第31回(R5年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後146~150】

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問題146 次の文で示す臓腑病証に対し、その郄穴に迎随の補瀉に基づき斜刺する場合、鍼尖の方向にある経穴として適切なのはどれか。
 「30歳の男性。3日前に愛車に落書きをされて怒りが収まらず、顔面の痛みとのぼせも出てきた。夜も眠れず目が赤い。舌質は紅、脈は弦数を認める。」

1.蠡溝
2.膝関
3.承山
4.条口

解答

解説

本症例のポイント

・30歳の男性。
・3日前に愛車に落書きをされて怒りが収まらない。
顔面の痛みのぼせも出てきた。
・夜も眠れず、目が赤い。
・舌質は、脈は弦数を認める。
→本症例は、肝火上炎(頭痛、眩暈、耳鳴、目赤、急躁、易怒、舌辺紅、脈弦数など)が観察される。迎随の補瀉とは、「迎えて奪うを瀉と云い、随って補うを補と云う」との原典の言葉がその出所である。実地臨床上は、狭い意味に解釈し、経の流れに逆うを瀉法とし、経の流れに随うを補法とする。ちなみに、肝臓の郄穴は、中都である。中都は、足の厥陰肝経で下腿前内側、脛骨内側面の中央、内果尖の上方7寸にある。

1.〇 正しい。蠡溝(足の厥陰肝経)は、本症例の郄穴に迎随の補瀉に基づき斜刺する場合、鍼尖の方向にある経穴である。
瀉法は、流注とは逆方向へ向ける。蠡溝(※読み:れいこう)は、下腿前内側、脛骨内側面の中央、内果尖の上方5寸する。

2.× 膝関(足の厥陰肝経)
補法で、流注方向へ向ける。膝関(※読み:しつかん)は、下腿脛骨面、脛骨内側顆の下方、陰陵泉の後方1寸である。

3.× 承山(足の太陽膀胱経
承山(※読み:しょうざん)は、下腿後面、腓腹筋筋腹とアキレス腱の移行部にある。

4.× 条口(足の陽明胃経
条口(※読み:じょうこう)は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方8寸にある。

 

 

 

 

 

問題147 次の文で示す病証でみられる痛みの性質はどれか。
 「53歳の男性。主訴は肩関節痛。過労により食欲減退が続き、倦怠感とともに肩が痛みだした。痛みは慢性に経過し、息切れ、自汗を伴う。舌質は淡、舌苔は薄白、脈は細弱を認める。」

1.隠痛
2.刺痛
3.脹痛
4.重痛

解答

解説

本症例のポイント

・53歳の男性(主訴:肩関節痛)
・過労により食欲減退が続き、倦怠感とともに肩が痛みだした。
・痛み:慢性経過、息切れ自汗を伴う。
・舌質:淡、舌苔:薄白、脈:細弱。
→本症例は、気虚(倦怠感、無力感、眩暈、息切れ、懶言、自汗、易感冒など)がみられる。

1.〇 正しい。隠痛は、病証でみられる痛みの性質である。
隠痛は、虚証にみられる痛みの性質である。

2.× 刺痛
刺痛は、瘀血にみられる痛みの性質である。瘀血(おけつ)とは、血液が汚れたり、滞ったり、固まりやすくなった状態のことである。瘀血になると、血の流れが悪くなり、全身に栄養が行き渡らなくなるため、さまざまな症状が現れやすくなる。

3.× 脹痛
脹痛は、気滞にみられる痛みの性質である。(気鬱)気滞は、脹痛、胸悶、胸肋部痛、抑鬱感、腹部膨満感などで、増悪と緩解を繰り返し、不安定となりやすい。

4.× 重痛
重痛は、湿邪にみられる痛みの性質である。陰性の邪気で重濁性、粘滞性、下注性がある。脾を損傷しやすい。気機を滞らせやすい。

 

 

 

 

 

問題148 膀胱湿熱でみられるのはどれか。

1.遺尿
2.癃閉
3.余瀝
4.小便自利

解答

解説

膀胱湿熱とは?

膀胱湿熱とは、膀胱に湿熱が停滞することで、膀胱の能力が低下し、炎症症状が現れやすくなることである。症状として、頻尿、尿意促迫、隆閉、排尿痛、血尿、小便短赤、舌質紅、脈滑数などである。

1.× 遺尿
これは、腎気不固の症状である。ちなみに、遺尿とは、昼夜を問わず尿を漏らす病態のことである。

2.〇 正しい。癃閉(※読み:りゅうへい)は、膀胱湿熱でみられる。
症状は、尿の勢いが悪くなる、尿が出始めるまでに時間がかかる、尿が出終わるまでに時間がかかる、排尿の途中で尿が途切れる、などの排尿困難や、頻尿(特に夜間頻尿)、会陰部の不快感、尿意切迫感、残尿感、排尿直後の尿漏れ(排尿後尿滴下)、尿失禁などある。

3.× 余瀝(※読み:よれき)
余瀝とは、器の底に残った酒や汁などのしずく、残りのしたたりのことである。尿がきちんと止まらない症状を指す。

4.× 小便自利(※読み:しょうべんじり)
小便自利とは、小便不利に対して逆に尿量の多すぎるもことをいう。

 

 

 

 

 

問題149 次の文で示す病証を八脈交会穴を用いて治療する場合、取穴部位として正しいのはどれか。
 「帯下があり、腹部の皮膚のかゆみ、下腿前側のひきつりがみられる。」

1.足背、第4・第5中足骨底接合部の遠位
2.足外側、外果尖の直下
3.足内側、内果尖の下方1寸
4.足内側、第1中足骨底内側の遠位陥凹部

解答

解説

帯下(おりもののこと)があり、腹部の皮膚のかゆみ、下腿前側のひきつりがみられる。
→任脈:陰経を調節し、胞胎を主る(月経・妊娠・出産の調節
→陰蹻脈:下肢・体幹の両側の陰陽を調節する。
したがって、【任脈】列欠ー照海【陰蹻脈】が適切である。

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1.× 足背、第4・第5中足骨底接合部の遠位は、「足臨泣【帯脈】」である。
帯脈は、季肋部から起こり腰部を回る。各経脈を束ねて調節する。

2.× 足外側、外果尖の直下は、「申脈【陽蹻脈】」である。
陽蹻脈は、下肢の内・外側に分布する陰経と陽経を協調させる。

3.〇 正しい。足内側、内果尖の下方1寸は、病証を八脈交会穴を用いて治療する場合の取穴部位である。
陰蹻脈は、下肢・体幹の両側の陰陽を調節する。

4.× 足内側、第1中足骨底内側の遠位陥凹部は、「公孫【衝脈】」である。
衝脈は、十二経脈の気血を調節し(十二経の海)、血を貯える(血海)。胞宮から起こり、月経に関与する。

 

 

 

 

 

問題150 次の文で示す病証の治療方針として最も適切なのはどれか。
 「47歳の女性。最近よく口渇を感じるが、水分は口を潤す程度で少量しか飲めない。手足の皮膚が鮫肌になってきた。舌質は紫暗、脈は濇を認める。」

1.風邪を除く。
2.瘀血を除く。
3.痰湿を除く。
4.気滞を除く。

解答

解説

本症例のポイント

・47歳の女性。
・最近よく口渇を感じるが、水分は口を潤す程度で少量しか飲めない
・手足の皮膚が鮫肌になってきた。
・舌質は紫暗、脈はを認める。
→本症例は、津液不足(血虚)で、瘀血の状態と言える。

1.× 風邪を除く。
六淫のうちのひとつである風邪は、陽性の邪気で軽揚性、開泄性、遊走性があり、他の外邪の先導役となる(百病の長)。

2.〇 正しい。瘀血を除く
なぜなら、本症例は、津液不足(血虚)で、瘀血の状態と言えるため。

3.× 痰湿を除く。
気の病証のひとつである痰湿(津液の停滞)は、湿・水:(身体が重だるい、浮腫、下痢)など、飲:腹鳴、動悸、喘息、浮腫など、痰:眩暈、咳嗽、頭痛、動棒、意識障害、精神障害などの状態をいう。

4.× 気滞を除く。
気の病証のひとつである気鬱(気滞)は、脹痛、胸悶、胸肋部痛、抑鬱感、腹部膨満感などをいう。増悪と緩解を繰り返し、不安定となりやすい。

 

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