、不眠、眩暈、健忘、淡白色(顏面・口唇・爪など)、脈細弱などを指す。

3.× 心腎不交
心腎不交とは、心火旺と腎陰虚の症候が同時にみられるもので、陰虚火旺の一種である。腎陰虚の症状は、手足心熱、のぼせ、耳鳴、難聴、腰膝酸軟、口乾、舌質紅、脈数などである。

4.〇 正しい。肝火亢進が、病証である。
肝火上炎の症状は、頭痛、眩暈、耳鳴、目赤、急躁、易怒、舌辺紅、脈弦数などである。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題153、問題154の問いに答えよ。
 「40歳の男性。右腰下肢が痛み、右足部外側にしびれがある。アキレス腱反射減弱、下肢伸展挙上テスト陽性。」

問題153 施術対象となる神経根として最も適切なのはどれか。

1.L3
2.L4
3.L5
4.S1

解答

解説

本症例のポイント

・40歳の男性。
・右腰下肢が痛み、右足部外側にしびれがある。
・アキレス腱反射減弱、下肢伸展挙上テスト陽性
→本症例は、腰椎椎間板ヘルニアが疑われる。腰椎椎間板ヘルニアは、障害された神経根によって症状が異なるため、症状によってどの神経根が障害されているか判断できるようにしておこう。ちなみに、椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

1.× L3
L3の神経根障害の症状として、大腿内側から膝関節内側にかけてのしびれがみられる。

2.× L4
L4の神経根障害の症状として、大腿四頭筋の筋力低下、下腿内側から足背内側にかけたしびれ、膝蓋腱反射の低下が起こる。

3.× L5
L5の神経根障害の症状として、主に前脛骨筋、長母指伸筋、中殿筋の筋力低下。下腿外側~足背にかけたしびれが起こる。

4.〇 正しい。S1は、施術対象となる神経根である。
S1の神経根障害の症状として、主に、長母指屈筋、長・短腓骨筋、腓腹筋の筋力低下、足背外側~足底にかけたしびれ、アキレス腱反射の低下が起こる。

腰椎椎間板ヘルニアとは?

椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題153、問題154の問いに答えよ。
 「40歳の男性。右腰下肢が痛み、右足部外側にしびれがある。アキレス腱反射減弱、下肢伸展挙上テスト陽性。」

問題154 筋力が最も低下する筋はどれか。

1.中殿筋
2.前脛骨筋
3.大腿四頭筋
4.長母指屈筋

解答

解説
1.× 中殿筋
中殿筋の【起始】腸骨翼の外面で前および後殿筋線の間、腸骨稜外唇および殿筋筋膜、【停止】大転子の外側面、【作用】股関節外転、前部:内旋、後部:外旋、【支配神経】上殿神経:L4~S1である。

2.× 前脛骨筋
前脛骨筋の【起始】脛骨外側面、下腿骨間膜、【停止】内側楔状骨と第1中足骨の底面、【作用】足関節背屈、内返し、【神経】深腓骨神経(L4~S1)である。

3.× 大腿四頭筋
大腿四頭筋の支配神経は、大腿神経(L2~L4)である。大腿四頭筋とは、①大腿直筋、②外側広筋、③中間広筋、④内側広筋の4筋からなる大腿の筋の総称である。共同の腱は大腿前面の正中線を下行し、膝蓋骨の底と両側縁につき、これを介して(一部は膝蓋骨の前面を超えて)膝蓋靭帯となり、脛骨粗面につく。腱の両側の線維の一部は内側および外側膝蓋支帯となって膝蓋骨の両側を下行する。

4.〇 正しい。長母指屈筋の筋力が最も低下する。
(足の)長母指屈筋の【起始】腓骨体後面(内側稜と後縁との間)、後下腿筋間中隔の下半、【停止】母趾の末節骨底、【作用】足関節底屈、母趾屈曲、【支配神経】脛骨神経(L5~S2)である。L5の神経根が障害された場合、長母指屈筋の筋力が最も低下する。ほかの選択肢の筋肉は、一部L5を含んでいるが、支配神経の末端となるため影響は少ない。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題155、問題156の問いに答えよ。
 「47歳の女性。主訴は左顔面の麻痺。2週間前に腹痛、下腿前面の痛みとともに発症。現在は下腿内側の重だるさ、軟便を伴う。」

問題155 原絡表裏配穴法で主証に対応する経穴の部位にあるのはどれか。

1.足背動脈
2.後脛骨動脈
3.母指外転筋腱
4.前脛骨筋腱

解答

解説

本症例のポイント

・47歳の女性(主訴:左顔面の麻痺
・2週間前発症:腹痛下腿前面の痛み
・現在:下腿内側の重だるさ、軟便を伴う。
→本症例は、胃経(顔面の麻痺、腹痛、下腿前面の痛み)と脾経(下腿内側の重だるさ、軟便)がみられる。原絡表裏配穴法は、経絡の表裏関係に基づいて経穴を選択する方法である。胃の原穴【衝陽】と脾経の脈穴【公孫】を対象とする。

1.〇 正しい。足背動脈は、原絡表裏配穴法で主証に対応する経穴の部位である。
衝陽(※読み:しょうよう)は、足背、第2中足骨底部と中間楔状骨の間、足背動脈拍動部にある。
衝陽は、胃の原穴(陽経)である。

2.× 後脛骨動脈
後脛骨筋に関連する穴は、三陰交、漏谷(脾)、然谷、照海、交信(腎)である。

3.× 母指外転筋腱
太淵(※読み:たいえん)は、手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部にある。
太淵は、肺の原穴(陰経)である。

4.× 前脛骨筋腱
中封(※読み:ちゅうほう)は、足関節前内側、前脛骨筋腱内側の陥凹部、内果尖の前方にある。
中封は、肝に関連する。

 

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